ROCKHURRAH WROTE:
ROCKHURRAH家では朝の時間以外にTVを見る習慣がないんだが、海外の風景が出てくる旅番組があるとつい見入ってしまう。
ゴールデンタイムでも深夜でもそういう番組は大昔から現在まで数多くあるんだけど、そういう時間には別の事をやっている場合が多くて観ているヒマがない。時間に余裕があれば違うんだろうけどね。
そんなワケで思いついた新企画なんだが、タイトルの割には意外とセコい内容になるのは必至か?
別に世界各国のロックンロールを紹介してゆく企画ではなくて、ロケンローラーが世界各国を旅するわけでもない。単に世界の地名がついた知ってる歌(またはバンド名)を列挙してゆこうという情けない企画だ。
ちなみに一回じゃ紹介しきれないはずだからシリーズにしてみたが、そこまで国名や地名のついた曲が無尽蔵にあるはずもないのはわかってるし、個人的に全く紹介する気が起こらないバンドとかは当然飛ばす事にする。しかも字面のリズム感からロックンロールとタイトルにつけたものの、ロックンロールとは言いがたいバンドも多数含まれそう。
やる前からあまり長続きしそうにないなあ。いいのかこれで?
ROCKHURRAH RECORDSのブログをこれまで読んだ事ない人でも理解出来るように毎回説明しているが、ウチのブログは70〜80年代の音楽専門でやっていて、イマドキ要素は全くないのが特徴。
Streets of London / Anti-Nowhere League
まずはありきたりだがこの辺から行ってみよう。パンクの洗礼を受けた者だったら誰もがたぶん憧れるロンドンだ。
例えばせせこましいとか汚いとか寒いとか金盗られたとか殴られたとか、行った者ならばいくらでも悪口を言えるだろうが、行った事なければやはり憧れるのが人情。
ROCKHURRAHは今のロンドンじゃなくて1977年から1985年くらいのロンドンに行きたかったな。まあロンドンに限らずどこの国、どこの都市でもだいたいその時代に行きたかったと思ってるわけだが。
80年代には水上はる子(ミュージックライフの編集長だった)著の「ロンドンに行きたい」などというムック本があって、それを読んで憧れた人も実際に行った人も多かった事だろう。
さて、そのロンドンを曲名に取り入れたのは何があったっけ?
と思って真っ先に思い出したのがこの歌。
アンチ・ノーウェア・リーグの「ノーウェア」の部分が自信を持って発音出来なかった(←バカ)ため、いつも不明瞭だった。ROCKHURRAHの言葉はいつも不明瞭だよ、という声がどこからか聞こえてきたけど幻聴だろう。
そういう意味もあってこれまであまり話題にしなかったけど、本当は好きなパンク・バンドなんだよね。何か縦横比が違う気がするがこのPV見てわかる通り、ヴォーカルはほぼ原始人並みのワイルドさを持ったアニマルという不敵な男。それ以前のイギリスのパンクにはなかったタイプのワイルドさとかダーティさが売り物の与太者どもだ。原始人スタイルとでも言うのか?片側の胸をさらけ出して裸に鎖。この格好で本当に斧を持ってりゃ大概のヤツはビビるだろうな。
もしかしたらROCKHURRAHも少し雰囲気は似てるかも。
「ロンドン橋」のフレーズによって始まるこの曲は彼らのオリジナルではなくてラルフ・マクテルというフォーク・シンガーのヒット曲をカヴァーしたもの。シニード・オコナーもより原曲に近い形でカヴァーしてるね。
フォークやトラッド風の曲をパンクの形態でカヴァーというと、オプティミスツの「Mull Of Kintyre(元歌はポール・マッカートニー)」とかも同じ傾向かな。音でその土地らしさを表現するのは難しいがオプティミスツの方は曲の最後でバグパイプ演奏をミックスさせ、こちらのアンチ・ノーウェア・リーグの方は「ロンドン橋」を無理やりくっつけたインスタント感満載の技。この辺のスマートじゃない手法も含めて愛すべき野郎どもだな。
PVは80年代当時のものだが、何とつい先月くらいのライブの模様でもこのアニマルは大して老けてなくてまだまだ現役でビックリ。
まさにワルは不滅だね。
Sweden / The Stranglers
あまり影響を受けるものがなかったから北欧に対する憧れは特になくて、スウェーデンなどと聞いてもIKEA、H&M、ドラゴン・タトゥーの女くらいしか連想しない。 音楽の世界でもアバとかエース・オブ・ベイスとかカーディガンズとか、それくらいしか思い浮かばず、個人的には特に惹かれるものは何もないなあ。幾何学的なスウェーデン迷彩はデザイン的に素晴らしいと思って一時期はブラウザのテーマで使ってたが、ROCKHURRAHのスウェーデンに関する印象なんてこの程度だよ。
SNAKEPIPEがiTunesのラジオで気に入ってるパンク/ニュー・ウェイブのチャンネルがあるんだが、ここの選曲がかなり偏っていてストラングラーズとマガジンが大好き、ちょっとした時間しかかけてないのに何曲も「またまたストラングラーズ」状態になる。
彼らの中で最も好きなアルバムは3rd「Black And White」なんだが、「Tank」などは今でも愛聴している名曲だ。この「Sweden」もその中の1曲でジャン・ジャック・バーネルの硬質なベースラインがカッコ良い。ギターがあまり目立たないバンドだからとにかくベースとドアーズばりのキーボードがほとんど曲の中心だな。
曲はスウェーデンのイースタン・フロントなる極右組織への批判らしく、この国に憧れたり行きたいなどと思わせる内容ではないな。曲調からもスウェーデンらしさは全く読み取れない。
しかしフランス人がイギリスで活躍してて曲がスウェーデン、とちょっとインターナショナルな雰囲気。やっぱりヨーロッパに生まれる(彼の言葉で言うならユーロマンと言うべきか)と生き方が違うなあ、と素直に憧れてしまう。
Castles In Spain / The Armoury Show
ROCKHURRAH RECORDSの最近の大ブームがスペインなのはここ数ヶ月のブログ記事でもおなじみの通り。
ペドロ・アルモドバル作品から始まったスペイン映画への興味も度を越してて、面白いとか面白くないとかに関わらずほとんどの出回ってるスペイン映画を片っ端から観ている状態。
映画なんかとは全然違うんだろうけど、今、行きたいヨーロッパの国ではやっぱりスペインとイタリアが真っ先に出て来る。
そんな憧れのスペインを曲名に取り入れたのがアーモリー・ショウの1984年のデビュー曲だ。美術史に明るい人ならば大昔にアメリカで行われた展覧会からつけたバンド名だと即座にわかるだろう。
パンク、ニュー・ウェイブに明るい人ならばこのバンドがスペインとは特にゆかりのない元スキッズ+元マガジンの後継バンドだと即座にわかるかも知れないな。
リチャード・ジョブソンが腕利きのミュージシャンを集めて鳴り物入りでデビューした割には日本ではほとんど知られる事がなかったな。
スキッズと言えばスコットランド民謡とかバグパイプ風のギターを取り入れた勇壮でポップな名曲をたくさん残したバンドだったんだが、このアーモリー・ショウにはその要素がなくてスキッズ・ファンにとってはちょっと物足りなさが残る出来栄えだった。この曲も哀愁に満ちた壮大なメロディで「元スキッズ」とか考えなければいいんだろうけど。
彼らは時代的な背景もあってかモロに80年代のデザイナーズ・ブランドのようなファッション・センスで今見るとかなり恥ずかしいPVとか残ってるんだけど、上に載っけたライブ映像では金ラメ・ジャケットにソフト帽でまだマシな方かな。今回はまだおとなしい方だが、ステージ上の大げさで激しいアクション(ダンス?)もリチャード・ジョブソンの得意技。吉川晃司みたいでいかにも80年代だなあ。
Hong Kong Garden / Siouxsie And The Banshees
ヨーロッパが続いたからアジアにも目を向けてみよう。 今の御時世に香港に憧れる日本人がどれだけいるかは不明だが、一昔前は一番近場の外国として人気の観光地だった。
他愛もない人間だったROCKHURRAHは何でもない事がきっかけで外国に憧れたりもした。森川久美の傑作漫画「蘇州夜曲」「南京路に花吹雪」を読んで上海の租界に憧れたり、プレステ時代のカルト的傑作ゲーム「クーロンズ・ゲート」をやって九龍に憧れたり、ベルトリッチの映画「ラスト・エンペラー」を観て紫禁城に憧れたり、かなり短絡的だったなあ。
ブランド品にも中華料理にも特に興味なかったから香港は全然行きたいとも思わなかったけど、アジアのダークサイド、魔都としての猥雑で汚らしいイメージは確かにインパクトはあるな。
ロンドン・パンクの最も初期から活動しているスージー&バンシーズのデビュー曲がこれ。「香港庭園」というタイトルから色々なものを連想するが輸入盤しか持ってなかったから対訳の歌詞もなく、英語力皆無のROCKHURRAHには何を歌っているのかも不明。曲調も単純で音も薄っぺらいね。スージーのヴォーカルも一本調子。しかしそういう音楽的な「なってなさ」も含めてこれがリアルなパンクの姿なのだ。そういう意味でこのバンドも自分の中では尊い存在だ。
以上、たった4つしか書けてないが小出しにしてゆきたいので初回はここまで。しかし紹介したバンドも曲もROCKHURRAHの文章も一向に旅情を掻き立てるものはなかったな。
完全に企画倒れの気はするが、ROCKHURRAHのこの辺の「なってなさ」も含めてCOMPLETE PUNK WEBLOG(ウチのブログの一番上の看板を参照)なんじゃよ。パンクと謳ってる割にはパンク記事が少ないウチのブログだけど、このトータルな不完全さこそROCKHURRAHの求める完璧なパンク道だと信ずるなり。ん?わけわからんが何だかいい事を言った気がするぞ。
ではまた次回!