SNAKEPIPE WROTE:
3月6日は鳥飼先生のお誕生日!
鳥飼先生、おめでとうございます!
「好き好きアーツ!#28 鳥飼否宇 part7–死と砂時計–」の最後でも書いていたように、今年はまさに鳥飼否宇先生の年!
「死と砂時計」に続いて刊行されたのが「絶望的 寄生クラブ」である。
発売予定日とされていた2月26日より前の2月21日に入手することができたのは、鳥飼先生のtwitterに情報が載っていたため!
もしかしたら、と近所の本屋に行ってみたら「死と砂時計」と共に平積みにされているのを発見。
応援している鳥飼先生の作品が並んでいるのを見て、ROCKHURRAHと一緒に飛び跳ねそうになってしまった。(笑)
本当に喜ばしいっちゃ!(北九州弁)
「絶望的 寄生クラブ」は「官能的 4つの狂気」以来、約7年ぶりに増田米尊が主人公となる作品である。(記憶違いだったらごめんなさい)
増田米尊!(笑)
綾鹿市にある綾鹿科学大学大学院理数研究科の准教授という肩書を持つ増田米尊は、数学者でありながらもフィールドワークを元に独自の研究を続けている。
「尤度関数を用いた性行為時の女性のよがり声の推定」や「キャバクラ嬢の豊胸指数をもとにした日本人女性のバストサイズの傾向推定」といった、今まで誰も数学と結び付けなかったようなデータを使った研究を真剣に行っているのである。
増田米尊の最大の特徴は、この変態性!
覗き見る、という行為こそが研究のためのフィールドワークなのである。
こんな犯罪スレスレ(犯罪そのもの?)の行為をしているにも関わらず、増田米尊は50歳を超えても未だに童貞!
それを秘密にするのではなく、声高らかにカミング・アウトし童貞主義者ときっぱり言い切るところは清々しいほどである。(笑)
実は妻帯者で、同じ家に住んでいるのにね!
もう1つの増田米尊の特徴は、興奮状態に陥ると頭脳明晰な研究者に変態する体質の持ち主ということだろう。
変態が変態する。
この瞬間があるからこそ、増田米尊が准教授として研究を発表できるんだよね。
そうじゃなかったら単なる出歯亀になっちゃうから。(笑)
「絶望的」はそんな増田米尊の「きせい」という5つの漢字に因んだお話なのである。
その「きせい」に絡めた感想を書こうとした結果、あらすじを詳しく書き過ぎちゃったかなあ。反省!
※ネタバレしているかもしれないので、未読の方はご注意下さい。
第1章 「増田米尊、帰省する」の巻
増田米尊が勤務先である綾鹿科学大学大学院の夏休みを利用して、およそ10年ぶりに帰省するのである。
帰省先がなんと福岡県北九州市の小倉!
これには驚いた!
ROCKHURRAHの実家も小倉だからね。(笑)
そのおかげで(?)SNAKEPIPEも何度か訪れたことのある場所である。
奄美大島在住の鳥飼先生も、ご実家は小倉でしたよね?
まさか増田米尊の帰省先も同じ小倉だったとは!
おや?鳥飼先生の著作「本格的」に増田米尊の出身地としてあったのは、東京都町田市だったような?
現在住んでいるところ、ということにしておこうか。(笑)
いや、増田米尊だったら石神井とか御成門が合ってるのに、と仕事中に思いつき、一人ニヤけるSNAKEPIPE。
増田米尊に負けない変態ぶりですな!(笑)
小倉の駅前周辺の描写があり、情景を思い出す。
北九州弁が忠実に再現されているのを読むと、つい声に出して真似てみたくなってしまう。
実はROCKHURRAHは生まれも育ちも小倉、というわけではないという。
更に小倉を離れてからの期間が長いため、北九州弁についてはっきり覚えていないらしい。
仕方ないので、youtubeにアップされている「北九州弁講座」で勉強までする始末。(笑)
「〜と?」とか「〜なん?」の使い方が難しくて、いつも変な言葉になってしまうSNAKEPIPEである。
兄の家に向かった増田米尊は、普段とは違う体験をしてしまう。
兄嫁や姪からモテモテなのである。
ところが増田米尊、迫られても「童貞主義」を貫き通す。
加えて、お互いに自慰し合う提案をするとは、さすがだよね。(笑)
この箇所を電車で読んでいたSNAKEPIPEは笑ってしまい、周りの人から変人に思われたはず!
普段とは違う経験をした増田米尊は身の危険を感じ、帰省先からトンボ返りしてしまう。
大学に戻り、学会向けの資料に手を付けようとすると、資料が全く別のファイルにすり替わっている。
「処女作」というタイトルのミステリー小説で、更に作中に「問題編」やら「読者への挑戦!」が入っているのである。
第2章 「増田米尊、奇声をあげる」の巻
何故「処女作」 にすり替わってしまったのか?
誰がこんなイタズラをしたのか?
書いたのは誰なのか?
増田米尊は犯人探しを始める。
この中で興味深かったのは「プリン形」と命名されたトップが平らなバストだね!
フィールドワークとして盗撮した、と堂々を告白する増田米尊に、SNAKEPIPEは次第に驚かなくなっている。
だって増田米尊だもんね。(笑)
キャバクラの店名として「ノヴェンバー・ステップス」とあるのは、武満徹の曲名なのかな?
現代音楽についてほとんど知らないけれど、鳥飼先生の著作にある店名には何かあるかも?と思って検索してみたんだよね!
お盆明けに大学に向かい、作り直した資料にもう一度目を通そうとした増田米尊。
ここで奇声をあげるのである。
なんとまた資料が「問題作」という別ファイルに替わっているではないか!
第3章 「増田米尊、規制を課す」の巻
またしてもやられてしまったとは!
頭を抱えているところに、例のキャバクラでバイトをしている「プリン形」の横田ルミが登場する。
そして帰省先でも経験したように、ルミから迫られる増田米尊。
「オナニストを愚弄するな!」
と一喝し、ルミを「ズベ公」呼ばわりする。
ここでもまた「童貞主義」を貫いた増田米尊に、「やんや」の喝采を送りたいよね!(笑)
「問題作」にすり替わった資料を再び学会用に仕上げて、札幌で開催される応用数理学会に出席する増田米尊。
「キャバクラ嬢の豊胸指数をもとにした日本人女性のバストサイズの傾向推定」を発表するはずだったのに、スクリーンに登場したのは「出世作」というエロミス(?)であった。
第4章 「増田米尊、気勢をあげる」の巻
いつの間にか発表する資料がすり替わり、すっかりしょげていた増田米尊の元に、帝都理科大の教授である楠城一太郎が声をかける。
楠城は増田米尊の理解者で、今回発表された「出世作」の謎を解いたと言う。
その説明により、ほとんど官能小説としか思えなかった内容が、実はミステリーだったことを理解する増田米尊。
いや、増田米尊だけではない。
SNAKEPIPEもなるほど、と納得できたよ!
だから「出世作」なんだね。(笑)
「変態、バンザイ!」
と気勢をあげた増田米尊は、そのまま意識を失い倒れてしまう。
なんとその原因は回虫症による貧血だという。
ひーーー!回虫ーーー!
生野菜を口にすることで、体内に卵が入ってしまうという説明にはびっくり!
野菜はよーーく洗って食べようね。
熱を通せるものは通してから食べようね。
熱を通せば大丈夫なんだろうか。
何度以上の熱にすれば良いのだろうか。
調べたいけど、「その手」の写真が載ってたらと思うと怖くて検索できないんだよね。
増田米尊も、寄生虫に関する本に載っていた鳥肌が立ちそうな気味の悪い写真を見てしまったことで、余計に疑心暗鬼になってたもんね。
療養中の増田米尊の元に、以前寄稿した紀要が届く。
予想していた通りに、原稿は「失敗作」にすり替わっていた。
第5章 「増田米尊、寄生される」の巻
紀要の中にあった生物学科の助教である藤崎健の文章に興味を示した増田米尊は、藤崎に直接話を聞きに行くことにする。
すさまじい寄生合戦と、宿主に依存したまま生き続ける生物の多さ、どのようにして寄生するのか、などのレクチャーを受けるのである。
以前見た寄生された人の写真なども想起されてしまったのだろう、増田米尊は話を聞いている途中で再び意識を失い倒れてしまうのである。
一人の学生と会話をするうちに、すべての謎が明らかになる。
増田米尊は真実を知るのである。
これから先、増田米尊に再会できるのか心配になってしまうね。
何事もなかったように、再登場願いたいね!
劇中劇ならぬ作中作が4編組み込まれているので、連作短編とはいっても、途切れ途切れになった印象がある。
「失敗作」だけは増田米尊の執筆で、以前からの作品で馴染みのある谷村警部補と南巡査部長も登場しているので、唐突な感じはなかったけどね!
作中に登場したすり替わっていた小説のうち3編は、鳥飼先生の独立した短編小説として発表されていたものだったんだよね。
ミステリーとしてちゃんとしたロジックもあって、充分に楽しむことができるので、単独でも存在感がある作品である。
「バカミス」と聞くと、簡単でお手軽だと思われがちだけど、このジャンルをキチンと面白く書けるのは、やっぱり鳥飼先生の才能なんだろうね!
「絶望的」でそれらを一つの連作短編としてまとめられているからなのかもしれないけど、今回は増田米尊が翻弄される設定で、前作までの活躍ぶりがなかったのが心残りかな。
フィールドワークに関しても少し語られただけなので、「これぞ増田米尊!」という変態行為が少なかったのもファンとしてはちょっと物足りない。
一体SNAKEPIPEは何を望んでいるんだろうか。(笑)
3月5日に発売された「生け贄」もすでに入手済!
現在、読み進めているところである。
すでにお馴染みになっている「観察者シリーズ」のメンツとの再会が嬉しい!(笑)
また感想を書きたいと思う。
バカミス最高 一家に一冊鳥飼否宇
鳥飼先生、これからも応援しています!
あああ、町田のこと、すっかり忘れていました。作者よりも増田米尊について詳しいSNAKEPIPEさんはもはやストーカーの域ですね。感服。
ともかく郷里の小倉のことをちょっと書いてみたくなったので……。
今回は現代音楽ネタですみません。ホワイトデーには遅れましたが、おわびにかつて下関・北九州界隈で活動していた白(KURO)の映像を張っておきます。
https://www.youtube.com/watch?v=QIWxOrQq1KI
鳥飼先生、昨日アップしたばかりの記事にコメント頂けるなんて本当に嬉しいです。ありがとうございます!
町田、お忘れだったとは!(笑)
実は増田米尊のプロフィールを復習(?)するために「本格的」を再読した時に発見したんです。ストーカーとお褒め頂くなんて光栄です!
白(KURO)、拝見しました。
好きな音です!おわびだなんて、とんでもございません。
本当にありがとうございました!