ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展 鑑賞

20240915 top
【いつも通りジャイル・ギャラリーの入口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

表参道にあるジャイル・ギャラリーで「ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展」が開催されている。
7月の開催当初から展覧会情報は知っていたけれど、もう少し涼しくなってから行こうと思っているうちに9月になってしまった。
展示が終わりに近づいてしまったので、暑さに耐えながらROCKHURRAHと一緒に会場に向かったのである。

今回の展覧会は「ヨーゼフ・ボイスとの対話」とのこと。
そもそもヨーゼフ・ボイスって何者?というところから始めようか。
SNAKEPIPEは、ヨーゼフ・ボイスと聞いて思い浮かぶのは「フエルトのスーツ」くらいなんだよね。
時代的には、ナム・ジュン・パイクらと共に「現代アート」の旗手だったことは分かるんだけど。
どんなことをやっていたアーティストなのか、詳しく語ることができないなあ。
少し調べてみよう。

1921 ドイツのクレーフェルトに生まれる
1941 第二次世界大戦中に空軍に従軍
1943 ソビエト連邦で飛行機が墜落し、タタール人によって救助される
1946〜1951 デュッセルドルフ美術アカデミーで学び、彫刻を専攻
1951 美術アカデミー卒業後、フリーランスのアーティストとして活動を開始
1961 デュッセルドルフ芸術アカデミーの教授に就任
1964 パフォーマンス「How to Explain Pictures to a Dead Hare(死んだウサギに絵をどう説明するか)」を行う
1965 「Fat Chair(脂肪椅子)」を発表し、異物や素材を使った彫刻作品が注目される
1972 ドキュメンタ展に参加し、「7000本のオークの木(7000 Oaks)」というプロジェクトをスタートさせる
1974 「Coyote I Like America and America Likes Me (コヨーテ 私はアメリカが好き、アメリカも私が好き)」というパフォーマンスを行う
1976 「自由国際大学(Free International University)」を創設し、教育と社会改革に力を入れる
1982 再びドキュメンタ展に参加し、環境芸術プロジェクト「7000本のオークの木」を完成させる
1984 来日し、東京藝術大学の体育館にて対話集会が行われる
1986 心不全のためデュッセルドルフで死去

亡くなる2年前に来日しているんだね。
現代アーティストの宮島達男が、東京藝術大学での対話集会について語っていたのを観たことがあるよ。
「ボイスが歩いた後に、星飛雄馬が投げた球みたいな強い光が走っていた」
とボイスのオーラについて表現していたっけ。
ちょっと大げさな気はするけど、実際に現場にいたら興奮したはずだよね。(笑)

ヨーゼフ・ボイスの作品は、コンセプチュアル・アートになるのかな。
マルセル・デュシャンに系譜があるというコンセプチュアル・アートは、誤解を招くことを承知の上で簡単に説明すると「物議を醸すアート」ということかも。
観ただけで理解できるアートではなく、解説が必須の難解な作品が多い気がするよ。
ボイスは、1972年にスタートさせた「7000本のオークの木」を、社会とアートを結んだ「社会彫刻」として発表しているという。
アートという概念の拡張を問いかける、仕掛け人みたいな人物なのかなと思ったSNAKEPIPEだよ。

2018年2月のブログ「会田誠展 GROUND NO PLAN 」で、現代アーティストの会田誠が、沢田研二の「カサブランカ・ダンディ」を熱唱していたことを書いている。
タイトルを「アーティスティック・ダンディ」として「ボイス、あんたの時代は良かった」とボギーをボイスに入れ替え、詐欺師呼ばわりしていたっけ。(笑)
歌を聞いたSNAKEPIPEは大笑いしてしまったことを思い出したよ。
作品の思想的な意味を理解できないと「なんとなくアートかも」という作品にしか感じられないところに、ツッコミが入ったようで面白かったからね。

今回鑑賞した企画展「ヨーゼフ・ボイスとの対話」では、ボイス自身の作品と共に、ボイスから影響を受けた現代アーティスト6人の作品が展示されていたよ。
ジャイル・ギャラリーは撮影オッケーなので、良いね!
展示作品を紹介していこう。

まずはボイスの作品から観ていこう。
ガラスケースの中に入っているのは黄色い電球。
「カプリバッテリー」という作品だって。
この展覧会のキュレーターである飯田高誉氏による説明があった。
「この作品は人間と自然との親和性が高まるメタアファーとして提示されている」とのこと。
飯田氏もデヴィッド・リンチ大ファンの方なので、同じ嗜好の持ち主として尊敬しているSNAKEPIPE。
できるだけ飯田氏が企画した展覧会には足を運びたいと思ってるんだよね!
観念的な展示が多いので、頑張って理解したいと思っているよ。
「カプリバッテリー」は「自然から発生したエネルギーを活用し、永久に持続させることを示唆している」という。
作品観ただけでは、到底理解できないなあ。(笑)

「ヴィトリーヌ」は、ボイスがパフォーマンスで用いた物品やメッセージなどをガラスケースに並べていた作品だという。
カスヤの森現代美術館」の創設者である若江漢字が、所蔵しているボイスのコレクションから選んで並べたんだとか。
「ヴィトリーヌ」というのは、フランス語で科学標本などを展示するガラスケースを意味するんだって。
どうやらアウシュヴィッツに関係する物が並んでいるようだね。
「鑑賞者に対して生死の境界を意識させると同時に、価値の転換を示す装置」と説明されているけれど、観ただけで理解するのは難しいかも。

1984年にボイスが来日した時、一緒についてまわっていたというのが写真家の畠山直哉。
2008年4月に書いた「好き好きアーツ!#01 畠山直哉」で取り上げたアーティストだよ!
好き好きアーツ!」の第1回目が今から16年も前のこととは。(笑)
今回の展覧会ではボイスを撮影した写真4枚が展示されていた。
どうして畠山直哉がボイスを撮影していたのかは不明だよ。
2024年9月28日まで、タカ・イシイギャラリーで畠山直哉の展覧会が開催されているという情報を入手。
メッセージ性の強い作品を撮り続けているみたいだね。
好きな写真家なので、動向をチェックしていかないと!

磯谷博史の「花と蜂、透過する履歴」は、コロンとしたかわいらしい形の作品だった。
中に入っているのは蜂蜜で、光っているのは集魚灯らしい。
琥珀色がとても美しいね。
磯谷博史は1978年東京生まれ。
2003年に東京藝術大学建築学科卒業の2年後に東京藝術大学院先端芸術表現科修士課程修了し、2011年ロンドン大学も卒業しているんだとか。
どうやら2019年4月に鑑賞した「六本木クロッシング2019展:つないでみる」に出品していたようなので、SNAKEPIPEは以前、磯谷博史の作品を観たことがあるみたいだよ。

今回の展覧会で一番気に入ったのが、若江漢字の6点組作品「気圧」だよ。
若江漢字流の「ヴィトリーヌ」ということらしい。
近寄ってみると、写真と共に電球やビンなど、ボイスっぽいオブジェが収納されているんだよね。
線路など鉄でできた構造物の写真も好みだし、6点セットを家に飾りたいくらいだよ!
先にも書いたけれど、若江漢字が創設した「カスヤの森現代美術館」も気になるね。
現在開催中の企画展は「マルセル・デュシャン」だって。
行ってみたいな!(笑)

加茂昂の「惑星としての土/復興としての土1」を写真作品だと勘違いしていたSNAKEPIPE。
「油彩だったよ」
断言するROCKHURRAHは、近付いて観察していたという。
素材を調べると「油彩、堆肥顔料」と書いてある!
じっくり観ていなかったことがバレてしまったね。(笑)
それにしても堆肥顔料ってなんだろう?
「堆肥化された有機物から作られた顔料」だって。
いろんな技術があるんだねえ。
加茂昂は1982年東京都出身で、 2008年に東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
2010年には東京芸術大学大学院絵画研究科修了と調べたところで、上で紹介した磯谷博史と似た経歴であることが分かったね。
みなさん、エリートだなあ。(笑)

AKI INOMATAは、2022年「世界の終わりと環境世界」や「金沢21世紀美術館」などで作品を鑑賞したことがあるアーティストだよ。
動物をモチーフにした作家として認識していたので、散歩している犬が登場しても驚かなかったSNAKEPIPE。
展示してあるのは、洋服と髪の毛?
タイトルは「犬の毛を私がまとい、私の毛を犬がまとう」だって。
犬の毛とAKI INOMATAの髪を数年にわたって集め,その毛/髪で,互いの衣服/毛皮をつくり着用した作品だというから腰を抜かしてしまった!(笑)
ちなみにAKI INOMATAも東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻修了だって。
何年間もかけて毛を集めるという執念が怖いくらいに素晴らしいよね。

最後は武田萌花の「Day Tripper」というビデオ・インスタレーション作品ね。
こちらは電車の座席が置かれ、車窓風景が流れる。
移動している感覚になるけれど、動いているのは窓の外側に映る景色だけなんだよね。
ROCKHURRAHが動画を撮ってくれたので載せてみよう。

「心は変わりやすいけれど、ほんとは何も変わっちゃないのさ。まわりだけがぐるぐる回るのさ」
を思い出してしまったSNAKEPIPEだよ。
ジャックスの「堕天使ロック」なんだけど、分かるかな?(笑)

地下から5階に続く吹き抜けに、ギャラリーに関連するインスタレーションが飾られてるんだよね。
今回のヨーゼフ・ボイス展では、垂れ幕のような布が下がっていてカッコ良かった。
せっかくなのでエレベーターから動画撮影してみたよ!

なかなか面白いよね。

いつもジャイル・ギャラリーに行くと、新しい発見があり楽しくなるよ。
今回の収穫は「カスヤの森現代美術館」と若江漢字だね。
毎回無料で鑑賞させてもらって感謝だよね。
次の企画展も楽しみにしていよう!(笑)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です