EAMES HOUSE DESIGN FOR LIVING 鑑賞

20190331 top
【展覧会の看板を撮影すると必ず同じ構図になってしまうね】

SNAKEPIPE WROTE: 

今から3週間前に書いた「インポッシブル・アーキテクチャー 鑑賞」のコメントに鳥飼先生からお褒めの言葉を頂いた。
そのせいで調子に乗ったわけではないけれど、1ヶ月のうちに2回も建築に関係する展覧会を鑑賞したROCKHURRAHとSNAKEPIPE。

今回紹介するのは竹中工務店が運営支援する、公益財団法人ギャラリーエークワッドで開催されている「イームズハウス:より良い暮らしを実現するデザイン」。
イームズって椅子で有名なあのイームズのことだよね? 

「イームズハウス」は、チャールズ・イームズとレイ・イームズ夫妻の住宅兼スタジオで、1949年に完成し、今日でも世界の名建築の一つに数えられています。
類い稀な才能に恵まれた二人のデザイナーが創り上げたデザインの軌跡を辿ることによって、そこにある現代性と未来につながる普遍的な価値を見つめます。
(展覧会の概要より抜粋)

やっぱりあのイームズで良いみたいだね!
なーんて知ったかぶりで書いてはみたけれど、全然詳しくないんだよ。
かつてショップで働いていた時、ディスプレイで使っていた椅子を貰い受けたんだよね。
この画像がその椅子なんだけど、人形がやっと腰掛けられるくらいの小ささ!(笑)
これがイームズ・チェアのミニチュアだと知っているくらいの知識しか持っていない。
少しイームズ夫妻について調べてみよう。 

1907年 ミズーリ州セントルイスにて チャールズ・オーマンド・イームズ誕生
1912年 カリフォルニア州サクラメントにて バーナイス・アレクサンドラ・カイザー(レイ)誕生
1924年 チャールズ ワシントン大学建築科に入学するが 学校の方針と合わず2年あまりで放校処分となる
1929年 チャールズ 最初の妻と結婚
1930年 チャールズ セントルイスで建築設計事務所を開設
1931年 レイ NYに母親と移住し、美術学校に入学
1940年 チャールズとクランブルック美術アカデミーの学長の息子であるエーロ・サーリネンはニューヨーク近代美術館(MoMA)が主催の『住宅家具のオーガニックデザイン』コンペに共同で【オーガニックチェア】を含む椅子や収納、テーブルなどを出展し優勝する。
この時レイはクランブルックへ入学していて、ここでチャールズと出会い、コンペの仕事を手伝う
1941年 共通する関心の多さと才能に引かれ合い、5月にチャールズは前妻と離婚し6月にレイと結婚。
そして同年、転機となるプライウッド製の足の骨折時の副え木【レッグ・スプリント】の開発を海軍から依頼される
1942年 レッグ・スプリント5,000本を受注、プライフォームド・ウッド社を設立
1945年 レッグスプリントなどで培った技術を使ってイームズ・チェアなどを開発

チャールズ・イームズが生まれてから第二次世界大戦終結までの年表にしてみたよ。
MoMAのコンペに優勝したことと海軍から「副え木」の依頼を受けたことが転機になっているようだね。
しかもチャールズが再婚だったことに少々驚いてしまう。
アメリカの離婚率が高い話はよく聞くけれど、1940年代も同じ傾向だったのだろうか。
ただチャールズとレイにとっては、運命の相手に巡り合ったことになるんだろうね。
そして戦争で負傷した兵士用に開発された「副え木」の技術を応用して、椅子が開発されたエピソードにもびっくり。
画像がその副え木で、今回展示されていたよ。
有名な椅子の原点がこれだったとは!

今回の展示は、1949年にイームズ夫妻が建築雑誌「arts & architecture」の企画であるケース・スタディ・ハウスに参加し、実際に住んでいた家の紹介ということなんだよね。
この雑誌にはイームズ夫妻が編集に携わっていたという。
この雑誌も展覧会に並んでいたんだけど、表紙がとてもオシャレ!
1938年から1967年まで発行されていたようだけど、月刊誌だったのか季刊誌だったのかなどの詳細は不明だよ。
手に取っても大丈夫と係の女性に教えてもらったので、中身を見ることができた。
とても興味深い雑誌だったよ!
復刻版ないのかな、と調べてみたら1945年から1954年までの118冊で108,000円という記事を発見!
余裕があったら絶対欲しい雑誌だよ。
10年で118冊なので、月刊誌だったことが分かって何より。(笑)

ではここで会場の様子がわかる動画を載せておこうね。

さすがは竹中工務店、見せ方が美しいんだよね!
このギャラリーには初めて行ったけれど、駅から近く敷地が広くて静かだったよ。
動画を撮るのはダメだけど、それ以外の撮影はオッケーとの許可をもらう。
ここ最近行った展覧会2回は撮影禁止だったので、バシバシ撮らせてもらっちゃった。(笑)
気になった作品を紹介していこうね!

イームズ夫妻が1952年にデザインしたという「ハウス・オブ・カード」というオモチャがある。
動物、鉱物、野菜や色鉛筆などさまざまな写真や模様がプリントされたカードには切り込みがあり、その切り込みに別のカードを差し込み、自由に立体を組み立てて遊ぶものらしい。
このカードを元にしたディスプレイがされていたのが、素敵だったよ。
カードにする写真の選び方が面白くて、ディスプレイに見入ってしまったよ(笑)

1948年にデザインされ1950年から製造が始まった「プラスチック・アームチェア」(左)と「プラスチック・サイドチェア」。
このアームチェアは、1940年にMoMAのコンペで発表された成形合板製の椅子を元にしているという。
市松模様を見ると、50年代っぽいなあと思うよね!
カラフルで座り心地が良くて、耐久性があって我が家にも欲しくなる椅子だよ。

有名な「ラウンジ・チェア」も展示されていたよ。
この椅子は社会的に身分が高い外国人しか似合わないかもしれないな。
ドーンと構えている、ちょっと体格が良い人でね。(笑)
この椅子は1956年のデザインなのかな。
50年代のアメリカ映画で社長が座っていそうだよね。
ROCKHURRAHには似合わなそうなので、これはパスしよう。(笑)

デザイン画の展示もあったよ。
奥様であるレイは画家なので、もしかしたらレイが描いたものなのかもしれない。
1948年から1956年のスケッチで、複製品だったよ。
まるで子供の落書きのようで、アイデアを書き留めておいたメモのような役割だったように見える。
これが元になってプラスチック製の椅子ができたのかな。
「家具の中でもとりわけ椅子には興味がある。それは椅子が人間サイズの建築作品であるためだ」
とチャールズが語っていたようで、椅子には力を入れていたことが分かるよね。

夫妻の写真も多く展示されていたよ。 
イームズ夫妻のポートレイトがほとんどだったけれど、とても幸せそうなショットが多かったね。
イームズ夫妻は写真や映画を撮っていたらしいので、前述したハウス・オブ・カードの素材も自分達で撮影した写真なのかもしれない。
日本にも何度も来日し、イサム・ノグチとの交流から日本のデザイン界とのつながりを持つことになったという。
イサム・ノグチについてもほとんど知らないSNAKEPIPEなので、調べてみると続々と親交があったとされる有名人の名前が出てくるね!
李香蘭と結婚し、フランク・ロイド・ライトに助けられ、魯山人に陶芸を習うなどエピソードがいっぱいだよ。
この人のことももっと知りたいと思ったよ。

イームズ・ハウスは250分の1(だったと思う)の大きさになった模型が展示されていた。
精巧に再現された小さいもの、というのはそれだけでも魅力的なんだけど、今回の模型は内装も見事で見惚れてしまう。
小さい椅子や本棚、庭の植木に至るまですべての縮尺が計算されていて楽しい!(笑)
ドアを開けるとか、どこにトイレがあるのかを見るまではできなかったけれど、とても住心地が良さそうな家だということは分かったよ。

実際のイームズ・ハウスの様子がわかる動画を載せてみよう。 

この動画により、イームズ・ハウスは建築物の素晴らしさだけじゃなくて、ロケーションも良いことが判明したね。 
確かにこれは羨ましいと感じる家だよ。
興味を感じた物をコレクションしていった結果、 様々な国のグッズが揃ってワールド・ワイドなミクスチャーができあがっていく。
それは本当に好きな物を集めて自分達の居心地の良さを追求した結果なので、オシャレな雑然とでも言ったらいいのか。
人種や国境などの区別なく、いろいろな物に興味を持ち、好きな物を探す好奇心の強さを共感できる夫婦だっただろうと推測する。
理想的な夫婦の素敵な住まいを知ることができて大変有意義だったよ!(笑)

今回初めて行ったギャラリーエークワッド、 静かでゆっくり鑑賞できてとても良かったよ。
無料とは思えない充実した展示物、フライヤーやポストカード、展示品のリストまで用意されていて至れり尽くせり!
竹中工務店が主催しているこのギャラリーのコンセプトが素晴らしいの!

「ひとりでも多くの方々が「建築」を「愉しみ」、
「建築」を含めた「文化」に興味と関心を持たれ、
そして、愛着を深められることで、建築文化の発展に繋がればと願っています

建築文化発展のためのギャラリーだったとは!
2018年2月の「会田誠展 GROUND NO PLAN 鑑賞」で紹介したのは公益財団法人大林組が、アーティストに理想の都市のあり方を提案・提言してもらう助成制度だったね。
その第1回目のアーティストがまこっちゃんこと会田誠。
建築に関係した有名な会社が文化的な活動を行い、無料で展覧会を開催していることに驚いたけれど、竹中工務店のコンセプトも同じ趣旨だったんだね!
大林組は森美術館のスポンサーとしても名前が出ているのを見たことがあるし、大企業は儲けるだけじゃなくて社会に貢献し意識を高める役割も担っていることを知ったよ。 

竹中工務店のギャラリーを初めて訪れて、その素晴らしさを実感できたよ!
また別の企画で是非お邪魔したいものである。 

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