SNAKEPIPE MUSEUM #34 Kim Cogan

【寂れた雰囲気と色使いが最高だね!「The Alexandria Theater」は2013年の作品】

SNAKEPIPE WROTE:

エンリケ・マルティの作品かな?」
ROCKHURRAHが指をさすのは、ダイニングテーブルを囲んだファミリーの肖像画。
母親と思われる人物の顔がブレて、頭部が存在しないように見える油絵だった。
ちょっとオカルトっぽい作風は大好きなエンリケ・マルティに似ているけれど、あの毒気が感じられない。
どれどれ、とディスプレイを覗き込み、他の作品を見ると全く別のアーティストだと判った。
写真そのものに見えるスーパーリアリズムよりは絵画寄りの手法を用いて、ガランとした風景を描いているところに共感を覚える。

このアーティストはKim Coganという1977年生まれの韓国人。
1999年にサンフランシスコの美大を卒業し、その後はコンスタントに個展やグループ展で作品を発表している。
2013年には「アメリカの新進気鋭アーティスト25人」に選ばれているというので、かなり注目されているみたいだね!

 

廃墟好き、インダストリアル好きにはたまらない1枚だよね。(笑)
SNAKEPIPEが好んで撮影していたのも、こんな感じのコンクリートや鉄筋だったなあ。(遠い目)
レインボーブリッジ建設途中で撮った写真に似ているのがあるよ。
Kim Coganは写真を元に絵を描いているようなので、何枚もある写真の中からこの1枚を選ぶ気持ちが良く解るんだよね。
上の作品「Entering a city」は2014年の作品。
タイトルから推測すると幹線道路を横から描いた作品で、ブレているけど車の影も見えるんだよね。
Kim Coganは風景の中に人物を描き込んでいることもあるんだけど、主役は風景なんじゃないかと思ってしまう。
遠い記憶を再現しているような、存在感の薄い人物が多いからね。

SNAKEPIPE MUSEUM #5 Stephen Shore」の中でNo Man’s Landについて説明をしているSNAKEPIPE。
人がいない、空っぽの荒涼とした景色に惹かれてしまうことを力説したものだった。
今まさにそんな風景に出会ったよ!
見よ!この素晴らしい空虚さを!(誰だ、一体)
鉄の錆び具合、構図、色使い!
「Bronx River Crossing」(2013年)というタイトルの作品である。
ブロンクスと聞くと、黒人、ヒップホップ、麻薬、犯罪、ギャングといった危ない地域と思ってしまう。
今は随分変わってきたのかもしれないけど、SNAKEPIPEがラップ、ヒップホップを聴いてた頃はそんな感じだったからね。(遠い目again)
実際のところはどんな場所なのかはっきり確認しないまま書いてるけど、なんとも哀愁漂う、寂寥感いっぱいの風景に魅了されるよね。
撮影しながら歩いた西新小岩と平井を結ぶ平井大橋の下とは全然違う風情だよ。(笑)

最近よく映画の題材になる感染モノで、ほとんどの人が死滅してしまって、残っているのは本当に僅か。
果たして人類は生き残れるのか?!
なんてコピーが入るワンシーンのような1枚だよね。(笑)
白っぽい建物が並ぶと余計に空虚の度合いが増す感じ。
「Stockton Tunnel」は2006年の作品だから、今まで紹介してきた中でも古いほうになるんだね。
奥のトンネルはもちろん気になるんだけど、その前を横切る斜めの光を描きこんだところが写真的!
SNAKEPIPEだったら、もう少し近寄って斜めの光を大きくした横位置で撮影するかも。
きっとKim Coganは、車線の黄色を入れたかったんだろうね。

「Stockton Tunnel」を観ていると、Kim Coganの作風はフランスの写真家アッジェに近い感じがしてくるね。
芸術家の資料として売るための写真は、人がいないほうが都合が良かったために朝撮られていたらしい。
ほとんど人が写っていない風景写真なのは、そのせいだったんだね。
その無人でガランとした雰囲気が似ているのかな。
恐らくKim Coganも写真が好きで、もしかしたら自分で撮影してるのかもしれないね。
Kim Coganに関する情報が少なくて詳細は不明だけど、そんな気がするよ。

アッジェに似ているということは、画家のユトリロにも似てることになるよね。
ユトリロはアッジェの絵葉書を元に絵を描いていたというので、当たり前だけど!
Kim Coganが描いているのはニューヨークで、アッジェやユトリロはパリという違いはあるけれど、求めているテイストは近いんじゃないかな?
華やかな印象の都市だからこそ、音のない静寂が、より効果的に響いてくるんだろうな。

Kim Coganの作品を観ていたら、SNAKEPIPEも自分で撮影した写真を元に絵を描いてみたくなった。
チャレンジしてみようかな。(笑)

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