映画の殿 第66号 X・Pearl

20240818 top
【「X」と「Pearl」の主演女優ミア・ゴス。化粧や髪型で雰囲気変わるよね】

SNAKEPIPE WROTE:

お盆休みが今日で終わりという方が多いんじゃないかな?
ROCKHURRAH RECORDSでは、お盆休みというほどの休みは取っていなくて山の日を絡めた4連休だけ。
特にどこかに出かけることもなく、家に引きこもっていたよ。
今年は「危険な暑さ」の夏だから尚更のこと、食材を買うために近所のスーパーに出るくらい。
家の中にいるのが一番安全だからね。(笑)
時間に余裕があるので、映画鑑賞していたよ。

今回は2022年に公開された「X エックス(原題:X)」とその続編である「Pearl パール(原題:Pearl)」を特集してみよう。
実は、ROCKHURRAH RECORDSでは、続編の「Pearl」から観てしまったんだけど、制作年順に「X_から書いていくことにする。
まずはあらすじから。
※ネタバレしている可能性がありますので未鑑賞の方はご注意ください

1979年、テキサス。
女優のマキシーンとそのマネージャーで敏腕プロデューサーのウェイン、ブロンド女優のボビー・リンとベトナム帰還兵で俳優のジャクソン、そして自主映画監督の学生RJと、その彼女で録音担当の学生ロレインの3組のカップルは、映画撮影のために借りた田舎の農場へ向かう。
彼らが撮影する映画のタイトルは「農場の娘たち」。
この映画でドル箱を狙う――。
6人の野心はむきだしだ。
そんな彼らを農場で待ち受けたのは、みすぼらしい老人のハワードだった。
彼らを宿泊場所として提供した納屋へ案内する。
一方、マキシーンは、母屋の窓ガラスからこちらを見つめるハワードの妻である老婆パールと目があってしまう……。
そう、3組のカップルが踏み入れたのは、史上最高齢の殺人夫婦が棲む家だった。
(公式サイトより)

あらすじだけでも十分怖いよね。
トレイラーも観てみよう。

6人が田舎に車で向かい、ポルノ映画を撮る計画をしているんだよね。
あらすじやトレイラーからも分かるように、「X」はホラー映画!
舞台が70年代というのも、「いかにも」な雰囲気がプンプンするよね。(笑)
どうやら「X」は1974年に公開されたトビー・フーパー監督の「悪魔のいけにえ(原題:The Texas Chain Saw Massacre)」へのオマージュ作品みたい。
「悪魔のいけにえ」といえば、自作でTシャツを作っていたほどROCKHURRAHが大好きな映画だよ。
せっかくなので、「悪魔のいけにえ」も鑑賞してみることに。

舞台は1973年のテキサス。
若い男女5人がバンに乗って里帰りする、という特段変わったことがないシーンからスタートする。
ド田舎に行くのに、ガス欠の心配がある点がポイント!
ガソリンを分けてもらおうと立ち寄った家で惨劇が起きる。
有名な「レザー・フェイス」の登場だね!
何の前触れもなく現れて凶行する、危ないタイプ。
それでもお爺さんを大事にしていたり、父親のお仕置きを恐れていたところに人間味があるよ。(笑)
50年前に公開された映画だけど、今観ても非常に怖くて、ホラー映画の金字塔であることが分かるね。
「こんな映画を撮ってみたい」と憧れる人が多かったことも想像できる。
「悪魔のいけにえ」のトレイラーも載せておこう!

「X」の監督も「悪魔のいけにえ」に羨望のまなざしを送っていたに違いない。
同様のシチュエーションを演出し、周りを見渡してもあるのは老夫婦が住んでいる家だけ、という田舎を設定している。
大きく違っているのは、レザーフェイスのような大男ではなく、やせ細った老婆を狂気の人物に据えた点だね。
「若いもんには負けん!」みたいな元気な老人が出てくる映画について、2017年5月に「映画の殿 第24号 ハッスル老人」として記事にしたことがあったっけ。
ハッスルという言葉が死語がどうかは抜きにして(笑)、どちらかというと応援したくなるタイプの老人が主人公だったよ。
今回の「X」に関しては、不気味で醜悪な老婆に共感する部分は見つからなかったSNAKEPIPE。

ここで思い出したのが「レクイエム・フォー・ドリーム(原題:Requiem for a Dream 2000年)」に登場した主人公の母親のこと。
若かった頃のように痩せて美しくなりたいという願望を持ち、ドラッグ中毒になってしまうんだよね。
藤原新也の著作「アメリカ」の中だったと思うけれど、歴史あるものを大事にするヨーローッパに対し、ブランニューなものを喜ぶアメリカのような文章を読んだ記憶がある。
若さと美しさを求める気持ちは誰もが持っていると思うけれど、強すぎるのは問題だよね。
張りのある肌を持つ若い女性への羨望と衰えない性欲を持った「X」の老婆パールは、殺人によって自らを慰めていたみたいだよ。
載せた画像は「裸にオーバーオール」のマキシーン。
この服装はデキシーズ・ミッドナイト・ランナーズの「カモン・アイリーン」のMVと同じなんだよね。
この意味分かってくれると良いんだけど。(笑)

「悪魔のいけにえ」以外にも、斧で破られたドアの隙間から叫ぶシーンでは「シャイニング(原題:The Shining 1980年)」、ソバカスいっぱいの顔からは「キャリー(原題:Carrie 1976年)」の影響を受けているように感じた「X」。
続編は「X」で老婆だったパールの若い頃の話になる。

「Pearl」のあらすじを書いてみよう。

スクリーンの中で歌い踊る華やかなスターに憧れるパールは、厳格な母親と病気の父親と人里離れた農場で暮らしている。
若くして結婚した夫は戦争へ出征中で、父親の世話と家畜たちの餌やりの毎日に鬱屈とした気持ちを抱えていた。
ある日、父親の薬を買いにでかけた町で、母親に内緒で映画を見たパールは、ますます外の世界へのあこがれを強めていく。
そして、母親から「お前は一生農場から出られない」といさめられたことをきっかけに、抑圧されてきた狂気が暴発する。(映画.comより)

トレイラーはこちら。

1979年の「X」より約60年前の1918年を舞台にした「Pearl」でも、ミア・ゴスが主演なんだよね。
ドイツ移民で、何事にも厳しい母親の抑圧ぶりが凄まじい。
父親は自分で体が動かせない障害を持っていて、パールが面倒を見ている。
「X」でもヌードを披露していたパールだけど、「Pearl」でもお風呂のシーンがあり、すっぽんぽんに抵抗がない女優なんだね。
ホラーにエロチック要素が加わっているところも、ファンが多い理由かもしれない。

1910年代のアメリカでは、何歳から結婚できたんだろう。
パールはすでに結婚していて、夫が従軍しているんだよね。
家にいると農場の仕事や父親の世話に追われ、楽しい時間がないパールが唯一楽しみにしていたのが映画鑑賞。
映画技師と知り合い、人妻でありながら浮気してしまうパールは「どこかに連れて行ってくれる人」が欲しかったんだろうね。
裏切られたと知ったら悔しさのあまり、感情を爆発させてしまう。

パールに親切に接しているブロンドの女性は、夫の妹。
夫の実家は少し裕福なようで、身なりが整っている。
食料を分け与えてくれたのに「施しを受け、侮蔑されている」として、決して口にしないパールの母親は頑固過ぎかも。
ただ、夫の実家側も「与えている」として優位さをアピールしているように見えたので、お互い様の関係なのかもしれない。
ブロンドの妹が、凶行に遭うシーンはすごかった!
画面を2分割する「デ・パルマ・カット」で、残酷なシーンを映し出していたからね。
最初からパールの様子がおかしかったことに気付かなかった妹は、ホラー映画でお約束のように犠牲者になるタイプ。
鑑賞者の期待を裏切らず(?)まんまとパールにやられたね。(笑)

「X」の殺人老婆パールの来歴が明らかになる「Pearl」。
外的要因が引き金になったにしても、元来残酷な一面を持っていたことが分かる。
主演のミア・ゴスは「X」と「Pearl」でホラー映画界の女王として君臨したみたいだね。
次作は「X」の6年後、1985年を舞台にした「MaXXXine」で、アメリカではすでに公開されているようだね。
ROCKHURRAH RECORDSでは、またいつか観られる時を楽しみに待っていよう!

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