映画の殿 第40号 アウェイデイズ

20201101 top
【本編で流れるバンド達とフーリガンどもの記念撮影。縮尺合ってないな】

ROCKHURRAH WROTE:

映画館まで観に行った作品をこの「映画の殿」というシリーズ企画で取り上げる事は今までなかったんだけど、何と2年半も自分で書いてなかったのに気づいたから、こっちの方で書いてみよう。

新宿シネマカリテで細々と上映中の「アウェイデイズ」を観たい、とSNAKEPIPEを誘ったのは珍しくROCKHURRAHの方だった。
映画に関する興味の範囲がとっても狭く、大作や話題作にはまず行かない。
よほどの事がない限り映画館まで観に行きたいとは言わないROCKHURRAHなので「珍しく」なのだ。

ネットで面白そうな映画ないかな?と探していて、この映画の予告編を見たら突然、初期ウルトラヴォックスの「Young Savage」がかかっていたから「こりゃ観るしかない」と単純に思い込んだだけの話。
公開日を待って出かけようと計画したが、週末に別の用事が入ってるし上映期間が短そうだし、それで平日の夜を選んで行ってきたのもウチとしては珍しい出来事。

新宿シネマカリテは駅前映画館と言ってもいいくらいにアクセス抜群の位置にある小さな映画館。
過去にはジョニー・サンダースの映画「Looking for Johnny ジョニー・サンダースの軌跡」を観に行ったけど、この時もROCKUHURRAHが行きたがって観たんだった。
その手の音楽映画が多いってわけか。
19:20からの夜の上映だったけど、客の入りは予想よりは多く、ただし映画館としては情けないくらいのボチボチでかわいそうになるくらい、この業界も厳しいなと思ったよ。
しかも客層のほとんどが何でこの映画に来たのかわからないようなタイプの人々で理解に苦しむ。
まあ「とんかつDJアゲ太郎」とか行かずにここを選んだだけでも良しとしよう。

「アウェイデイズ(Awaydays 2009年)」は英国の作家ケヴィン・サンプソンによる小説が原作の映画で、2009年の作品なのになぜか11年も経ってやっと日本で公開されたというもの。
1979年のリヴァプールを舞台とした破滅的な青春映画に仕上がっていて、この当時のパンクやニュー・ウェイブがふんだんに使われているのが売りとなってる。

タイトルの”Awaydays”はフットボールのサポーターがライバル・チームの試合に遠征する事が本来の意味なんだが、この映画の中で扱ってるのは熱狂的すぎてタチの悪いフーリガンども。だから遠征といっても試合そっちのけで相手チームのフーリガンと乱闘やらかすのが目的、サッカーの試合シーンは皆無というありさま。
そんな人はいないけどフットボール青春映画だと勘違いしてサッカー好きの彼氏と観に行かないように。

1979年、イギリスのマージーサイドにあるバーケンヘッドという街が舞台となっている。
有名な都市リヴァプールの対岸にある街だそうで、造船所があるらしい。
ROCKUHURRAHが育った北九州で言えば戸畑と若松みたいなものか?地域の人以外にはさっぱりわからん例えだったかな。

主人公カーティは公務員をやっている若者で父親や妹と同居しているが、どうやら母親はすでに他界している模様。
具体的に何をしているのかはわからなかったが、叔父さんが上司を務める役所みたいなところで仕事中に似顔絵描いたりしてて、何もお咎めがないといういい身分。
おまけにアートスクールにまた戻りたいと言ったら「そりゃでかした」みたいに言われるお気楽な環境だよ。

しょっぱなから言うのも何だがこのカーティ、顔立ちも設定もファッションも全然イケてるとは思わなくて(おしゃれな人が多かった1979年だからなおさら)、主人公なのにどうでもいいキャラ。
パッとしないけどもう少し存在感がある俳優なら他にもいるだろうに、と思ってしまうよ。

妹とも仲が良く、写真は(こっちの勝手な理由で)遅れてしまった誕生日だかクリスマスだかのプレゼントを給料日に一緒に買いにゆくシーン。
孤独で平凡で面白くなかろうけど、これだけ見てると問題ない生活で恵まれてる方だと思うよ。
妹は高校生くらいなのか、あまり描写は出て来なかったが彼氏の代わりにお兄ちゃんに甘えるような、まだ幼い感じがする。写真では1960年代に誕生したイギリスのアウトドア・ブランド、マウンテン・エクイップメントのダウン・ベストを着ているね。こんなどうでもいい事を映画評で語るのはROCKUHURRAHくらいか。

カーティは地元リヴァプールの売出し中バンド、エコー&ザ・バニーメンのライブ会場でエルヴィスという若者に出会い、友達になる。
この映画のもう一人の主人公エルヴィスはカーティよりは顔立ちもまともだし、服装や髪型はすごく若い頃のジュリアン・コープをイメージしたような感じ。
革のジャケットにセーターはいかにも1979年、ニュー・ウェイブ以降のイギリスのバンドでありがちなファッションだし、大きめのM-65とか肩章のついたミリタリーっぽい服装とか、この時代のリヴァプールで流行ったものだ。

劇中でエコー&ザ・バニーメンらしきバンドを演じてるのはラスカルズだとの事だが、うーん、1970年代と80年代ばかりを語るROCKUHURRAHだからこの辺の(2000年代)バンドについては知らん、興味ないとしか言えない。
見た目だけでもせめてもう少し似たのはいなかったのかと残念な気持ちになるよ。

これが本物のエコー&ザ・バニーメンで曲は「All That Jazz」ね。
1980年に出た1stアルバムに収録。

リヴァプール出身としては最も有名になったバンドで、一番最初の頃はドラムがなく、ドラムマシーンを使っていた。
コルグのドラムマシーンがエコーと呼ばれてて(何でかは不明)、それがバンド名の由来になったという話。
ドラムがいなかった初期の頃もすごく良くて愛聴してたもんだ。
レコーディングのテクニックを使わなくてもシンプルなコードだけでも、後世に残る曲を作れるという見本みたいなのが初期のバニーズ(80年代的略称)だった。
うーん、上の曲とは関係ない感想だったな。
名曲揃いの1stの中では地味な曲で、何でこの曲を敢えて選んだんだろう?と思ってしまうよ。

エルヴィスは「パック」と呼ばれるフーリガンの一員で、カーティはその集団の仲間になりたがっているという設定。
エルヴィスのツテにより「俺の友達」みたいな感じでパックに出入り出来るというわけだ。
つまらん願いだが、願いは叶ったね。

イギリスを語る時に誰もが労働者と中流階級の格差、隔たりみたいなものを言うが、大昔の「小さな恋のメロディ」でも坊っちゃんの主人公、労働者階級の娘(ヒロイン)、労働者階級の親友という構図があって、その中での恋や友情が難しかったのを思い出す。
この映画もその辺の格差友情をテーマにしてるんだろうが、そこまで階級差を感じるものでもなかったから「小さな恋のメロディ」の方がよほど心に響いたよ(大げさ)。
もう一つの大きなテーマはあるんだけど、ネタバレなしで書くつもりだからエルヴィスの心情はしまっておこう。

パックに属するのは労働者階級の頭悪そうな奴らばかり(全く迫力ないが)、30代で6人の子持ち男がリーダーという、見るからにどうでもいいような集団。
そんな中にアートスクールなど行ってたカーティが入って受け入れられるものか、というのがエルヴィスの見解だが、うん、その通り。
一見さんお断りのような排他的な集団なんだよね。
こういうヤンキーどもの中でいっぱしに認められるにはもっとバカでクレイジーな事をしなけりゃいけない。

無理してなのか本気でこういう事をやって「はけ口」にしたかったのかは不明だけど、カーティはどんどんエスカレートして暴力的になる。右は乱闘中にキレたカーティのクレイジーさを表した写真だが、本編ではもっと変顔を見せてくれるよ。
カーティとエルヴィスのフラストレーションがあまり描かれてなかったから、おとなしい人が急に暴れだした、単なる危ない人が主人公の映画にしかなってなかったのが残念。え?描かれてたけど読み取れなかっただけ?

乱闘シーンでかかるのがマガジンの「The Light Pours Out Of Me」だ。
1978年の1stアルバムに収録でずっと後にバウハウスのピーター・マーフィーがカヴァーしてたな。
サッカー・チームとしてはリヴァプールの宿命のライバルだと思えるのがマンチェスター・ユナイテッド。マガジンはその敵地(?)マンチェスター出身のバンドだね。
シングル1枚だけでバズコックスを辞めたハワード・ディヴォートがやってたバンドで、粘着質のいやらしいヴォーカルと重厚で妖しい雰囲気の演奏が魅力だった。この曲単独のライブ・クリップがなかったので途中から貼り付けてみたよ。
これだけ画面のデカさが違うけど、諸事情があるので気にしないで。
マガジンは素晴らしいバンドなのでこの映画で興味持った人がもしいたら、ぜひ全曲聴いて欲しい。

左の写真見てわかる通り、何でこんな軍団に属したかったのかわからんほどにカッコ良くないのがパックの面々。
「アウェイデイズ」の原作者も監督もこの時代に実際にこういう事をやってたらしいので、これがその当時のリアルな姿で間違いないんだろうがなあ。
モッズやOi!(スキンズ)、テッズなどと違ってライフスタイルと音楽、ファッションが一致した集団じゃないのは仕方ない。単に同じチームを熱烈に応援してるだけの集まりだからね。
サッカーだからアディダスの限定モデルのスニーカーというのはわかるけど、そしてみんな制服みたいに同じ服装してたのはわかるけど、主人公を含め俳優たちの着こなしが全然似合ってなくて、SNAKEPIPEもROCKHURRAHも「こりゃひどい」という事で見解が一致したよ。

日本で言えばヤッケまたはカッパってところだろうが、アノラックというプルオーバー型のマウンテンパーカーみたいなもの。
ピーターストームというメーカーのはイギリス軍も使ってた由緒正しいアウターなんだが、雨が多く傘をさしたくない人が多いイギリスでは大変に重宝するから、アクティブな若者に大人気となる。

音楽的に言えば80年代にスコットランドで発生したギターポップの一派をアノラック(みんな着てたのが由来)と呼んでいたり、その後にマンチェスターで大ブームとなったマッドチェスターというムーブメントの頃に流行ったスカリーズというスタイルもアノラックが重要アイテムとなる。
どちらにも言える事だが、いわゆるスカッとカッコ良いロック・ミュージシャンのファッションとはほど遠い、その当時としては冴えない格好だった。
ROCKHURRAHも一時期アノラックなギターポップを聴いて、アノラックな音楽を作っていたが、こんな格好はしてなかったもんな。

今はゴアテックスとかの防水アウターがものすごく普及して立派な街着になってるから、マウンテンパーカーとかのヴァリエーションのひとつとして、またアノラックが流行り物になってるみたいだね。
確かにゲリラ豪雨とかスタジアムや野外フェスとかで雨が降った時には役立ちそう。

話が大幅にそれてしまったが、こんな乱闘ばかりしてるバカな集団と切れたがっているエルヴィスは音楽や芸術を愛する若者で、パックの中では浮いた存在。
同じく音楽好きのカーティとはいい関係になれると思っていたのだが・・・。
カーティはなぜか知らないがそんなバカな軍団の仲間になりたがっていて「そのココロは?」と問いたくなるよ。
エルヴィスと「仲間になるな」「いや、フーリガン王に俺はなる」などと諍いを起こしながらも友情を育んでゆく(?)。

写真はリヴァプールに実在したレコード屋プローブに仲良く買い物に行くところ。
並みの「アウェイデイズ」評では決して教えてくれないROCKHURRAHならではの得意分野になるが、妙なところで考証がしっかりしているのがこの映画の(個人的には)評価出来る部分。
レコード屋のドアにはリヴァプールに実在した伝説のライブハウスEric’sのポスターが貼られててマニアならニンマリしてしまう。

エリックスは70年代後半から80年代に花開いたリヴァプールのニュー・ウェイブ・バンドの多くがホームグラウンドにしていたライブハウスで、デフ・スクールやビッグ・イン・ジャパンなどを元祖として、数多くの有名バンドが巣立って行った場所だ。
物語の1979年には「言い伝え」並みの伝説的バンド、クルーシャル・スリーから別れた3人がエコー&ザ・バニーメン、ティアドロップ・エクスプローズ、ワー!ヒートという偉大なバンドをそれぞれ立ち上げて、その後に人気となる。その夜明け前くらいの時代だ。
ただしクルーシャル・スリーなどと探しても発掘音源も出てこない。
ただ単に有名になったミュージシャンが学生時代に一緒にやろうと始めたバンドに過ぎず、インタビューとかで「昔こういうバンドやってたんだよね」くらいのシロモノ。実際にちゃんと活動してたかさえ怪しいのに、ここまで有名になったバンド名というのも珍しい・・・。
そういう意味での「言い伝え」というわけだ。

他にも80年代ニュー・ウェイブ好きなら誰でも知るデッド・オア・アライブやフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド、オーケストラル・マヌヴァース・イン・ザ・ダークなどなど、みんなエリックスのお世話になってるのは確か。
リヴァプール出身のバンドについて語っていたら「サタンタンゴ(7時間超えの長い映画)」が終わるほど。
実際は誰も知らんようなバンドがその何十倍もひしめき合ってたのが80年代リヴァプールの世界だ。

で、入ってゆくレコード屋プローブもリヴァプール好きにはたまらないプローブ・プラスというレーベルを持っていて、ちょっとマイナー系が多いが、メロトーンズやハーフ・マン・ハーフ・ビスケットなどは愛聴してたもんだ。愛聴多いな。
話がまた大幅にそれてしまったが、まともな映画評じゃなくてこの脱線こそがROCKHURRAHの書ける部分なのは確か。

この事をぜひ書いて欲しいという要望があったから書くが、映画の中で何回も出てくるのが頭突き。
レコード屋のシーンでも登場したんだけど、イギリスではポピュラーなケンカ術なのだろうか?不意打ちという点では有効だろうけど、これもまたフットボール文化の国ならでは。

エルヴィスが普段何をやってるのかは知らないが、途中で私物を売ってる古道具屋みたいな露店に立ってたから、きっとそういう仕事をしてるんだろうかね。ブラブラしてそうな割には意外といい部屋に住んでいるんだよね。
こんな出口のない生活を「いつ終わる?」とか、抜け出してベルリンに行きたいとか、彼らくらいの歳にもっと情けない四畳半の極貧暮らしをした我が身を思うと羨ましいばかり。
世の中には上も下(「男おいどん」とか「マイ・ディア・ミスター」のイ・ジアンとか)もあるからROCKHURRAHくらいでもまだマシな方なんだろうね。

写真中央に写ってるのが上に書いたリヴァプール・パンクの偉大な先駆者、ビッグ・イン・ジャパンのポスターで、これにもニヤリとしたROCKHURRAHだった。
このバンドが偉大なわけではなく、メンバーの大半が後の時代に有名になるという点で、80年代リヴァプール好きなら最重要だと言えるバンドなのだ。
「 From Y To Z And Never Again 」はたった2枚しか出なかった彼らの2ndシングルでROCKHURRAHも持ってたよ。
これまたリヴァプールを代表するZOOレーベルの記念すべき最初のシングルだったね。だからこんなに大きなポスターがあったのか。
本物が残ってたのか後から美術の人が作ったのか知らないが、この時代の音楽好きの部屋をうまく再現したものだ。
当時はものすごいヴィジュアルのジェーン・ケーシーがROCKHURRAHのアイドルで、Eric’sレーベルからの1stシングルも2枚も持ってたな。

エルヴィスの会話の中で「ダレク・アイのライブに行こう」と名前だけ出てきたのがこれ、リヴァプールの相当マニアじゃないと知らないマニアックなバンドがDalek I Love You。
後にティアドロップ・エクスプローズの主要メンバーになるデヴィッド・バルフェとアラン・ギルを中心にしたB級バンドだ。
かつてはROCKHURRAHも数枚持ってたが、錚々たるメンバーの割にはチープで、熱烈に好きになる要素がなかったな。
デヴィッド・バルフェは上に書いたビッグ・イン・ジャパンのメンバーでもあったけど、ブラーやシャンプーで有名なフード・レーベルのオーナーとして後の時代に名高い人だ。
Dalek Iには後のオーケストラル・マヌヴァース・イン・ザ・ダークのアンディ・マクラスキーもいたけど、複雑怪奇なリヴァプールの人脈をいちいち語ると「アンビアンス(上映時間720時間という世界一長い映画)」が終わってしまうほど(大げさ)。

後半になるとせっかく仲を育んだ二人の行き違いが増えて、さらにパック内での内紛、カーティの家庭内事情が情けない暴行事件にまで発展して、映画としては一番見どころとなる。この辺については敢えて書かないけどね。

ハナからまともな映画感想にはならないと自分で予想してたけど、ROCKHURRAHの書きたい部分が映画のテーマや物語ではなく、79年のリヴァプールや音楽について。興味の方向が違うので他の人の参考にはならないだろうな。

物語の冒頭、カーティが全力疾走するシーンで使われていたのがウルトラヴォックスの「Young Savage」、予告でも使われていたからこれがメインテーマとなるのかね。
映画の舞台となったリヴァプールとは特に関係なさそうだから、単に監督か音楽監督が当時好きだったから使ってみた、という感じかな?
元々タイガー・リリーというグラム・ロック寄りのパブ・ロック・バンドをやってたのがウルトラヴォックスと改名して、パンクの初期から活動してたバンド。
当時大ヒットしたチューブウェイ・アーミーのゲイリー・ニューマンが影響を受けたと公言して、そこから再評価されたけど、早すぎたニュー・ウェイブ・バンドだったね。
日本では三宅一生が出てたサントリーのCMで使われたので有名になり、ニュー・ロマンティックの時代に活躍した印象が強いけど、ミッジ・ユーロ加入前のジョン・フォックス時代が最高(ミッジ・ユーロもPVC2とかリッチ・キッズの頃は良かったけどね)って人も多いだろう。そんな初期ウルトラヴォックスの代表曲がこれ。釘を打つようなリズムと早口言葉のようなアグレッシブなヴォーカルに痺れるね。

過去に何度もジョン・フォックスを「エラの張ったオバチャンみたいな顔」とブログ記事で書いたのに、今はじめて自分で気づいたかのように「オバチャンみたいな顔だね」とSNAKEPIPEに言われてしまった。うーむ、人の記事全然読んでないな。

ライブハウスでカーティがナンパしようとした女の子が実はエルヴィスの幼馴染(?)だったというシーンで使われていたのがジョイ・ディヴィジョンの「Insight」だ。この曲は他のシーンやエンド・クレジットでもしつこく使われていたな。よほどこの曲が好きだったと見える。
「Insight」を歌ってるライブ映像がなかったから、これは誰かが他の映像と組み合わせて捏造したものだけど、一応動いてる映像が欲しかったんで我慢するか。イアン・カーティスの伝記映画「コントロール」のシーンが合成されてるね。
マガジンと同じくリヴァプールの宿敵、マンチェスターを代表するバンドで、今でもあちこちに名前が出てくるほど信者が多いね。
1979年はジョイ・ディヴィジョンがファクトリー・レコードから1stアルバムを出した頃で、誰もが熱狂・・・とまでは言わないが至るところで「すごいバンド」と評判になってた頃だね。
エルヴィスがジョイ・ディヴィジョンから特に影響を受けてたような言動もあったが、ROCKHURRAHも大昔に書いた記事にある通り、このバンドから連想する数々の思い出があるよ。

音楽的にも文化的にもこの当時の北九州に馴染めず疎外感を持っていた若き日のROCKHURRAH、映画のエルヴィスのように「この街を逃げ出したい」といつも考えていたもんだ。
楽しみは高速バスに乗って福岡まで一人でレコードを買いにゆくだけという孤独な少年だったが、そんな危険な精神状態の時に出会ったのがジョイ・ディヴィジョンだった。

関係ないけどROCKHURRAHが高1の時、直接知らない先輩が飛び降り自殺をしたというショッキングな出来事があった。
その先輩が綴った、世に出る予定のなかった文学作品が死後に自費出版されて、不謹慎だとは思うが興味本位で買ったものだ。
それから何十年・・・ROCKHURRAHの出た高校の人以外、誰も知らないだろうと思ったその人の遺作と日記が普通にアマゾンとかに売ってて、知ってる人も多数だと知り、とても驚いた。
山田かまちと一緒で17歳で夭折した作家として、普通に文学作品として語られているのだ。
逼塞感に満ち溢れたその人の詩を読むとイアン・カーティスと見事にオーバーラップしてしまう。
なんて事を思い出した次第。

ちなみにウチのブログにはじめてコメントを頂いたのがこの記事(上のリンク)で、北九州出身のミステリー作家、鳥飼否宇先生からのコメントだった事にSNAKEPIPEと二人で大喜びしたものだ。
それからも何度もコメントを頂いて、それを励みに14年も休まずブログを続けられた。
これもジョイ・ディヴィジョンやディス・ヒートにペル・ユビュといった音楽を、偶然同じ頃に同じ北九州で聴いてたという奇妙な「縁」から始まったんだな。
どこにも居場所がないような故郷の街だったけど、その窮屈さが懐かしくもあるよ。
いや、文脈的に今書くような話じゃないのは承知だけど、自分で当時に書いた事を読み返して懐かしむのも老化現象のはじまりなのか?

ブログの後半は映画というよりはROCKHURRAHのいつものパターンとなってしまったね。

全体として当時のニュー・ウェイブがふんだんに使われているところはいいけど、音楽がとても盛んなリヴァプールを舞台にした割にはご当地のバンドがあまり使われてなかったのが残念なところ。ポスターとかマニアックに用意したんだから余計にね。

最後に映画とは関係ないが、ライブ・クラブ、エリックスの歴史を振り返る映像で締めくくろう。
曲はジョニー・サンダースでこれまたリヴァプールとは特に関係ないけどな。ピート・ワイリーのWah!がこの曲をカヴァーしてたからそっちにしてれば良かったのに。

ネタバレを全然しないように書いてきたから映画後半の筋も全く触れてないけど、まあ明るく終わる雰囲気の映画じゃないのは予想通りだろうね。
カーティとエルヴィス、そしてパックの面々との関係がもっと描かれていたらもう少し映画としては見どころがあったんだろうが、そこまで深い絆もなかったところが逆にリアルな当時の姿だったのかな、と思うよ。

おそらく大ヒットするとは思えないし、公開が終わった後でDVDになったり、どこかで配信されるかさえ不明の映画だから、11年後でも観れて良かったよ。

それではまた、Ta-ra for now!(リヴァプール的表現で「またね!」)

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