【山下信一のフィギュア達】
SNAKEPIPE WROTE:
「面白そうな企画があるんだけど、一緒に行かない?」
と友人Mから電話があった。
友人Mとはこのブログに何度か登場している、映画やアート鑑賞に同行する情報通の友人である。
このMから「一緒に行こう」と誘われる催し物は、大抵SNAKEPIPEの琴線に触れることが多くハズレがない。
好みのタイプが似ているせいだろう。
今回誘われたのは六本木ヒルズ内にある森アーツセンターで開催されている「北原照久の超驚愕現代アートコレクション」。
「北原照久って知ってるでしょ?」
と聞かれたけれど、恥ずかしながらSNAKEPIPE、その方のことなんにも知りましぇん!
ROCKHURRAHに聞いてみると
・ブリキのおもちゃのコレクター
・「開運!なんでも鑑定団」に出演している鑑定士
・海まで自分の家、というような豪邸に住んでいる
とスラスラ答えるではありませんか!
えー、そんなに有名人なのー?
「知らないほうがおかしい」
とMにまで言われてしまった。
勉強し続け、テレビも見ないし雑誌も読まないために
「ピンクレディって誰ですか?」
とインタビュアーに問う東大生の話を聞いた時には
「えっ、世の中にはそんな人がいるんだ!」
とびっくりしたことがあったけど、今回のSNAKEPIPEはまさにその状態。
マズイねえ、これ!
いや、何がマズイってピンクレディの話で年代が判るってことが。(笑)
今回の企画は、その北原照久が館長を務める箱根の「北原ミュージアム」には展示されていない「もうひとつのコレクション」が展示されているとのこと。
ROCKHURRAHも口にしていたように、この方はブリキのおもちゃの世界的なコレクターだとか。
それ以外のコレクションとは何ぞや?
うーん、とっても楽しみ!
この時期がハロウィーンと重なっていたため「仮装して来館された方は半額」、って書いてあるよー。
本気で仮装して行こうかと思ったSNAKEPIPEだけど、友人Mが一緒なのでやめることにした。(笑)
とは言っても普段着はミリタリー系が多いので、それも一種の仮装(コスプレ)と言えるかもしれないけど?
平日だったためか、非常に人が少なくてガランとした森アーツセンター。
アート鑑賞はこれくらいがいいねー!
「もぎり」の女性が
「今回の展示は一部を抜かして撮影オッケーです」
と案内してくれる。
ぐがーーー!この時に限ってカメラを忘れてしまったSNAKEPIPE。
携帯もロッカーに入れてきちゃったし。
ええぇぇっ、とその女性の前で崩れてしまった。うーん、残念!
但し悔しいから言うわけじゃないけど、誰でも撮影オッケーな作品をあえてSNAKEPIPEが撮らなくてもいいかな、とも思ったのも事実。
脳内記録装置あるし。(笑)
一番印象的だったのは、恐らく今回の目玉だと思われる山下信一のフィギュア達。
高さ約60cmの箱の中に入った半裸の少女がズラリと並んでいる。
箱はアクリルケースもあれば、バービー人形が入っているようなパッケージもある。
一つ一つの人形の表情や衣装などがあまりに精巧に造られていて、観れば観るほど様々な発見があった。
背景になる箱も凝っていて、箱まで含めて作品なんだなとよく判る。
人形達はレトロな雰囲気も素敵だけれど、未来的なタイプのフィギュアのほうに惹かれた。
まるで「攻殻機動隊」の中に出てくるような人形達。
「フィギュア・コンプレックス」なんてタイトルが付いてたから余計にそう感じたのかもしれないね。
人形好きのMも圧倒されたようで
「ずるいと思わない?これ全部北原さんの物なんだよ!」
とお怒りモード。
「一体よこせって感じ!」
って結局欲しいだけじゃん。(笑)
いや、でも良く解るよその気持ち。
SNAKEPIPEも家に飾りたいと思ったからね。
北原照久という方は昭和の香りが好きなんだろうね。
昭和30年代をイメージした架空の風景を描いた毛利フジオの作品群は、経験したことがない時代のはずなのにどこか懐かしさを感じさせる。
平和でのどかな明るい日本の姿。
本当に昭和30年代ってこんな雰囲気だったのかなあ?
毛利フジオが憧れて描いているから色調が明るいのかしら?
故・今敏監督「妄想代理人」の中にも昭和30年代っぽい書き割りの風景が出てきたことを思い出す。
やっぱりあの時もどこか懐かしくて良い時代だな、と感じたっけ。
昭和の時代をジオラマで表現していたのが山本高樹。
新宿ゴールデン街や有楽町ガード下など、とても庶民的な風景を精巧に再現している。
ミカン箱くらいの空間に存在している世界。
その中で本当に生きているような表情をした、ほんの数センチの人々。
じーっと観ていると、その世界の中に入って行かれそうである。
隅々までこだわって造られていて、これらの作品群も奥のほうまで観れば観るほどに発見がありとても楽しかった。
昭和の代表と言えば、やはりこの方横尾忠則先生!
SNAKEPIPEが敬愛するアーティストであり、何度か個展に足を運んだこともある。
作品ももちろん大ファンだけれど、浮世離れした横尾氏本人にも魅力を感じるのだ。
前述した山本高樹の作品「新宿ゴールデン街」にも横尾氏のポスターが作品内作品としてミニチュアで登場していたね。
横尾忠則氏本人の作品としては今回は油絵が一枚と、他にはポスターが展示されていた。
今までほとんどのポスター作品を観たと思っていたのに、今回初めて観る物がありびっくり。
どうやら個人や企業などが依頼して作られた作品だったようで。
県の観光案内から結婚した記念などに横尾氏のポスターとは!
ちょっと贅沢だけど、横尾氏の独特の構図と色彩は確実に観る者を捉えるはずなので宣伝効果は抜群なんじゃないかな?
もう一人昭和、という括りというよりはファッションの興味から書きたいのは岡本博。
この方はイラストレーターであり「トイズ・マッコイ」というバイク系アパレルメーカーの創始者だそうで。
岡本博の名前を言っても知らなかったROCKHURRAHだけど、スティーブ・マックィーンのイラストを見せたら
「あぁ、この人か。」
と分かった模様。
リアル・マッコイズの頃からスティーブ・マックィーンがテーマだった、とROCKHARRAHは知ってたようで。
今回展示の油彩画(イラストだったのか?)はモチーフがバイクとB-3ジャケットとはさすが!
ムートンの質感が良く出ていて感心してしまった。
今回のアートコレクションは、とても興味深く面白い展示がいっぱいで楽しかった。
恐らくブリキのおもちゃだけだったら、SNAKEPIPEは同じ感想を持たなかったかもしれないね。(笑)
SNAKEPIPEは現代アートを観る時にいつも
「その作品を欲しいと思うかどうか」
を基準にして良し悪しを決めている。
もちろん本気で「絶対家に持って帰る」とまでは思わないし、アート作品を買うなどと大それたことを考えたこともない。
それを実践しているのが北原照久という人なんだね。
「家に飾って、心ゆくまで眺めたくて購入しました」
みたいに書いてあるし!
これだけの作品を買うって一体どれだけのお金持ちよ?
好きな物を追い求めて収集するコレクター気質は誰でも持っている願望なんだろうけど、それを極めて職業にまでしてしまった人は少ないよね。
ユイスマンスの「さかしま」や江戸川乱歩の小説でも描かれるように、自分にとっての楽園を構築することがライフワーク。
そんな生き方ができたら楽しいだろうね!