【キャンパスとして使用されている頭蓋骨】
SNAKEPIPE WROTE:
今回のSNAKEPIPE MUSEUMは、アメリカの女流アーティストを特集してみよう。
長年に渡り、多種多様なアート作品を鑑賞してきたSNAKEPIPEだけど、この素材は初めてかも?
アーティストの名前はMarissa Anca Sira、読み方はマリッサ・アンカ・シラで良いのかな。
まずはマリッサの経歴を調べてみようか。
1982 ニューヨーク市立芸術デザイン高校卒業 1986 ニューヨーク市立美術学校 美術学士 2016 デスタギャラリーにて個展を開催
全米で2名しか選出されない美術奨学生に選出され、ニューヨーク市立美術学校で学んだというから素晴らしい才能の持ち主なんだね。
年表には書いていないけれど、美術界の巨匠マックス・ギンズバーグとアーウィン・グリーンバーグの弟子だったことも経歴に入っている。
SNAKEPIPEが最も驚いたのは、メトロポリタン美術館の模写画家として5年間勤務していたこと!
ニューヨークにある、あのメトロポリタン美術館だからね。
模写画家としての役割がはっきり分からないけど、特別な職業であることは間違いないよね。
マリッサは、「アーティスト / 鍼灸師 /錬金術師」と自身のサイトに自己紹介している。
アーティストは分かるけど、鍼灸師の資格も持ってるのかなあ。
錬金術師って名乗る人には初めてお目にかかったかも。(笑)
SNAKEPIPEは、錬金術と聞いて真っ先に連想するのがアレハンドロ・ホドロフスキー監督の「ホーリー・マウンテン(原題:The Holy Mountain 1973年)」だよ!
マリッサは、カバラ、エジプトの秘教的な文献、薔薇十字団の神秘、ヘルメス主義の文献、神智学の書物、ルドルフ・シュタイナーの人智学などの研究に没頭してオカルト科学の論理を吸収したんだとか。
研究の結果、頭蓋骨は生と死の境界を超えた無意識の使者であり、直感と想像力の領域を象徴するものとして考えるようになったという。
それが頭蓋骨を作品に使用する理由なんだって。
マリッサの作品を観ていこうか。
載せたのはバイソンの頭蓋骨にアクリル絵の具とリキッド・インクで図柄が描かれた「Binah」という作品。
本物の骨を素材として使用していると聞くと、おどろおどろしい感じがしそうだよね?
頭蓋骨を加工する物といえば髑髏杯を思い浮かべるよ。
髑髏杯について調べてみると「敵の頭骨を使って盃にした」のように血塗られた復讐話が多い。
メキシコの「死者の日」でも装飾を施した頭蓋骨(を模した砂糖菓子らしい)が飾られるよね。
死者を偲び、思い出を語り合い、生きている喜びを分かち合うお祭りなので、マリッサの作品はメキシコに近い印象かな?
美しく彩色されたマリッサの作品は、2016年に展覧会を開催した時に、全作品が完売したという逸話が載っていたよ。
この作品を飾るのには、どんな部屋が似合うだろうね。
マリッサの作品にはキャプションが付いていないため、一体何の動物の骨なのか分からないんだよね。
高校生だったSNAKEPIPEが、美術の授業で骨のデッサンした遠い記憶が蘇ってきたよ!
あれは確か牛の頭骨だったはず。
何も不思議に思わず描き、水彩絵具で仕上げたっけ。
本物の骨だったのか、模造品だったのか覚えてないなあ。
マリッサの黒一色だけで描かれている作品は、模様のせいもあるけどトライバル調だよね。
呪術や祭祀などの単語が浮かんでくるよ。
立派な角が目を引く作品。
これも牛の頭蓋骨なのかな。
赤、白、黒の3色が美しいね。
こうした素材はどこから手に入れているのか気になるよ。
写真家のジョエル=ピーター・ウィトキンが、ドキュメンタリー映像の中で、死んだ動物の連絡を受けると引き取って素材にしていたことを思い出したよ。
マリッサも何か「つて」があるのかもしれないね?
一番最初に載せたバイソンとは図柄が違うタイプの作品。
真ん中に円形が描かれていて宇宙を思わせるよ。
マリッサのサイトには「情熱こそが真の不死鳥である」というゲーテの言葉が載っている。
生と死、再生という永遠の循環について探求するマリッサに、強く響く言葉になっているという。
NHK「世界ふれあい街歩き」のワイマール編で、街中にゲーテの言葉があふれている様子を観たことがある。
たくさんの人に影響を与え続けているゲーテの偉大さを改めて認識したよ!
情熱を絶やさないことをSNAKEPIPEも心がけよう。(笑)
骨を素材にしたアートと聞くと、道徳や倫理を持ち出し、眉をひそめる人もいるかもしれない。
アーティスト側にはタブー視する批評を逆手に取り、宣伝に利用する輩がいてもおかしくない世の中。
今回紹介したマリッサ・アンカ・シラは、独自の哲学を基に作品を制作しているようで、大々的に手広く商売としているタイプではないみたい。
2016年の個展以降、目立った活動はしていないのかもしれない。
模写画家、鍼灸師、錬金術師といった経歴を持つ女性が、今は何をしているのか気になるよ。
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