田名網敬一 記憶の冒険 鑑賞

20241013 top
【毎度お馴染み!国立新美術館の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

現代アート好きの友人Hと久しぶりの会合を開くことになった。
前回は2024年6月で「GOMA ひかりの世界」を鑑賞し、表参道〜原宿を闊歩したっけ。(笑)
国立新美術館の「田名網敬一 記憶の冒険」が気になる、という友人Hの言葉を受け、行ってみることに。
すっきりとした秋晴れの日、六本木に向かったのである。

友人Hとは美術館で待ち合わせたので、SNAKEPIPEは一人で六本木駅から歩いて向かう。
六本木を歩くのは2023年9月の「テート美術館展」以来、約1年ぶりだったことに気付く。
随分久しぶりだったんだね!
そろそろ美術館が見えてくる。
前方に何やらピンク色の巨大な物体が見えてきた。
お目々ぱちくりの大きな金魚が「いらっしゃい」と言わんばかりにお出迎えしてくれているよ。
まつげがピンと張っていて可愛いね。(笑)
乃木坂駅から到着した友人Hと落ち合い、ピンクの金魚の前で記念撮影して楽しむ。
実はSNAKEPIPE、田名網敬一について全く知識がないんだよね。
ここで少し経歴を調べておこうか。

1936 東京都京橋生まれ
1957 日宣美展で特選を受賞
1958 武蔵野美術大学卒業
1975 月刊「プレーボーイ」誌 アートディレクター就任
1991 京都造形芸術大学 情報デザイン学科 教授
2013 京都造形芸術大学 大学院芸術研究科 教授
2024 死去

今回の展覧会開催2日後に、享年88歳で亡くなっているとは!
世界初の大規模な個展だというので、心して鑑賞しよう。

8月から開催されている展覧会なので、通常のチケット売り場は閉鎖され、展覧会場入口でチケットを購入するシステムに変更になっていた。
お客さんが多くないという証拠だね。(笑)
会場に入ると「すべて撮影OK」と案内され、嬉しくなる。
蔡國強展」の時もオッケーだったことを思い出した。
アーティスト側の判断なのかな?
会場に入ると黒をバックに、色鮮やかな、というよりド派手な屏風が目に入る。
「ここから始まりますよ」
と耳元でこっそり囁かれている気分になる。
進んでしまったら最後、異界をさまよう覚悟を決めないといけない。(笑)

「第1章」に歩を進めると、そこはサイケデリックな部屋だった。
1966年から67年に制作された「NO MORE WAR」という作品を中心に展示されていた。
作品の一部を切り取って壁までもペイントされているところが素敵!
通常、壁紙は白など単色のまま作品のみが展示されていることが多い中、どこを切り取って撮影してもカッコ良い一枚になる演出が素晴らしいよ。
「オレンジ色が強いですね」
友人Hが感想を言う。
サイケデリック・アートが大好物のSNAKEPIPE、この壁紙ごと欲しくなったよ!(笑)

この構図が良い、と友人Hからアドバイスされて撮ったのがこれ。
黒と白とオレンジの3色がとてもスタイリッシュだよね。
黒インクだけで描かれた作品もあったよ。
雑誌から切り抜いた女性のヌードを貼り付け、イラストと融合させた1967年の「WONDER WOMAN」シリーズ。
描かれているモチーフは、70年代以降も繰り返し使用されているんだね。
中央に見えるオレンジ色の「自画像」も謎めいていて面白い。
この作品を描いた1966年「田名網敬一の肖像」(イラスト集)を出版し、アーティストとしてのキャリアをスタートさせたと説明があったよ。

第1章の展示室だけで興奮してしまい、かなり時間を費やす友人HとSNAKEPIPE。
2人が反応したのが左の画像「モーターサイクル」だった。
「ヒステリック・グラマーみたい!」
田名網敬一の作品を観て、1969年のアメリカ映画「Hell’s Belles」のポスターに似た女性をシンボル・マークにしていたヒステリック・グラマーを思い出したんだよね。
制作年を確認すると2008年?
田名網敬一72歳の作品ということになるのかな。
「いい年してオンナの裸描いて、あなたヘンタイですよっ!」
と横尾先生に叱られるよね、と友人Hと大笑いしてしまう。
これは以前日曜美術館で宇野亞喜良を特集した時、横尾忠則が発した言葉をパロディにしたんだけど。
分かる人は笑ってくれるはず。(笑)

フォト・コラージュ作品も多く展示されていた。
作品をじっくり観ていると、何枚もの切り抜きが重ねられていることが分かる。
漫画や雑誌から、よくもここまで集めて貼り付けたよね!
そして作品数の多さにも驚く。
「雑誌の切り抜き」と入っている作品を軽く数えると、ゆうに60を超えている!
まるで偏執狂のように、切り貼りをしていたんだろうね。
一体何冊の雑誌や漫画を使ったんだろう?

田名網敬一はアニメーション(動画)制作にも取り組んでいて、アニメーション原画と動画の展示もあった。
画像は1973年「Oh Yoko!」の原画で、ジョン・レノンとオノ・ヨーコを題材しているんだよね。
動画がとても面白くて、涙を流して笑い転げてしまったSNAKEPIPE。
前のほうの席でスクリーンを見上げて鑑賞していたので、少し首が痛くなってしまった。
我慢してでも観続けたかった田名網敬一の作品、どうやらDVD販売されているようで、今でも入手可能かも?
「シャバダバシャバダバ〜」で有名な深夜番組「11PM」の依頼で制作された「Good-by Elvis and USA(1971年)」や「Good-by Marilyn」「Commercial War」はもう一度観たいよ。
「Oh Yoko!」の動画を載せておこう。

木やFRP(繊維強化プラスチック)に黒、赤、緑などのラッカーで色付けしている作品群が並んでいる。
何を表しているのか理解できない、不思議な造形なんだよね。
宗教や儀式に使用される、などと説明を受けたら信じてしまうかも。(笑)
足が極端に長い象や人体の一部に見えるような作品もあり、想像力を掻き立てられる。
「なんだこれは!」という驚きがあったら、作品として大成功だよね!

ピカソの母子像をモチーフにした作品が展示されている第9章に足を踏み入れるなり、声が出る。
ピカソの模写をするということ自体、あまり聞いたことがないと友人Hと話す。
更に驚いたのは、その数の多さ。
壁一面、ピカソなんだよね!
2020年のコロナ禍で模写を始め、500点を超える作品を描いているんだとか。
写経に近い感覚と説明されているけれど、継続力と執念に感服だよ!

2023年の作品「記憶は嘘をつく」のタイトルを読んだ瞬間、「確かにね」と口に出すSNAKEPIPE。
思い込みや勘違いにより、記憶が歪められている可能性大だもんね!(笑)
デジタルカンヴァスプリントと書かれているので、カンヴァスに印刷しているんだね。
田名網敬一が繰り返し使用してきたモチーフに歪みが生じている。
混沌(カオス)を再構築している感じかな。
赤塚不二夫とのコラボ作品もあり、「ドカーン」などと漫画で使われた文字がそのまま使用されているよ。
アメリカン・コミックの効果音を表すオノマトペを使ったコラージュやアニメーションを制作していた「クリスチャン・マークレー」を思い出したSNAKEPIPE。
マークレーもコロナ禍で始めた作品だったはず。
引きこもることで制作に没入できるアーティストもいるんだね。

「まだ展示が続いている!」
「いつになったら終わるんだろう」
友人Hと迷宮をさまよっている気分になってしまった。
ここでいよいよ最後の展示になったようだ。
マネキン大のバービー人形や田名網敬一とコラボした商品がびっしり並んでいる。
こんなに商品化されているとはびっくりだよ。
同じ衣装を着けたバービーはミュージアム・ショップで販売されていて、ちょっと欲しくなってしまった。
お値段3万円ほど。
SNAKEPIPE MUSEUMに飾りたいよ!(笑)

「田名網さんはDJみたい」
友人Hの感想が面白かった。
何枚ものレコードから音をつなぎ合わせて行く作業に近い作品だから、だって。
なるほど!(笑)

会場を出て時間を確認すると、3時間も鑑賞していたことが分かった。
こんなに長い時間一つの展覧会にいたことないかも?
暗闇の中で怪しげに輝く極彩色の世界に、完全に飲み込まれたみたいだよ。
スマホのバッテリー残量が極端に減っている。
写真を撮り過ぎたからだね。(笑)

SNAKEPIPEは「エロ・グロ・ナンセンス」のグロがない「エロ・ナンセンス」だなと思った。
「エロ」とは言っても「あっけらかん」とした「エロ」なんだよね。
70年代の「11PM」や芸能人水泳大会で「ポロリ」があったりする、裸に寛容だった時代背景も関係しているかもしれない。
予備知識ゼロで出かけた田名網敬一展、行って良かった。
友人Hさん、またご一緒しましょ!

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