宮永愛子展 くぼみに眠る海 鑑賞

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【ギャラリー入り口のポスター】

SNAKEPIPE WROTE: 

ミヅマアートギャラリーで開催されているのは「宮永愛子展 くぼみに眠る海」。
季節が良い頃はウォーキングで横を通っていたけれど、さすがに最近の暑さでは歩くのを躊躇してしまう。
一番近い市ヶ谷駅から向かうことにする。

前回ミヅマアートギャラリーを訪れたのは、2022年5月「パンとサーカス展」だったね。
あの時、感じの悪い受付に不快だったことを思い出しながら、勇気を出してギャラリーに入る。
チラ、と受付を見ると、前回の男と同じじゃないの!
ところが今回は、にこやかな笑顔を見せながら「どうぞどうぞ」とウェルカムの姿勢。
まるで別人のような対応に驚いてしまう。
今回は気持ちよく鑑賞できそうで良かったけどね!(笑)

宮永愛子について全く知識がないSNAKEPIPEなので、少し調べてみようか。

1974 京都市生まれ
1999 京都造形芸術大学芸術学部美術科彫刻コース卒業
2006 文化庁新進芸術家海外留学制度によりスコットランドのエディンバラに1年間滞在
2008 東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了
2011 第22回五島記念文化賞美術新人賞を受賞 
アメリカを拠点に活動する

東京と京都の美術大学2つを卒業しているんだね。
イギリスに留学したり、アメリカを活動拠点にしていた国際派。
現在は神奈川県在住のようだね。
作品は金沢21世紀美術館にもコレクションされているらしい。
それが画像の「waiting for awakening -chair」(目覚めを待って-椅子)で、2012年の作品だという。
今回の展示品ではなかったのが残念!
椅子はナフタリンで作られていて、周りを樹脂とミクスト・メディアが覆う。
作品に貼られたシールを剥がすと、ナフタリンが固体から気体に昇華し、椅子がなくなっていく仕組みなんだとか。
朽ち果てる前の造形を保存している、まさに「時間よ止まれ」状態の作品なんだね。
観た瞬間のインパクトに加え、理解しやすいコンセプト。
これはなかなか良いね!(笑)

今回の展覧会は4つのインスタレーションで構成されていたらしい。
ミヅマアートギャラリーには、作品ごとのキャプションが提示されていないので、SNAKEPIPEの推理が間違っていたらごめんなさい!(笑)
画像は「ひかりのことづけ」で「東京ビエンナーレ2020/2021」に出品されたみたい。
オシャレなホテルやレストランにディスプレイされていたら似合いそう。
ミヅマアートギャラリーでは、床に直置きされていたけどね。
ぶつかったり踏んだりしないように、気を付けて歩いたよ。(笑)

かわいい動物が並んでいたせいか、SNAKEPIPE以外にもお客さんがいたんだよね。
1人で来ている女性が2名、熱心に鑑賞していたよ。
これらの作品が、展覧会のタイトルになっている「くぼみに眠る海」なのかな。
ガラス製とのことだけど、SNAKEPIPEには墓地近くに点在する石屋が店先に飾っている置物と同じように見えたよ。
次の画像は最初はなんだか分からなかったけれど、いくつも展示されているうちに石膏型だと気付いたよ。
かわいい動物たちは、この型から制作されたんだろうね。
「くぼみに眠る海」は、この石膏型も含んだインスタレーションとされていた。
正式名称東山窪セーブル式石膏型だって。
宮永愛子の曽祖父が1929年頃、陶彫制作のために使用していたものだという。
京都の実家で、それら石膏型を改めて見つめ直し、もう一度作品に仕上げたという。

今回の展示の中で、一番気に入ったのがこれ。
革製トランクの中に鮎が泳いでいるんだよね。
恐らくこれは、一番最初の画像である椅子と同じように、ナフタリンで鮎が作られていて、周りが樹脂なのかもしれない。
水や自然の一部を切り取り、生命を瞬間冷凍したような感じ。
この作品はちょっと欲しくなったよ。(笑)

今回の展覧会は曽祖父へのノスタルジーがテーマだったので、全体的にロマンチックな少女趣味だった。
SNAKEPIPEは、少し居心地が悪くなったんだよね。(笑)
宮永愛子の違うタイプの作品も観てみたいよ。

ゲルハルト・リヒター展 鑑賞

20220724 top
【どんよりとした空をバックに看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE: 

ゲルハルト・リヒター展が開催されることは、5月に富士フォトサロンでチラシを入手した時から知っていた。
開催予定日は6月7日からで、整理券を配布するほどの人気だという。
いつ行こうか迷ってしまうね。(笑)
コロナも配慮し、夏休みになる前の夜に鑑賞することに決めたのである。

今にも降りそうな重い雲が空を覆う夕刻、ROCKHURRAHと竹橋に向かう。
東京国立近代美術館を2人で訪れるのは、2016年9月のトーマス・ルフ展以来6年ぶりのこと!
SNAKEPIPEは2019年12月の窓展から約3年だね。

竹橋駅に着くと、ついにパラパラと傘を使うか迷う程度の雨が降ってくる。
駅と美術館は5分もかからない距離なので、そのまま早足で美術館へ。
夕方のせいか、SNAKEPIPE命名の、いわゆる国立系(高齢のアート好き)が見当たらない。
目立ったのは年齢層低めのカップルや一人で来ている女性かな。
少人数で鑑賞することができるのは良いね!

館内の職員に訊いてみると、嬉しいことに2作品以外は全て撮影可能とのこと!(笑)
ここの美術館はトーマス・ルフの時もオッケーだったんだよね。
アーティスト側の意図なのか、素晴らしいよね!

いよいよ会場へ。
どうだ、と言わんばかりの、作品群が並んでいる。
リヒターの代表作といえる、アブストラクト・ペインティングのシリーズが壁一面に展示されている様子は圧巻だよ!
SNAKEPIPEは通常、作品とタイトルの両方を撮影することにしているんだけど、リヒターの場合は、作品名のほとんどが「アブストラクト・ペインティング」で、タイトルに重きを置いていないみたい。

キャンパスの大きさに違いがあって、並べて観ると大きいサイズのほうが迫力あるんだよね。
どうしても色合いが鮮やかな作品に目がいってしまう。
どの作品も素晴らしくて夢中になって撮影しているうちに、だんだん作品の区別がつかなくなってくる。
次第に落ち着いた色調の作品のほうが目立つようになってくるのが不思議。
載せた作品は「グレイ」。
タイトルがシンプルで、色も一色だけなのに、筆のタッチが魅力的な作品だった。
重ねる技法は同じでも、印象がまるで違うよ。

今回の展示の中で「これが一番」と思ったのが、2014年の作品「ビルケナウ」。
280cm×200cmという大型の作品が4枚展示されていた。
その隣には1944年にビルケナウ強制収容所で撮影された写真が並んでいる。
それら4枚の写真から制作されたのが、大型作品「ビルケナウ」だという。
強制収容所の写真が同時に展示されていなかったとしても、「ビルケナウ」からは独特の血生臭さや恐怖、哀愁を感じたSNAKEPIPE。
ROCKHURRAHも同様に不穏な空気を感じ取ったらしい。
この大作には圧倒されたよ!
デジタルプリントが向かい合わせに展示されていたのは、匂いやザラつきのないツルツルした表面だけの過去の記録といった意味合いなのかな。
記憶と記録の違い。
本物は油絵のほうで、プリントされた偽物と比べて観てみろ、というメッセージなのか。
陳腐過ぎ?(笑)

次の作品は少し時代がさかのぼって、1966年にシカゴで起こった殺人事件をもとに描いた8人の女性たちを、1971年に写真パネルとして制作したものだという。
恐らく彼女たちは、事件の被害者なんだろうね。
描いた時と写真にした時の解像度の違いなのか、少しブレてコントラストが付き過ぎていて、不気味な雰囲気だよ。
ボルタンスキーやトーマス・ルフは影響を受けたのかもしれないね。

展覧会の最後には、ドローイングが展示されていた。
タイトルがすべて日付で、描いた日を表しているみたい。
ちなみに載せた作品は「2021年10月5日」ね。
2020年9月に鑑賞した「オラファー・エリアソン展」の「クリティカルゾーンの記憶」みたいな線だったよ。
SNAKEPIPEやROCKHURRAHの誕生日に描かれた作品はないかな、と探してみたけれど見つからなかった。(笑)

常設展でもリヒターの作品を観ることができるんだよね。
自ら作った木製のオブジェを撮影した、1969年の作品群が展示されていた。
1932年生まれのリヒター、37歳頃になるんだね。
写真作品も面白かったよ!
そして国立近代美術館が所蔵しているリヒター作品「赤」も展示されている。
「赤」は制作プロセスが写真に記録され、公開されているという。
図録に製作途中のキャンバスが載っているけれど、全く完成形が見えないんだよね。
どれだけ色を重ねていくのか想像してみようか。(笑)

白髪一雄の時にも感じたことだけど、迫力がある作品ばかりが並んでいると、一点ごとの凄味が軽減されてしまうんだよね。
別のアーティストの作品の中に、一つの作品だけが展示されていると、その特異性が際立つのかもしれない。
遠くから観ただけでリヒターの作品だと判断できる個性的な作品群を、100点以上も鑑賞することができて良かったよ!
行って良かった展覧会だったね。(笑)

シリアルキラー展2022 鑑賞

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【ヴァニラ画廊入り口のポスター】

SNAKEPIPE WROTE: 

2016年6月に鑑賞した「シリアルキラー展」は、その後も何度か展覧会を開催していたようだね。
シリアルキラー展2022」の情報を知らせてくれたのは、6年前同様に長年来の友人Mだった。
友人MとSNAKEPIPEは鑑賞している展覧会だけれど、ROCKHURRAHは未鑑賞。
観てみたいというROCKHURRAHと一緒に、狂気の世界を再び覗き見ることにしたのである。

以前は銀座方面から歩いたはずのヴァニラ画廊だけれど、銀座8丁目に位置しているので、ほとんど新橋なんだよね。
今回は新橋から向かうことにする。
サラリーマンの街として有名な新橋で降りるのは、乗り換え以外では初めてかも。
心なしか銀座とは空気が違う感じがするよ。

蒸し暑くて、たまに日差しがあると体感温度が上がる。
ヴァニラ画廊は親切に、画像付きで道案内を載せてくれているので迷わないで到着!
オンラインチケットを予約しているので、チケットを提示しようとネットにつなげようとしたけれど、ヴァニラ画廊が地下2階のためか電波が入らないんだよね。
画廊側も心得ていて、名前を言うことで予約確認してくれる手際の良さ。
テキパキしているのは良いね!(笑)
コロナの関係で人数制限をしていて、1時間ごとの完全入れ替え制なので、6年前よりは快適に鑑賞できそう。

すでに並んでいるお客さんは若い女性2人組。
後ろに並んだのは40代くらいのカップル、次にはまた若い女性。
おそらく1時間に10名程度のお客さんだけ入場させているのかな。
これもまた6年前と同じだけど、「いかにも」な雰囲気のお客さんは見当たらない。
アイドルに歓声を上げているように見える女性たちなのに、シリアルキラーに興味があるとは。
人は見かけによらないんだね。
「いかにも」に見えた1位は、やっぱりROCKHURRAHだろうね。(笑)

いよいよ入場。
ヴァニラ画廊はAとB、2つの展示会場があり、所狭しと作品が並んでいる。
10名程度の入場でも、作品の前で立ち止まりじっくり鑑賞する人がいると、相当苦労して回避する必要がある。
シリアルキラーがどんな犯罪を犯したのかを説明する文章をすべて読むと、「じっくり」になっちゃうんだろうね。

6年前も今回も、撮影はすべて禁止。
カタログからの転載も駄目という厳しい条件のため、これから先の画像は別の場所で見つけた「シリアルキラー展」には展示されてなかった作品なのでご了承ください。

ヘンリー・リー・ルーカス(Henry Lee Lucas)

娼婦だった母親から虐待を受けながら育つ。
1983年に逮捕され、11人殺害の有罪判決を受ける。
逮捕後にFBIに協力していたことから「羊たちの沈黙」のレクター博士のモデルの一人と言われる。2001年、獄中で病死。

「シリアルキラー展」ではルーカスの自画像が展示されていた。
その絵は、左の画像とは似ても似つかない、穏やかな表情をした人物なんだよね。
シリアルキラーが描いたと言われなかったら、「バッド・アート展」に紛れ込んでいてもおかしくない雰囲気。
左は邪悪な存在そのもので、とても怖い絵だよね。
まさにシリアルキラーを表現しているので、「やっぱり!」と納得できてしまう。
自画像の時よりは格段に腕前が上達しているので、獄中でたくさん描いていたのかも。
育った環境が劣悪過ぎているので、違う家庭に生まれていたら、別の人生を歩んでいたかもしれないね。

ハーバート・ウィリアム・マリン(Herbert William Mullin)

高校時代には「将来最も成功する人物」に選ばれるほど、明るく人気があるスポーツマンだったという。
薬物中毒の果てに統合失調症となり、1970年代初頭に13人を殺害する。
アインシュタイン博士からの命令で大地震や自然災害から人類を守るためだった、と主張する。
現在も服役中で、2025年には仮釈放の資格がある。

マリンには「連なる山」の絵が多く、今回も青と白を使った作品が展示されていた。
アーティストが何枚も同じ主題の作品を描くことがあるのと似てるのかな。
絵だけを観る限りでは、薬物や統合失調症の影響は見受けられないように感じるよ。
構図もシンメトリーに近いし、光と影も正確に捉えられているよね。
2025年に仮釈放されたとしたら、マリンは78歳くらい?
1973年から50年以上獄中にいた後、社会生活を送ることができるのか。

ウェイン・ロー(Wayne Lo)

1974年台湾生まれのローは、パイロットの父親とバイオリン指導者の母親という恵まれた家庭環境で育つ。
若干7歳でバイオリニストとしてデビュー、音楽もスポーツもできる成績優秀な生徒だったという。
1992年、大学で銃を乱射、教授と学生を殺害し、4人に重症を負わせる。
現在も服役中。

シリアルキラーという定義からは、少し外れているように感じるローだけど、「シリアルキラー展」に入っていたので、作品を載せてみよう。
ローが台湾系アメリカ人というのが、作品観ても分かるよね。
シリアルキラー展で鑑賞したのは、人物の顔写真に刺繍を施したものだったけれど、載せた画像はドラゴンを美しく刺繍している。
写真にミシンをかけるアートはどこかで観たことあるけれど、印画紙にここまで精巧な刺繍をするとは驚き!
頭脳明晰で音楽もスポーツも万能だったのに、どこで間違ってしまったんだろうね。

ハドン・クラーク(Hadden Clark)

1970年代半ばから1993年の間に2名の女性を殺害。
他にも殺人を自供しているが起訴にはいたっていない。
殺害後食べていたことを証言している。
現在は矯正施設に収監中。

まるで小学校に通う女の子が描いたような絵。
これをシリアルキラーが描いたと聞くと、印象がまるで違うものに変化してしまう。
クラーク自身が少女を好んでいたせいか、にこやかに笑う少女ばかりをキャラクター化して描いているんだよね。
そして特徴的なのが、手話をしている少女を登場させること。
クラークの署名の他に、「Nikayla(ニカイラ)」というクラークの分身の署名も加えることがあるという。
クラークの作品は、Serial Killers Inkで購入できることが分かったよ。
大量に在庫があるらしく、2つで$50だって。
買ってみる?(笑)

オーティス・エルウッド・トゥール(Ottis Elwood Toole)

6件の殺人事件で有罪判決を受ける。
ヘンリー・リー・ルーカスと共謀して30人から50人の殺害を自供。
1996年刑務所内で病死。

ルーカスの絵こそ、まさにシリアルキラーが描いた絵として認識されるだろうね。
稚拙だけれど残酷に見える、いかにもシリアルキラーだから。
トゥールの顔も、出会った瞬間から悪人だと分かる顔立ちなので、この人物ならこの絵を描くだろうと予想できるほど。
育った環境が劣悪で、精神障害をわずらっていたという。
教育や躾、家庭環境がトゥールに影響を及ぼしていたみたい。
時代が違っていたら、別の未来が開けていたかもしれないよね。

6年前と2022版を見比べたことになるけれど、印象としてはさほどの違いはなかったように思う。
シリアルキラーと一般大衆に、それほどの違いがないんだよね。
非常に絵が上手かったり、筆跡が几帳面な素人なんて、世間にはたくさんいるし。
本当に紙一重の世界だなと感じたよ。
どこかで、ほんの少しだけ違ってしまった方向が、どんどん思いもよらぬ世界に歩を進めてしまったような。

6年前にはHN氏だけしか書かれていなかったけれど、2022版にはH.Nakajimaと記されていた。
なかじま氏は、ずっとコレクターを続けていることが分かった。
人間像への興味ゆえ、だという。
答えが見つかることはあるのかな?
また何年後か、シリアルキラー展に行ってみたいと思う。

ベイビー・ブローカー 鑑賞

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【TOHOシネマズ六本木の看板】

SNAKEPIPE WROTE: 

数年前より韓国映画やドラマをたくさん観ているROCKHURRAH RECORDS。
邦画や日本のドラマは全くといって良いほど知らないのに、韓国の俳優は詳しくなってるんだよね。(笑)
カンヌ国際映画祭で最高賞であるパルム・ドールを獲得した「万引き家族」の是枝監督が、韓国人俳優を使った映画を制作していることを知る。
タイトルは「ベイビー・ブローカー」。
そうそうたる韓国俳優陣が出演しているので、観に行くことにする。

以前より長年来の友人Mは韓国好きで、何度も韓国旅行に行き、ドラマや映画などにも詳しい。
音楽も聴いていて、最近はBTSにハマっているとか。(笑)
そんな友人Mと共に「ベイビー・ブローカー」鑑賞の約束をする。
前回映画館で鑑賞したのは「整形水」だったので、またもや韓国モノになってしまったね!

映画館を六本木のTOHOシネマズにして、最初にランチ!
久しぶりにインドカレー屋「モティ」へ。
「美味しい!」
「モティ最高!」
などと言いながら、モリモリ食べて満腹になってしまった。
ナンはやっぱり美味しいね!

いよいよ映画館へ。
公開から約2週間が過ぎてからの鑑賞になったため、お客さんの入りは少なかったよ。
周りに程よいスペースがあったので、快適だね!
そして映画が始まった。

ここで「ベイビー・ブローカー」のあらすじと予告トレイラーを載せておこう。

古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョン(ソン・ガンホ)と、〈赤ちゃんポスト〉がある施設で働く児童養護施設出身のドンス(カン・ドンウォン)。
ある土砂降りの雨の晩、彼らは若い女ソヨン(イ・ジウン)が〈赤ちゃんポスト〉に預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。
彼らの裏稼業は、ベイビー・ブローカーだ。
しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づき警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく白状する。
「赤ちゃんを大切に育ててくれる家族を見つけようとした」という言い訳にあきれるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。
一方、彼らを検挙するためずっと尾行していた刑事スジン(ぺ・ドゥナ)と後輩のイ刑事(イ・ジュヨン)は、是が非でも現行犯で逮捕しようと、静かに後を追っていくが…。 (公式サイトより)

 

映画は雨が降る夜のシーンからスタートする。
その雨降りの様子は、まるで「パラサイト」みたいなんだよね。
そこに長い階段があり、今度は「ジョーカーか?」と思ってしまったSNAKEPIPE。
全体的に暗い画面が続き、一瞬眠りそうになってしまう。
インドカレーで満腹になり、空調が心地良かったからね。(笑)
鑑賞後に分かったのは、なんと友人Mも途中で寝てしまったということ!
「ベイビー・ブローカー」観る前には、たくさんご飯食べないほうが良いかもよ?

ところどころ、寝てしまったけれど、登場人物ごとに感想をまとめていこう。
※ネタバレはしていないつもりですが、未鑑賞の方はご注意ください。

主人公サンヒョンを演じたソン・ガンホ
「ベイビー・ブローカー」でカンヌ国際映画祭男優賞に輝いたことは、ニュースでもやってたよね。
本当は「パラサイト」で主演男優賞のほうが良かったんじゃないかと思ってしまった。
役どころは似てるからね。(笑)
韓国を代表する名優で、ROCKHURRAH RECORDSはソン・ガンホが出演している映画はほとんど観ているかも。
最初はラフィン・ノーズのポンに似てるところから注目したんだけどね。(笑)
社会の底辺を生きる人情深い人物を演じさせたら、ソン・ガンホの右に出る人はいないんじゃないかな?
「ベイビー・ブローカー」のサンヒョンは、ピッタリだったね。

ドンス役のカン・ドンウォンは、どこかで見たことあると思っていたら「新感染半島 ファイナル・ステージ(原題:반도 2020年)」の主人公を演じた俳優だったんだね。
自らも孤児で児童養護施設出身なのに、サンヒョンの「赤ちゃん売買」に手を貸している。
記憶が定まらない赤子の時に、親切な両親の元で過ごすほうが幸せになれるかもしれない、ということなのかな。
産んだ子供が必要ない人と子供が欲しい人をつなげる役割を果たすことは、もしかしたら皆がハッピーになれることなのかもしれない。
ただしお金が絡んでくると、それは人身売買という罪になってしまうんだよね。

人身売買の現場を押さえようと、目を光らせている女刑事スジンを演じたのはペ・ドゥナ
刑事の役といえば「秘密の森」を思い出してしまうけれど、「ベイビー・ブローカー」では活発な動きは少なくて、食べてるシーンが多かったような?
是枝監督とは「空気人形(2009年)」でタッグを組んだ経験があるんだね。
ペ・ドゥナが出演している映画も色々観ているはずなのに、「空気人形」は未鑑賞だよ。
いつか見てみよう!

梨泰院クラス(原題:이태원 클라쓰 2020年)」で、トランスジェンダーのマ・ヒョニを演じたイ・ジュヨンが女刑事スジンの後輩として登場していた。
ショートカットのイメージが強いので、画像のように髪が長いと別人だよね。(笑)
スジン同様、食べているシーンが多かったよ。
「梨泰院クラス」仲間のリュ・ギョンスも「ベイビー・ブローカー」に出演していたので、同窓会になったかな?

子供を赤ちゃんポストに置き去りにする若い母親を演じたのはイ・ジウン
歌手として活動する時にはIUと名前を変えているんだとか。
韓国では老若男女問わず、絶大な人気を誇り「国民の妹」と称されているという。
ちなみに「梨泰院クラス」でパク・セロイを演じたパク・ソジュンは「国民の男友達」と言われているんだとか。
「国民の〇〇」とニックネームをもらうことがスターの証なのかも?(笑)
ROCKHURRAH RECORDSでは「マイ・ディア・ミスター」でお馴染みのイ・ジウンなので、ドラマの挿入歌以外はあまり知らないかも。
イ・ジウン演じるソヨンも、幼い頃に孤独だった経験を持つ女性なんだよね。
ちょっと茶髪で、不貞腐れたような表情が役柄にピッタリだった。

「ベイビー・ブローカー」では脇役にも知った顔を発見したよ!
椿の花咲く頃」「愛の不時着」などに出演している、名バイプレイヤーのキム・ソニョン(画像右)。
キム・ソニョンが出ると、一気に話が面白くなるんだよね。
画像左は「マイ・ディア・ミスター」で三兄弟の三男ギフンを演じたソン・セビョク。
映画鑑賞後に友人Mから指摘されて気付いたよ!

「マイ・ディア・ミスター」からはもう一人、山にこもって僧侶になったドンフンの友人ギョムドクを演じたパク・ヘジュンも出演していたよ。
これで「マイ・ディア・ミスター」からは3人出ていたことになるんだね。
他にもたくさんの「見たことある」俳優が出演しているので、誰がどのシーンにいるのか探す楽しみもあるかも。
SNAKEPIPEと友人Mは、時々寝ていたので完全じゃないけどね。(笑)

映画が終わって劇場をあとにする時、前を歩いていた女性2人組が
「是枝色が強すぎ!」
と話していたのが聞こえる。
その感想は、すごくよく分かるよ!(笑)
はっきり言ってしまうと「万引き家族」と趣旨が似てるんだよね。
血の繋がりがなくても家族になれるよ、みたいな感じ。
是枝監督の「あざとさ」も見え隠れして、少し冷めた目で観てしまった。
SNAKEPIPEの少し離れた左で鑑賞していた女性は、映画が終わる頃に号泣してたので、感動を覚える人もいるみたいだよ。

豪華な韓国俳優陣目当てで鑑賞したので、目的は達成できたよ!
ストリーミング配信されたら、ROCKHURRAHと一緒に観ようと思う。
満腹にならないように気を付けることを忘れずに。(笑)