ふたりのイエスタデイ chapter26 /アート系映画

20250119 06
【今観てもショッキングな「アンダルシアの犬」のワンシーン】

SNAKEPIPE WROTE:

「デヴィッド・リンチ氏死去」
1月17日、朝のニュースで飛び込んできた訃報に、動きが止まる。
頭のどこかに空洞ができたようで、言葉が理解できない。
ただ、昨年リンチが自身の病気を発表してから、少しだけ覚悟があったことも事実。
それにしても、78歳では早過ぎるよ。
先週もリンチのグッズ特集を書いたばかりなのにね。

リンチの、映画、絵画、写真、音楽と幅広い作品を観せてもらった。
SNAKEPIPEの知見を広げてくれたし、作品を通じてたくさんの喜びを与えてくれた師匠だよ!
このブログでも何度か書いているけれど、1991年原宿の東高美術館で一度だけリンチにお目にかかることができたことは宝物だね。
リンチには感謝の思いでいっぱいだよ。
本当に今までありがとうございました。
これからも変わらず、リンチのファンを続けるし、ブログで特集を組むこともあるかもしれない。
SNAKEPIPEの中で、リンチは永遠のスターだからね!

リンチの作品を最初に知ったのと同時期、SNAKEPIPEがまだ少女だった頃の話。
毎週のように出かけていたのが、早稲田や高田馬場近辺の小さな映画館巡りだったんだよね。
ACTミニ・シアター三百人劇場早稲田松竹や、マンションの1室で靴を脱いで体育座りで観る映画館など、様々な場所でレトロな映画を鑑賞したものだった。
大抵は一人で出かけていたように記憶している。
情報源は「ぴあ」で、小さい文字を追って良く出かけたものよ。(笑)
今日はその頃観ていた映画を紹介していこうと思う。
SNAKEPIPEを形作った思い出深い作品だよ。

学生だったSNAKEPIPEは、まだ実家に住んでいた。
写真家だった父親が集めた映画関連の本を手にしたことから、レトロな映画への興味が湧く。
岩波新書くらいのサイズだったので、紹介されている写真はとても小さかったはず。
その中で気になるタイトルを記憶し、「ぴあ」で上映している映画館を探していたのである。
戦艦ポチョムキン(原題:Броненосец «Потёмкин» 1925年)」はロシアのセルゲイ・エイゼンシュテイン監督作品。
古典中の古典と言える作品だよね。
最も有名な「オデッサの階段」シーンは、乳母車のシークエンスを含め、後にフランシス・ベーコンがメガネの割れた老婆を描いたりと、各方面に多大な影響を与えているよね。
トレイラーを載せておこう。

ロシアの次はポーランドにしてみよう。
灰とダイヤモンド(原題:Popiół i diament 1958年)」は、アンジェイ・ワイダ監督作品だよ。
暗殺者の若者が主人公で、無鉄砲な生き様に男気を感じる人もいるかもしれないね。
屋上にシーツがかかっている中を逃げる主人公が印象的だった。
このシーンも、他の映画で真似されているのを観たことあるかも。
アンジェイ・ワイダ監督では、他に「地下水道」も観たなあ。
かなり退屈な時間を過ごしたように覚えているけれど、昔は我慢強かったかも。
ちゃんと最後まで観てたからね。(笑)
「灰とダイヤモンド」のトレイラーも載せておくことにしよう。

アンダルシアの犬(原題:Un Chien Andalou 1929年)」はルイス・ブニュエルとサルバドール・ダリによって制作されたシュルレアリスム映画。
観ていた当時のSNAKEPIPEは、シュルレアリスムという言葉を知らなかったよ。
不可思議なシークエンスの連続で、特にストーリーはなかったように記憶しているけど、違っていたらスミマセン!
スペインの2大巨匠が手かげたショート・フィルムは、今だったら簡単に動画配信サービスで観ることができるけれど、学生だったSNAKEPIPEの時代は1回逃したら、次はいつチャンスが訪れるか分からない上映だったはず。
方向音痴で、今みたいに「乗換NAVI」などがない時代、よく通ったもんだ。(笑)
「アンダルシアの犬」は、不条理小説を好んでいたSNAKEPIPEの好みにピッタリの映画だった。
こちらもトレイラーがあったので、載せてみよう。

ルイス・ブニュエル監督作品はよく観に行ったっけ。
「小間使の日記」「ブルジョアジーの密かな愉しみ」「自由への幻想」など、夢中になって観ていたよ。
今回は「昼顔(原題:Belle de jour 1967年)」について書いてみよう。
少女時代のSNAKEPIPEが鑑賞するにしては、ちょっと刺激的な内容だったかもしれないね?(笑)
この映画の中で最も印象に残っているのは、カトリーヌ・ドヌーヴの美しさ!
スタイリッシュで憧れてしまうほど。
周りの娼婦達も、なんだかカッコ良く見えてしまったし。
ラストシーンが謎だったけれど、やっぱり今でもカトリーヌ・ドヌーヴ好きだよ。
トレイラーはこちら。

去年マリエンバードで(原題:L’Année dernière à Marienbad 1961年)」で一番目を引いたのは、ポスターの背景にある庭園だった。
シンメトリー構造の、不思議な三角形がモチーフになった庭園が、先に書いた父親の映画の本に載っていて、惹かれたよ。
鑑賞した後には、庭園の記憶はあまり残っていなくて、とにかく頭がぐるぐるしたことを覚えている。
「去年マリエンバードで」何かあったようなんだけど、それがなんだかはっきり分からないまま、モヤモヤしたんだよね。
検索するとどうやら430のシーンで構成されていたらしいから、SNAKEPIPEが混乱するのも無理はないね。
衣装担当がココ・シャネルだって?
それも知らなかったよ。(笑)

最後にゴダール監督の「勝手にしやがれ(原題:À bout de souffle 1960年)」を紹介しよう。
今回6本の映画について書いたけど、全てヨーロッパ映画だね。
ヌーヴェル・ヴァーグ(ニュー・ウェイヴ)という、1950年代から始まった映画の運動の中心人物だったゴダール。
ジャン=ポール・ベルモンドの奔放さは、先に書いた「灰とダイヤモンド」の主人公マチェクに近い雰囲気だったように覚えている。
破天荒な若者の生き様を描く作品というだけでなく、ヌーヴェル・ヴァーグならではの手法もあるようだけど、あまり覚えていないよ。(笑)
今観てもオシャレでカッコ良いね。
トレイラーはこちら。

「二人のイエスタデイ」として、久しぶりに思い出しながら、若かりし頃夢中になった映画について書いてみたよ。
今回はカルト系は入れてないんだよね。
SNAKEPIPEは、アートの基本を映画で習ってたのかもしれないな。
映画監督のジョン・ウォーターズは「恥ずかしい趣味」としてアート映画鑑賞を挙げている。
ジョン・ウォーターズもリンチと同い年の78歳。
ホドロフスキー監督は95歳。
皆さん高齢になっているので、健康に留意して欲しいね!

SNAKEPIPE MUSEUM #74 Stuart Pearson Wright

20250105 05
【Halfboy and Halfsisterは2018年の作品】

SNAKEPIPE WROTE:

2025年最初のブログだね!
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
元旦にROCKHURRAHが書いた記事にもあったように、SNAKEPIPEは病み上がりなんだよね。
言葉通りの寝正月になってしまい、計画していたことができなかったのが残念。
ほとんどが大掃除に関することなので、これから気長が進めていこう。
年末だけが掃除のチャンスじゃないしね?(笑)

まだ正月だけど、ROCKHURRAH RECORDSでは普段同様の記事を書いていくよ。
今回は「SNAKEPIPE MUSEUM」として、Stuart Pearson Wrightを紹介したい。
読み方はスチュアート・ピアソン・ライトで良いのかな。
作品の前に経歴を調べてみよう。

1975 イングランド中東部のノーサンプトンに生まれる
1999 ロンドン大学 スレード美術学校 美術学士 (優等学位)
2003 ロイヤル・ドローイング・スクール「ドローイング・イヤー」
2014 妻と2人の子供と共にイングランド東部サフォークの田舎にある城に移住

情報が少ないので、わかっているのはこれくらい。
本人のサイトには「2004年王立芸術協会の依頼で制作したエディンバラ公爵の肖像画」についても記載されていて、上半身裸の王子に青いハエが描かれていたため、受取を拒否されたという。
個展の開催や数々の賞を受賞していて華々しい経歴だけど、上に書いたようなパンク要素を併せ持ったアーティストだと分かるね。
どんな作品なのか、早速観ていこう!

ピアソン・ライトの作品で一番最初に目に留まったのがこの作品。
「Middlesbrough」は1998年に制作された油絵なんだよね。
「Middlesbrough(ミドルズブラ)」 は、イングランド北東部に位置する都市の名前だという。
2人の子供を抱き、ベンチに座る母親。
目には光がなく、絶望や悲嘆といった単語がよく似合うよ。
子供に目をやると、なんとも不気味な顔立ちにゾッとする。
おじいさんみたいな顔をした膝に乗っている子供も、泣き出しそうな左の女の子も、通行人から頭を撫でられたりお世辞を言われることがないほどの醜悪さ。
これを描いたピアソン・ライトは23歳?
まだロンドン大学在学中だったんだね。

「The Ventriloquist(腹話術師)」は2001年の作品。
自分とそっくりの人形と対峙するのってどんな気分だろうね?
腹話術師というのは、紀元前にまで遡る歴史があるんだとか。
日本で有名なのは「いっこく堂」かな。
全く唇を動かさず、人形のセリフを吹き替える芸に驚いたことがあるよ。
ピアソン・ライトの腹話術師はどうだろう。
まず見た目のインパクトが強いので、座っているだけで面白い。
どんな掛け合いが行われるのか、観てみたいよね。(笑)

「Gallus gallus with Still Life and Presidents」は、ピアソン・ライトが2001年にBPポートレート賞で1位を受賞した作品だという。
「Gallus gallus」とはニワトリを表すラテン語で、弱さや臆病さ、あるいは田舎的で素朴なシンボルだという。
テーブルの真ん中に死んだニワトリがいるのが分かるね。
「Still Life(静物画)」と「Presidents(大統領たち)」を組み合わせることで、風刺やブラックジョーク的な意味合いがあるみたいだよ。
そうした意味を知った上で大統領たちの顔を確認すると、どこかしょぼくれて見えてくる。
ピアソン・ライトは、ちょっとヒネった表現が得意みたいだね。

「The Tragedy of Maurice and Tabitha」(モーリスとタビサの悲劇)は、2000年の作品。
背景には、まるでユトリロのような白い建造物が描かれ、薄曇りの空も美しい。
手前にいる人物に目をやると、なんだか様子がおかしいよね。
バラバラに切断されたタビサ(?)の頭部を愛おしそうに抱きかかえるモーリス。
マネキン人形みたいに、体のパーツを組み立てられるようなので、人間ではないのかも。
モーリスの様子をじっと見つめている、左の男性も意味不明。
ピアソン・ライトには「なんか変」と思わせる作品が多くて、とても好みだよ!

ピアソン・ライトは自画像をよく手掛けていて、左は「I’ll never stop lovin’ you」という2010年の作品なんだよね。
西部開拓時代をテーマにしているようで、カウボーイ姿になっている。
隣の女性は「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラみたいだし。(笑)
他にも中世の騎士に扮した自画像や動画もあったよ。
先日のキリコ展で、キリコも様々なコスプレで自画像を描いていたっけ。
自画像を描く人っていうのは、やっぱり自己愛が強い人なのかなあ?
それにしてもピアソン・ライトの画筆の素晴らしさ、伝わるよね。

「Wanderer」は2014年の作品。
意味を調べてみると「放浪者、さすらい人」といった旅人みたいな訳になったよ。
SNAKEPIPEには、ホラー映画のワンシーンに見えてしまったんだけどね。(笑)
湖で作業を行って帰るところ、月明かりにふと目をやった犯人と想像したよ。
手には何も持っていないから、すべて湖に投げ捨て、証拠隠滅を図ったに違いない。
静寂に包まれた絵画なのに、不穏な空気を感じることができて素晴らしいよ。
何気ない一枚なのに、物語が浮かぶのは楽しいからね!
スペインのアーティストであるエンリケ・マルティを彷彿させるよ。
これからもピアソン・ライトに注目していこう!

映画の殿 第69号 韓国ドラマ編 part23

【今回は全員女性が主役だよ!】

SNAKEPIPE WROTE:

いよいよ今年も約10日ほどで終わりになるね。
師走と言われるだけあって、12月は時間が速く過ぎていくよ。
それでも毎日かかさないのがドラマ鑑賞!
新旧併せて紹介していこう。
毎回書いていることだけど、ROCKHURRAH RECORDSの鑑賞順で、制作年順ではないのでお間違いなく。

嫉妬の化身〜恋の嵐は接近中〜(原題:질투의 화신 2016年)」は、ラブコメの女王として名高いコン・ヒョジンが主役なので、観たかったドラマなんだよね。
「椿の花咲く頃」や「最高の愛〜恋はドゥグンドゥグン〜」などでファンになったよ。
今回はどんな役どころで笑わせてくれるのか楽しみ!(笑)
画像右に写っているのは「恋のスケッチ〜応答せよ1988〜」でソン・ソヌを演じたコ・ギョンピョ。
「恋のスケッチ」の時は高校生だったのに、今回は財閥の御曹司だって。
韓国の俳優は実年齢よりも若い役でも、全然問題なく演じるよね。
まずはあらすじを書いてみようか。

学歴もお金もない非定期職の気象キャスターピョ・ナリ。
放送局入社早々、イケメン記者イ・ファシンに一目ぼれしてずっと片思いをしていた。
しかし、ファシンとは何もなく、彼は”ある事”のせいでバンコクに飛ばされる。
そんなある日、ひょんなことでファシンと仕事をすることになったナリは、バンコクに向かう飛行機の中でイケメン御曹司コ・ジョンウォンと出会い胸をときめかす。
でも、実はジョンウォンとファシンは親友だった。
バンコクで集まった3人。三角関係のような…?ないような…?妙な関係が始まろうとしていた…
(KnTVより)

今回のコン・ヒョジンはお天気キャスター役だね。
トレイラーも載せておこう。

何年も片思いをしてきたイ・ファシンの体を触りまくるコン・ヒョジンに大笑い。(笑)
そのおかげで病気に気付くことができたので、感謝すべきなのかもしれないね?
お天気キャスターというのが、自分で気象情報をチェックしてテレビで伝えているとは知らなかった。
韓国だけの話なのかな?
コン・ヒョジンが抜群のプロポーションだと分かる、露出度高めの服装もあったよ。
自信があるから出せるんだろうね。(笑)
全24話あるドラマだけど、途中が中だるみで少し飽きてしまった。
単なる恋愛物になってしまうと興味が薄れてしまうSNAKEPIPEだよ。

悪魔なカノジョは裁判官(原題:지옥에서 온 판사 2024年)」は、ディズニープラスにて視聴。
「シーシュポス: The Myth」や「ドクタースランプ」などに出演していたパク・シネが主役なんだよね。
「ドクタースランプ」は今年5月の「映画の殿 第64号」で感想を書いている。
パク・シネは34歳なのに高校生役をやっていて違和感なかったんだよね。(笑)
今回はポスターからして妖艶な雰囲気。
1年の間に高校生から悪魔まで演じるとは、パク・シネすごい!
あらすじを書いてみようか。

超エリートで美人な裁判官カン・ビンナの正体は、許されざる者を殺して地獄に送るという任務を全うするため、地獄からやって来た“悪魔”だった?!
数多くの罪人を裁く中で、ビンナは誰よりも人間的な刑事ハン・ダオンに出会う。
はじめは彼を利用するつもりだったが、徐々にダオンの温かさと誠実さに触れ、想いを寄せるビンナ。
果たしてビンナは任務を成し遂げることができるのか、それともダオンのために全てを投げ出すのか。
(ディズニープラスより)

トレイラーはこちら。

パク・シネは、キツめの性格でコーラを飲んだ後にゲップをするような女性らしさを見せない役どころを演じていた。
イメージを変えたいのだとしたら、今回の残酷な悪魔役は大成功。
赤い髪色に紫の瞳も似合っていたよ。
温かい感情を持ち合わせていないはずの悪魔が、人間に寄り添っていくうちに愛情に目覚めるというストーリーはありがちかも。
最終話に近づくにつれ、パク・シネの悪魔的要素がなくなってしまったのが物足りなかったSNAKEPIPEだよ。

貞淑なお仕事(原題:정숙한 세일즈 2024年)」は、「椿の花咲く頃」や「愛の不時着」で名バイプレイヤーだったキム・ソニョン(画像左から2番め)を目的に観始める。
いつも良い味出してる女優なので、期待しちゃうんだよね。(笑)
他3人の女優については、もしかしたら他のドラマや映画で観ていたのかもしれないけれど、はっきり記憶していないよ。
タイトルにある「貞淑なお仕事」については、あらすじとトレイラーでお伝えしてみよう。

1992年、性がタブー視されていた、韓国の保守的な田舎町クムジェ。
ハン・ジョンスク、オ・グムヒ、ソ・ヨンボク、イ・ジュリら4人の女性たちは、自立した女性としてお金を稼ぐため、“訪問販売シスターズ”としてアダルトグッズの訪問販売を始める。
時に社会の偏見に立ち向かい、友情を深めながら成長していく彼女たちだが……。(シネマトゥデイより)

トレイラーでもう少し詳しく観ていこうか。

今から30年前の田舎町で、アダルトグッズ販売で一旗揚げようとする女性4人組という設定が面白い。
受け入れられないのは当然で、奮闘しながら売上を伸ばしていく過程が見どころ。
4人の女性がそれぞれの事情を抱えながらも、仲良く助け合う姿が微笑ましい。
途中からアダルトグッズ販売の話ではなくなってしまうんだよね。
「訪問販売シスターズ」に関係があるストーリーではあるけれど、取ってつけたような展開はイマイチだったかも。
「愛の不時着」や「ヴィンチェンツォ」で印象的だったイム・チョルスが、キム・ソニョンの旦那さん役で出演していた。
「ヴィンチェンツォ」で初めて観たので、今でも「アン君」と呼んでしまうよ。(笑)

最後はこちら。
ジョンニョン:スター誕生(原題:정년이 2024年)」は、パク・チャヌク監督の映画「お嬢さん」やドラマ「二十五、二十一」で有名なキム・テリが主演のドラマ。
調べてみるとキム・テリとパク・シネは、どちらも1990年生まれなんだね。
キム・テリも今回のドラマで19歳の役を演じていたけれど、全く無理なく10代に見えたのはすごい!
「二十五、二十一」の時はフェンシングに打ち込む女子高生だったっけ。
今回はどんな役を演じているのだろう。

1956年、韓国の港町で慎ましくも平凡な生活を送っていたジョンニョン。
天性の美声と表現力を持つジョンニョンは、ある日町を訪れた人気劇団のスター団員に見出され、初めて女性だけが役を演じる女性国劇を鑑賞し、その幻想的な世界とオーラに心を奪われる。
そして女性国劇のスターになることを夢見て上京し、劇団に研修生として入団するが、その道は辛く険しいものだった。
劇団で出会った仲間たちとともにジョンニョンは、スターへの道を懸命に駆け上がっていく。
(Filmarksより)

1948年に初めて女性だけの歌と踊りがある演劇は、「女性国劇」と呼ばれるらしい。
日本の宝塚歌劇団みたいだよね。

宝塚歌劇団についてあまり詳しくないけれど、水の江瀧子や 鳳蘭など男役に人気が集まるのは知っている。(古い!)
「女性国劇」も同様で、男役を目当てにファンが殺到していたらしいよ。
その世界をドラマにした「ジョンニョン」では、出演者が劇中劇を演じているんだよね。
記事によれば、キム・テリは2021年から「パンソリ」のボイス・トレーニングを受けていたという。
「女性国劇」で披露されるのが「パンソリ」という、独特の発声法と節回しで歌われる歌なんだよね。
ドラマの中では、キム・テリはじめ、出演者が本物の「女性国劇」の人に見えるほどの出来栄え。
男役を演じていたオッキョンも素晴らしかった。
韓国の俳優は、演技、歌、踊りなどなんでもこなすから、才能豊かだよね。
「ジョンニョン:スター誕生」は、俳優陣の凄まじい本気度が伝わってくるドラマだったので、かなりオススメ!(笑)

ドラマの途中やエンディングで流れるパンソリとラップを組み合わせた曲が気に入ったよ!
LEENALCHI(イナルチ)の「Bird」を載せておこう。

今回紹介した4つのドラマ、全部女性が主役だったね。
ディズニープラスに入ってから視聴の幅が広がって、楽しみが増えたよ。
ドラマ鑑賞はまだまだ続くよ!

SNAKEPIPE MUSEUM #73 Germaine Luise Krull

20241201 top
【エリ・ロタールが撮影したジェルメーヌ・クルルの肖像】

SNAKEPIPE WROTE:

今日から12月。
2024年も残すところ1ヶ月になったね。
月日の流れが速いなあ!(笑)

2024年6月のブログ「SNAKEPIPE MUSEUM #70 Eli Lotar」で特集した写真家エリ・ロタールは、女流写真家 Germaine Luise Krull (ジェルメーヌ・クルル)の助手だったんだよね。
今回は師匠であるジェルメーヌ・クルルについて書いてみたい。
まずは経歴を調べてみようか。

1897 ドイツ領ポーゼン(現在はポーランドのポズナン)に生まれる
1915-1917 ドイツ・ミュンヘンにある写真学校「Lehr- und Versuchsanstalt für Photographie」で学ぶ
1918 ミュンヘンで写真スタジオを開設し、著名人と親交を深める
1921 政治活動に従事し、逮捕され投獄される
1925 オランダの映画監督で共産主義者のヨリス・イヴェンスと結婚しオランダ国籍を取得
1928 写真集『Métal』を発表
1946-1966 タイのバンコクにあるオリエンタルホテルの共同経営者となる
1968 写真集『Tibetans in India』を発表する
1985 ドイツのヴェツラーで亡くなる

裕福な環境に生まれ、家族でヨーロッパ各地を巡っていたという。
父親から少年の服を着せられたことがあり、その経験が「女性の役割」に対して影響を及ぼしたのではないかと考えられているらしい。
この文章についての意味は後に明らかになるであろう。(預言者風)
ヨーロッパやアジアを股にかけて作品を発表していた女流写真家、ジェルメーヌ・クルルの作品を観ていこう!

デ・キリコ展」のブログでも書いていたけれど、2024年の当ブログに何回も登場したジャン・コクトー!
クルルは、コクトーの肖像写真を何枚も残しているんだよね。
載せた作品は、恐らく1930年頃に撮影されたみたい。
クルルはアンドレ・ケルテスやマン・レイと並び、優れた写真家として認められていたというから、著名人の撮影も多かったんだろうね。(笑)
何度も書いていることだけど、1920年代のパリを中心としたヨーロッパは憧れの時代。
政治活動も行っていたというクルルなので、かなりラディカルな一面を持った女性だったんだろうね。

観ているだけでワクワクする、SNAKEPIPEが大好物のモチーフ!(笑)
1928年に発表された写真集「メタル」は、エッフェル塔のような近代的な構造物や機械美をテーマにした、とても男性的な作品群なんだよね。
ここで「少年の服を着せられ」た話に戻るわけ。
1920年代に20代の女性が、夢中になってシャッターを切っていたとは信じられないよ。
これは余程のインダストリアル好きに違いない!
鋼鉄の鈍い輝き、直線や曲線のフォルム、影の形に魅力を感じていただろうことがよく解るよ。
クルルの写真集が1930年代に日本でも紹介されていたことに驚いたし、感銘を受けた堀野正雄の写真も気になるよ。

1910年代から活躍しているパリのイラストレーターであるポル・ラブの肖像写真を中央に配置したフォト・コラージュは、1930年の作品だという。
手と影だけなのに、印象的だよね!
ワンピースのニコ・ロビンを思い出してしまったのはSNAKEPIPEだけ?(笑)
クルルより先輩で、ラウル・ハウスマンと共にフォト・コラージュ(フォト・モンタージュ)を始めたハンナ・ヘッヒも、同時代に活躍していたはず。
女流アーティスト同士、交流はなかったのかな?
載せた作品に話を戻すと、モデルになっているポル・ラブは、この作品の3年後に早世してしまったとのこと。
宇野亞喜良の元祖みたいな作品や、1920年代のキャバレー風のイラストが残っていて興味深いよ。
まだまだ知らないアーティストがいっぱいいるね。

20世紀初頭に活躍した、フランスの伝説的なファッションデザイナーであるポール・ポワレ。
載せた作品は、1926年にクルルがポール・ポワレに作成したアイデアとのこと。
多重露光を使用して、アップの女性とドレスを着た3人(?)の女性を重ねている。
アップの顔にシワがより、美しさを際立たせるというよりは、ギョッとしてしまうよね。(笑)
この作品がポール・ポワレに採用されたかどうかは確認できなかったよ。
クルルは商業写真でも活躍していたんだね。

1928年の写真集「メタル」は、今鑑賞してもカッコ良さが伝わるよね!
SNAKEPIPEが目指していた方向性はまさに、これ。
こんな先人がいたことを知らなかったのは幸せだったのかもしれない。
もしクルルを知っていたら、あそこまで自分の世界に熱中できなかったはずだから。

経歴に書いていない部分を補足しておこう。
クルルはタイのホテル経営を終えてから、北インドに移住し、チベット仏教のサキャ派に改宗したんだとか。
サキャ派とは、チベット仏教4大宗派の一つ、と説明があったよ。
そして最後の写真集でダライ・ラマの肖像を撮影しているという。
写真学校を卒業してから50年以上、写真に携わってきたクルルの作品をもっと鑑賞してみたい。
「メタル」は復刻版が販売されていたようだけど、現在はソールド・アウト。
どちらにしてもお値段10万円超えだったようなので、まずは貯金から始めるか。(笑)