「驚くべきリアル」展鑑賞

【毎度お馴染み、MOMA敷地内の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

昨年よりずっとスペイン熱にかかっている。
あ、これ病じゃないからね。(笑)
スペイン映画がきっかけとなり、何かにつけてスペインをキーワードとして楽しんでいるのである。
東京都現代美術館でスペインのアート展があるよ!」
と教えてくれたのはROCKHURRAH。
当然のようにROCKHURRAHもスペイン熱に冒されているので、目を輝かせている。
2月15日から始まるから楽しみだね、と言い合っていたけれど、皆様ご存知のようにその日は大雪の影響で、とても外出するどころではなかったよね!
そしてその翌週、久しぶりに木場へと向かったのである。

前回行った日付を確認してみると、2011年11月の「ゼロ年代のベルリン展」だったみたい。
意外と長い間来館していなかったことに気付いてびっくり。
美術館情報はチェックしているつもりなので、SNAKEPIPEの好みの企画がなかったのかな。
木場駅からの長い道のりをテクテク歩きながら、横目で少し残った雪を確認する。
東京都現代美術館までの道のりは広大な公園があるので、散歩がてら歩くのは丁度良いんだよね。
そして日当たりが良いのか、本当に道の片隅にしか雪がなかったよ。
この日は晴れて気温も少し高かったので、歩くには良い日だったね!

「驚くべきリアル展」はスペインだけではなくて、スペイン語圏ということなのかラテンアメリカのアーティストの作品も展示されているとのこと。
スペインの現代アートにはなかなか触れる機会がないので、当然のようにHPでの紹介を読んでも知らない名前ばかり。
どんな作品に出会えるんだろう?

ガラス貼りの美術館は中に入ると陽射しで温められた空気が、少し暑いくらいだった。
この美術館はそんなに大勢の観客がいないことが特徴で、ゆったり鑑賞できる点がお気に入りなんだよね。(笑)
チケットを購入しようと売り場に歩いていく途中でまず目に飛び込んできたのが3体の人形だった。
「なに?あれ?」
一瞬で目が釘付けになる。
かなり不気味な雰囲気の人形で、少し近づいてみるとどうやら作品のようである。
まずはチケット買わないと!
それからじっくり鑑賞したいよね!

チケット購入後、受付の前にその人形たちはいた。
本来は一番最後の展示作品だったようだけれど、全くお構いなしにじっくり鑑賞する。
説明している文章によると、作者であるエンリケ・マルティの友人をモデルに、縮尺を変えて制作された作品とのこと。
その縮尺が変わっているといる点が、なんとも奇妙で不気味な雰囲気を醸し出している要因みたいだね。
頭部と手足だけが実物大の大きさで、体だけ小さい。
手や足の指の長さも実際とは違っている。
頭髪などは本物の毛を使っていたようで、かなりリアルな出来栄えなので、余計にギョッとしちゃうんだよね。(笑)
このアーティストの名前を記憶し、先に進むことにする。

次にまた足が止まったのは、エンリケ・マルティの作品の前だった。
実際にはエンリケ・マルティと知る前から、圧倒的な存在感の前に立ちすくんでしまった、というのが正しいのかもしれない。
壁一面を埋め尽くす、その大きさにまず驚いてしまう。
なんでもない家族のポートレートを組み合わせたような複数枚で構成された作品で、 タイトルはそのまま「La familia(家族)」である。
近寄ってみないと、それらが油彩画であることが判らないほど、精巧なタッチである。
そして更にじっくり一枚一枚を鑑賞していくと、ハッピーな家族の肖像だけではないことがわかってくる。
そのことに気付いてしまうと、あー、あっちにも、ここにも!という具合に気味の悪いポートレートに目を奪われる。 上の2枚のような絵が、ところどころに配置されているのである。
「幸せそうに見える家族だけど、本当はね」と内緒話をされているような、見てはいけないものを覗いているような罪悪感と、同時に秘密を知ってしまった優越感を持ってしまう。
そしてその暗部を描いた絵のなんとも魅力的なこと!(笑)
右側の人間なのか獣なのか判別し辛い生物が描かれている絵などは、大好きなフランシス・ベーコンの絵に通じる雰囲気もあるよね。
そして安穏そうに見える裏側には闇もあるんだよ、というテーマはまるで敬愛する映画監督デヴィッド・リンチを感じてしまう。

帰宅後、エンリケ・マルティについて調べたところ、自身のHPに作品がたくさん掲載されていて、見つけたのがこの作品。
タイトルはそのまま「Fire Walk With Me」(1999年)である。
これを観た時に「ああ、やっぱり!」と思ったSNAKEPIPE。
好きな物が似ているアーティストの作品はすぐにピンとくるものだからね!
「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」(1992年)の原題が「Fire Walk With Me」、監督はもちろんデヴィッド・リンチである。
「ツイン・ピークス」の虜になった人であれば、この赤い服を着た人物が誰なのか瞬時に判るはず。(笑)
「Fire Walk With Me」はシリーズになっていて、他にもローラの顔やデイル・クーパーの顔も描かれていた。
いいねえ!エンリケ・マルティ!
このアーティストを知ることができただけでも、「驚くべきリアル展」に行った甲斐があったよね!
この世界観をもっと知りたい。
エンリケ・マルティ展やらないかなあ。(笑)

展覧会について書く時にいつも言ってることだけど、現代アートのジャンルとしてビデオ作品が必ずあるんだよね。
展覧会によっては何分の作品なのかを表示していないことも多くて、ほとんどの場合は途中から鑑賞することになり、結局意味が解らないまま数分だけ観て立ち去ってしまう。
どんな展開になるのかどうしても知りたいと思うような作品に出会っていないというのも理由なんだろうけど。(笑)

ビデオ作品には少々辛口のSNAKEPIPEが、今回はじっくり鑑賞した作品があったんだよね!
Oedipus Marshal」(保安官オイディプス)という2006年の作品でアーティストはハビエル・テジェス。
残念ながらハビエル・テジェスについての情報が少なくて、自身のHPも見当たらないの。
ベネズエラ出身のビデオアーティストで、現在はアメリカ在住だというくらいで許してね。(笑)

「Oedipus Marshal」はギリシャ悲劇として知られる「オイディプス王」をウエスタン仕立てにした作品だった。
しかも登場人物が着けているのは、日本人には馴染みのある能面!
ギリシャ・ミーツ・ウエスタン・アンド・ノーガク!(笑)
なんとも不思議なミクスチャーだと思ってしまうけれど、これが全然違和感なく鑑賞できちゃったんだよね。

上の写真でも判るように、ウエスタンの衣装に能面、なかなか良いよね?
そして映画みたいにセリフが入った作品だったんだけど、その時々で表情が違ってみえるところもびっくり!
日本の芸能でありながら、詳しくは知らない能の世界だけど、やっぱり伝統芸能っていうのは能面1つ見てもさすがだな、と感じることができたのは大きな発見だね。
音楽も能楽の音を使っていたんだけど、それもしっくりしていて作品に合ってたんだよね。
外国人から日本文化を学ぶとは!(笑)
この作品は映画として観ても十分面白いと思うので、アートの世界だけではなくて娯楽作品としての上映も希望したいところだ。

スペインのアートを全く知らないまま、ちょっと賭けのように出かけた展覧会だったけれど、ピッタリとフィーリングにマッチする(死語)アーティストに出会えて嬉しかった。
エンリケ・マルティの今後の活動に注目だね!(笑)

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