【デペーロのリトグラフ作品。ピサ県にある有名なピサの斜塔だね!】
SNAKEPIPE WROTE:
先週のブログ「SNAKEPIPE MUSEUM #71 Fortunato Depero」の最後に「ROCKHURRAH紋章学で特集したい!と思うシリーズを発見した」と書いたSNAKEPIPE。
宣言通り、今週はフォルトゥナート・デペーロが手がけたデザインについて特集しよう。
1938年、今から86年前のこと。
ローマで開催された第三回世界会議「Lavoro e Gioia(労働と喜び)」の記念として、国立余暇活動団体の総局長がデペーロにイタリア各州の企業が運営するレクリエーション・センターを表現するためカラーイラストの制作を依頼したという。
各地の特徴を際立たせたシルエットが描かれた96枚のリトグラフは、当初様々な資料と共に1000ページを超える厚みがある本に掲載されていたらしい。
のちにデペーロは原画を取り戻し、「イタリアの州のポストカード」として新たに印刷し直したんだって。
限定200部しかないなんて、貴重な本だよね!
今回は96作品の中から、一部を紹介していこう。
エミリア=ロマーニャ州パルマ県のリトグラフは、背景を黒にしたシックなデザインだね。
それぞれの作品には地名と共に、コピーが添えられているんだよね。
「È la luce dello spirito che rende durature e feconde le opere」
の意味は「作品を永続的で豊かなものにするのは精神の光である」だって。
なんとも哲学的な印象だけど、パルマに関係した文章なのかな。
ちなみにパルマ出身の有名人の中にベルナルド・ベルトルッチ監督がいるよ。
代表作の一つが「ラスト・エンペラー(原題:L’ultimo imperatore 1987年)」だね。
デペーロの作品に話を戻すと、赤い「P」が3つ真ん中に配置されて特徴的だよ。
右下に5行載っている文言は「企業の余暇活動(団体)」や「自治体の余暇活動(団体)」の番号とのこと。
企業や地域が運営するリクリエーション・センターがテーマだからね。
他の作品も観てみよう。
フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州のウーディネ県は2017年に自治体としての県は廃止されてしまったらしい。
北はオーストリア、東はスロベニアと国境が接しているという。
強いオレンジに紫とグレーの配色がオシャレ!(笑)
描かれている鎌や歯車なども、好みのモチーフなので惹かれる作品だよ。
「per le sue ampie strade sono passate generazioni e generazioni di italiani che erano il fiore purpureo della nostra razza」は「その広い道を、世代また世代のイタリア人たちが通り過ぎてきた。彼らは私たちの民族の鮮やかな花であった」だって。
その地域の方には納得の文言だろうけど、歴史などに詳しくないSNAKEPIPEには解釈が難しいかも。
上の作品「P」が3つに対して、こちらは「U」が3つ。
デペーロの天才的なデザイン・センスが発揮されていることが分かるね。
トスカーナ州グロッセート県のリトグラフは、ピンクとグレーだよ。
色使いと構図が見事!
グロッセートの紋章に使用されているグリフォンが描かれているね。
グリフォンとは、鷲(鷹)の翼をつけた上半身で下半身はライオンという伝説上の生物だという。
「グリフォンは黄金を発見し守るという言い伝えから、『知識』を象徴する図像として用いられ、また、鳥の王・獣の王が合体しているため、『王家』の象徴としてももてはやされた(Wikipediaより抜粋)」んだとか。
書いてある文言は「田舎の州よ:この誇りを持ち、田舎であり続けなさい」だって。
グリフォンと一緒に描かれているのは農具なのかもしれない。
デペーロの手にかかると「オシャレな農具」になってしまうね。(笑)
ロンバルディア州ベルガモ県をモチーフにした作品だよ!
黄色と緑が鮮やかだよね。
ベルガモと聞いてベルガモットを連想したSNAKEPIPEだけど、関連はないのかな。
産地ではないみたいなので、中央に描かれた黄色い物体は果実ではないみたい。
ベルガモはトウモロコシの粉を使ったポレンタという料理が有名らしいので、もしかしたらトウモロコシかもしれないね?
文章には「ここが現代のイタリアです。農業と工業のイタリアです。」と書かれているようで、あまりヒントにならなかったよ。(笑)
トウモロコシの周りにある「X」「#」などの記号の意味は謎だけど、矢羽根型の矢印がシャープで全体のバランスが素晴らしいよね!
最後はこちら。
シチリア州カターニア県のリトグラフの艶やかさは見事だね!
シチリアと聞けば、「ゴッド・ファーザー(原題:The Godfather 1972年)」を思い出す人が多いんじゃないかな。
もう一つは、シチリア・レモン。
手前に描かれているのは、輪切りのレモンではないかと想像しているSNAKEPIPEだよ。(笑)
「maginifica terra,labo-riosa e fierissima gente」は「素晴らしい土地、勤勉で非常に誇り高い人々」という意味らしい。
カターニアはマヨルカ焼きという陶器が有名とのこと。
後ろはタイルかもしれないね。
カターニアをモチーフにした作品も構図と色合いが抜群!
デペーロのイタリアをテーマにした作品群は、選ぶのに迷ってしまったSNAKEPIPE。
どの作品を観てもワクワクしてしまったからね。(笑)
作品によってフォントも違っているのも見どころの一つ。
今回は断腸の思いで(大げさ)6点だけ紹介したよ!
残り90点も、このレベルの作品があるんだよね。
いつか全作品を観てみたいなあ。
是非ギンザ・グラフィック・ギャラリーでデペーロ特集を企画して欲しいよ。
どうぞよろしくお願いいたします!(笑)