ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ 鑑賞

20250525 top
【東京駅八重洲口出口24番にあった看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

ずっと以前からROCKHURRAHに誘われていたのは、「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ」展だった。
もしかしたら昨年から約束していたのかもしれない。
SNAKEPIPEの入院により展覧会鑑賞が叶わず、会期終了間際での鑑賞になってしまった。
前回、会場のアーチゾン美術館を訪れたのは2022年11月の「Art in Box マルセル・デュシャンの《トランクの箱》とその後」だったので、およそ3年半ぶりになるんだね。
その間にROCKHURRAH RECORDS事務所移転があり、東京都民から神奈川県民に変わったことも、足が遠のいた理由かもしれない。
久しぶりに「これは!」という企画展なので、とても楽しみにしていたよ!
アーティストであるアルプ夫妻について、少し勉強しておこうか。

ゾフィー・トイバー=アルプ
絵画、彫刻、テキスタイルデザイン、舞踊、建築、インテリアデザインなど、多岐にわたる分野で活動し、芸術と工芸、抽象と具象の境界を越える作品を生み出す。

1889 スイスのダヴォスに生まれる
1906〜1910 テキスタイル・デザインを学ぶ
1915 舞踊学校でダンスを学ぶ
この年、夫となるジャン・アルプに出会い、ダダイズムに参加
1916〜1929 チューリッヒの応用芸術学校で刺繍やデザインの講師を務める
1926 ジャン・アルプとともにフランス国籍を取得
1930〜 ロシア構成主義のレビュー「Plastique(Plastic)」をパリで設立
1943 ストーブの故障による一酸化炭素中毒により事故死

ジャン・アルプ
フランスとドイツの両文化に根ざした彫刻家、画家、詩人であり、20世紀初頭の前衛芸術運動、特にダダイズムとシュルレアリスムの中心的存在。

1886 ドイツのシュトラスブルク(現在のフランスのストラスブール)に生まれる
1904 パリで詩を初めて出版
1905〜1907 ドイツ・ワイマールの美術学校で学ぶ
1908 パリのアカデミー・ジュリアンに入学
1916 ダダ運動の創設メンバーとして活動を開始
1922 ゾフィー・トイバーと結婚
1925 シュルレアリスム運動に参加
1926〜1930 「アブストラクシオン=クレアシオン」グループの創設メンバーとして活動
1930~ 石膏や大理石を用いた彫刻制作を始める
1959 再婚し、スイス・ロカルノに新たな住居兼アトリエを構える
1966 死去

ご夫妻なので2人分書いてみたよ!
トリスタン・ツァラらと共にチューリッヒダダイスム宣言を発表したり、友人にはカンディンスキーやマルセル・デュシャンがいたり、豪華な顔ぶれが勢揃い!
憧れの1920年代をリアルタイムで経験した、アーティストご夫妻だもんね。
ゾフィー・トイバー=アルプは、スイスの50フラン紙幣(1995年〜2016年)に肖像が使用されるなど、高く評価されているんだとか。
年表の中に、ダダイズムやシュルレアリスム、ロシア構成主義といったワクワクする単語が並んでいて嬉しくなるよ。
2人の作品鑑賞、とても楽しみだね。(笑)

5月なのに夏日が続き、このまま一気に夏になってしまうのか心配したけれど、展覧会鑑賞予約をした日は、少しひんやりしていて歩きやすかった。
今までアーチゾン美術館へは銀座線の京橋から歩いていたけれど、東京駅からも歩いてすぐなんだよね。
地下道を通って行ったので、すんなり到着したよ!
アーチゾン美術館横に、先頭に旗を掲げた団体客が並んでいて、まさか同じ展覧会を鑑賞しにきたのでは?と危惧してしまう。
そして残念ながらその予想は的中してしまったんだよね。

会期終了間際にも関わらず、団体客のせいばかりではなく、実際にお客さんが多かった。
撮影はすべてOKだったのは良かった!
展覧会は4つの章に分かれて展示されていたよ。
気になった作品を紹介していこう。

第1章  形成期と戦時下のチューリヒでの活動

チューリッヒじゃなくてチューリヒなんだね?
「ハロー!チューリッヒ!」って宣伝も見てるのにね。(笑)
最近様々な表記が、以前見聞きしていた時とは違っていて、戸惑うことがあるよ。
画像はゾフィー・トイバー=アルプ、1917年〜1918年頃制作された手帳カバーで「抽象的なモティーフによる構成」。
麻布の土台にビーズ刺繍が施されているんだよね。
抽象的なモチーフの面白さと色合いの美しさが見事!
レプリカがあったら欲しいと思ったよ。

一方、夫であるジャン・アルプ、1915年の作品がこちら。
「トルソ=へそ」は木製の彫刻作品なんだよね。
ジャンには「へそ」と名付けた作品が多いことに気付く。
母親とのつながりというところから、起源や自然、生命の普遍性などがテーマになっていると説明されていたよ。
この作品を作った年、ジャンとゾフィーが出会っているんだよね。
2人共アブストラクトを志向しているので、意気投合するのは納得!
むしろ結婚まで7年かかっていることが不思議な気がするよ。

ゾフィーは、1918年に人形劇「鹿王」の人形制作を行っていたみたい。
展示されていたのは、2010年代に復刻されたレプリカだったよ。
ゾフィーの手にかかると、人形が抽象的なパーツの組み合わせになっていて面白い。(笑)
3体(!)の人形は「デラーモ王 」「守衛」「鹿」で、真鍮シートやベルが使用されているという。
当時も同じ素材でできていたのかな?
別の章でアルプ夫妻のアトリエ兼住居が紹介されていて、たくさんの人形が飾られていたんだよね。
きっと「鹿王」に登場した人形たちだったんじゃないかな。
これもミニチュアでフィギュアがあったら欲しかったなあ。(笑)

第2章 越境する造形 空間の仕事とオブジェ言語

1919年から1929年までの軌跡を紹介するチャプターで、最初に気になったのはゾフィーの作品。
1920年〜1924年頃制作された「パッチワークのズボン」がオシャレで目を引いたよ!
素材はビスコースと綿だって。
ビスコースというのは、レーヨン素材の一種で最も古い自然素材の合成繊維とのこと。
ゾフィーは元々テキスタイルの勉強をしていたので、布を扱うことに慣れていたんだね。
色彩のバランスが素敵で、斬新なパンツだよ!

1924年に制作されたジャンの「花の頭部をもつトルソ」は木に彩色している作品。
色がハッキリしていて好みだよ!
緑×ピスタチオグリーン×ブルーの3色、真似たくなるコンビネーションだね。
他に彩色した厚紙を使った作品「トルソとへそ」も並んで展示されていたよ。
また「へそ」だね。(笑)
もうこの時には二人は結婚しているね。
お互い刺激し合って、制作していたんだろうなあ!

アルプ夫妻は、18世紀に建造された歴史的な複合娯楽施設である「オーベット」の改築に伴う室内デザインを依頼され、大きな収入を得たという。
「オーベット」の室内デザインも展示されていて素晴らしかったよ。
得たお金でアルプ夫妻は住所権アトリエを建設したというから羨ましいね。(笑)
その建物の模型が展示されていた。
窓枠が赤でかわいいよね!
それぞれのアトリエと生活空間があり、2人にとって快適な住まいだったという説明があった。
日常生活と芸術が結びついて、お互いを高め合い創作活動できただろうね!

第3章 前衛の波の間で 各々の探求とコラボレーション

ゾフィー、1931年の作品「長方形と円による構成」。
単純な形を白、赤、青、グレーのみを使用して配置したシンプルさが素晴らしい!
バランスの良い構成で作品を作る日本画に近い雰囲気だよ。
マルだけに注目すると、まるで点字のよう。
未来人がこの作品を発見したら、エジプトのヒエログリフのような古代文字と勘違いするかもね?(笑)
ROCKHURRAHは「この時代にはないはずのコンピュータ回路のようだ」と感想を話す。
確かに、アナログなのにデジタルっぽいもんね!

1938年にジャンが制作したブロンズ製の「つぼみ」。
抽象的な彫刻は、タイトルと作品に関連を見いだせない場合も多いけれど、ジャンの場合はむずかしくなかったよ。
口を開けたヘビみたいにも見えてくるなあ。(笑)
有機的な形態を彫刻にする取り組みは、この頃から始まったみたいだね。
「具象彫刻」というんだって。
「つぼみ」は植物から、ジャン自身の詩作や民話から着想を得た彫刻作品も展示されていたよ。
つるんとした表面を撫でてみたい衝動に駆られたよ!

第4章トイバー=アルプ没後のアルプの創作と「コラボレーション」

年表にあったように、1943年ゾフィーは不幸な事故により急逝してしまうんだよね。
ジャンは強いショックを受け、4年間修道院にこもり、詩作することで妻を弔っていたんだとか。
人生のパートナーであり、同じ志向のアーティストだったゾフィーの不在は、ジャンに想像を絶する苦しみを与えたに違いない。
画像は1939年にゾフィーとジャンがドローイングのコラボレーションをした作品(左)と、1950年頃ドローイングを基に描かれた油彩画「共同絵画」(右)。
涙が出そうになるエピソードだよ。
ジャンはゾフィーの作品を立体にする試みを行っていくんだよね。

ブロンズ作品と絵画作品が上下に展示されている。
下の作品は1942年にゾフィーが制作した「幾何学的な構築」で、その作品を基にジャンがブロンズで彫刻作品にしているんだよね。
「晩年のコンストラクション」は1960年頃まで続いていたみたい。
ゾフィーの力強く伸びやかな作品のカッコ良さが立体化されていて、素敵だった。
SNAKEPIPE MUSEUMに所蔵したくなったよ!(笑)

1922年に結婚してから約20年間、寄り添ってきたゾフィーとジャン。
画像は1928年に「オーベット」前で撮影されたゾフィー(真ん中)とジャン(右)。
幸せそうな2人を見ると、事故が起きなかったら、と「IF」を想像してしまうね。
ジャンの心にぽっかりと空いてしまった空洞は、ゾフィーに思いを馳せながら行う制作で、少しずつ埋まっていったのか。
完全になくなることはなかっただろうと予想する。
夫婦で作品制作を行っていたというと、椅子で有名なイームズ夫妻を思い出すね。
2019年3月に「EAMES HOUSE DESIGN FOR LIVING」で、イームズ夫妻のアトリエ兼スタジオを鑑賞したっけ。
生活とデザイン、想像力(創造力)は連動しているよね。
「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ 展」鑑賞できて本当に良かった!
ROCKHURRAH RECORDSも2組のカップルを見習って、お互い切磋琢磨していきたいと思う。
まずは部屋の掃除から始めるかな。(笑)

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