創造と破壊の閃光 鑑賞

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【毎度お馴染み、ジャイルギャラリーの入口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2024年9月の「ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展」以来、約9ヶ月ぶりにジャイルギャラリーに行ってきた。
現在開催されているのは「創造と破壊の閃光」展で、企画と構成を担当しているのは飯田高誉さん。
飯田さんの企画は難解で観念的なものが多いけれど、デヴィッド・リンチ好きという共通項があるため、できるだけ足を運ぶことにしてるんだよね!
よく晴れた真夏並みに暑い日、ROCKHURRAHと表参道を闊歩したのである。

表参道を原宿方向に歩くと、いつもより少し人が少ない気がする。
GYREに到着し、ギャラリーに向かうと一人もお客さんがいないよ。(笑)
いつも通り撮影許可をもらい、鑑賞しながら撮影していく。
ゆったり観られて良かった!
今回は4人の女性アーティストの作品が展示されているんだよね。

4人の中で最も知名度が高いのは、世界のクサマ、ご存知、草間彌生!(笑)
遠くからでも草間彌生の作品は目立つよね。
美しいブルーがバックの「永遠の希望」(画像左上)や、ピンク色が鮮やかな「求道の輝く星は宇宙のかなた、求めれば求めるほど光り輝くのだった」(画像右下)など、大型の作品が展示されている。
制作年が2015年から2020年になっていて、90歳を超えても精力的に活動していることが分かり嬉しくなるよ。
「かぼちゃ」や「ドット」はグッズになっているのを見かけるけど、こうした作品をテキスタイルにしてくれたら良いのにね?(笑)

三島喜美代の作品は、2021年7月の「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力」で鑑賞したことがあり、感想を書いているね。
「アナザー・エナジー展」は、長年作品制作を継続している世界の女性アーティストを知ることができた素晴らしい企画だったっけ。
そこで宮本和子や三島喜美代という日本人アーティストを初めて知ったSNAKEPIPE。
三島喜美代の作品は、消費社会で出たゴミを陶にシルクスクリーン印刷して制作しているんだよね。
じっくり近くで観ても本物と区別がつかないほど、精巧に作られているよ!

三島喜美代のコラージュ作品も展示されていた。
「アナザー・エナジー展」でも1960年代の作品を鑑賞したよ。
今回展示されていたのは、いつ制作されたものだったんだろう。
黒色がシャープで、カッコ良い作品だね。
残念なことに三島喜美代は、2024年6月に91歳で亡くなったという。
革新的な作品を制作している日本人女性アーティストの訃報は悲しいね。

坂上チユキは、極細の筆で描かれた水彩や顔彩を使用したドローイングが特徴のアーティストだという。
ものすごく細かく線が描かれているよ。
色調をドギツくしたら、サイケデリック・アートのような雰囲気。
「5億9千万年前プレカンブリア紀の海に生を受けた」という坂上チユキは、その後大気が形成された、シルル紀時代の鮮烈な空と海の青の記憶を描いているらしい。
古代生物や神話に登場する幻獣などがモデルだと説明しているサイトを知ると、謎めいた流線型のヒントになりそうだね。

展示作品にはキャプションがなかったけれど、載せた画像は恐らく「辺境にて」という遺作の油彩画。
2017年に制作されたみたいだね。
青色の濃淡を繰り返し少し盛り上がった細かい点描は、執拗なほどだよ。
古代の海に海洋生物の細胞を一つ一つ描き出しているような感じかな?
点を繰り返すところは、草間彌生に通じる雰囲気だね。
初めて坂上チユキの名前を知り、作品を鑑賞することができて良かった!

ジャイルギャラリー入口入ってすぐに展示されていたのは、「方舟はもう現れない」というタイトルの作品。
谷原菜摘子も初見のアーティストだよ。
1989年埼玉県生まれで京都市立芸術大学でアカデミックな教育を受けているという。
ベルベットの布地に油彩やアクリルなどを使用して、作品を制作しているんだとか。
少女マンガみたいに、お目々キラキラの少女たちが不気味に見えるのは、バックの黒の効果かもしれないね。
笑みを浮かべながら水没していくように見える少女(もしくは人形?)たち。
抱きかかえられているのは、もしかしたらアーティストご本人で、自画像かもしれないと思ったよ。

展覧会の最後に展示されていた2枚は、物語性があり想像力を刺激してくれる。
SNAKEPIPEが作るお話なんて、陳腐で大したことないけどね。(笑)
展覧会のサイトによれば「谷原の絵は日本近代絵画史の『くらい絵』の系譜を受け継いでいる」んだとか。
「自身の負の記憶と人間の闇を混淆した美」を描くという谷原菜摘子は、日本画家の松井冬子が持つネガティブなエネルギーに似たものを原動力にしているように感じたよ。
違う作品も観てみたいと思ったアーティストだね!

草間彌生を中心に、3人の女性アーティストの作品を鑑賞することができた豪華な展覧会だった。
感想をまとめるために1人ずつ紹介していたけれど、実際は画像のように4人の作品が入り乱れて展示されていたんだよね。
いつも以上に空いていたので、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEの特別室みたいな環境で観ることができたのも良かった。
やっぱり飯田さんの企画はできる限り観に行かなければ、と改めて思ったSNAKEPIPEだよ!(笑)

「形象 Keisho」「Hellooooo」鑑賞

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【Yutaka Kikutake Galleryの扉を撮影。ガラスだから写ってしまうね】

SNAKEPIPE WROTE:

先週、「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ」展について感想をまとめたSNAKEPIPE。
およそ3年半ぶりに訪れたアーチゾン美術館なので、周辺の様子が変わっていてもおかしくないよね。
アーチゾン美術館の隣に大きなビルヂングがっ!
同じ地下道出口を出た人たちが続々と、吸い込まれるように隣のビルに入っていくじゃないの!
こんなビル、前にあったっけ?(笑)
ビルの看板を見てみると「TODA BUILDING」と書いてあるよ。
2024年11月にオープンしたアート・ギャラリーやショップが入った複合施設なんだね。
タカ・イシイギャラリー 京橋」「小山登美夫ギャラリー 京橋」「KOSAKU KANECHIKA」「Yutaka Kikutake Gallery」という4つのギャラリーでの展示を観ることができるとは!
六本木のピラミデビルみたいな感じだね。

続々と人が入っていったのは、6階の美術館が目的だったのかも。
開催されていのは、絵本作家でイラストレーターの「ヨシタケシンスケ展」だったことを帰宅後に知ったよ。
SNAKEPIPEは初めて知った名前だけど、かなり有名な方なんだね。
ヨシタケシンスケを調べてみると「ヘンリー・ダーガーの影響を受けた」とWikipediaに書いてあるところが気になったよ!

アーチゾン美術館で「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ」展を鑑賞後、TODA BUILDINGにも行ってみることにする。
ギャラリーが入っているのは3階らしい。
エレベーターで上がると、ガランとした空間が広がっている。
この時点では何の情報もないまま歩いていたので、本当にギャラリーが入っているのかすら疑問に感じるほど。
少しうろついていると明るい場所が見えてきた!
「KOSAKU KANECHIKA」で開催されている水上愛美の「Dear All Our Yesterdays」だったようだね。
淡い色調で、まるで夢の中を描いているような雰囲気はシャガールみたい。
このギャラリーでは撮影について質問することを失念し、当然撮影もしていなかったので、感想は文章だけになるね。
気になる方は上のリンクで作品観てね!

他のギャラリーも探してみよう、と歩いてみる。
扉が開いていて、中に人がいる部屋を発見!
それが一番上の画像「Yutaka Kikutake Gallery」で開催されている小林エリカ、ドレーヌ・ル・バ、鈴木ヒラク の3人展「形象 Keisho」だった。
受付の方に撮影許可をもらい、撮らせてもらったよ!
SNAKEPIPEはいつでも必ず許可を得てから撮影するんだけど、SNAKEPIPEが撮影している様子をみて「あ、いいんだ」とばかりに撮影を始める輩の多いこと!
自分からは許可を受けないで、人がやってるからいいだろうと勝手に判断するんだよね。
SNAKEPIPEは、ちゃんと自分で確認取ってから行動したいと思うよ。

話を作品に戻そう。
最初は3人展と気づかずに鑑賞していたけれど、作風があまりにも違うんだよね。
載せた画像は小林エリカの「私の手の中のプロメテウスの火」、「交霊 -娘と父-」、と「わたしの血」という写真作品だよ。
「わたしの血」は、作者自身の血を使っているらしい。
小林エリカは、東大卒の漫画家で作家だという。
ギャラリーの解説によれば、「私の手の中のプロメテウスの火」は、ウランの発見から原子爆弾の開発および原子力発電に至るまでの歴史に言及し、「交霊 -娘と父-」「わたしの血」のシリーズでも、いずれも自身の手を登場させながら人間の限りない欲望について表現しているんだとか。
SNAKEPIPEは、写真を観ただけでは全く理解できなかったなあ。(笑)

ガラスに反射してしまい、作品がみづらくてスミマセン。
鈴木ヒラクの作品3点を並べてみたよ。
展覧会のカタログをシルバースプレーで塗りつぶした作品とのこと。
Wikipediaによると、いくつもの企業から助成により2009年からオーストラリア、ブラジル、イギリス、アメリカなど世界各国に滞在した経験があるんだとか。
支援されたり研究員として海外で生活を続けるなんて羨ましい環境だよ!
鈴木ヒラクの作品は2010年6月の「六本木クロッシング2010」で鑑賞していたようだよ。
名前に聞き覚えがあると思ったんだよね!(笑)

「ひゃー!」と心の中で叫びながら作品に近寄るSNAKEPIPE。
ちょっと不気味で個性的な人形、好みなんだよね!(笑)
左のミドリちゃんは、花がらのワンピース着用のおしゃれさん。
右の画像、ボタンとスパンコールで身を包んでいる人形は、お腹に子供を抱えているね。
赤い糸は、もしかしたら血を表しているのかもしれない。
寝かされているところから想像すると、死体を意味しているのかも。
他に頭部がユニコーンで下半身が人の足になっている人形や、心臓のように見える立体作品も展示されていた。
作者はドレーヌ・ル・バ(Delaine Le Bas)というイギリス人アーティスト。
ドレーヌは自らのルーツであるロマ族の文化や歴史などを表現しているという。
2024年のターナー賞候補になったというから、作品を鑑賞することができて良かったよ!
ドレーヌが10代の頃、崇拝していたというのがイギリスのパンク・バンド、X-RAY SPEX。
代表曲「Identity」を聴いてみよう!

ヒステリックで非常にパワーのあるポーリーの歌声とサックスが印象的なバンドだったね。
セックス・ピストルズのジョニー・ロットンがお気に入りだったらしい。
ドレーヌがパンク出身と聞くと親近感が湧くよね!(笑)

次に立ち寄ったのは「タカ・イシイギャラリー」。
中に入ると、四つ切りくらいの大きさのモノクロ写真と、ロビン・ウィリアムズ主演の映画「ミセス・ダウト(原題:Mrs.Doubtfire 1993)」の看板が見える。
受付の女性に撮影許可をもらい、鑑賞しながら撮影する。
182.9cm×127cmという大型作品の作者は、1982年アメリカ生まれのセイヤー・ゴメス(Sayre Gomez)。
鑑賞している時には気付いていなかったけれど、アクリル絵の具で描かれているんだよね。
てっきり写真かと思っていたよ。
フォト・リアリズム・ペインティングというらしいね!
暗闇にポッと浮かび上がるマクドナルドの看板を観て、胸に迫るものがあった。
知らない土地を暗くなるまで歩き続け、途方にくれた時に目にする明かり。
誰かがいる、と安堵する様子とやるせない寂寥感を想起させる。
マクドナルドの看板から、こんな想像をしたSNAKEPIPEだよ。

モノクロ写真のほうは、予想通り森山大道の作品だった。
今回開催されていたのは「Hellooooo」というタイトルで、ロサンゼルスと東京というそれぞれの都市の根本にあるものを探る展覧会だという。
人間は写っていなくても気配を感じる。
「夜の新宿、裏通り〜」と八代亜紀の演歌が似合う、うらびれた雰囲気。
黒っぽい強めの焼きは、森山大道の特徴だよね。(笑)
2008年に東京都現代美術館で鑑賞した「森山大道 ミゲル・リオ=ブランコ 写真展 ―共鳴する静かな眼差し」について、SNAKEPIPEはダイドー・ブレンド・コーヒーをもじって「大道・ブランコ・コーヒー」として記事にしているね。(笑)
あの時もブラジルの写真家と森山大道の2人展だったっけ。
森山大道の個性に並ぶ日本人アーティストはなかなかいないだろうね。

京橋のTODA BUILDINGには、「小山登美夫ギャラリー」も入っているみたい。
4つのギャラリーで展覧会観られたら楽しいよね!
これからTODA BUILDINGの情報もチェックしていこう。

ここから自分のための備忘録。
先週愛用のiMacが突然壊れてしまった。
電源入るのにモニターに何も映らなくなってしまったんだよね。
幸いバックアップがあったので、ROCKHURRAHのヘルプを受けながら記事を書いているSNAKEPIPEだよ。
新しいiMacも昨日到着したので、これから設定作業に入らなければ。
みなさまもパソコンのバックアップをお忘れなく!(笑)

ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ 鑑賞

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【東京駅八重洲口出口24番にあった看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

ずっと以前からROCKHURRAHに誘われていたのは、「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ」展だった。
もしかしたら昨年から約束していたのかもしれない。
SNAKEPIPEの入院により展覧会鑑賞が叶わず、会期終了間際での鑑賞になってしまった。
前回、会場のアーチゾン美術館を訪れたのは2022年11月の「Art in Box マルセル・デュシャンの《トランクの箱》とその後」だったので、およそ3年半ぶりになるんだね。
その間にROCKHURRAH RECORDS事務所移転があり、東京都民から神奈川県民に変わったことも、足が遠のいた理由かもしれない。
久しぶりに「これは!」という企画展なので、とても楽しみにしていたよ!
アーティストであるアルプ夫妻について、少し勉強しておこうか。

ゾフィー・トイバー=アルプ
絵画、彫刻、テキスタイルデザイン、舞踊、建築、インテリアデザインなど、多岐にわたる分野で活動し、芸術と工芸、抽象と具象の境界を越える作品を生み出す。

1889 スイスのダヴォスに生まれる
1906〜1910 テキスタイル・デザインを学ぶ
1915 舞踊学校でダンスを学ぶ
この年、夫となるジャン・アルプに出会い、ダダイズムに参加
1916〜1929 チューリッヒの応用芸術学校で刺繍やデザインの講師を務める
1926 ジャン・アルプとともにフランス国籍を取得
1930〜 ロシア構成主義のレビュー「Plastique(Plastic)」をパリで設立
1943 ストーブの故障による一酸化炭素中毒により事故死

ジャン・アルプ
フランスとドイツの両文化に根ざした彫刻家、画家、詩人であり、20世紀初頭の前衛芸術運動、特にダダイズムとシュルレアリスムの中心的存在。

1886 ドイツのシュトラスブルク(現在のフランスのストラスブール)に生まれる
1904 パリで詩を初めて出版
1905〜1907 ドイツ・ワイマールの美術学校で学ぶ
1908 パリのアカデミー・ジュリアンに入学
1916 ダダ運動の創設メンバーとして活動を開始
1922 ゾフィー・トイバーと結婚
1925 シュルレアリスム運動に参加
1926〜1930 「アブストラクシオン=クレアシオン」グループの創設メンバーとして活動
1930~ 石膏や大理石を用いた彫刻制作を始める
1959 再婚し、スイス・ロカルノに新たな住居兼アトリエを構える
1966 死去

ご夫妻なので2人分書いてみたよ!
トリスタン・ツァラらと共にチューリッヒダダイスム宣言を発表したり、友人にはカンディンスキーやマルセル・デュシャンがいたり、豪華な顔ぶれが勢揃い!
憧れの1920年代をリアルタイムで経験した、アーティストご夫妻だもんね。
ゾフィー・トイバー=アルプは、スイスの50フラン紙幣(1995年〜2016年)に肖像が使用されるなど、高く評価されているんだとか。
年表の中に、ダダイズムやシュルレアリスム、ロシア構成主義といったワクワクする単語が並んでいて嬉しくなるよ。
2人の作品鑑賞、とても楽しみだね。(笑)

5月なのに夏日が続き、このまま一気に夏になってしまうのか心配したけれど、展覧会鑑賞予約をした日は、少しひんやりしていて歩きやすかった。
今までアーチゾン美術館へは銀座線の京橋から歩いていたけれど、東京駅からも歩いてすぐなんだよね。
地下道を通って行ったので、すんなり到着したよ!
アーチゾン美術館横に、先頭に旗を掲げた団体客が並んでいて、まさか同じ展覧会を鑑賞しにきたのでは?と危惧してしまう。
そして残念ながらその予想は的中してしまったんだよね。

会期終了間際にも関わらず、団体客のせいばかりではなく、実際にお客さんが多かった。
撮影はすべてOKだったのは良かった!
展覧会は4つの章に分かれて展示されていたよ。
気になった作品を紹介していこう。

第1章  形成期と戦時下のチューリヒでの活動

チューリッヒじゃなくてチューリヒなんだね?
「ハロー!チューリッヒ!」って宣伝も見てるのにね。(笑)
最近様々な表記が、以前見聞きしていた時とは違っていて、戸惑うことがあるよ。
画像はゾフィー・トイバー=アルプ、1917年〜1918年頃制作された手帳カバーで「抽象的なモティーフによる構成」。
麻布の土台にビーズ刺繍が施されているんだよね。
抽象的なモチーフの面白さと色合いの美しさが見事!
レプリカがあったら欲しいと思ったよ。

一方、夫であるジャン・アルプ、1915年の作品がこちら。
「トルソ=へそ」は木製の彫刻作品なんだよね。
ジャンには「へそ」と名付けた作品が多いことに気付く。
母親とのつながりというところから、起源や自然、生命の普遍性などがテーマになっていると説明されていたよ。
この作品を作った年、ジャンとゾフィーが出会っているんだよね。
2人共アブストラクトを志向しているので、意気投合するのは納得!
むしろ結婚まで7年かかっていることが不思議な気がするよ。

ゾフィーは、1918年に人形劇「鹿王」の人形制作を行っていたみたい。
展示されていたのは、2010年代に復刻されたレプリカだったよ。
ゾフィーの手にかかると、人形が抽象的なパーツの組み合わせになっていて面白い。(笑)
3体(!)の人形は「デラーモ王 」「守衛」「鹿」で、真鍮シートやベルが使用されているという。
当時も同じ素材でできていたのかな?
別の章でアルプ夫妻のアトリエ兼住居が紹介されていて、たくさんの人形が飾られていたんだよね。
きっと「鹿王」に登場した人形たちだったんじゃないかな。
これもミニチュアでフィギュアがあったら欲しかったなあ。(笑)

第2章 越境する造形 空間の仕事とオブジェ言語

1919年から1929年までの軌跡を紹介するチャプターで、最初に気になったのはゾフィーの作品。
1920年〜1924年頃制作された「パッチワークのズボン」がオシャレで目を引いたよ!
素材はビスコースと綿だって。
ビスコースというのは、レーヨン素材の一種で最も古い自然素材の合成繊維とのこと。
ゾフィーは元々テキスタイルの勉強をしていたので、布を扱うことに慣れていたんだね。
色彩のバランスが素敵で、斬新なパンツだよ!

1924年に制作されたジャンの「花の頭部をもつトルソ」は木に彩色している作品。
色がハッキリしていて好みだよ!
緑×ピスタチオグリーン×ブルーの3色、真似たくなるコンビネーションだね。
他に彩色した厚紙を使った作品「トルソとへそ」も並んで展示されていたよ。
また「へそ」だね。(笑)
もうこの時には二人は結婚しているね。
お互い刺激し合って、制作していたんだろうなあ!

アルプ夫妻は、18世紀に建造された歴史的な複合娯楽施設である「オーベット」の改築に伴う室内デザインを依頼され、大きな収入を得たという。
「オーベット」の室内デザインも展示されていて素晴らしかったよ。
得たお金でアルプ夫妻は住所権アトリエを建設したというから羨ましいね。(笑)
その建物の模型が展示されていた。
窓枠が赤でかわいいよね!
それぞれのアトリエと生活空間があり、2人にとって快適な住まいだったという説明があった。
日常生活と芸術が結びついて、お互いを高め合い創作活動できただろうね!

第3章 前衛の波の間で 各々の探求とコラボレーション

ゾフィー、1931年の作品「長方形と円による構成」。
単純な形を白、赤、青、グレーのみを使用して配置したシンプルさが素晴らしい!
バランスの良い構成で作品を作る日本画に近い雰囲気だよ。
マルだけに注目すると、まるで点字のよう。
未来人がこの作品を発見したら、エジプトのヒエログリフのような古代文字と勘違いするかもね?(笑)
ROCKHURRAHは「この時代にはないはずのコンピュータ回路のようだ」と感想を話す。
確かに、アナログなのにデジタルっぽいもんね!

1938年にジャンが制作したブロンズ製の「つぼみ」。
抽象的な彫刻は、タイトルと作品に関連を見いだせない場合も多いけれど、ジャンの場合はむずかしくなかったよ。
口を開けたヘビみたいにも見えてくるなあ。(笑)
有機的な形態を彫刻にする取り組みは、この頃から始まったみたいだね。
「具象彫刻」というんだって。
「つぼみ」は植物から、ジャン自身の詩作や民話から着想を得た彫刻作品も展示されていたよ。
つるんとした表面を撫でてみたい衝動に駆られたよ!

第4章トイバー=アルプ没後のアルプの創作と「コラボレーション」

年表にあったように、1943年ゾフィーは不幸な事故により急逝してしまうんだよね。
ジャンは強いショックを受け、4年間修道院にこもり、詩作することで妻を弔っていたんだとか。
人生のパートナーであり、同じ志向のアーティストだったゾフィーの不在は、ジャンに想像を絶する苦しみを与えたに違いない。
画像は1939年にゾフィーとジャンがドローイングのコラボレーションをした作品(左)と、1950年頃ドローイングを基に描かれた油彩画「共同絵画」(右)。
涙が出そうになるエピソードだよ。
ジャンはゾフィーの作品を立体にする試みを行っていくんだよね。

ブロンズ作品と絵画作品が上下に展示されている。
下の作品は1942年にゾフィーが制作した「幾何学的な構築」で、その作品を基にジャンがブロンズで彫刻作品にしているんだよね。
「晩年のコンストラクション」は1960年頃まで続いていたみたい。
ゾフィーの力強く伸びやかな作品のカッコ良さが立体化されていて、素敵だった。
SNAKEPIPE MUSEUMに所蔵したくなったよ!(笑)

1922年に結婚してから約20年間、寄り添ってきたゾフィーとジャン。
画像は1928年に「オーベット」前で撮影されたゾフィー(真ん中)とジャン(右)。
幸せそうな2人を見ると、事故が起きなかったら、と「IF」を想像してしまうね。
ジャンの心にぽっかりと空いてしまった空洞は、ゾフィーに思いを馳せながら行う制作で、少しずつ埋まっていったのか。
完全になくなることはなかっただろうと予想する。
夫婦で作品制作を行っていたというと、椅子で有名なイームズ夫妻を思い出すね。
2019年3月に「EAMES HOUSE DESIGN FOR LIVING」で、イームズ夫妻のアトリエ兼スタジオを鑑賞したっけ。
生活とデザイン、想像力(創造力)は連動しているよね。
「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ 展」鑑賞できて本当に良かった!
ROCKHURRAH RECORDSも2組のカップルを見習って、お互い切磋琢磨していきたいと思う。
まずは部屋の掃除から始めるかな。(笑)

ジャパン・アヴァンギャルドポスター見本市 鑑賞

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【アヴァンギャルド・ポスター展のフライヤー】

SNAKEPIPE WROTE:

2024年11月の「松谷武判展」以来、約半年ぶりに、当ブログのカテゴリー「行ぐぜ!exhibition」を更新しよう。
「行ってみよう」とROCKHURRAHから誘われたのは、渋谷ヒカリエで開催されている「第二弾 ジャパン・アヴァンギャルドポスター見本市」だった。
以前も書いたことがあるけれど、ROCKHURRAH RECORDSは「アヴァンギャルド」という言葉に弱いんだよね。(笑)
アヴァンギャルドなポスター展、とても楽しみ!

乗り継ぎとしては利用しているけれど、渋谷で下車して歩くのは久しぶりだよ。
駅周辺を工事している関係で、近道なのか遠回りなのか分からない感じで歩き回り、ヒカリエに到着。
以前ヒカリエのギャラリーでデヴィッド・リンチ展を観たっけ。
調べてみると2014年7月の「鬼才デヴィッド・リンチの新作版画/写真展」だったよ。
今から11年前か。(笑)

ヒカリエの8階のBunkamura Gallery 8/を目指す。
8階にはいくつものギャラリーがあるので、人の出入りが多いよね。
少し歩くとポスター展会場が見えてきた。
ポスターは展示販売されているためなのか、撮影禁止を注意書きされている。
ブログで載せている画像は、展覧会場で撮影したものではないのでよろしくね!
会場にはおよそ30点ほどの作品が展示されていたよ。
気になる作品を紹介していこう。

1960年代〜70年代のアヴァンギャルドなポスターというと、劇団の公演を告知する作品が多い。
当時の2大アングラ劇団といえば、寺山修司の天井桟敷と唐十郎の状況劇場!
SNAKEPIPEは当時の人ではないので、後付けで調べてるタイプだよ。
天井桟敷も状況劇場も、リアルタイムで観たかったなあ、と思う。
もし公演の様子がDVD化されたとしても、空気感や匂いなど、同時代の感覚までは再現不可能だもんね。
載せたのは、天井桟敷公演の「毛皮のマリー」で、ポスターデザインは横尾先生だよ!
横尾先生は天井桟敷のポスターを多く手掛けていて、ミュージアムショップなどで目にする機会も多いよね。

宇野亞喜良の作品も多く展示されていたよ。
鮮やかな色使いで、とても美しい!
販売されていた金額は、作品によってまちまちだったね。
地下で営業している、色っぽいマダムがいる店に飾ったら似合いそう。
この感覚がすでに昭和な感じか?(笑)
載せたのは、1968年に公演された天井桟敷「新宿版 千一夜物語」のポスターね。
こんなポスターが街に貼られていた60年代に憧れるよ!

グラフィックデザイナーである粟津潔が手掛けたのは、1969年に天井桟敷公演の「犬神」。
白のバックに赤一色だけを使用した斬新さが見事!
シンメトリー構図で、上部や手のひらに印鑑が押されているのが不気味だよね。
印鑑を作品に取り込んでいるのを初めて観たかもしれない。
犬神と聞くと「犬神家の一族」や「犬神博士」を連想してしまうね。
どちらにしても怖いイメージがあるので、このポスターは恐怖を煽るのにふさわしい。
粟津潔デザインによる他の作品もカッコ良かったよ!

画家の金子國義が劇団状況劇場に関わっていたんだね。
1970年の「ジョン・シルバー 愛の乞食編」のポスターに金子國義の作品が使用されている。
すぐに金子國義と分かる特徴的な絵画だよね。
便器に座る全裸の女性。
身につけているのは靴下と靴だけとは。(笑)
60年代や70年代はヌードに関して寛容だったことが分かる。
それにしても、ポスターで横位置は珍しいね!

麿赤兒が1972年に設立した大駱駝艦の「48.DANCE-桃杏マシン」公演ポスター。
艦隊を持ち上げる手と手前の足は確認できたので、人体を描いているのか?
真ん中に様々なポーズを決める5人のシルエットがあるね。
両サイドの2人は、とても人間とは思えない特徴を持っていることが分かる。
さすが70年代、自由だわ。(笑)
ここでSNAKEPIPEは、かつて「白虎社の体験をしてきた」という知人がいたことを思い出した。
ほぼ1日、うさぎ跳びのような動きをさせられていたらしい。
一体何年前の話をしてるんだろうか。(笑)
舞踏集団白虎社は1994年に解散したようだけど、大駱駝艦は今も公演を続けていることを知ったよ。
一度は「BUTOH」を鑑賞してみたいね!

天井桟敷が1974年に公演した「盲人書簡 上海編」のポスターを手掛けたのは、漫画家の花輪和一!
「丸尾末広のポスター?」
と間違えそうになってしまったROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
どちらにしてもエログロ系ってことだね。(笑)
「盲人書簡」らしく、ポスターの人物は全員眼帯やサングラスを着けている。
猫の目の光で書物を読む、とポスターの中に書かれているように猫の目だけは描かれているね。
このポスター、とても気に入ったよ!

1978年、状況劇場が公演した「河童」のポスターに、「ゲゲゲの鬼太郎」の作者である水木しげるの作画が使用されている。
花輪和一に続いて漫画家が連続してしまった。(笑)
妖怪といえば水木しげるの登場になるんだね!
河童にしがみつかれている女性が、どちらかというと「うっとり」した顔をしていることに注目したい。
妖怪を怖がっていないので、愛情を持って接しているように見えるよ。
一体どんな演劇だったのか。
河童役の役者は、着ぐるみを着たのだろうか?
色々と気になってしまうよ。(笑)

最後は合田佐和子の作品にしよう。
状況劇場1976年の「おちょこの傘持つメリー・ポピンズ」のポスターね。
「おちょこの傘」も、中央に立つ女性の目がイっちゃってるのも謎だよ。(笑)
この作品は、2023年3月の「合田佐和子展 帰る途もつもりもない」で鑑賞しているけれど、たくさんのポスターの中で観ても印象に残る作風だなと感じる。
ポスター下部に西武美術館「ドガ展」の告知があるね。
他のポスターにも同様の告知が載っていて、「エゴン・シーレ展」や「ムンク版画展」など1970年代の展覧会情報を知ることができる。
年に数回は海外大物アーティストの作品を渋谷で鑑賞できたとは羨ましい。(笑)

アヴァンギャルド・ポスター展はROCKHURRAH RECORDSの好みで、行って良かったよ!
1960年代〜70年代の雰囲気が皮膚を通して染み込み、ゾクゾクした。
「アングラ」や「アヴァンギャルド」にハズレなし、だね。(笑)