アナザーエナジー展:挑戦しつづける力 鑑賞

20210718 top1
【会場入口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

森美術館で開催されている「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」を観に行こう、と長年来の友人Mから誘いを受ける。 
展覧会は9月26日までの日程だけど、いつ開催中止になるか分からないからね。
鑑賞したい企画は早目に行くことにしたのである。

梅雨がまだ明けていない7月、当日はくもり空。
天気は不安定なので、ゲリラ豪雨が発生してもおかしくない状況の中、六本木に出かける。
実際その前日にはゲリラ豪雨により道路が冠水した、なんてニュースが流れていたんだよね。
雨でも大丈夫な防水タイプのブーツを履いて出発!
この日はほとんど雨は降らなかったけど、備えあれば憂いなしだからね。(笑)

チケット予約制になった森美術館に来るのは初めてかも。
以前は行列していた場所はガランとして、係員との接触なく、予約したQRコードを読み取らせるだけで入場可能になる。
SNAKEPIPEは友人Mとの2枚分を予約していたので、機械で紙チケットに交換してからの入場だった。
非接触が徹底されているし、係の方が、とても丁寧でわかりやすい説明をしてくれたことに好感を持った。
最近では、接客業に就いている人に腹が立つことが多いので、森美術館のスタッフは素晴らしいと感じたよ!
さすが森ビルだよね。(笑)

入場者数を制限しているため、展覧会も全く混雑なく鑑賞することができる。
これから先は、ずっとこうなっていくんだろうね。
観客が多過ぎて、人の頭の隙間からやっと作品の一部を観ることができた「没後150年 歌川国芳展」 のような混雑ぶりは辟易だったから。
コロナの影響で、良いこともあるんだね。

いよいよ会場へ。
森美術館は、一部を除いて撮影オッケーなんだよね!
バシバシ撮りましょう。(笑)
「アナザーエナジー展」は、世界の女性アーティスト16人の作品が展示されている。
SNAKEPIPEが感銘を受けたアーティストについてまとめていこうかな!
鑑賞した順番に紹介していこう。

アンナ・ベラ・ガイゲルは1933年、リオ・デ・ジャネイロ生まれ。
今年88歳になるんだね。
今回の「アナザーエナジー展」は、ベテランの、つまりは高齢の女性アーティストを特集しているので、80代は当たり前。(笑)
驚くのは、皆様活動を続けているアーティスト、ということ!
ガイゲルの2021年の作品も展示されていたしね。
載せた画像は、1969年制作のコンピューターで作成した自画像。
小さくて分かりづらいと思うけど、アスキー・アート、つまりアルファベットや記号で顔が出来上がっているんだよね。
当時は斬新な手法だったんじゃないかな?
ガイゲルはシルクスクリーンやコラージュなど、様々な手法で作品を制作している。
映像も手がけていて、会場で流されていたよ。
右の画像は1978年制作の「ローカライゼーション」という作品。
タイトル画面で目を引いたのが「musica Kraftwerk」の文字。
音楽がクラフトワーク! (笑)
残念ながら会場では音が出ていなかったので、どんなBGMだったのか不明だけど。
ガイゲルの作品のタイトルが「幾何学的なブラジルの在り方」や「方程式」など、女性のまろやかさというよりは、理知的で強くカッコいいところが特徴なんだよね。
そうしたところも含めて、好きなタイプのアーティストに出会えて嬉しいよ!

エテル・アドナンは1925年ベイルート生まれ、現在96歳!
詩人で小説家、哲学者でありアーティストだなんて、どれほど才能に溢れた女性なんだろうね? 
フランス語、トルコ語、ギリシャ語と英語も話せるという才女は、現在も創作を続けているという。
美しい色彩の作品群に目を奪われる。
並べて飾りたくなるよ。
これらの作品は2017年から2018年に制作されたものだというので、アドナン93歳というから驚いちゃうよ!
1929年生まれの「水玉女王」草間彌生も負けていられないよね。 (笑)

アンナ・ボギギアンは1946年カイロ生まれの75歳。
その年令を若い、と感じてしまうのはSNAKEPIPEだけ?(笑)
大きなインスタレーションのタイトルは「シルクロード」なんだよね。
鏡を床にして、ロープで吊り下げられているのは、「絹織物」に携わる人達みたい。
ボギギアンは、世界各地の文化や歴史を題材に作品制作を行っているという。
絵画作品では富岡製糸場を題材にした作品があったよ。
他の国をテーマにした作品も観てみたいね。

続いては1942年東京生まれの宮本和子。
日本人アーティストなのに、SNAKEPIPEは初耳だよ。
どうやら1964年以降、ニューヨークを活動拠点にしているという。
画像は1979年の「黒い芥子」。
壁や床に刺した釘に糸を張った作品なんだけど、これが素晴らしいのよっ!
見つめ続けていると、意識がどこか遠くに飛んでいきそうなくらい。
だから「芥子」なのか?(笑)
右の作品も糸と釘の作品で、使用された釘は300本以上とのこと。
「黒い芥子」には1900本以上の釘が使われているそうなので、再現するのが大変だろうね。
シンプルなのに、インパクトがある作品に目が釘付け。
釘だけに?(笑)
糸を使った作品で思い出すのは、2019年9月に鑑賞した「塩田千春展:魂がふるえる」 だよ。
塩田千春の糸は混沌だけど、宮本和子は整然とした構築とでもいうのか。
同じ素材でも印象は正反対だね。

続いてはミリアム・カーン。
「アナザーエナジー展」のフライヤーに使用されているのはカーンの作品なんだよね。
1949年スイス生まれ、現在72歳。
カーンのブースで作品を目にすると、グッと引き込まれる。
実はフライヤーの絵を観た時には、なんとも思わなかったんだけどね。(笑)
画像は2018年の作品「描かれた」。
どういった状況なのか不明だけど、黒い空に赤い線が不気味に見える。
女性2人は、裸体で逃げている途中なのかもしれない。
なんとも不穏な空気に包まれた不思議な印象の作品だよね。
カーンの作品を観ている時に感じたのは「リンチの作品に似ている」ということ。
次の作品、2004年の「夢で見た図書館」は、夢というフレーズと、赤い建物がいかにもリンチっぽいんだよね。(笑)
友人Mに話しかけると、同じことを思っていたそうだ。
カーンの意図を知らなくても、魅力的な作品だと感じたよ。
カーンの作品を多く所蔵しているのが六本木にあるWAKO WORKS OF ARTのようで、常設展を開催するお知らせが出ている。
これも是非行ってみたいね!

ベアトリス・ゴンザレスは、1932年コロンビア生まれの89歳。 
画像上は「縁の下の嘆き」で2019年の作品。
首都ボゴダの街中にポスターを装って貼られたという。
かわいい作品かと思いきや、内戦の犠牲者を悼む市民の姿とのこと。
この作品がプリントされたマグカップを購入しなかったことを悔やみ、帰宅後通販で注文したSNAKEPIPE。
いいな、と思った時に買わないと駄目だね。(笑)
下は「悲嘆に直面して」という2019年の作品。
どちらも2年前の制作だって。
80代になっても、政治的な主題を通してメッセージを発信し続けている姿に感服するよ!

アルピタ・シンは1937年インド生まれの84歳。
とてもカラフルで、画像下の作品は、まるでメキシコのフリーダ・カーロを思わせるタッチじゃない?
絵の中に文字や地図が描かれていて、物語になっているみたい。
タイトルは「私のロリポップ・シティ:双子の出現」で、2005年の作品なんだよね。
画像上は、2015年の「破れた紙、紙片、ラベルの中でシーターを探す」。
横幅が約3m程の大きな作品なんだよね。
作品の右側に、まるで餓鬼のような邪悪な存在が人を襲っている場面が描かれている。
これらは若い女性が襲われるインドの現状を表現しているそうで、とても怖い作品だったよ。

最後も日本人アーティストね。
三島喜美代は1932年大阪生まれの89歳。
先に書いた宮本和子同様、初耳のSNAKEPIPEはモグリなのかも。
長く創作を続けている日本女性アーティストを知っただけでも、来て良かった展覧会だよ。
そして2人とも好みのアーティストなんだよね。(笑)
三島喜美代の作品は、観ただけでは意味が分からないかもしれない。
実は陶やセラミックで制作された「ゴミ」なんだよね。(笑)
流れていく情報や消費社会へのアイロニー、などと意味を解釈しなくても、観ただけですごいと思う作品だよ!
画像下は1965年制作の「夜の詩 Ⅰ」で、新聞や雑誌をコラージュした作品ね。
1950年代にフォト・コラージュの作品を制作していた岡上淑子の「沈黙の奇蹟」でも、外国の雑誌を使用していたことを思い出すよ。

世界のベテラン女性アーティスト16人が一同に会した「アナザーエナジー展」、見応え充分だった。
年齢を言い訳にせず、創作を続ける意志の強さ、枯れることのない創造意欲に感銘を受けたSNAKEPIPE。
全く知らなかったアーティストの作品を鑑賞することができて良かった。
やっぱり森美術館の展覧会は行かないとね、と友人Mと語り合ったよ。(笑)
次はどんな企画なんだろう?
サービスも展覧会の質も高い、森美術館に期待だね!

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