【カスヤの森現代美術館入口を撮影】
SNAKEPIPE WROTE:
2024年9月に表参道のジャイルギャラリーで鑑賞した「ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展」をまとめたブログで、「若江漢字が創設した『カスヤの森現代美術館』も気になる」と書いたSNAKEPIPE。
調べてみると現在開催されているのは「開館30周年記念 マルセル・デュシャンを考える」という企画展とのこと。
興味深い展示なので、訪問の計画を立てる。
カスヤの森現代美術館へのアクセスは、JR横須賀線衣笠駅より徒歩15分とのこと。
衣笠駅というのは「これっきりこれっきりもぉ〜これっきりですかぁ〜」で有名な(?)横須賀駅の隣駅で、ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも初めて訪れる場所。
10月の三連休を利用し、とても天気の良い日に行ってみる。
行楽日和だったためか、北鎌倉駅、鎌倉駅でごっそり観光客が降りた後の電車内はガラガラ。
衣笠駅で電車から降りる人はほとんどいなかったようだ。
改札を抜けて歩き始める。
カスヤの森現代美術館は、1994年にオープンした私設の美術館だという。
国立や市立の美術館や博物館は知っているけれど、個人が開設するというのは聞いたことがないかも。
ROCKHURRAHに道順を検索してもらい、テクテク歩いていく。
民家しか並んでいないので、本当に美術館に向かっているのか不安になってしまう。
ようやく美術館の看板を発見!
迷いながら進んでいたので、長い距離だった気がするよ。(笑)
受付の男性から館内のマップをもらい、いざ展示室へ。
「開館30周年記念」と銘打っている企画展だけれど、少々こじんまりしている。
マルセル・デュシャンの「トランクの箱」の複製が展示されていた。
2022年11月にアーチゾン美術館で開催された「Art in Box マルセル・デュシャンの《トランクの箱》とその後」で、実物を鑑賞しているROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
石橋財団とは規模が違うので、レプリカやデュシャンへのオマージュ作品の展示は仕方ないかな?
デュシャンのシルクスクリーンを使ったセルフ・ポートレート。
若江漢字の作品がガラスに写りこんでいるね。
今までデュシャンのシルクスクリーン作品は観たことなかったので、新鮮だった。
もう一点、ブルーと赤のハートがプリントされた作品もあったよ。
あのハートの缶バッチあったら欲しかったなあ。(笑)
デュシャンの「大ガラス」からインスパイアされた若江漢字の作品群も色合いが鮮やかで目を引いたよ。
チェス・セットの作品はシンプルで美しかった!
デュシャンが晩年チェスに没頭していたというエピソードは有名だよね。
SNAKEPIPEもチェスをやってみたくなったよ。(笑)
2階の会場に入ると、そこはヨーゼフ・ボイスの部屋だった。
若江漢字と現在カスヤの森現代美術館館長である妻・若江栄戽は、1975年から1年間ドイツに滞在していたという。
そこで最初にボイスのサインが入った黒板消しを7千円くらいで手に入れたことから、ボイスのコレクションが始まったという話がネットに載っていた。
日用品にサインを入れる、いわゆるレディ・メイドがアートとして認知されることになったのはデュシャンのおかげ。
ここでデュシャンとボイスがつながってくるよね。
ボイスがパフォーマンスで用いた物品やメッセージなどをガラスケースに並べていた作品「ヴィトリーヌ」の隣に、映像が流れている。
コヨーテの鳴き声を真似てボイスが叫んでいるシーンが印象的だったので、ROCKHURRAHとじっくり鑑賞する。
ピアノの演奏とボイスのヴォイス(笑)が絡み合い、エキサイティングなパフォーマンスが繰り広げられていたんだよね!
「これは1984年に来日した時、草月ホールで行われたパフォーマンスなんですよ」
背後にいた女性が説明してくれる。
この方はもしかしたら館長の若江栄戽さんでは?
ジャイル・ギャラリーでボイス展を鑑賞したことを告げると、嬉しそうに微笑んでくれた。
「外には別の展示室もありますから、ご覧ください」
2000坪の敷地内に別館が点在している。
ROOM2には若江漢字の作品群が展示されていた。
載せたのは1974年の「見える事と視えること_ 釘II」という作品。
様々な物に釘が刺さっていて、抑圧や封印などの単語が頭に浮かぶ。
先日ジャイル・ギャラリーで鑑賞した6点組作品「気圧」もカッコ良かったし、SNAKEPIPEの好み!
立体作品も制作しているので、もっと作品を観てみたいと思ったよ。
松澤宥の作品が展示されていたのはROOM1。
1964年に「オブジェを消せ」という啓示を受け、それ以降物体としての作品制作をやめて言語による作品を作っていたというコンセプチュアル・アーティストだという。
言語によるアートというのは初めて知るタイプの作品だよ。
画像に「言明」や「公案」といった文字が見えるように、政治的な文言がつづられていたよ。
「会田誠の檄は、このパロディだったのかもね」
ROCKHURRAHに言われて「なるほど」と思ったSNAKEPIPE。
ブラック・ユーモア好きの会田誠なら、やっててもおかしくないかも。
それにしてもパッと記憶を蘇らせたROCKHURRAH、エライ!(笑)
ROOM3には、ナム・ジュン・パイクの作品が展示されていた。
1986年に開催された国際平和展のオープニング・イベントで、山下洋輔とのジョイント・コンサートが行われ、その際使用されたピアノが作品として制作されたという。
下のテレビにはイベントの様子が流されていた。
山下洋輔とナム・ジュン・パイクが似て見えて、たまにどっちだか分からなくなってしまったよ。(笑)
壁面にはナム・ジュン・パイクの代名詞ともいえるビデオ・アートも展示されていて、嬉しかった。
リアルタイムでは鑑賞していないからね!
すべての展示室を鑑賞し終わり、竹林を散策する。
木漏れ日が差し、サワサワと竹の葉が揺らいでいる中を歩くのは、とても気持ちが良かった。
広大な森の中には、無数の石仏や涅槃像などが配置されている。
宮永愛子の彫刻作品の展示もあり、景色に溶け込んでいたよ。
こんなに素敵な竹林があるなんて、羨ましい環境だよね!
カスヤの森現代美術館を創設した若江漢字は、ヨーゼフ・ボイスの足型を取った人物として有名なんだとか。
1983年、デュッセルドルフにあるボイスのアトリエを訪れ、石膏で型を取っている画像がネットに載っていた。
その時の足型も森の中に展示されていたよ。
ボイスに直接会い、文字通り肌に触れたことがある人物ってことだよね!
若江漢字、すごい。(笑)
落ち葉と水が効果的な一枚を撮らせてもらったよ!
竹林の散策を終え、とても清々しい気分になる。
「とても楽しかったです」
館長に感想を言うと、嬉しそうに笑ってくれた。
美術館にはキジトラの親子が暮らしていることを教えてもらった。
館長がとても気さくな方なので、ついおしゃべりしてしまうよ。
出口の扉を開けると、猫ちゃんがお見送りしてくれて、とてもかわいかった!(笑)
カスヤの森現代美術館は、難解と言われるボイスのコレクションを常設展示していることに驚いた。
多くの人に門戸を開くタイプのアートではないからね。(笑)
開設して30周年を迎えていることが素晴らしいし、これからも続けて欲しいと思ったよ。
なんといっても竹林が素敵だったね。
面白そうな企画があったら、また足を運んでみよう!