SNAKEPIPE WROTE:
大ファンである鳥飼否宇先生の新作が刊行された。
鳥飼先生の名義としては2015年3月の「生け贄」以来ということになるんだね。
そして本格ミステリ大賞受賞後初の作品、お待ちしておりました!(笑)
タイトルは「ブッポウソウは忘れない(とり研の空とぶ事件簿)」。
出版社であるポプラ社に情報が載っていたので転用させて頂こう。
目撃者はインコ?
大学の鳥の研究室を舞台に巻き起こる不思議な事件の数々。 そこに隠された「とリック」の秘密とは!?
第16回「本格ミステリ大賞」受賞作家が挑む 草食系ミステリ!
鳥の研究室・宝満研に所属する大学4年の野鳥翼。
平凡な大学生の彼の周りでは、ちょっと不思議な事件が巻き起こる。
鳥たちもまきこんで、へっぽこな推理を繰り広げる翼。
そんな中、彼の片思い中の先輩・室見春香が突然姿を消して――。
ありゃ?
主人公の名前、間違ってない?
野鳥じゃなくて宗像だよね。
ポプラ社に連絡しないと。(笑)
と思ったら、帯にも同じ文言が書いてあるよ?
あれー?
購入後すぐに読み始めるSNAKEPIPE。
今までの鳥飼先生の作風とは一味違うね。
主人公が大学生だからかな?
では感想をまとめていこう!
「ブッポウソウは忘れない」は連作短編なので、それぞれの短編について書いていこうと思う。
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未読の方はご注意ください!
第一話 慈悲心鳥の悲哀
大学の理学部生物学科に所属する宗像翼は動物生態学を研究している。
日本における鳥類学の第一人者である宝満教授が指導しているので、宝満研と呼ばれているらしい。
画像左のサンコウチョウという鳥を観察しているところから物語が始まる。
宝満研にいる学生達は、それぞれ研究テーマを持っていて、観察を続けデータをまとめているようだ。
同じ学年で宝満研にいるのが曽根みやこという美貌のお嬢様。
曽根の研究対象はオオルリという鳥。
せっかく観察しようとしたのに、ジュウイチという鳥に邪魔されてしまったと憤慨する。
ジュウイチには托卵という習性があるという。
托卵とは卵の世話を他の個体に托すること、つまり卵を他の巣に産み、温めてもらい子育てまでお願いしちゃうことを指すらしい。
自分の子(ヒナ)じゃないことに気付かない親鳥(仮親)にも驚くけれど、他人(他鳥)任せで育児(育鳥)放棄するのが当たり前になっている種類がいることにもびっくりしちゃうよね。
そのジュウイチの別名がタイトルの慈悲心鳥だという。(画像右)
鳴き声からその名前が付いたというけれど、 托卵の習性と慈悲という単語が結びつかないなあ。
ジュウイチのヒナの知恵もまた、慈悲とは正反対だしね?
第一話はジュウイチのヒナにまつわるミステリーだった。
話の食い違い、先入観、思い込みといった、誰にでも色んなシチュエーションで起こり得る話だと思う。
よく読まないと「こんがらかりそう」になるので注意が必要!(笑)
第二話 三光鳥の恋愛
第一話から登場していた古賀先輩のことを書いていなかったね。
古賀富吉は宝満研の修士課程2年で、甘い物とミステリーが好きな先輩だという。
丸々した体型と性格の先輩だというから、相談事をするのはもってこいの人物だよね。
古賀先輩はほとんど全ての話に絡んでくる。
さすがにミステリー好きだからね。(笑)
古賀先輩、なかなか良い味出してるんだよね!
登場するとホッとするタイプの好人物だね!
上に載せたサンコウチョウの尾の長さの違いについて観察と考察を続けている宗像翼。
この尾の長さとモテ度合いには関連性があるのかどうか?
先日たまたまライオンの立髪が男らしさのアピールなのかどうかを考察するテレビを観た。
ライオンの生息する地域とライオンの種類によって違う、というのが結論だった。
動物界にはそれぞれのルールがあるだろうからね。
サンコウチョウの恋の季節に対応したかのように、ある人物が書いたと思われるラブレターを発見してしまう宗像翼。
一体誰が誰に宛ててラブレターを書いたのか、というミステリー。
第二話が、もしかしたら1番今までの鳥飼先生っぽい雰囲気なのかもしれないね?
第三話 耳木菟の救済
本来であれば宝満研の先輩である修士課程2年の門司が世話をしているはずのオオコノハズク(画像左)。
ところが面倒を見ているのは宗像翼。
門司が入院しているからだという。
第三話はどうして門司が入院することになったのかというミステリーだ。
ミステリーもさることながら、この門司という人物がほとんど喋らないという設定が面白い。
ものすごく頭が良いとされる門司だけれど、大抵の会話を「あ行」で済ませるという。
「ああ」とか「うう」という程度なんだよね。
こういう人って実際にいそうだから、門司さんが返答する度に何度も笑いそうになってしまった。(笑)
そして中に登場する装置にも興味が湧いた。
ちょっと試してみたいよね!
ROCKHURRAHが気付いた誤字だと思われる箇所をメモ書き。
208ページ、14行目。(あえて伏せ字にして記述)
まさか古賀さんと◯◯さんが付き合っていたとは。
これ違うよね?(笑)
第四話 鸚哥の告発
宝満研の助教である九千部響が意識をなくして、机に突っ伏しているところを古賀先輩と宗像翼が発見する。
意識を失ったのは、誰かに首を絞められたせいだという。
その場にいた唯一の目撃者は、研究対象だったインコ!
文中に出てきたヨウムという種類は、アフリカ原産のインコなんだよね。(画像右)
このインコは頭の回転がよく、状況に応じた言葉を喋るという。
そのインコが発した言葉から、犯人を割り出そうとするミステリーである。
宗像翼と同学年の曽根みやこも美貌の女性、宗像翼憧れの室見春香もマドンナ、九千部響はメガネを外すと驚く程美しい目を持った女性、九千部響と同学の元ミス・キャンバス、芦屋日登美は今でも男子学生の憧れの的といった具合に、作中に登場する女性は皆揃って美女ばかり!
キレイな人が多いと、頑張れそうだよね!
きっと古賀先輩はあまり気にせず、何か食べながら読書してそうだけど。(笑)
この話も鳥飼先生らしい展開で、読みながら笑ってしまったSNAKEPIPE。
電車の中では、危ない人に間違われそうだから気を付けないと。(笑)
第五話 仏法僧の帰還
左の画像が本のタイトルになっている「ブッボウソウ」なんだよね。
なんて可愛らしいんでしょう!(笑)
そして賢そうな顔立ち。
カメラに向かってポーズを決めているように見えるほどじゃない?
この写真を見て、一目惚れしてしまったSNAKEPIPEだよ。(笑)
このブッポウソウが一年経って同じ巣に戻ってきたことから、「ある謎」が解決するのが最終話だった。
読み進めていく間、なんだかモヤモヤしていた霧がサッと晴れてスッキリすることができた!
良かった!(笑)
SNAKEPIPEには分からなかったけれど、鳥飼先生と同郷のROCKHURRAHは、読み始めてすぐに気付いたことがあるという。
人名が福岡県の地名になっているというのだ。
* 宗像市
* 小倉南区曽根
* 宝満山
* 室見川
* 那珂川
* 古賀市
* 遠賀郡岡垣町
* 田川郡添田町
* 北九州市門司区
* 福智山
* 糸島市
* 大野城市
* 九千部山
* 朝倉市
* 嘉穂郡
* 春日市
* 糟屋郡須恵町
* 北九州市若松区
* 飯塚市
* 大川市
* 遠賀郡芦屋町
* 周防灘
* 北九州市小倉北区富野
さすがによく知ってるね!(笑)
なるほど、見比べてみると納得できるね。
どこにどの地名があるのかを確認するのも楽しそう!
大野城市が大野譲先輩の名前になっているところが、鳥飼先生らしいよね、とROCKHURRAHが笑っている。
ニック・メイソンの久米一村みたいだもんね。(笑)
大野城市には小学校時代まで住んでいたというROCKHURRAH。
他にも縁のある地名があったようで、懐かしそうに思い出話を語ってくれたよ!
鳥飼先生の「ブッポウソウは忘れない」に関連するような映画をROCKHURRAHが用意してくれた。
「映画の殿 第19号」でも特集した我らがジャック・ブラック主演の「ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して」(原題: The Big Year 2011年)である。
1年間に北米大陸で見つけた野鳥の種類の数を競う、アメリカ探鳥協会主催の記録会は「ザ・ビッグイヤー」と呼ばれる。
それは私たちが想像する「バード・ウォッチング」とは大きく異り、出場者はみな仕事や家庭生活に支障をきたすほどの時間と大金を注ぎ込み、1年間に40万キロ以上を移動して鳥探しにあけくれる。
大人になりきれない「ビッグ・ボーイズ」たちが、北米の雄大で美しい自然の中を、幸せを追い求めて奔走する様を爽やかに描いた「バード」フル・コメディ
「ザ・ビッグイヤー」と呼ばれる大会は実在していて、そのルポルタージュを元に映画化されているという。
鳥好きの人にとってはたまらない世界だろうね!
そろそろ40歳も目前という年齢にも関わらず、両親と同居。
どうやらバツイチらしいけれど、未だに夢を見ている、ジャック・ブラック演じるブラッド・ハリス。
その夢とはズバリ、「ザ・ビッグイヤー」で記録を更新すること。
探鳥の間は仕事ができないので、借金をしながら移動し、寝泊まりできる施設を渡り歩くことになる。
母親の援助で可能になった「ザ・ビッグイヤー」の参加。
正直なところ、親が甘いなと思ってしまう。
最近はどこの国でもこんな感じなのかな?
観ている途中で、SNAKEPIPEのスマートフォンが鳴った。
電話に出ようとスマートフォンを手にするけれど、着信していない!
なんとそれは、劇中のジャック・ブラックの着信だったんだよね。
偶然にも着信音が同じだったとは。(笑)
鳥好きだから「バード」と付く曲にしたかったんだろうね。(笑)
「ザ・ビッグイヤー」の記録保持者であるケニー・ボスティックを演じたのがオーウェン・ウィルソン。
記録のためなら手段を選ばない悪辣ぶりは、嫌う人も多いはず。
それでもやっぱりこの人も、鳥が好きという気持ちが強いんだよね。
奥さんよりもずっと好きだというからすごいよね。(笑)
探鳥界ではトップの座に君臨しているので、様々な雑誌の表紙になっているところが、まるで「ズーランダー」のモデルの時みたいで面白かった。
「ズーランダー2」、そろそろ出るから楽しみだ!(笑)
もう一人、ずっと「ザ・ビッグイヤー」を夢見ていたのが実業家のステュ・プライスラー。
演じたのがスティーブ・マーティン。
「サタデー・ナイト・ライヴ」に出演したり、脚本を手掛けていた俳優・コメディアンだから、ベン・スティラーやウィル・フェレルの大先輩になるんだね。
この3人が同じ年に「ザ・ビッグイヤー」の記録更新を狙って奮闘する物語なのである。
「ザ・ビッグイヤー」に参戦していることは内緒にして、自分が何種類の鳥を見ているか言わない。
探鳥の世界といっても、かなり激しいバトルが繰り広げられるんだね。
そして気象条件にも詳しくないと、いつどこでどんな鳥に出会えるかを予測できない。
偶然出会うだけでは記録を更新するほどの種類を確認することができないことが分かる。
時間とお金だけではなく、様々な知識、体力、気力など本当に探鳥って大変なのね!(笑)
上の画像で3人が並んで見ているのはハクトウワシ。
ハクトウワシのペアが手をつないで急降下していくシーンには驚いた!
とてもロマンチックな行動だよね。
鳥を求めて実際に撮影を行ったと思われるので、スタッフはかなり苦労したんじゃないかな?
製作費に対して興行収入が少な過ぎる数字みたい。
それでも「ザ・ビッグイヤー」と同じように、お金では買えない素晴らしい経験ができたのではないかと想像する。
鳥を探す旅、なんて実際にはなかなかできないからね。
きっと鳥が好きで、いろんな種類に詳しい人だったら、もっと楽しめるんだろうね?
映画を観ているうちにSNAKEPIPEも冒険している気分になっていたよ!
SNAKEPIPEもROCKHURRAHもバードウォッチングをしたことがないので、この映画を観て宗像翼やトビさんの姿を想像しやすくなったかもしれない。
そしてもちろん鳥飼先生も、同じように鳥を探して観察、研究されていることでしょう。
「ブッポウソウは忘れない」はもしかしたら、鳥飼先生が実際に大学時代に経験されたTrue Storyが元になっているのかもしれない。
そんな想像をしながら読むと面白いよね。
一体鳥飼先生は登場人物の中の誰なのか?
宝満教授?古賀先輩?門司先輩?主役の宗像翼?(笑)
「観察者シリーズ」とは違ったネイチャー・ミステリー、楽しかった!