箱根初上陸!ポーラ美術館 鑑賞

20240317 01
【ポーラ美術館入口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

ROCKHURRAH RECORDSでは3月にイベントがあるよ。
これまで何度も書いているので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれない。
そう、SNAKEPIPEの誕生日!(笑)
ちなみにSNAKEPIPEが4日、ROCKHURRAHのお兄さんが5日、そして大ファンの鳥飼否宇先生が6日なんだよね。
遅ればせながら、お兄さん、鳥飼先生、おめでとうございます!(笑)

SNAKEPIPEの誕生日プレゼントとして、箱根温泉旅館とポーラ美術館を巡る旅行プランを提案してくれたROCKHURRAH。
「えぇーっ!嬉しいっ!ありがとーっ!」
絶叫に近い声を出し、全身で喜びを表すSNAKEPIPE。
2022年6月に書いた「金沢初上陸!金沢21世紀美術館」続く「金沢初上陸続編!KAMU kanazawa」のように、観光とアートが融合した素敵な旅になること間違いなし。
ポーラ美術館では、5月29日まで「モダン・タイムス・イン・パリ 1925 ― 機械時代のアートとデザイン」が開催されていて、とても気になっていたんだよね。
3月中に行かれるなら、展覧会の鑑賞も可能じゃないの!
温泉旅館の予約やポーラ美術館のチケット手配を完了し、旅行の日を迎えたのである。

箱根に行く、というのが「遠い場所を旅行する」ことだと思っていたSNAKEPIPE。
昨年10月、神奈川県に新事務所を構えたことで移動距離が変わったことを失念していた。
横浜〜小田原は1時間。
小田原〜箱根湯本は約15分!
箱根湯本〜強羅で37分くらいなので、2時間もあれば観光旅行できてしまうんだね。
「踊り子号」みたいな特別な電車に乗らなくて行かれるというのもビックリ。
旅行慣れしていらっしゃる方からみると、バカなことを言ってる、と思われるかもしれない。
神奈川県民になって約半年、車に乗ることもなく地理は苦手なSNAKEPIPEなので、驚くのも無理はないのさ。(笑)
それにしても強羅って地名、強い羅生門と連想してしまう。
いつの時代からある地名なんだろうね。

旅行の2日前には、東京でもみぞれが降っていたけれど、当日は快晴!
日頃の行いが良いからだね。(笑)
温泉旅館のチェックイン時間から逆算して、11時頃に箱根湯本に到着するような予定を組む。
来た電車に乗るだけだから、とても気楽な旅行だよ。
旅館に行く前にポーラ美術館に立ち寄ることにしよう。
ポーラ美術館には、箱根湯本、もしくは強羅からバスを利用する必要があるんだよね。
ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも乗り物に弱いので、少しでもバスの乗車時間が短い強羅ルートを選択したよ。
すんなり箱根湯本に到着し、一旦下車。
「ぶらり途中下車の旅」みたいだよね。(笑)
駅近くの食堂で早めのランチにする。
籠清の揚げたてかまぼこ、美味しかったー!
お腹いっぱいで強羅に向かい、バスで無事にポーラ美術館に到着。

まだ雪が残る景色の中に「POLA MUSEUM OF ART」の看板が堂々と立っている。
来たかったポーラ美術館だっ!
感激して何枚も記念撮影してしまったよ。(笑)
渡り廊下を歩き正門へ。
敷地内には彫刻が点在していたよ。
近寄って観られないのが残念だね。

ポーラ美術館のチケットは予約していたので、そのまま入ろうとすると
「お荷物をロッカーにお願いします」
美術館スタッフから呼びかけられる。
会場に入る前に荷物を置く必要があるとのこと。
美術館によってロッカーの場所が違うからね。
身軽になったところで入場する。
会場は地下にあるんだね。

エスカレーターで下ると、最初に見えてきたのがこちらの作品。
これってマルセル・デュシャンの「何か」だったはず。
あやふやな記憶を頼りに発言したSNAKEPIPEだったけれど、それは正解だったみたい。(笑)
ポーラ美術館に展示されていたのは、ケリス・ウィン・エヴァンスの「照明用ガス…(眼科医の証人による)」とのことだけど、元ネタはやっぱりマルセル・デュシャンで「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(通称:大ガラス)」の中にあるモチーフ。
このモチーフは「眼科医の証人」と名付けられているんだとか。
2022年11月にアーチゾン美術館で「Art in Box マルセル・デュシャンの《トランクの箱》とその後」を鑑賞した時にも似た作品があったことを思い出した。
瀧口修造と岡崎和郎の連名で「檢眼圖」(画像左)というタイトルが付いていたよ。
確かに眼科の検査で「どの線が強く見えますか?」と質問される時、線で描かれた円を見たような?
およそ100年前に発表されたデュシャンの大ガラスが、現代にも影響を与えているんだね。

会場に入ってみよう。
「機械時代のアートとデザイン」というサブタイトルが付いている展覧会なので、1925年の機械類も展示されている。
手前の車は、まるで玩具みたいでとてもキュート!
その後ろには、当時のポスターが展示されている。
ほとんどの作品が撮影オッケーだったのに、カッサンドルのポスターは禁止されていたよ。
可/不可の基準は不明だね。

ROCKHURRAHと「とても好き!」とうなずきあったのがフェルナン・レジェの作品。
1920年から1950年代までの7点が並んでいる。
くっきりした線と美しい色使いが楽しい。
左の画像はポップで遊び心が感じられるよね!
レジェの作品は恐らく今までもどこかで鑑賞しているはずだけど、今回の展示は強く印象に残ったよ。
カンディンスキーやモホリ=ナギなどの大御所の作品を観ながら会場を歩く。
やっぱり1920年代いいよね!

中央に円形の展示コーナーがあり、中にはルネ・ラリックの香水瓶がたくさん並んでいた。
どれも美しくて一つずつ撮影していたSNAKEPIPEに「まだ先があるよ」とROCKHURRAHから少し急ぐようにと指示を受ける。
展示の前半に時間を割き過ぎて、後半は駆け足になるパターンが多かったからね。
ラリックの作品を何枚も撮ったけれど、載せたのはこれ。
人の形をした謎の香水瓶を選んでしまった!
しかもピンボケじゃないか。(笑)

マックス・エルンスト、キリコ、ダリ、ポール・デルヴォー、ハンス・ベルメールの作品が並んでいる。
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEの大好物だらけ!
残念ながら撮影禁止だったけれど、2人でヒーヒー言いながら楽しく鑑賞したよ。
シュルレアリスム、いいよね!

マルセル・デュシャン監督、マン・レイ撮影の興味深い動画があったよ。
アネミック・シネマ(貧血症の映画)」というタイトルで1925年の作品。
Youtubeを載せておこうか。

アニメーションで制作されたのかと思ったら、Wikipediaに「回転する円盤を撮影」と書いてあったよ。
実験映画という響きだけでも惹かれてしまうSNAKEPIPE。
ぐるぐるを観続けていると「貧血」というよりは「めまい」を感じるけど、夢のコラボ作品を鑑賞できて嬉しいよ!(笑)

別会場に移動すると、今度は日本の1920年代が展示されていた。
1925年は大正14年、モダニズムの時代だよね!
杉浦非水の作品がたくさん並んでいる。
絵画の中でひときわ目を引いたのが、古賀春江の「現実線を切る主智的表情」(1931年)だったよ。
国立近代美術館に所蔵されている「海」に似たタッチなので、キャプションを確認しなくても古賀春江の作品だと分かるね。
中央に間をもたせた斬新な構図と、馬をあやつるロボットが斬新!

瑛九のフォト・コラージュも素敵だったね。
2019年3月に庭園美術館で鑑賞した「岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」は、1950年代に制作されたフォト・コラージュで、当時の雑誌を素材にした切り抜きだったっけ。
瑛九の作品は1937年に制作されているので、何を素材にしたのか想像するのも面白い。
フォトグラムも制作していたとのことなので、自らの作品を切り取った可能性もあるし。
実験的でダダイズムを感じるよ!

2016年12月に鑑賞した「宇宙と芸術展」で対面したことがある空山基のセクシー・ロボットが3体展示されている。
宙返りしたり伸び上がったりするロボットは、鏡で増幅して見えて面白い。
シルバー色でピカピカ光る物が大好きなSNAKEPIPEにとっては、垂涎の的!
セクシー・ロボットが自宅に飾ってあったら嬉しいだろうね。
ありゃ、同じことを2016年の記事にも書いてるわ。(笑)

鑑賞し終えて帰ろうとした時、別の展示室があることに気付く。
展示室が5つあったとはね。
展示室4に入ると、そこはなんとリヒター・ルーム!
真っ暗な会場にポワッとライトが当たり、作品を照らしている。
リヒターを鑑賞せずに帰るところだったとは!
「グレイ・ハウス」「アブストラクト・ペインティング」「ストリップ」の3作品が並んでいたよ。
2022年7月に東京国立近代美術館で鑑賞した「ゲルハルト・リヒター展」の感想で「迫力がある作品ばかりが並んでいると、一点ごとの凄味が軽減されてしまう」と書いたSNAKEPIPE。
ポーラ美術館のリヒターはそれぞれタイプが異なる展示だったため、一点ごとの作品の重さや凄みを体感できて新鮮だったよ。
「ストライプ」が浮き上がってくるように見える効果は抜群で、ポーラ美術館の演出(?)に拍手だね。

以前よりずっと気になっていたポーラ美術館を訪れることができて大満足!
また別の企画の時に鑑賞したいと思う。
次回は近隣の散策もしてみたいな。
以前「ポーラ美術館気になるよね」と話していた、現代アート好きの友人Hにも是非お勧めよ!(笑)

ポーラ美術館鑑賞後、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEは温泉旅館に向かう。
この続きは次週にしよう。
どうぞお楽しみに!(笑)

ザ・ホーンテッド・コレクション 鑑賞

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【地下にあるヴァニラ画廊に降りる階段途中のポスター】

SNAKEPIPE WROTE:

先週の「YOSHIROTTEN Radial Graphics Bio」で銀座を訪れた時、もう一つの展覧会を鑑賞していたんだよね。
それはヴァニラ画廊で開催されている「ザ・ホーンテッド・コレクション -HNコレクション奇妙な書斎-」。
2016年6月の「シリアルキラー展」、その6年後になる2022年7月の「シリアルキラー展2022」で、モノホン(!)の連続殺人鬼、いわゆるシリアルキラーが描いた絵画を鑑賞した画廊だよね。
作品を所持していたのがHN氏というコレクター。
今回は「シリアルキラー展」の範疇に収まらないHN氏のコレクションを展示する企画だという。
どんな作品に出会えるのか期待しちゃうね!(笑)

「シリアルキラー展」は大盛況で、コロナ渦で人数制限されていた会場だったのに、作品鑑賞するために順番待ちする必要があったことを思い出す。
これは2016年の時も同様で、キャプションと作品を見比べようと、あちらこちらで渋滞するんだよね。
ヴァニラ画廊は、かなり小さめの会場なので、少しストレスを感じてしまう。
今回の「ザ・ホーンテッド・コレクション」は、事前予約なくて当日券のみ販売とのこと。
「シリアルキラー展」のように大混雑もあるかもしれない。

12時の開場時間少し前にヴァニラ画廊に到着。
行列ができているかと思いきや、地下への階段を降りていくと、なんと一番乗りだった。
大混雑の懸念はなくなったので、安心したよ。
SNAKEPIPEとROCKHURRAHの後ろに4,5人が並んだくらいで、「シリアルキラー展」ほどの人気ではないみたい。
ゆっくり観て回れるのは良いことだね。(笑)

ヴァニラ画廊は撮影禁止なので、今回も別の場所で画像を集めてみたよ!
感想をまとめていこう。

ヴァニラ画廊は会場がAとBに分かれていて、小さめの会場Bから鑑賞してみる。
ここには怪奇・ホラー漫画の原画が展示されていた。
水木しげるをはじめ、花輪和一、古賀新一、楳図かずお、つのだじろうなどの漫画家の作品が並んでいる。
元古本屋だったROCKHURRAHが、ほとんどの漫画家を知っているのはさすが!
壁に展示された漫画の原画の前に、ガラスケースが置いてある。
「わっ!黒死館だっ!」
ROCKHURRAHが驚いて声を出す。
小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」の初版本が展示されていた。
ROCKHURRAHが偏愛する作品なんだよね。
SNAKEPIPEもお勧めされて読んだことを思い出す。
黒死館と呼ばれる屋敷に関係する人は、召使ですら相当な知識人で文化的素養もあり、すべての会話についていかれることに驚いたっけ。(笑)
漫画の展示よりも本に大反応していたROCKHURRAHは、貴重な初版本が欲しかったのかもしれない。
昭和10年、1935年というと約90年前の初版本、一体おいくらなんだろうね?
はっきりした色使いと、アール・デコの影響を受けているような装丁が美しかったよ。

会場Aに移動して、一番最初に目を引いたのはピエール・モリニエの作品。
Wikipediaに「フェティシズムとエロティシズムを表現した官能的な作風」と書かれていて、ザッツ・ライト!(笑)
木炭を使ったような太くて黒い線で、女性を描いた作品が並んでいる。
これがとても小さくて!
近づかないとよく見えないほどだったよ。

写真も展示されていた。
モリニエが尻、足、ストッキングと靴のフェチだということがよく分かる。
倒錯者と敬遠されてしまうのも納得かも。
今回の「ザ・ホーンテッド・コレクション」では、作品リストがなかったので、タイトルや制作年についての情報がないんだよね。
「シリアルキラー展」では小冊子付きで親切だったのにな。
画家、写真家、人形作家と紹介されているので、モリニエの展覧会で全貌を観てみたいと思ったSNAKEPIPEだよ!

モリニエを鑑賞後、壁づたいに作品を観ていく。
「サーカスコレクション」として、古い時代のサーカス団員を撮影した写真が展示されている。
これはまるで映画「フリークス(原題:Freaks 1932年)」(画像左)や「エレファント・マン(原題:The Elephant Man 1980年)」みたいに、見世物小屋と曲芸などを披露するショーが合体しているサーカス団の写真なんだよね。
すでに衝撃的な映画を鑑賞していたせいか、「サーカスコレクション」に驚くことはなかったなあ。

「ザ・ホーンテッド・コレクション」で最も多く展示されていたのが、映画監督ティム・バートンのドローイングだったよ。
インクで線を引いたあと、水彩で色をつけている作品で、人物や謎の生物(?)が生き生きと描かれている。
ティム・バートン、絵が上手いなあ!
元アニメーターなので、サラサラと描けるのかもね?
作品はネットでも販売されていて、左の作品「On Pins and Needles」は、$8,775(約130万円)とのこと。
これが最も高額だったので載せてみたよ。
HN氏はたくさん購入しているので、お金持ちだよね!

映画監督で絵も描いているといえば!
敬愛するデヴィッド・リンチのリトグラフも展示されていたよ。
リンチ教という宗教あったらとっくに入っているSNAKEPIPEだけど、この作品は初めて観たかも。
右側の顔に斑点があり、左の額には「D.L.」の文字があるね。
リンチの頭文字だ!(笑)
どうやらこれは自画像みたい。
あまり意味は考えなくて良い気がするよ。
そしてこちらもネットで販売されていたようで、お値段$300、日本円で約45,000円だった。
リンチの作品がこんなにお手頃だったと知ってショックを受けたSNAKEPIPEだよ。
一桁間違ってない?

ROCKHURRAHと別に作品を鑑賞していたSNAKEPIPE。
慌てた様子でROCKHURRAHが駆け寄ってくる。
「イレイザー・ヘッドの赤ん坊が展示されているよ!」
えっ、嘘だ、そんなはずはない。
「イレイザー・ヘッド」の赤ん坊(通称スパイク)については、リンチが絶対に口を割らなかったとして有名だからね。
どんな仕掛けになっていたのか、未だに謎のまま。
展示品を観てみると、確かに「あの赤ん坊」によく似ている人形(?)がケースの中に横たわっているけれど、「実物」というキャプションはなかった。
帰宅後調べてみると、赤ん坊のレプリカを手作りして販売しているサイトを発見!
頭部はシリコン製で、注文を受けてから1週間で発送とのこと。
お値段はアメリカからの送料込みで約5万円くらい。
いくらリンチ教信者のSNAKEPIPEでも、赤ん坊のスパイクを可愛がる自信はないなあ。(笑)
HN氏のようなコレクター向けなのかもね?

他にも「羊たちの沈黙(原題:The Silence of the Lambs 1991年)」に出てきた髑髏の柄が入ったメンガタスズメの標本や、「シリアルキラー展」でも紹介されていたクレイ兄弟が描いた絵などの展示もあった。
クレイ兄弟の絵は、あの時と同じ作品だったのかどうかは覚えていないけどね。(笑)
全体的に「ホーンテッド(恐怖や不気味さ)」とタイトルにするほどの内容ではなかったように感じた。
期待していただけに、落胆も大きい。
リンチ関連の作品がなかったら、かなり不満だったかも。
行って観たから言える感想だ、ということにしておこう。(笑)

YOSHIROTTEN Radial Graphics Bio 鑑賞

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【gggの旗を撮影。よく晴れた冬の空】

SNAKEPIPE WROTE:

2023年2月に「横尾忠則 銀座番外地」を鑑賞して以来、約半年ぶりにギンザ・グラフィック・ギャラリー(通称ggg)を訪れたSNAKEPIPEとROCKHURRAH。
第400回の企画展として「YOSHIROTTEN Radial Graphics Bio ヨシロットン 拡張するグラフィック」が開催されているんだよね。

ヨシロットン、という名前は初耳だけれど「ロットン」の文字に反応しちゃったわけ。
セックス・ピストルズのヴォーカル、ジョニー・ロットン(ジョン・ライドン)から取られていることが明白だからね!
まさかアメリカの映画評論サイト「Rotten Tomatoes」からヒントを得ていたりして?(笑)
展覧会の案内文をみてみよう。

「R.G.B.」は光で色を表現する際の「3原色」。
パンク・ロックはたった「3コード」で世界を変えた

やっぱりパンクのほうだったね!(笑)
YOSHIROTTENについて調べてみようか。
1983年生まれの魚座。
2015年にクリエイティブ・スタジオを設立。
ファインアートと商業美術、デジタルと身体性、都市のユースカルチャーと自然世界など、複数の領域を往来するアーティスト(YOSHIROTTENのサイトより)だという。
一体どんな作品なんだろう?

今年の2月は雪が降ったかと思うと夏日に迫る気温の高さだったり、不安定だよね。
出かけた日は予報通りの晴れ!
風が強いから寒かったけれど、お出かけ日和だったよ。

gggはいつでも撮影許可してくれるありがたい場所のうちのひとつ。
念のため撮影について尋ねると、写真も動画もオッケーだけど、風景として撮って欲しいとのこと。
一枚だけをアップで撮影しないで、と理解したよ!

壁一面にモニターが並んでいる。
それぞれ別のスクリーンセーバーが流れていて圧巻の光景!
これは「Signal RGB」という作品で、「RGB PUNK」シリーズ最初の作品だという。
「どれか一つを選ぶなら?」
ROCKHURRAHから質問され、じっくり観察する。
出した結論は「60台という集合体だからこその迫力」だということ。(当たり前?)
一つには絞れなかったよ。(笑)

レトロな雰囲気の作品が展示されている。
わざと昔っぽいイメージにしていることは明白だね。
「RGB Machine」という作品で、鑑賞者が操作ができることを帰宅後に知ったSNAKEPIPE。
自動的に画面が切り替わっていたので、画像を映すための装置だと思っていたんだよね。
ボタンを押すとどんなことが起こったのか、体験しなかったのが悔やまれる。

「RGB Blueprint Series」という作品は、スクリーンセーバーの作品をプリントしたものらしい。
近寄って観ると、ところどころがシールみたいに盛り上がっていたので、てっきりコラージュだと勘違いしていたよ。
最近のアーティストは切り貼りなんかしないのか。
デジタルだもんね。(笑)

黒い壁に発光するように展示された1階から地下会場に移動する。
途中の階段はオレンジ色の光に包まれていて異空間のよう。
とてもキレイ!と見惚れながら降りていたSNAKEPIPEは、足を踏み外し転びそうになる。
たまたますれ違ったgggのスタッフの女性の腕をつかみ、コケずに済んだよ。
スタッフの方、助けてくれてありがとう!(笑)

地下は眩しいくらいの光の空間が広がっていた。
大小様々なディスプレイが並び、YOSHIROTTENの過去10年に及ぶ「全仕事」が映し出されている。
まるでパラパラ漫画のように、目まぐるしく画面が変わっていく。
「さっきの瞬間が良かったのに」
とシャッターチャンスを待っていても、同じ組み合わせにはならないんだよね。
動画で記録すれば良いのに、写真にこだわってしまうところがSNAKEPIPEらしいけど。(笑)

YOSHIROTTENの作品を観て、2021年3月に鑑賞した「佐藤可士和展」を思い出した。
有名な企業がこぞって起用するデザイナーというところに共通点があるからね。
グラフィック・デザインやディレクションという仕事は、キャプションがついて誰の作品なのかを初めて知ることが多いはず。
今回初めてYOSHIROTTENの作品を鑑賞したと思っているけれど、どこかで目にしていた可能性もあるよね。

YOSHIROTTENのカラフルな作品を満喫できたよ。
入場料フリーで素晴らしい企画を見せてくれるgggに感謝だね!

「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容 鑑賞

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【松濤美術館入り口の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

「この展覧会が気になる」
ROCKHURRAHから誘われたのは渋谷区立松濤美術館で開催されている『「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容 瀧口修造・阿部展也・大辻清司・牛腸茂雄』だった。
かつて写真の勉強をしていたSNAKEPIPEには聞き覚えのある写真家の名前が並んでいる。
そしてタイトルに「前衛」という単語があるじゃないの!
この言葉に弱いんだよね(笑)
松濤美術館は、2023年5月の「エドワード・ゴーリーを巡る旅」以来になるよ。
雨から雪になるかもという寒い日、ROCKHURRAHと一緒に出かけたのである。

残念ながら松濤美術館は展示作品の撮影が禁止されているんだよね。
「ここだけはオッケー」みたいに指定された場合のみ、許可されていたことがあったっけ。
『前衛」写真の精神:なんでもないものの変容』は、2023年4月の千葉市美術館からスタートして新潟、富山と巡回し、最後に松濤美術館での開催になっているらしい。
他の美術館でも撮影禁止だったのかな?

渋谷に着くと、予報通り雨が降ってきた。
松濤美術館までは道のりが長いので、ポチポチだけど傘をさして歩くことにする。
渋谷からは徒歩15分、井の頭線神泉駅からは徒歩5分。
次回は駅を変えてみるか?などと話しているうちに到着。

会期終了が近いせいか、会場内にお客さんは少なかった。
以前は展示作品を観るために、列ができていたことを思い出す。
今回はストレスなく鑑賞できるね!

展覧会は年代順に3つの章で構成されていた。
「第1章 1930-40年代 瀧口修造と阿部展也 前衛写真の台頭と衰退」では、瀧口修造がシュルレアリスムについて紹介する文章が載った雑誌が展示されていたよ。
瀧口修造とは、近代日本を代表する美術評論家、詩人、画家であり、日本でシュルレアリスムを最初に紹介した人。
展覧会の説明では「瀧口修造がダリの家を訪問したら偶然マルセル・デュシャンに会った」と書いてあったよ。
すごいエピソードだね。(笑)

瀧口修造がピカソの「泣く女」やマン・レイのモデルとして有名なドラ・マールについて書いていた時に「ドオラ・マアァル」(うろ覚え)のように記載されていて面白かった。
画像は、瀧口修造の詩と阿部芳文のシュールな絵とのコラボで1937年の作品ね。
鉛筆で描かれた不思議な形の絵がとても気に入ったよ。
阿部芳文(展也)という画家を知ることができて良かったね。

下郷羊雄の「超現実主義写真集メセム属」も、強く印象に残ったよ。
これは多肉植物をオブジェとして撮影した作品集だという。
多肉植物と聞くと「植物男子 ベランダー」の「多肉 愛の劇場」を思い出してしまうね。(笑)
1940年に200部限定の私家版として制作されたという「メセム属」、多肉植物のフォルム自体のユニークさはもちろんだけど、コラージュした作品などもあって興味深い!
下郷羊雄の名前も初めて知ったよ。
勉強になるね!

1930年代に大阪で活動していた小石清には以前から興味があったSNAKEPIPEは2点だけでも、作品が展示されていることが嬉しかった。
展覧会は前期と後期で展示作品の入れ替えがあったらしいので、左の画像「疲労感」は鑑賞できなかったよ。
これは1936年の作品で、まさに「前衛」だよね!
Photoshopだったらレイヤーで作業できるだろうけど、アナログで制作するのは至難の業だったはず。
小石清の作品をもっと観てみたいよ。

「第2章 1950-70年代 大辻清司 前衛写真の復活と転調」は大辻清司が主役だったよ。
大辻清司とは写真家であり、写真教育者としても有名な人物だという。
大御所なので名前は知っていたけれど、写真作品をじっくり観たことなかったかも。
1953年の作品「アサヒグラフ APNのためのカット」がとてもカッコ良かった!
Asahi Picture Newsの3つの頭文字をあしらったオブジェを造形作家が構成し、大辻清司が撮影した作品が毎号コラム欄に発表されていたんだとか。
55回続いたというから人気があったんだろうね。
それにしても「APN」を「あぷん」って読んでたという記事があったけど、ほんとかな?(笑)

1957年の作品「航空機」もモロに「前衛」!
光った白と影の黒をクローズアップで撮影している。
遠くからだとまるで岡本太郎の作品のようにも見えるよ。
ズバッと切り取った大胆さもシビレる。
モノクロ写真の魅力に溢れてるよね。
今まであまりよく知らなかった大辻清司の作品を鑑賞できて良かったよ!

「第3章 1960-80年代 牛腸茂雄 前衛写真のゆくえ」は、大辻清司から写真を学んだ高梨豊と牛腸茂雄の作品が展示されていた。
SNAKEPIPEは写真家だった父親から、この二人の写真家の話を聞いていたことを思い出したよ。
「すごい写真家だ」と褒め称えていたっけ。
スナップショットや人物写真を目指している人にとっては「垂涎の的」となる作品を発表している写真家ということになるのかな。
画像は牛腸茂雄の作品。
「あの世」と「この世」の境界のようで、吸い込まれそうな一枚。
遠くの光に向かって、輪廻のチャンスを逃すまい、と走っているように感じてしまう。
いつかは自分も経験することを見せられたような怖い写真だなと思ってしまった。
想像力を掻き立てられる作品だよね。

「前衛」という言葉に惹かれて出かけた展覧会、新しい発見もあり鑑賞できて良かったよ!
1930年代の日本にも印象的な作品がたくさんあったね。
誘ってくれたROCKHURRAHに感謝だよ!