松谷武判展 鑑賞

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【松谷武判展覧会場入口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2024年7月に訪れた「軽井沢現代美術館」についてのブログで、
「今年の10月から東京オペラシティアートギャラリーで個展が開催されるようなので、是非足を運びたい」
と書いているSNAKEPIPE。
松谷武判のボンドを使用したカッコ良い作品に強い感銘を受けたんだよね。

オペラシティアートギャラリーには、独自の視点を持ったキュレーターがいるに違いない。
今までに「白髪一雄展」「石元泰博写真展」「ミケル・バルセロ展」「篠田桃紅展」など、印象的な展覧会を企画してくれているからね!
そのギャラリーでの展覧会開催ということで、一層期待してしまうよ。

まずは松谷武判の経歴を調べよう。(展覧会のサイトより抜粋)

1937 大阪市阿倍野区生まれ
1951 結核を発病
大阪市立工芸高校を2年で中退
1959 結核が全快
1963 具体美術協会会員となり、グタイピナコテカで個展開催
1966 フランス政府留学生選抜第1回毎日美術コンクールで一席を得て渡仏
1970 モンパルナスのシルクスクリーンの版画工房に移る
2017 第57回ヴェネチア・ビエンナーレに出品
2019 パリ、ポンピドゥー・センターで回顧展

今年87歳の松谷武判、現役で活動中なんだよね。
「具体」から出発してフランスでも認められたアーティストだったとは!
ポンピドゥー・センターで回顧展まで開催しているなんて、素晴らしい経歴の持ち主だよ。
ROCKHURRAHとワクワクしながら初台に向かったのである。

東京オペラシティアートギャラリーには、2022年8月の「ライアン・ガンダー展」以来、約2年ぶりの訪問になるよ。
予約の必要がない美術館で、思い立った時に立ち寄れる気軽さも良いよね!
いつも通り全く並ぶことなく、すんなりチケットを購入し会場入口に向かう。
すべて撮影可能だって、良かった!(笑)
展覧会は制作年順に並んでいるようだけど、全くキャプションが提示されていない。
受付で渡された作品リストには詳細が載っているけれど、鑑賞しながら確認するのは難しいかも。
載せたのはタイトル「作品-18」で1961年の作品。
キャンパスに木材や取っ手のような物が配置されている。
真っ赤なバックが目を引くよね。
観た瞬間にデヴィッド・リンチの絵画作品を連想したSNAKEPIPEは、思わず駆け寄ってしまったほど。(笑)
とても好みの作品だよ!

仕切りを抜けて次の部屋に進むと、そこには奇妙な形が張り付いた作品が並んでいた。
嬉しくなり笑みがこぼれるSNAKEPIPE。
「盲獣だね」
ROCKHURRAHが言う。
江戸川乱歩の小説「盲獣」に登場する彫刻作品を連想するのも納得だよ。
これはボンドを使用した作品とのこと。
球体が弾けて中身が出てきたような不思議な造形が素晴らしい!
「盲獣」のように、触ってみたくなるよ。
1960年代に「具体」で活動していた頃に発表された作品だという。
制作風景が分かる動画を載せてみよう。

松谷武判が英語で作品について説明しているところに驚く。
これだけでも十分国際的だよね!
更に接着剤に息を吹き込んで膨らませ、立体作品にしていることにもびっくり。
「私はこれを1962年から続けている」
と動画の中で語っているけれど、その方法を思いついたこともwonderfulだよね。(急に英語入れてみた)
面白いアーティストだなあ!(笑)

1966年の「作品66-2」は中央のボンドが今にも垂れ落ちそう!
横から観察すると「こんもり」盛り上がっていて、何か産まれてきそうな雰囲気。
ピヨピヨとかわいい小鳥が出てくるというよりは、未知の生物が似合いそうだよ。
もしくは大量の昆虫とかね。(笑)
不気味さと緊張感と美しさが混在している、もぞもぞした感覚は初めてかも。
まだ2つ目の部屋なのに、松谷武判の作品に興奮してしまう。
続きも観たいけど、まだその場にとどまっていたい気持ちだよ!
この作品を制作した年に、松谷武判はフランスに渡っているんだね。

1970年代の作品。
松谷武判はあまりタイトルに意味を含ませていないようなので、はっきり分からなくても問題ないのかな。
花札の月みたいな構図に途切れた四角形が斜めに刺さっている。
シンプルで力強いよね!
フランク・ステラを思わせるミニマル・アート。
デッサンのような鉛筆画も展示されていて、試行錯誤したのかもしれない。
抽象絵画は、色、形、構図で決まると思うので、納得いくまで考えるのかな。

カラフルだったシルクスクリーン作品などを鑑賞した後、次の部屋に移ると、そこには漆黒の世界が待ち受けていた。
鉛筆の黒は、鈍い光を放っていてきれいだね。
黒色一色だけの作品だけが展示されていて、シックでオシャレ!
SNAKEPIPは黒色が好きなので、とても落ち着く空間だったよ。
「グラファイトにホワイトスピリットを使用した」と説明されているので、意味を調べておこう。
グラファイトとは「石墨(黒鉛)」のことで、炭素の仲間なんだとか。
ホワイトスピリットはお酒ではなく(笑)、低臭で環境面の影響が少ない溶剤とのこと。
鉛筆で描いた後、ホワイトスピリットを流しているみたいだよ。
ボンドやホワイトスピリットを作品に使用する発想力がすごいね!

2023年の作品「丸い丘」は、緑と紫が使用されているよ。
制作している動画が会場に流れていた。
助手(?)の女性が、松谷武判にお伺いを立てながらマスキングテープを貼ったり、キャンバスを傾けたりして手伝っている。
最初の動画で松谷武判が話していたように「偶然性」に重きを置いているようで、完成を思い描いて制作しているように見えなかったよ。
動画の中で「最初からこうなることを計算されていたのですか?」のような質問を受けても、はっきり「計算した」とは答えてなかったから。(笑)
感覚的に制作しているんだね!

3階から4階に上がる階段脇に展示されていた最新作「ichi」は、松谷武判のパフォーマンスを観ないと意味が分からないかも。
上に載せた動画は、今回の展覧会における「こけら落とし」の様子。
カツンカツンと杖をつきながら登場する松谷武判。
両サイドの脚立から布を持ち上げる女性2人に、布の上げ下げを指示する。
横に大きく「一」と描き、パンと手を叩き、パフォーマンス終了!
この動画を観て笑い転げてしまったSNAKEPIPEだよ。
さすが関西人、笑かしてくれるね!(笑)

松谷武判の全貌を紹介してくれた展覧会、作品数も多く、見応え十分だった。
60年代から一貫して抽象の作品を制作し続けている、ブレない姿勢にも感服したよ!
これからも制作を続けて欲しいね。
行って良かった展覧会だよ。(笑)

マルセル・デュシャンを考える 鑑賞

20241027 03
【カスヤの森現代美術館入口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2024年9月に表参道のジャイルギャラリーで鑑賞した「ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展」をまとめたブログで、「若江漢字が創設した『カスヤの森現代美術館』も気になる」と書いたSNAKEPIPE。
調べてみると現在開催されているのは「開館30周年記念 マルセル・デュシャンを考える」という企画展とのこと。
興味深い展示なので、訪問の計画を立てる。

カスヤの森現代美術館へのアクセスは、JR横須賀線衣笠駅より徒歩15分とのこと。
衣笠駅というのは「これっきりこれっきりもぉ〜これっきりですかぁ〜」で有名な(?)横須賀駅の隣駅で、ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも初めて訪れる場所。
10月の三連休を利用し、とても天気の良い日に行ってみる。
行楽日和だったためか、北鎌倉駅、鎌倉駅でごっそり観光客が降りた後の電車内はガラガラ。
衣笠駅で電車から降りる人はほとんどいなかったようだ。
改札を抜けて歩き始める。

カスヤの森現代美術館は、1994年にオープンした私設の美術館だという。
国立や市立の美術館や博物館は知っているけれど、個人が開設するというのは聞いたことがないかも。
ROCKHURRAHに道順を検索してもらい、テクテク歩いていく。
民家しか並んでいないので、本当に美術館に向かっているのか不安になってしまう。
ようやく美術館の看板を発見!
迷いながら進んでいたので、長い距離だった気がするよ。(笑)

受付の男性から館内のマップをもらい、いざ展示室へ。
「開館30周年記念」と銘打っている企画展だけれど、少々こじんまりしている。
マルセル・デュシャンの「トランクの箱」の複製が展示されていた。
2022年11月にアーチゾン美術館で開催された「Art in Box マルセル・デュシャンの《トランクの箱》とその後」で、実物を鑑賞しているROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
石橋財団とは規模が違うので、レプリカやデュシャンへのオマージュ作品の展示は仕方ないかな?

デュシャンのシルクスクリーンを使ったセルフ・ポートレート。
若江漢字の作品がガラスに写りこんでいるね。
今までデュシャンのシルクスクリーン作品は観たことなかったので、新鮮だった。
もう一点、ブルーと赤のハートがプリントされた作品もあったよ。
あのハートの缶バッチあったら欲しかったなあ。(笑)
デュシャンの「大ガラス」からインスパイアされた若江漢字の作品群も色合いが鮮やかで目を引いたよ。
チェス・セットの作品はシンプルで美しかった!
デュシャンが晩年チェスに没頭していたというエピソードは有名だよね。
SNAKEPIPEもチェスをやってみたくなったよ。(笑)

2階の会場に入ると、そこはヨーゼフ・ボイスの部屋だった。
若江漢字と現在カスヤの森現代美術館館長である妻・若江栄戽は、1975年から1年間ドイツに滞在していたという。
そこで最初にボイスのサインが入った黒板消しを7千円くらいで手に入れたことから、ボイスのコレクションが始まったという話がネットに載っていた。
日用品にサインを入れる、いわゆるレディ・メイドがアートとして認知されることになったのはデュシャンのおかげ。
ここでデュシャンとボイスがつながってくるよね。

ボイスがパフォーマンスで用いた物品やメッセージなどをガラスケースに並べていた作品「ヴィトリーヌ」の隣に、映像が流れている。
コヨーテの鳴き声を真似てボイスが叫んでいるシーンが印象的だったので、ROCKHURRAHとじっくり鑑賞する。
ピアノの演奏とボイスのヴォイス(笑)が絡み合い、エキサイティングなパフォーマンスが繰り広げられていたんだよね!
「これは1984年に来日した時、草月ホールで行われたパフォーマンスなんですよ」
背後にいた女性が説明してくれる。
この方はもしかしたら館長の若江栄戽さんでは?
ジャイル・ギャラリーでボイス展を鑑賞したことを告げると、嬉しそうに微笑んでくれた。

「外には別の展示室もありますから、ご覧ください」
2000坪の敷地内に別館が点在している。
ROOM2には若江漢字の作品群が展示されていた。
載せたのは1974年の「見える事と視えること_ 釘II」という作品。
様々な物に釘が刺さっていて、抑圧や封印などの単語が頭に浮かぶ。
先日ジャイル・ギャラリーで鑑賞した6点組作品「気圧」もカッコ良かったし、SNAKEPIPEの好み!
立体作品も制作しているので、もっと作品を観てみたいと思ったよ。

松澤宥の作品が展示されていたのはROOM1。
1964年に「オブジェを消せ」という啓示を受け、それ以降物体としての作品制作をやめて言語による作品を作っていたというコンセプチュアル・アーティストだという。
言語によるアートというのは初めて知るタイプの作品だよ。
画像に「言明」や「公案」といった文字が見えるように、政治的な文言がつづられていたよ。
「会田誠の檄は、このパロディだったのかもね」
ROCKHURRAHに言われて「なるほど」と思ったSNAKEPIPE。
ブラック・ユーモア好きの会田誠なら、やっててもおかしくないかも。
それにしてもパッと記憶を蘇らせたROCKHURRAH、エライ!(笑)

ROOM3には、ナム・ジュン・パイクの作品が展示されていた。
1986年に開催された国際平和展のオープニング・イベントで、山下洋輔とのジョイント・コンサートが行われ、その際使用されたピアノが作品として制作されたという。
下のテレビにはイベントの様子が流されていた。
山下洋輔とナム・ジュン・パイクが似て見えて、たまにどっちだか分からなくなってしまったよ。(笑)
壁面にはナム・ジュン・パイクの代名詞ともいえるビデオ・アートも展示されていて、嬉しかった。
リアルタイムでは鑑賞していないからね!

すべての展示室を鑑賞し終わり、竹林を散策する。
木漏れ日が差し、サワサワと竹の葉が揺らいでいる中を歩くのは、とても気持ちが良かった。
広大な森の中には、無数の石仏や涅槃像などが配置されている。
宮永愛子の彫刻作品の展示もあり、景色に溶け込んでいたよ。
こんなに素敵な竹林があるなんて、羨ましい環境だよね!

カスヤの森現代美術館を創設した若江漢字は、ヨーゼフ・ボイスの足型を取った人物として有名なんだとか。
1983年、デュッセルドルフにあるボイスのアトリエを訪れ、石膏で型を取っている画像がネットに載っていた。
その時の足型も森の中に展示されていたよ。
ボイスに直接会い、文字通り肌に触れたことがある人物ってことだよね!
若江漢字、すごい。(笑)
落ち葉と水が効果的な一枚を撮らせてもらったよ!

竹林の散策を終え、とても清々しい気分になる。
「とても楽しかったです」
館長に感想を言うと、嬉しそうに笑ってくれた。
美術館にはキジトラの親子が暮らしていることを教えてもらった。
館長がとても気さくな方なので、ついおしゃべりしてしまうよ。
出口の扉を開けると、猫ちゃんがお見送りしてくれて、とてもかわいかった!(笑)

カスヤの森現代美術館は、難解と言われるボイスのコレクションを常設展示していることに驚いた。
多くの人に門戸を開くタイプのアートではないからね。(笑)
開設して30周年を迎えていることが素晴らしいし、これからも続けて欲しいと思ったよ。
なんといっても竹林が素敵だったね。
面白そうな企画があったら、また足を運んでみよう!

トニー・アウスラー「Transmission」 鑑賞

【マイク・ケリーとのコラボ「POETICS PROJECT」の会場風景】

SNAKEPIPE WROTE:

先週、現代アート好きの友人Hと行った「田名網敬一 記憶の冒険」展の感想を書いたSNAKEPIPE。
国立新美術館で3時間もの間、異界の迷宮をさまよった後、もう一つの展覧会に立ち寄ったんだよね。
それはSCAI PIRAMIDEで開催されているトニー・アウスラー「Transmission」!
かなり遅めのランチをいただき、国立新美術館方面からピラミデビルに向かう。

「なんとなくこっちかも」と思いながら歩くSNAKEPIPEとは異なり、友人Hは素晴らしい方向感覚の持ち主であることが判明。
的確な道案内に従い、すんなりピラミデビルに到着したのである。
頼りになる友人Hに感謝!(笑)
ピラミデビルは2015年11月にワコウ・ワークス・オブ・アートでの「Gerhard Richter Painting展」や2022年5月にはSCAI PIRAMIDEで「アニッシュ・カプーア展」を鑑賞した場所。
販売目的のギャラリーなので、入場無料。
撮影についてもオッケーなことが多いのが嬉しいね!

SCAI PIRAMIDEで展示されているトニー・アウスラー(Tony Oursler)について調べておこう。

1957 ニューヨーク生まれ
1979 カリフォルニア芸術大学で美術学士号取得
1981 ニューヨークに戻り、エレクトロニック・アーツ・インターミックスに参加
1999 ニューヨーク市庁舎の近くにスタジオを構える

父親が世界最大級の発行部数を誇る雑誌であるリーダーズ・ダイジェストの元編集長で、裕福な家庭に育ったというから羨ましいね。
カリフォルニア芸術大学でマイク・ケリーと同級生だったと知り、驚く。
マイク・ケリーといえば2018年にワタリウム美術館で鑑賞した「マイク・ケリー展 デイ・イズ・ダーン」は、初めて経験した作品群で、衝撃を受けたからね!
マイク・ケリーと共に学んだ美大での教師がローリー・アンダーソンだったというのもびっくり。
パフォーマンスや音楽、マルチメディアの先駆者であるローリー・アンダーソンの授業ってどんな内容なんだろうね?(笑)

マイク・ケリーの個展についてまとめたブログに「マイク・ケリーがソニック・ユースのアルバム・ジャケットを手掛けた」ことを書いている。
トニー・アウスラーも交流があったようで、1970年代後半にキム・ゴードンと出会い、1985年に短編映画「Making the Nature Scene」を制作したという。
このタイトルで検索するとソニック・ユースの曲がヒットしたよ。

1983年に発表したアルバム「コンフュージョン・イズ・セックス(Confusion Is Sex)」に収録されている曲のようなので、映画のもとになっているのかもしれないね?
キム・ゴードンが監督した短編映画は、ニューヨーク・ダウンタウンにあった伝説的なナイトクラブ「ダンステリア」を舞台に撮影されているという。
友人Hはキム・ゴードンのファンだったよね!(笑)
映像を載せてみようか。

途中で入るナレーションと最後に踊っていたのはキム・ゴードン本人かな?
トニー・アウスラーはエディターとしてクレジットされているね。
この映像を観て、2024年6月に友人Hと一緒に鑑賞した「Mark Leckey Fiorucci Made Me Hardcore」を連想したよ。
マーク・レッキーの作品もクラブ(ディスコ)を舞台にしていたからね!
マイク・ケリーやキム・ゴードンと一緒に活動していたトニー・アウスラーはどんな作品を制作しているんだろうね?

SCAI PIRAMIDEに到着する。
「OPEN」という文字がなかったら閉館しているように見える。
恐る恐るドアを開けると、少し薄暗い照明の中、スタッフの姿が見える。
「どうぞご覧ください」
撮影について確認すると大丈夫とのこと。
最初に目に入ったのは「Bigger Than Life(2024年)」だった。
目と口の部分が動いている。
途中で何やら音も発していたようだった。
この作品が自宅の壁にかかっていたらイヤだろうなあ。
ずっと監視されている気分になりそうだもん。
どうやらそれがトニー・アウスラーの目論見みたいだね。

「Wicca」も2024年の作品とのこと。
火山の上をホウキにまたがり飛んでいるのは魔女?
顔の部分に映像プロジェクションが投影され、表情の変化や違った縮尺の顔が出現する。
長い時間鑑賞していたら違った感想があったかもしれないけど、SNAKEPIPEが観ていた時には美しい女性の顔が映し出されていた。
説明にあるような「疑似科学やオカルトへの新たな関心」を寄せるまでは感じなかったかも。(笑)

SNAKEPIPEがゾクゾクしたのは「Blue Mood(1992年)」だった。
トランクの中に座らされている布製の人形。
頭部は白い卵型。
ここに映像が投影されている作品で、非常に不気味なんだよね!
布製の身体部分が「ぞんざい」な造りになっていて、全体として3頭身くらいのサイズなのに、映っている顔は成人なので、そのギャップが気持ち悪さの原因かも。
京極夏彦の「魍魎の匣」みたいな実験だったり何やら犯罪めいた雰囲気で、とても気に入ったよ。
トランクごと欲しくなってしまったSNAKEPIPEだよ。(笑)

「Noumana」も2024年の作品なので、これも新作なんだね。
小さな人形や宝石みたいに光るチープな素材が組み合わさってキュート!(笑)
いくつかの場所に映像が投影されているんだけど、小さすぎて何の映像なのかよく分からなかった。
何か動いているだけで面白いよね。
全体のバランスや「おままごと」っぽい小型サイズが、とてもかわいい。
こんなブローチがあったら欲しいな!(笑)

白いカーテンで仕切られた別室に入ってみると、そこでは映像作品が展示されていた。
スクリーンの手前に大小3つの球体がぶら下がっている。
「My Saturnian Lover(s)」は2016-2017年に制作された作品とのこと。
1940年代後半を舞台にしたストーリーが展開されていたようだけど、意味はよく分からなかった。
映像の途中から鑑賞して、最後まで観なかったからね。
ぶら下がっている球体にスクリーンとは別の映像が投影されたり、鮮やかな色彩に目を奪われたりして楽しい時間だったよ。
最初は友人HとSNAKEPIPEしか鑑賞していなかったのに、いつの間にか数人の鑑賞者が増えていた。
席を他の人に譲り、会場をあとにする。

テクノロジーやメディアがいかに人々の心理に影響を及ぼしているかを探求しているというトニー・アウスラー。
メディア・アートの先駆者として名高いアーティストの作品を鑑賞できたのは収穫だね。
一緒に行ってくれた友人Hも楽しんでくれて良かった!
六本木に行った時には、なるべく立ち寄りたいギャラリーだよ。
道に迷わないように気をつけようね。(SNAKEPIPEだけか)

田名網敬一 記憶の冒険 鑑賞

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【毎度お馴染み!国立新美術館の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

現代アート好きの友人Hと久しぶりの会合を開くことになった。
前回は2024年6月で「GOMA ひかりの世界」を鑑賞し、表参道〜原宿を闊歩したっけ。(笑)
国立新美術館の「田名網敬一 記憶の冒険」が気になる、という友人Hの言葉を受け、行ってみることに。
すっきりとした秋晴れの日、六本木に向かったのである。

友人Hとは美術館で待ち合わせたので、SNAKEPIPEは一人で六本木駅から歩いて向かう。
六本木を歩くのは2023年9月の「テート美術館展」以来、約1年ぶりだったことに気付く。
随分久しぶりだったんだね!
そろそろ美術館が見えてくる。
前方に何やらピンク色の巨大な物体が見えてきた。
お目々ぱちくりの大きな金魚が「いらっしゃい」と言わんばかりにお出迎えしてくれているよ。
まつげがピンと張っていて可愛いね。(笑)
乃木坂駅から到着した友人Hと落ち合い、ピンクの金魚の前で記念撮影して楽しむ。
実はSNAKEPIPE、田名網敬一について全く知識がないんだよね。
ここで少し経歴を調べておこうか。

1936 東京都京橋生まれ
1957 日宣美展で特選を受賞
1958 武蔵野美術大学卒業
1975 月刊「プレーボーイ」誌 アートディレクター就任
1991 京都造形芸術大学 情報デザイン学科 教授
2013 京都造形芸術大学 大学院芸術研究科 教授
2024 死去

今回の展覧会開催2日後に、享年88歳で亡くなっているとは!
世界初の大規模な個展だというので、心して鑑賞しよう。

8月から開催されている展覧会なので、通常のチケット売り場は閉鎖され、展覧会場入口でチケットを購入するシステムに変更になっていた。
お客さんが多くないという証拠だね。(笑)
会場に入ると「すべて撮影OK」と案内され、嬉しくなる。
蔡國強展」の時もオッケーだったことを思い出した。
アーティスト側の判断なのかな?
会場に入ると黒をバックに、色鮮やかな、というよりド派手な屏風が目に入る。
「ここから始まりますよ」
と耳元でこっそり囁かれている気分になる。
進んでしまったら最後、異界をさまよう覚悟を決めないといけない。(笑)

「第1章」に歩を進めると、そこはサイケデリックな部屋だった。
1966年から67年に制作された「NO MORE WAR」という作品を中心に展示されていた。
作品の一部を切り取って壁までもペイントされているところが素敵!
通常、壁紙は白など単色のまま作品のみが展示されていることが多い中、どこを切り取って撮影してもカッコ良い一枚になる演出が素晴らしいよ。
「オレンジ色が強いですね」
友人Hが感想を言う。
サイケデリック・アートが大好物のSNAKEPIPE、この壁紙ごと欲しくなったよ!(笑)

この構図が良い、と友人Hからアドバイスされて撮ったのがこれ。
黒と白とオレンジの3色がとてもスタイリッシュだよね。
黒インクだけで描かれた作品もあったよ。
雑誌から切り抜いた女性のヌードを貼り付け、イラストと融合させた1967年の「WONDER WOMAN」シリーズ。
描かれているモチーフは、70年代以降も繰り返し使用されているんだね。
中央に見えるオレンジ色の「自画像」も謎めいていて面白い。
この作品を描いた1966年「田名網敬一の肖像」(イラスト集)を出版し、アーティストとしてのキャリアをスタートさせたと説明があったよ。

第1章の展示室だけで興奮してしまい、かなり時間を費やす友人HとSNAKEPIPE。
2人が反応したのが左の画像「モーターサイクル」だった。
「ヒステリック・グラマーみたい!」
田名網敬一の作品を観て、1969年のアメリカ映画「Hell’s Belles」のポスターに似た女性をシンボル・マークにしていたヒステリック・グラマーを思い出したんだよね。
制作年を確認すると2008年?
田名網敬一72歳の作品ということになるのかな。
「いい年してオンナの裸描いて、あなたヘンタイですよっ!」
と横尾先生に叱られるよね、と友人Hと大笑いしてしまう。
これは以前日曜美術館で宇野亞喜良を特集した時、横尾忠則が発した言葉をパロディにしたんだけど。
分かる人は笑ってくれるはず。(笑)

フォト・コラージュ作品も多く展示されていた。
作品をじっくり観ていると、何枚もの切り抜きが重ねられていることが分かる。
漫画や雑誌から、よくもここまで集めて貼り付けたよね!
そして作品数の多さにも驚く。
「雑誌の切り抜き」と入っている作品を軽く数えると、ゆうに60を超えている!
まるで偏執狂のように、切り貼りをしていたんだろうね。
一体何冊の雑誌や漫画を使ったんだろう?

田名網敬一はアニメーション(動画)制作にも取り組んでいて、アニメーション原画と動画の展示もあった。
画像は1973年「Oh Yoko!」の原画で、ジョン・レノンとオノ・ヨーコを題材しているんだよね。
動画がとても面白くて、涙を流して笑い転げてしまったSNAKEPIPE。
前のほうの席でスクリーンを見上げて鑑賞していたので、少し首が痛くなってしまった。
我慢してでも観続けたかった田名網敬一の作品、どうやらDVD販売されているようで、今でも入手可能かも?
「シャバダバシャバダバ〜」で有名な深夜番組「11PM」の依頼で制作された「Good-by Elvis and USA(1971年)」や「Good-by Marilyn」「Commercial War」はもう一度観たいよ。
「Oh Yoko!」の動画を載せておこう。

木やFRP(繊維強化プラスチック)に黒、赤、緑などのラッカーで色付けしている作品群が並んでいる。
何を表しているのか理解できない、不思議な造形なんだよね。
宗教や儀式に使用される、などと説明を受けたら信じてしまうかも。(笑)
足が極端に長い象や人体の一部に見えるような作品もあり、想像力を掻き立てられる。
「なんだこれは!」という驚きがあったら、作品として大成功だよね!

ピカソの母子像をモチーフにした作品が展示されている第9章に足を踏み入れるなり、声が出る。
ピカソの模写をするということ自体、あまり聞いたことがないと友人Hと話す。
更に驚いたのは、その数の多さ。
壁一面、ピカソなんだよね!
2020年のコロナ禍で模写を始め、500点を超える作品を描いているんだとか。
写経に近い感覚と説明されているけれど、継続力と執念に感服だよ!

2023年の作品「記憶は嘘をつく」のタイトルを読んだ瞬間、「確かにね」と口に出すSNAKEPIPE。
思い込みや勘違いにより、記憶が歪められている可能性大だもんね!(笑)
デジタルカンヴァスプリントと書かれているので、カンヴァスに印刷しているんだね。
田名網敬一が繰り返し使用してきたモチーフに歪みが生じている。
混沌(カオス)を再構築している感じかな。
赤塚不二夫とのコラボ作品もあり、「ドカーン」などと漫画で使われた文字がそのまま使用されているよ。
アメリカン・コミックの効果音を表すオノマトペを使ったコラージュやアニメーションを制作していた「クリスチャン・マークレー」を思い出したSNAKEPIPE。
マークレーもコロナ禍で始めた作品だったはず。
引きこもることで制作に没入できるアーティストもいるんだね。

「まだ展示が続いている!」
「いつになったら終わるんだろう」
友人Hと迷宮をさまよっている気分になってしまった。
ここでいよいよ最後の展示になったようだ。
マネキン大のバービー人形や田名網敬一とコラボした商品がびっしり並んでいる。
こんなに商品化されているとはびっくりだよ。
同じ衣装を着けたバービーはミュージアム・ショップで販売されていて、ちょっと欲しくなってしまった。
お値段3万円ほど。
SNAKEPIPE MUSEUMに飾りたいよ!(笑)

「田名網さんはDJみたい」
友人Hの感想が面白かった。
何枚ものレコードから音をつなぎ合わせて行く作業に近い作品だから、だって。
なるほど!(笑)

会場を出て時間を確認すると、3時間も鑑賞していたことが分かった。
こんなに長い時間一つの展覧会にいたことないかも?
暗闇の中で怪しげに輝く極彩色の世界に、完全に飲み込まれたみたいだよ。
スマホのバッテリー残量が極端に減っている。
写真を撮り過ぎたからだね。(笑)

SNAKEPIPEは「エロ・グロ・ナンセンス」のグロがない「エロ・ナンセンス」だなと思った。
「エロ」とは言っても「あっけらかん」とした「エロ」なんだよね。
70年代の「11PM」や芸能人水泳大会で「ポロリ」があったりする、裸に寛容だった時代背景も関係しているかもしれない。
予備知識ゼロで出かけた田名網敬一展、行って良かった。
友人Hさん、またご一緒しましょ!