SNAKEPIPE MUSEUM #71 Fortunato Depero

20240825 08
【1927年初版のデペーロ作品集。ボルト留めにグッと来るよ!】

SNAKEPIPE WROTE:

画像検索している時に、偶然目にした一枚の絵を観て驚きのあまりROCKHURRAHに声をかける。
「この絵がすごくカッコ良い!」
興奮しているSNAKEPIPEに冷たい視線を送るROCKHURRAH。
「もう何年も前に、そのアーティストについて知らせたよ」
ROCKHURRAHから教えてもらっていたのに、SNAKEPIPEが無反応だったというではないの。
人の話はちゃんと聞かないとダメだよね。(笑)

アーティストの名前はFortunato Depero、カタカナにするとフォルトゥナート・デペーロになるのかな。
イタリア未来派の画家でデザイナーだという。
帽子が似合う伊達男がデペーロご本人!
そういえば2024年元旦のROCKHURRAH制作のポストカードが、未来派を意識した作品だったことを思い出したよ。
SNAKEPIPEは詳しくないので、まずは未来派について調べてみようか。

未来派とは、フトゥリズモ(伊: Futurismo、フューチャリズム、英: Futurism)とも呼ばれ、過去の芸術の徹底破壊と、機械化によって実現された近代社会の速さを称えるもので、20世紀初頭にイタリアを中心として起こった前衛芸術運動。
この運動は文学、美術、建築、音楽と広範な分野で展開された。
1920年代からは、イタリア・ファシズムに受け入れられ、戦争を「世の中を衛生的にする唯一の方法」として賛美した。
1909年、イタリアの詩人フィリッポ・トンマーゾ・マリネッティによって「未来派宣言」が起草されたことが発端である。
(Wikipediaより抜粋)

1924年にアンドレ・ブルトンが「シュルレアリスム宣言」を発表する15年前に「未来派宣言」があったとは!
音楽や建築にまで範囲が及んでいたことにも驚いてしまう。
ノイズ・ミュージックの元祖といえる「騒音芸術」が誕生したり、「新都市」という建築デザインが発表されるなど、未来派も面白そうだね!
戦争礼賛に結びついてしまった点は共感できないけれど、作品には興味あるよ。
続いて、今回特集するフォルトゥナート・デペーロの経歴を調べてみよう。

1892 トレンティーノ生まれ(当時はオーストリア)
1910 大理石職人の見習いとして働く
1911 社会的リアリズムと象徴主義のデッサンを展示する
1913 散文、詩や象徴主義のデッサンが収められた小冊子「Spezzature: Impressioni – Segni – Ritmi」を出版
1914 ローマを訪れ未来派芸術家に出会う
1915 「Ricostruzione Futurista dell’Universo(未来派宇宙再建宣言)」に署名
1917 バレエのコスチューム・デザインを手掛ける
1923 未来派の家を再装飾し、「未来派の夜会」(Veglie Futuriste)を開催
1925 パリで開催された「国際装飾工業芸術展」に参加
1927 20世紀の印刷の歴史における傑作とされる「Depero Futurista(デペロ・フューチュリスタ)」を出版
1934 ミラノで開催された第5回トリエンナーレに未来派グループと共に参加
1936 第20回ヴェネツィア・ビエンナーレに作品を出展
1959 イタリアのロヴェレート市に「デペロ美術館」がオープン
1960 死去

冒頭に載せたのが、1927年に出版された「Depero Futurista」で、革新的なタイポグラフィのレイアウトを見ることができるという。
2017年に完全復刻版が販売されていたようで、古本屋で確認すると11万円だったよ。
この金額では手が届かないね。(笑)
年表に話を戻すと、トリエンナーレやビエンナーレには複数回参加していて、亡くなる前年まで個展の開催も行っているんだよね。
どんな作品を手掛けていたのか、紹介していこう。

1920年に制作された「La Casa del mago(The House of the Magician 魔術師の家)」は、油彩画だという。
とてもビビッドな色使いで、ポスターのようだよね。
5人の魔術師(?)が腕を磨くために練習しているように見えるよ。
室内の様子がレトロ・フューチャーとでもいうのか、昔のSF小説の挿絵にありそうな雰囲気だね!

次はデペーロが手がけた「カンパリ」のポスターと瓶の画像を載せてみよう。
「カンパリ」は苦みのあるリキュールで、ソーダやオレンジ・ジュースで割って飲むことが多いんだとか。
SNAKEPIPEは飲んだことがないかもしれないな。
イタリアでは古くから親しまれているアルコールのようで、広告にも力が入っているみたい。
1928年に制作されたデペーロのポスターは、背景が黒というのが憎い演出だよね。
カンパリ・ソーダの瓶もデペーロのデザインだって。
円錐形でオシャレなだけではなく、上下と交互に積むことができるため、輸送コスト削減にもなったという。
まさに機能性とデザイン性を兼ね備えた逸品!
瓶のデザインは1931年とのこと。
その当時、国際的パッケージング・デザイン・コンペティション「pentawards」があったら、確実にダイヤモンド賞獲得できるデザインだよね。(笑)

広告デザインでも、こちらの提案は会社から却下されたものらしい。
ピレリのガスマスク広告だって。
左のポスター上部に鉛筆書き(?)されているのは「ピレリのマスクは誰にでもフィットする」で、右のポスターには「落ち着いて!ガス防護は簡単だ」とコピーがあるみたい。
このポスターが制作されたのは1938〜1939年らしいので、不穏な時代だよね。
シンプルな構図と色味で強いインパクトを感じるデザインだよ。

1927年12月に刊行された「Emporium magazine」のカバー・デザイン。
黄色、オレンジ、黒という3色だけを使用したタイポグラフィが見事!
まるで曼荼羅のように9分割した正方形に、「Emporium」のアルファベットを45℃の角度に配置しているセンスの良さには脱帽だよ。
このデザインはROCKHURRAHが気に入っていて、自作でTシャツ作っていたほど。
Tシャツ持ってることはSNAKEPIPEも知っていたけれど、デペーロのデザインとは知らなかった。
それにしても、確か先週も「悪魔のいけにえ」について書いている時「ROCKHURRAH自作のTシャツ」というフレーズ使ったね。(笑)

今日も発行されている「ニューヨーク・デイリーニュース」の前身である「THE NEWS: NEW YORK’S PICTURE NEWSPAPER」から1930年に発行された「NEWS AUTO ATLAS OF THE UNITED STATES & CANADA AND METROPOLITAN NEW YORK」のカバー・デザイン。
リトグラフで制作された作品、色合いがとても美しいよね。
これは「アメリカ、カナダ、ニューヨークの自動車向けの地図」ということになるのかな。
デペーロは1928年から1930年までニューヨークに滞在していたようなので、デザインを発注されたんだね。
アメリカにもデペーロの名声が轟いていたことが分かるよ。
現代のようにカー・ナビがない時代、一家に一冊、この地図持ってたんだろうね。(笑)

最後はこちら!
なんとも可愛らしい木製の作品だよ。
これは1918年にデペーロが手がけた「Balli Plastici(プラスティック・バレエ)」という機械や人形を使った舞台作品で使用されたマリオネットとのこと。
どんなストーリー展開だったんだろう。
人形が動いて、誰かが吹き替えしてたのかなど、気になるよね!(笑)

デペーロの作品は、鑑賞していてとても楽しかったよ。
絵画、グラフィック・デザイン、インダストリアル・デザイン、舞台やコスチュームなどありとあらゆる作品を残しているんだよね。
検索していて「これはROCKHURRAH紋章学で特集したい!」と思うシリーズも発見したので、デペーロについてはまた別の機会に特集を続けるつもりだよ。
どうぞ次回もお楽しみに!

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