【Cecil B Demented Are Go!(音が出ますので注意)】
SNAKEPIPE WROTE:
さて今回はジョン・ウォーターズ監督の第2弾!
「CULT映画ア・ラ・カルト!JOHN WATERS part1」でも書いたけれど、ジョン・ウォーターズの映画を入手しようと思ってもなかなか難しい昨今。
今回も仕方なく紹介する3本のうち2本は字幕なしの状態で鑑賞。
以前観たのは随分昔だから記憶はあやふや。
しかもSNAKEPIPEのヒアリングに問題があるため完全に理解したとは言い難いまま書いてみようと思っている。
かなり無謀かな?(笑)
「クライ・ベイビー」(原題:Cry-Baby)1990年。
ジョニー・デップ演じるクライベイビー率いる不良チーム「ドレイプス」といい子ちゃんチームの「スクエアズ」の対立と恋を描いたミュージカル映画。
実はSNAKEPIPEは観たことないんだけど、恐らく「ウエストサイド物語」に近いみたいね。
それをパロディ化してるのかもしれない。
途中で出てくる「肝試しレース」は「理由なき反抗」にあった「チキンレース」みたいな感じだったしね。
「ヘアスプレー」と似た雰囲気で、結局ジョン・ウォーターズもデヴィッド・リンチと同じく50年代が大好きなんだろうね。(笑)
ストーリーはどーってことないし結末も予想通りだけれど、俳優の個性がイカしてる。
なんとジョニー・デップの(多分)おじいさん役がイギー・ポップ!
途中でウサギの着ぐるみ姿で登場するシーンもあり、あのパンクの帝王が!と笑ってしまう。
クライベイビーはロカビリーバンドをやっていて、ジョニー・デップが裏声使いまくりで(ヒーカップね)歌うのはさすがにミュージシャン!
聴かせてくれます!
ウッドベース担当してる俳優さんがストレイ・キャッツの人によく似てること!
当然違う人だけどね。(笑)
バンドのメンバーとしてトレイシー・ローズがいたけど、彼女も本当にサイコビリーの女性版みたいでかなりきまってていい感じだった。
脇はしっかり個性派でまとめているのに、何故かヒロイン役が凡庸な女優。
これだけが納得いかなかったな。
「セシル・B/ザ・シネマ・ウォーズ」(原題:Cecil B. Demented)2000年。
この映画だけは字幕ありで鑑賞したため完全に理解できている一本。(笑)
アングラ映画を撮ることを誓い合ったチーム「スプロケット・ホールズ」が命がけで映画を完成させる物語。
今回はヒロインとしてハリウッド女優のメラニー・グリフィス!
「シリアル・ママ」のキャサリン・ターナーの時もびっくりしたけど、メラニーもよくウォーターズ作品の出演を決心したものだ。
やっぱりこれも「経験」とか「幅を広げる」ためだったのかな?
映画の中でもハリウッド女優役で初めはとても性格の悪いタカビー(死語?)だったけれど、「スプロケット・ホールズ」に誘拐されて無理矢理アングラ映画に出演させられていくうちに女優魂に火が点く。
よーやるわ、と思うほど弾けまくってたメラニーもやっぱりウォーターズ・マジックにかかっていたのかな?(笑)
一番笑ったのは「スプロケット・ホールズ」のメンバー紹介のシーン。
アングラ映画をこよなく愛する彼らは崇拝する映画監督の名前を刺青しているのである。
監督:セシル・B・ディメンテッドはオットー・プレミンジャーの刺青
俳優:チェリッシュはアンディ・ウォーホールの刺青
俳優:ライルはハーシェル・ゴードン・ルイスの刺青
撮影:パムはサム・ペキンパーの刺青
録音:シャルドネはスパイク・リー刺青
美術:ルイスはデヴィッド・リンチの刺青
衣装:フィジットはウィリアム・キャッスルの刺青
メイク:レイヴンはケネス・アンガーの刺青
ヘア:ロドニーはペドロ・アルモドバルの刺青
運転手:ピーティはライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの刺青
プロデューサー:ダイナはサム・フラーの刺青
刺青を見せながら一人一人が名前と役割を自己紹介の形で語る。
その時にバックに流れる音楽がそれぞれの監督の作品で使用された音楽になっているところが凝った演出かな。
SNAKEPIPEも敬愛するデヴィッド・リンチの紹介の時にはツイン・ピークスの音楽が流れていた。
そしてデヴィッド・リンチの名前が彫られている箇所は指だったのだけれど、DAVID LYNCHと5文字ずつあるため一本の指にIDとCHが小さく彫られているのが笑える。
よく見かけるようなLOVEとHATEだったら4文字だからおさまりがいいんだけどね!(笑)
この映画の中ではジョン・ウォーターズには珍しく(?)強烈なハリウッド批判や映画のマナーに関するメッセージなどが盛り込まれていた。
そのためか撮影はヨーロッパで行われたとか。
あら、今回はボルチモアじゃなかったんだね。(笑)
「映画の最中に喋るなんて」
「映画が始まってから入場するとは」
という実は当たり前のことなのに、実際にはまだまだマナー違反の人がいっぱいいる現状に腹を立てる「スプロケット・ホールズ」の面々。
ま、これはジョン・ウォーターズを代弁してるんだろうけど。
ほんとに映画館で不快な思いをすることって多いもんね。
SNAKEPIPEも大きくうなずいちゃったよ!
この映画ではウォーターズの映画の嗜好がよく分かる。
「良質なファミリー映画」はダメだけど「アクション映画」や「ポルノ映画」はオッケー。
「パゾリーニ映画祭にお客さんが一人も来ないなんて!」
というセリフもあって笑ってしまった。
完全に「フォレスト・ガンプ」を馬鹿にしたシーンまで出てきて、痛烈に批判。
ただし、SNAKEPIPEもROCKHURRAHもその手のハリウッド映画ってほとんど観ないからパロディなのかどうかが分からなかったけど。(笑)
テーマが明確で脇の俳優の個性がはっきりしていて、とても面白い映画である。
音楽も毎度のウォーターズの好みとはかなり違っていて、ヒップホップやハードコアな音を取り入れていたところも斬新だった。
テロリズムにスウィートな50年代風ポップスは合わないか!(笑)
「ア・ダーティ・シェイム」(原題:A Dirty Shame)2004年。
この映画、なんと日本未公開作品!
実はSNAKEPIPEもジョン・ウォーターズについて調べていた時に初めて知ったのである。
もう6年も前の新作を知らなかったとはSNAKEPIPE、ウォーターズファン失格だよ!
それにしても今までウォーターズ作品が日本で公開されなかったことがないので、未公開とはとても不思議だ。
ということでこの作品も字幕なしで鑑賞。
主演がなんと「ブレイクアウェイ」でブレイクしたトレイシー・ウルマン。
「ヘアスプレー」の主人公もトレイシー。
「クライベイビー」に出演したトレイシー・ローズ。
これで3人目のトレイシーである。
余程ウォーターズが気に入ってる名前なのかもしれないね。(笑)
トレイシー・ウルマン演じる主人公シルヴィアが突発的な事故で頭を強打。
その事故がきっかけで貞淑な妻から一転、淫乱女になり町中の人を巻き込んでいく話である。
トレイシー・ウルマンの変貌ぶりが見事で、「よーやるわ!」と感心してしまうほどノリノリの演技に笑わされる。
トレイシー・ウルマンはコメディが得意みたいだから、この程度の弾け具合はへっちゃらだったのかもしれないね。
トレイシー・ウルマンとウォーターズのコンビネーションは全く想像できなかったけれど、ここまでやる気マンマンのトレイシーなら第二のディバインも夢じゃないかも?(笑)
なんともチープな作りで、ストーリーにひねりもなく
「Let’s Go Sexy!」
を合言葉に町中の人々が官能の世界に行くこの映画が新作とは!
1964年から始まるウォーターズの映画人生40年、未だにこのジャンルの作品を作り続けるその精神力!
SNAKEPIPEとしてはさすがウォーターズ、と拍手したい気分である。(笑)
一般ウケはしないと思うので、日本未公開だったのもうなずけるけどね。
どうやらウォーターズの新作は2010年「Fruitcake」のようなので、今からとても楽しみだ。