【「ツイン・ピークス The Return」に出演の俳優陣とリンチの記念写真】
SNAKEPIPE WROTE:
2017年はSNAKEPIPEにとってワクワクするイベント続きの年になった。
1982年公開の映画「ブレードランナー」の35年後を描いた「ブレードランナー2049」が今年の10月に公開され、アレハンドロ・ホドロフスキーの自伝小説を元に映画化された「エンドレス・ポエトリー」は11月に鑑賞済。
そして3つ目のイベント、「ツイン・ピークス The Return」も全て鑑賞し終わってしまったのである。
「ツイン・ピークス The Return」とは1991年に終了したテレビドラマの後、1992年に公開された映画「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」から25年後の世界を描いた全18章のテレビドラマである。
殺害された女子高生ローラ・パーマーに瓜二つの女性が、通称レッドルームと呼ばれる赤い部屋で「25年後にお会いしましょう」とクーパー捜査官に言うシーンがある。
それで実際に25年経った2017年に続編の企画が持ち上がったようで。
まさか、あのセリフから続編の制作が実行されるとは思ってもみなかったよ!
1991年のシリーズは章によって監督が変わる持ち回り制だったけれど、「ツイン・ピークス The Return」は全編リンチが監督だという。
リンチ・ファンのSNAKEPIPEにとっては、んもぉ〜願ったり叶ったりの嬉しいお知らせ!(笑)
8月よりWOWOWで放映が開始され、最終話が12月で終了。
ROCKHURRAH RECORDSは字幕版で鑑賞していたので、二ヶ国語版で鑑賞していた方より少し遅いんだよね。
毎週楽しみに展開を追っていたので、終了してしまった今となっては少し体がしぼんでしまったような感じ。
気合入れて息を溜め込んでいたのが、すっかり吐き出されたような感覚かな。
25年前のテレビドラマ「ツイン・ピークス」の最後の章で、クーパー捜査官は既に2人存在していたんだよね。
レッドルームにいるクーパーと、現実世界にいるクーパー。
そして現実のクーパーは、なんとキラー・ボブに乗っ取られた「悪いクーパー」になっていた。
洗面台の鏡にヒビが入る程、強く額を打ち付けて血を流しながら鏡を見るクーパー。
映る姿はボブだったからね。
テレビドラマはそこで終わってしまい「クーパー、一体どうなるんだろう」と不安な気持ちでいっぱいになってしまった。
その後の世界が「ツイン・ピークス The Return」で描かれていたのである。
なんと!クーパーは更に分身を増やして3人になってたんだよね。
それは「悪いクーパー」「バカなクーパー」「普通のクーパー」とでもいおうか。
まるで「欽ドン!良い子悪い子普通の子」の「イモ欽トリオ」みたい。(古い!)
ミスターCとして、肩にかかる長さの髪にレザージャケットを着ているのが、ボブに乗っ取られた状態のクーパー。(画像の一番左)
ダギー・ジョーンズという名前で、また別の世界で生きていた保険会社に勤める男が、途中で「バカなクーパー」に様変わりする。(画像の真ん中)
このクーパーがずっとバカなままで、見ている側がヤキモキしてしまうんだよね。
それにしても3人を演じ分けたカイル・マクラクラン、大変だっただろうね。(笑)
「バカなクーパー」のような役は初めてじゃないかな?
「ツイン・ピークス The Return」の感想をまとめたいと思って書き始めたけれど、あまりにエピソードが多過ぎているし、それぞれ謎が残ったまま展開していないシーンがてんこ盛り!
リンチらしいと言えばそうなんだけど、文章にしようとすると困ってしまうね。
それぞれのエピソードについては「ネタバレ」というタイトルを付けて詳細を書いている方がいらっしゃるようなので、SNAKEPIPEは気になったシーンを書いていこうかな。
本当は1回のブログでは全然足りないんだけどね。(笑)
リンチが「もう映画を撮らない」と宣言した理由が「映画の商業主義化」だというのは、ホドロフスキーも同感のようで、アートな映画は一切評価されないのが現代みたいなんだよね。
良いとか悪いとかではないけれど、大抵のことはCG(コンピュータグラフィック)使って、あり得ないような状況をいとも簡単に映像化してしまう映画が多いのが最近の傾向かもしれない。
リンチは「ツイン・ピークス The Return」で、その2つにあえてアナログな手法で対抗しようとしたんじゃないかな。
リンチが得意にしているフィルムの逆回し、少しコマをずらしてわざとギクシャクした動きを見せたりする、まるで1920年代のSF映画みたいな方法ね。
それはまるで学生が一生懸命知恵を絞って実験映画作りました、みたいな感じ。
そう、結局は「イレイザーヘッド」なんだよね!(笑)
70歳をとうに過ぎたリンチが、原点である「イレイザーヘッド」精神を持ち続け、ハリウッドに感化されずに映像作品を制作しているところが素晴らしい!
今だったらCGだろう、というのを「あえて」稚拙に見せるところがポイントなんだよね。
もしかしたらその「ズレ」やバレバレの「逆回し」もCGでできるのかもしれないけど、「ギクシャク」させないと思うよ。(笑)
レッドルームの「The Arm」の存在も「いかにもリンチ」だったね。
25年前に印象的なダンスを披露した小人の代わりみたいだけど、このオブジェクトはリンチが作ったに違いないよ。
「イレイザーヘッド」の赤ん坊も似た感じだし、リンチの絵画作品にも近いし。
レッドルームの特徴的な幾何学模様の床から、にょっきり生えている「The Arm」の存在自体がシュールだからね。
「ツイン・ピークス The Return」でのレッドルームの役割が謎だったな。
まるでクーパー捜査官を助けるための舞台みたいに見えたからね。
リンチらしい映像ということで付け加えると、「ボブの誕生秘話」だった第8章。
リンチ・ファンのSNAKEPIPEにとっては至福の時だったけれど、テレビドラマの映像ではないよ。(笑)
こんな実験映像を観て喜ぶのは、ほんの一握りだろうなと想像する。
リンチはカラー作品ももちろん素敵だけど、モノクロームの映像が素晴らしいよね。
最近はリトグラフ版画を手がけているリンチなので、やっぱりモノクロームに魅力を感じているのかもしれないね。
また「あえて」モノクロームの映像で、リンチの作品観たいなあ!
1945年に始まったボブの誕生物語は、この1回だけで終わってしまい、あの変な虫のような蛙みたいな物体を飲み込んでしまった少女の運命についての言及はなし!
謎は謎のままで良い、はリンチの言葉だからね。(笑)
その関連ということになるのか、ローラのお母さんのエピソードも尻切れトンボだったんだよね。
25年前に夫と娘を亡くし、あの家で一人暮らしをしているローラの母セーラ。
相変わらずのヘビースモーカーで、更にアルコールも相当飲んでいるみたい。
何かが映っていれば良いと思っているのか、意味のないテレビばかり観ているね。
そんなセーラがショットバーに行った時の怖いシーン。
これも説明なく、ここで終わってるんだよね。
やっぱりあの虫みたいな蛙飲んだの、セーラだったのかなあ。
これもアンチ・ハリウッドかなと思ったのは、ワン・シーンの長さ。
最近の映画だったらカット数が多くて、Aの顔、Bの顔のアップ、手の動き、なんて感じでカメラの動きが速いよね。
それを「あえて」間を取る、セリフがなくてもカメラが回っているような無駄な時間の多さに感心してしまった。
元々「ツイン・ピークス」の面白さは、無数に張り巡らされた伏線にあったので、まるで無駄のように思えるシーンやセリフの1つ1つにまで気を配り神経を集中させることだったので、「The Return」も同じような鑑賞法が必要なんだろうね。
リンチの部屋にいる女性がFBI同士の話があるから、部屋を出てバーで待っててと促されたシーンなどは、リンチのギャグなんだろうなあ。
切羽詰まった状況と、のんびり化粧してる女性の対比みたいな感じの。
それにしてもリンチは「ツイン・ピークス」の時にはダブルRダイナーのウエイトレスであるシェリーとキスしてたり、今回も美女をはべらせ、更にはモニカ・ベルッチとの共演も果たしている。
この助平根性がリンチらしさの秘訣なんだろうね。(笑)
リンチの俳優としての出番も多い「The Return」はリンチ・ファンには嬉しい限りだったね!
どんなにキレイで可愛かった女性でも、25年経つと変わってしまうのか…。
それにしても目の当たりにするとショック大きいんだよね。
ダブルRダイナーのシェリーとノーマは、別人に見えるほどではなかったように思う。
ローラも少しふくよかになってるけど、そこまでの変化ではなかった。
えっ、うそ?と目を疑ってしまったのはオードリー!
オリジナルのドラマは90年代だったのに、まるで50年代の女優のような雰囲気を持ち、コケティッシュで少し生意気な美人だったオードリー。
きっとリンチもお気に入りだったに違いない。
確かリンチとの噂もあったように記憶しているよ。(笑)
ところが今はかなり残念な結果に。
25年前の「ツイン・ピークス」では、爆発した銀行にいたところで終わっていたっけ。
突然出て来たかと思うと話していることは支離滅裂で意味不明。
本当にあの小男が旦那なのかな?
最後にオードリーが出てきた時は鏡を見ながら泣き叫んでいるシーン。
一体どうしちゃったんだろうね?
それなのに、息子がいる設定なんだよね。
そして息子も極悪非道な悪いヤツ。
この点についての説明はドラマの中では全くされていないので、想像するしかないよね。
「インランド・エンパイア」でちょい役だった裕木奈江が、大役もらっていたのには驚いた。
「ツイン・ピークス The Return」では印象に残る存在だったと思うよ。
とは言っても、、、誰だか分からない状態だったけどね?
顔は見えない、セリフといえるようなセリフはない。
「Naido」という名前で、後半にも登場してくる重要な役割なんだよね。
リンチ作品に出演した日本人は裕木奈江だけだと思うし、2作品に選ばれるなんてすごい!
調べてみたら現在47歳だって。
その年でフルヌードとは、裕木奈江頑張ったね!(笑)
25年前にも出演していた俳優の懐かしい顔が見られたのも嬉しかったね。
ツイン・ピークス保安官事務所のホーク、アンディ、ルーシーは相変わらず勤務していて、ローラの同級生だったボビーが保安官事務所に勤めていたのは意外だった。
精神科医のジャコビーは自らの意志や主義を訴えるための海賊放送(?)をしていて、その訴えに共感する片目のネイディーンは、外見が25年前と変化がなかったよ。
ネイディーンは音がしないカーテンの特許取得したのかもしれないね?(笑)
ジェームズは25年前に歌った曲「Just You」を披露し、エドは念願だったノーマとの再婚が果たせそうで良かった。
残念だったのは、ピート役だったジャック・ナンスと「丸太おばさん」役だったキャサリン・コウルソンが既に亡くなっていること。
「丸太おばさん」は「The Return」が遺作になったのかな。
2人共リンチとはゆかりのある人物だったし、「ツイン・ピークス」でも存在感がある俳優だったからね。
今調べて初めてピートと「丸太おばさん」が実生活で夫婦だったと知り驚いた!
「ツイン・ピークス」に出演はしていなかったけれど、リンチ組と言って良いであろう女優が「The Return」には登場していたのも注目だったね。
ナオミ・ワッツは「マルホランド・ドライブ」で主役を演じ、その後から知名度がアップした女優。
「インランド・エンパイア」ではラビットの声を担当してたよね。
「The Return」ではダギー・ジョーンズの妻という役どころで、出演回数が多かったね。
気が強くてせっかちな妻を上手に演じていたよ。
ローラ・ダーンは「ブルーベルベット」で、恐らく「変な口の形」が気に入られ、キャスティングされたのではないかとSNAKEPIPEは予想しているけれど、その後も「インランド・エンパイア」では主役を勤めている女優ね。
リンチとは長い付き合いのようだけど、まさか「The Return」でダイアンとして登場するとは思わなかった!
「ツイン・ピークス」でクーパーが「ダイアン」とレコーダーに呼びかけていた、あのダイアンである。
本当にダイアンが存在しているのかどうかが不明だったのに、「The Return」で実在の人物として描かれることになるとはびっくり!
ローラ・ダーンも裕木奈江と同じようにヌードを披露してたけど、こちらは50歳!
熟女のヌード、多かったなあ。
「ロスト・ハイウェイ」「マルホランド・ドライブ」「インランド・エンパイア」の3作品、SNAKEPIPEが「迷宮系3部作」と名付けた作品に共通するもう1つの世界という概念が「ツイン・ピークス The Return」にも継承されているので、理解できないような事がいっぱいなんだよね。
舞台が1つだけじゃないし、登場人物もドッペルゲンガー状態。
リンチが瞑想の中で思いついたか、夢で見たストーリーなのかもしれない。
以前「マルホランド・ドライブ」の感想をまとめた時に書いた文章。
自分の夢でも整理して説明できないんだから、他人の夢を見させられたら困惑するに違いない。
理不尽で整合性がないのは当たり前!
もしかしたら「ツイン・ピークス The Return」にもあてはまるのかもしれないなあ。
最終話は一体どんな展開になるのだろうとドキドキしていたけれど、なんとまあ!
こんな終わり方で良いの???
あっけにとられてしまったSNAKEPIPE。
この終わり方では次を期待してしまうんだよね。(笑)
まずは「The Return」を鑑賞し直してみよう。
前述したようにちょっとした会話や意味がないと思われた伏線に気付くかもしれないしね?
あれはどんな意味だろうと思い巡らせるのが「ツイン・ピークス」の醍醐味。
もし謎が解けなくても全く問題ない。
リンチが監督した映像を鑑賞できるだけで、SNAKEPIPEは幸せだから!(笑)
「エンドレス・ポエトリー」も見られなかったし、「ツイン・ピークス The Return」も未視聴。羨ましいです。ホドロフスキーとリンチといえば、構想だけに終わったホドロフスキーの「デューン」を思い出しますね。サルバトール・ダリやミック・ジャガーがキャスティングされていたという「デューン」観たかったな。
鳥飼先生、コメントありがとうございます!
「ツイン・ピークス The Return」も「エンドレス・ポエトリー」もDVDになったら是非ご覧頂きたいです。
ホドロフスキーが本当に次回作を企画しているのか気になります。
ホドロフスキーが「デューン」を監督していたら、どんな作品になったのか想像するだけでワクワクしますね!(笑)
2017年のビッグイベントは終わってしまいましたが、2018年はどんな作品に巡り会えるのか楽しみです。
鳥飼先生の次回作、お待ちしております!(笑)