収集狂時代 第26巻 高額アート編#05

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【Judy Kensley McKieのフィッシュ・ベンチは6千万円だって。ステキ!】

SNAKEPIPE WROTE:

2021年5月以来、更新していなかった「収集狂時代 高額アート編」。
毎年のように情報の確認はしていたけれど、ランキングにさほど変動がなかったんだよね。
いつでもベーコンさんだったりリヒターやマーク・ロスコといったお馴染みの顔ぶれが高額取引されていて、少々食傷気味。
何十億円もの作品について、SNAKEPIPEがそんな発言をするのは「けしからん」話だけどね!(笑)
ただ世間的にもSNAKEPIPEも似たような感想を持つ人がいるようで、不動の人気を誇ったウォーホルやジャコメッティの作品が落札されない事態が発生しているんだとか。
価格帯は抑えめで女性アーティストの作品が人気になっているという。
今年のトレンドはどんな感じなのか、早速見ていこう!

下半身を剥き出しにして「どうだ!」と言わんばかりに正面を見据えた挑発的な女性が描かれている。
凝視するのが憚られるような作品だよね。(笑)
作者はMarlene Dumas(マルレーネ・デュマス)。
1999年に制作された「Miss January(ミス・ジャニュアリー)」が、$13,650,000(日本円で約20億円)で落札されたという。
マルレーネ・デュマスは初めて聞いたアーティストかも。
少し調べてみようか。
1953年南アフリカ共和国のケープタウン生まれの、現在72歳。
1975年にケープタウン大学美術学士号(ファインアート)を取得する。
1976年にオランダに移住し、ハールレムのアトリエ63で美術を学び、1979年から1980年にはアムステルダム大学で美術と心理学を学んだという。
自ら撮影したポラロイド写真やメディアに流通している映像や画像などを基に描くこともあるという。
2000年代には、写真家のアントン・コービジン(今の読み方はアントン・コービンみたい)と協働し、アムステルダム歓楽街のナイトクラブを取材した「Stripping Girls」を発表というところが気になったよ。
アントン・コービジンは、ジョイ・ディヴィジョンのヴォーカル、イアン・カーティスの伝記映画の監督だったよね。
その映画についての感想は2009年12月の「BREAK ON THROUGH TO THE OTHER SIDE」をご参照ください!
マルレーネ・デュマスは、このオークションで生存する女性アーティスト作品の史上最高額を更新したんだって。
他の作品も観てみたいよ。

$6,220,000(日本円で約9億1,500万円)で落札されたのは、Remedios Varo(レメディオス・バロ)の「Revelación (El relojero)(啓示(時計職人)」。
天幕のような天井に突き刺さるほど大きな時計が8つ。
それぞれの時計には窓があり、一人ずつ人間が配置されているのは何を意味しているのか。
中央に腰掛ける人物が恐らくタイトルの時計職人だろうね。
窓から、なにやら透明の円いモノが漂って来ている様子。
これが啓示なのかもしれない。
このシュールな絵は、1955年の作品だという。
レメディオス・バロは1908年スペイン生まれで1963年に亡くなったシュルレアリスト。
22歳で結婚したにも関わらず、旦那を置いてメキシコへ逃避行をしてしまったというから驚きだよ。(笑)
最終的には、また別の男性と結婚することになったというから、恋多き女性だったのね。
まるでドラマみたいな話も、レメディオス・バロの肖像写真を確認して納得してしまった。
ちょっとキツめの美女だもんね!(笑)
1930年にパリに移りアンドレ・ブルトンから影響を受けた、とWikipediaに載っているよ。
本場でシュルレアリスムを宣言した本人に出会ってるとはね!
レメディオス・バロの他の作品も気になるよ。

2012年6月に「SNAKEPIPE MUSEUM #16 Dorothea Tanning」で紹介したDorothea Tanning(ドロテア・タニング)の名前がランキングに登場していて嬉しくなる。
1944年の作品「Endgame(エンドゲーム)」が、$2,340,000、日本円で約3億4,500万円で落札されたという。
以前のブログにも書いているように、ドロテア・タニングはマックス・エルンストの奥様なんだよね。
「エンドゲーム」は、エルンストと出会った直後に制作されている。
2人が興じたチェスが題材になっていて、エルンストとタニングが向かい合っている様子まで想像してしまうよ。(笑)
チェスといえばマルセル・デュシャンを思い出すね。
きっと1920年代や30年代のパリでは、カフェでシュルレアリスト達がチェスをしていたんだろうなあ。
「エンドゲーム」では、白いシルクのスリッパがクイーンの駒として描かれていて、ビショップを踏みつけているんだって。
将棋もチェスも経験がないSNAKEPIPEなので、駒の意味を理解できていないよ。
解説だけを読んで感想を言うなら「クイーン(女性)がキリスト教の聖職者(男)を踏んでいる」と聞くと、「かかあ天下」をイメージしてしまうね。(笑)
踏みつけ方が強烈で、チェス盤が歪むほどの圧力だよ。
下方に破れたように見える風景は、2人が滞在していたアリゾナ州セドナかも?という記述があったよ。
出会ってすぐに親密になったというエルンストとタニング。
2人のカッコ良い肖像写真を載せてみたよ!
先のレメディオス・バロ同様、タニングも女優みたいだよね。
シュルレアリスト同士、惹かれ合って刺激的な毎日を過ごしたんだろうなあ。
13年前の記事にも書いたけれど、ドロテア・タニングの展覧会どこかで開催して欲しいよ。
全貌を観てみたいね!

続いては彫刻作品の紹介だよ!
高さ約3メートルのブロンズ彫刻はSimone Leigh(シモーヌ・リー)によるもの。
2020年に制作された「Sentinel IV(守護者4)」は、$5,730,000(約8億4,400万円)で落札されたんだとか。
シモーヌ・リーは、アフリカ美術や土着の物から着想を得ることが多いアーティストだという。
「守護者」は女性の体を基部にして、ズールー族の儀式用スプーンにインスパイアされた形状を頭部に配置しているんだって。
上のほうが重そうに見えるけど、バランス取れているんだね。
3メートルもの大きさがある作品を購入できる人は、高い天井の豪邸か広い庭の邸宅にお住まいなんだろうね!
3部作である「守護者」のうち1体は、テキサス大学オースティン校のアンナ・ヒス体育館前に設置されているというから、個人蔵ではなくてパブリック・アートとして購入されていることもあるんだね。
シモーヌ・リーは1967年、ナザレン教会の宣教師としてアメリカに渡ったジャマイカ移民の両親のもとに生まれたという。
1990年にインディアナ州リッチモンドのアーラム大学で美術学士号を取得。
ニューヨークのグッゲンハイム美術館、ロンドンのテート・モダンなどの名だたるギャラリーや美術館で個展を開催し、2022年のヴェネツィア・ビエンナーレではアメリカ館代表に選ばれ金獅子賞を受賞しているという。
どこかで鑑賞するチャンスがあるかもしれないね?

今回の高額アートは女性アーティストに絞って紹介してみたよ。
日本には世界的に有名な御年96歳の草間彌生という偉大な女性アーティストがいるためなのか、女性がトレンドと言われても何を今更と感じてしまったSNAKEPIPE。
2021年7月に森美術館で開催された「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力」にて、世界の女性アーティスト16人の作品を鑑賞し、感銘を受けたことがあったっけ。
皆様80歳以上になっても強い情熱を持って作品を制作されているんだよね。
オークションでのトレンドは、目新しくて好奇心をそそられる作品、ということなのかもしれない。
女性アーティストとシュルレアリスムの作品が高額取引の常連になったら、また別のトレンドが生まれるのかもね。(笑)

ROCKHURRAH紋章学 Anton Stankowski 編

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【謎の人形と一緒のアントン・スタンコフスキー(左)とセルフ・ポートレート作品(右)】

SNAKEPIPE WROTE:

2025年8月に書いた「ROCKHURRAH紋章学 Herbert W. Kapitzki 編」で予告したように、「アイデンティティシステム」で気になったもう一人のデザイナー、アントン・スタンコフスキーについて特集しよう。
グラフィックデザイナーとして有名なスタンコフスキーは写真家や画家としても活躍していたみたい。
経歴を調べてみよう。

1906 ゲルゼンキルヒェンに生まれる
1926–29 フォルクヴァング造形学校で学ぶ
1929–34 チューリッヒの広告スタジオ、マックス・ダラング事務所で勤務
1938 シュトゥットガルトで「グラフィッシェス・アトリエ」をエミール・ツァンダーと共同設立
フリーのグラフィックデザイナーとして活動を始める
1940–48 徴兵され、戦後まで捕虜となる
1951 キレスベルクにデザイン事務所を設立
1964– ウルム大学で教鞭をとる
1970– ドイツ銀行、ミュンヘン再保険、REWE、バーデン=バーデンのオリンピック会議などの有名なロゴや商標を制作
1972 ヴェネツィア・ビエンナーレに参加
1976 バーデン=ヴュルテンベルク州から教授の称号を授与される
1985 スタンコフスキー財団設立
1991 シュトゥットガルト市のハンス=モルフェンター賞受賞
1998 ドイツ芸術家協会よりハリー・グラフ・ケスラー賞を受賞
エスリンゲン・アム・ネッカーにて逝去

1920年代末から1990年代末までずっと活動を続けていたんだね。
1940年からの数年間は戦争のため拘束されていたようだけど、帰還後は『シュトゥットガルター・イラストリルテ』誌で編集者・グラフィックデザイナー、写真家として働いたという。
モンドリアン、ファン・ドゥースブルフ、マレーヴィチ、カンディンスキーらの抽象絵画に影響を受け、グラフィックデザインを「自由芸術家や科学者との協働を要する絵画的創造の領域」として提唱したとWikipediaに載っているよ。
情報と創造的衝動を統合し、純粋芸術と応用芸術を横断したとされるスタンコフスキーの作品を観ていこう!

かつてSNAKEPIPEがモノクロ写真を撮影し、自分自身で現像やプリントをしていたこともあり、モノクロームの作品に注目しちゃうんだよね。
写真家としても活躍していたスタンコフスキーの写真がとてもカッコ良いよ。
左は「Begrüßung(挨拶)」で 1934年の作品だという。
俯瞰して撮影しているところがモホリ=ナギを思わせるよ。
ハットをかぶった人物とシルエットのバランスが素晴らしい!
影の面白さは右の作品も同じだね。
1932年に撮影されていて、タイトルはないみたい。
恐らく水か何かが流れて筋を作っている様子を捉えているようだね。
写真の切り取り方がデザイナーらしい、と思ったよ。
これらの作品は販売されていて、左が30.3×23.7cmで$7,500(112万円)、右が22.9×17.8cm$9,500(140万円)とのこと。
SNAKEPIPE MUSEUMに所蔵したいね!

スタンコフスキーのコラージュ作品だよ。
1927年に制作された「Foto-Auge (Foto-Eye)(写真の眼)」は、スタンコフスキーの恩師であるMax Burchartz(マックス・ブルハルツ)へのオマージュなんだとか。
ブルハルツの最も有名な作品である、ブルハルツの妻の写真を見上げるブルハルツ、傘とブルハルツの髪を組み合わせているという。
黒色の扱いが大胆で、印象的だよね。
21x 28.5cmのサイズで6.448€ (約112万円)で販売されていたらしい。
この作品も並べて展示したいね!

スタンコフスキーの代表作として知られているのがドイツ銀行のロゴなんだよね。
「史上最高のロゴ」の2位にランクインしているという情報もあるほど、世界的に有名なんだね。
ロゴ・デザインの1位はウールマーク、3位は「ブリティッシュ・レール(イギリス鉄道)」だって。
ウールマークはセーターの内側についてる、あれね。(笑)
スタンコフスキーのロゴは、1973年に発表されてから現在に至るまで、ほとんど手を加えられることなく使用されているという。
「新しく、独自であり、時代を超えていたから」というのが理由で、銀行職員でも発表されてから受け入れるまでに2年かかったと書いてある記事もあったよ。
正方形をきっちり真ん中で分けるようにはされていない右上がりの斜線が、このロゴ・デザインを特別なものにしているんだとか。
「正方形の枠は安全性を象徴し、上向きの斜線はダイナミックな発展を表している」として採用が決定したというから、ロゴ・デザインを選んだ審査員は先見の明があったんだね。
一度見たら認識できるシンプルさも強力だよね。
SNAKEPIPEも、もう覚えましたとも。(笑)

とてもカラフルなシルクスクリーンの作品もあるよ。
1981年に制作された約60cm四方の17枚組の作品なんだよね。
1から17までをデザインしていて、とても楽しいよ!
色や構図などが念入りに考えられているんだよね。
と、書いたところで「5」だけが少し「ぞんざい」な気がするよ。
どれか一つ選ぶとしたら?
迷いながら「10」にしたよ!
あなたならどれを選ぶ?(笑)

スタンコフスキーが手掛けたポスターを2点載せてみよう。
左は1978年に制作された貯蓄銀行の「世界貯蓄デー」用のもの。
数字の「8」を表しているのかな。
マットなトーンの色合いがおしゃれだよね。
右は1984年の「クライス貯蓄銀行エスリンゲン=ニュルティンゲン10周年記念」ポスターだって。
10周年だから10色を使用しているのかと思いきや8色だった。(笑)
同じ屈折線を色と方角を変えて組み合わせたデザインで、シンプルなのに複雑に見えてしまうね。
構図の見事さと空間の使い方に日本画を思わせる作品だね!

MOMAに所蔵されているスタンコフスキーの作品がこちら。
「Buchstaben und Schriften BAG A–Z 1929–1934(文字と書体)」という本を出版しているようだよ。
内容についての表記がMOMAのページにないので、恐らくスタンコフスキーがタイポグラフィについて記しているんじゃないかな。
内容も気になるところだけど、表紙(?)と思われる画像のカッコ良さにノックアウトだよね!
白、黒、赤という3色だけの配色に3種類のフォントを使用したデザイン。
文字の上に文字を重ね、フォト・コラージュならぬフォント・コラージュ(というのか)しているなんて、PUNKの切り貼りみたいだよね。(笑)

今回はドイツのグラフィック・デザイナーで写真家のアントン・スタンコフスキーについて特集してみたよ!
独自の「デザイン理論」を打ち立て、構成的グラフィックアートの先駆者であったスタンコフスキー。
ロゴ・デザインや広告ポスターなどを勉強したり仕事で関わっている人にとっては、教科書のような存在なのかも?
SNAKEPIPEは、たまたまギンザ・グラフィック・ギャラリーの企画展「アイデンティティシステム」で知り、興味を持ったんだよね。
血湧き肉躍る(大げさ)ような作品に出会えて、とても嬉しかったよ!
こんなきっかけを与えてくれたギンザ・グラフィック・ギャラリーに改めて感謝だね。(笑)

映画の殿 第76号 トンイ編

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【本文中で紹介できなかった俳優もいるね!】

SNAKEPIPE WROTE:

かねてより韓国ドラマ好きの方々からお勧めされていたのは「トンイ(原題:동이 2010年)」。
きらびやかな衣装が特徴の17世紀、朝鮮王朝を舞台にしたドラマなんだよね。
今から15年以上前の2010年に制作されているので、Netflixなどのストリーミングで配信されていない。
観始めるのを躊躇させたもう1点の大きな要因が、その長さ!
全60話なので、毎日1話ずつ観たとしても2ヶ月かかることになるからね。(笑)
先日Amazonプライムの中にあるチャンネル「アジアプレミアム」で、「トンイ」が配信されていることを発見。
日本でも何度か吹替版などがTV放映されていたようだけど、ROCKHURRAH RECORDSでは、今年になってようやく鑑賞を始めたのである。

あらすじは、簡単な紹介だと数行程度。
丁寧なものだと60話それぞれを要約したものがあるんだよね。
今回は簡単なほうを紹介しよう。

最下層の身分から朝鮮王朝第19代王・粛宗の側室となり、後の第21代王・英祖の生母となったトンイ(淑嬪 崔氏スクビン チェシ)の一代記。
朝鮮王朝の最も派閥闘争の激しかった時代を背景に、粛宗を巡るロマンス、女性同士の権力争い、そして英祖の成長過程を交えながらドラマチックに描いていく。
(テレビ愛知より)

続いてトレイラーね。
どうやらタイ版のようで、日本語字幕なしでスミマセン。

主要な人物について感想を含めて書いていこう。
まずは主人公のトンイから。
主人公のトンイの娘時代以降を演じたのは、ドラマ「ムービング」や「ハピネス」でお馴染のハン・ヒョジュ。
韓国ドラマファンなら、年代的に「トンイの主役だった女優」のように書くんだろうね。
ROCKHURRAH RECORDSは、鑑賞する順番が違うので許してね!(笑)
かつて韓国には、奴婢という身分制度があったという。
奴婢出身の女性が王様の寵愛を受け、王子を授かるという、シンデレラ・ストーリーなんだよね。
下層階級出身の豊臣秀吉が天下人となった「太閤記」に近いテイスト、といえるかも。
主人公トンイは、いつでも明るく前向きで、他人にも寛容なんだよね。
復讐や仕返しというようなネガティブな感情は持ち合わせていないようで、観ていて歯痒いほど。
こんなに心がキレイな人間がいるのかと思ってしまうほどの、清廉潔白な聖人のような女性だよ。
ハン・ヒョジュは、トンイ役が合っていたね!

「トンイ」は子供時代から始まっているんだよね。
少女時代のトンイを演じていたのは、「太陽を抱く月」で観ていたキム・ユジョン。
大人顔負けの演技力なんだよね!
「トンイ」に出演していた時は、恐らく10歳か11歳くらいなので、小学校4年生くらい?
賢くて気が利く子供役がぴったりだったよ。
この子が大きくなってハン・ヒョジュになった、というのが違和感なかったね。
父と兄を同時に失ってしまったのに、気丈に耐え一人で生きていく精神力の強さが素晴らしかったよ。

李氏朝鮮第19代国王の粛宗(スクチョン)を演じたのは、ドラマ「サバイバー: 60日間の大統領」で主役だったチ・ジニ。
ヒゲや韓服が良く似合っているね。
あの時は大統領で、今回は王様とは!
イエーチョナー!(笑)
ドラマ「トンイ」は史実に基づきながらも、フィクションも取り入れているので、王様の人柄は実物とは違っていたかもしれない。
「トンイ」の中では、とても気さくで大らか、民から慕われる王様なんだよね。
王家の血統を絶やさないことは王様にとっての最重要課題で、子を成すために王妃以外の女性も近くに控えさせている。
実際、スクチョンは結婚3回、妻(王妃)以外の女性が複数人いたみたいだよ。
そうした派手な女性関係がドラマになりやすいのかもね?

スクチョンの王妃、仁顕(イニョン)を演じたのはパク・ハソン。
このドラマで初めて観た女優かもしれないな。
イニョン王妃は史実通りの設定で、正室ではあるものの悲劇的な運命を辿った女性だったみたい。
病弱だったせいか子宝に恵まれず、王から受ける愛情も薄かったようだね。
策略により宮廷を追い出されて貧困に陥ったせいもあり、病気が更に悪化したらしい。
それでも性根が美しく、王を恨むことなく公平な判断ができる強い女性だったよ。
王妃にふさわしい人物だったのに、かわいそうな結果になってしまい残念だった。
王様も、もう少し早く王妃の優しさに気付いてくれたら良かったのにな。

イニョン王妃を陥れた側室の張玉貞(チャン・オクチョン)。
オクチョンは大層な美貌の持ち主で、王様を虜にしたと史実にも記載されているらしい。
演じたのはイ・ソヨン。
王妃やトンイを蹴落として、自分が王様にとって1番の女性になりたいと必死で策を練る。
回を追うごとに性格が悪い女性になっていく様を上手く演じていたよ。
オクチョンは低い身分の出身だったらしく、奴婢から成り上がっていくトンイが許せなかったのかも。
朝鮮三大悪女としても有名だというから、数々のドラマが制作されているんだね。
悪名でも後世まで名前が残っているのは、オクチョンにとって幸せなのかな?

チャン・オクチョンの兄、張希載(チャン・ヒジェ)。
妹が王様からの寵愛を受けていることを利用して、少しでも自分や妹が優位になることを模索する。
波のような目をした狡猾そうな顔が役柄にピッタリだったよ。
演じていたのはキム・ユソクで、初めて観る俳優みたい。
悪巧みをするのは良くないことだけれど、見方を変えると非常に妹思いの兄とも言えるんだよね。
面白い役どころだったので、ドラマの中で効果的な存在だったよ。
チャン・ヒジェも実在の人物で、ほぼ史実通り描かれていたようだね。

トンイの兄トンジュの親友、車天壽(チャ・チョンス)。
子供の頃から知っているので、トンイは「チョンス兄さん」と呼び、なついていた。
トンイの父や兄と共に剣契(コムゲ)として暗躍する別の顔を持つ。
剣契は実在した秘密組織だけれど、チョンスは架空の人物みたい。
演じていたペ・スビンは、香港の映画監督であるウォン・カーウァイに認められたようで、中国北京映画学校で学んだという。
中国語は独学でマスターしたというから、努力の人だよ。
コムゲとしてのシーンも本人がこなしていたので、相当アクションができるんだね。
別の作品で観たとしても「チョンス兄さん」と呼んでしまうだろうな。(笑)

捕盗庁(ポドチョン)に所属する3人も良い味出してたね。
日本でいうところの警察にあたる部署が捕盗庁で、写真中央の徐龍基(ソ・ヨンギ)を長にして、南副官(ナム副官:画像左)と黄武官(ファン武官:画像右)が部下として仕えている。
捕盗庁は実際にあった部署だけれど、3人の人物はフィクションみたいだね。
トンイと信頼関係が築かれていき、心強い味方になっていく様子に安堵する。
無愛想に見えるソ・ヨンギだけど、機転が利いて人の心が解る人物だからね。
部下の2人も意外と真面目に仕事していて頼もしかったよ。

掌楽院(チャンアグォン)に所属する黄周植(ファン・ジュシク:画像左)と方英達(パン・ヨンダル:画像右)。
朝廷で儀式などを執り行う際、楽器を演奏するオーケストラの役割を果たす部署なんだね。
孤児になったトンイが奴婢として働いた場所なので、ファンとはかなり長い付き合い。
ヨンダルを演じたのは、映画「探偵なふたり リターンズ」やドラマ「殺人者の買い物リスト」などでお馴染みのイ・グァンス。
トンイのことを妹のように思い、いつでも心配してくれる良い人だった。
2人共トンイの味方なので、登場が微笑ましかったよ。

「トンイ」で忘れてはならないのが、韓内官(ハン内官)!
王様であるスクチョンのお付きの人で、いつでも呼ばれたらかけつける役割なんだよね。
本来であれば許されないであろう王様への進言をしたり、王様の様子を含み笑いで見守ったりする。
韓国の時代劇では、お付きの人が皆、存在感あるのは何故だろう。
「太陽を抱く月」「秘密の扉」「花郎」など、観たことがあるドラマで、それぞれ個性的なキャラクターが確立されているんだよね。
ハン内官の印象が強かったので、演じていたチョン・ソニルを現代劇で観ても同一人物だと気付かないかも。(笑)

主要な人物について感想を書いてみたよ。
全60話だから、他にもたくさん魅力的な人物がいるんだけど、ここまでで終わりにしようか。
日本で漫画「ベルサイユのばら」を読んだ女学生がフランス革命辺りの歴史に強くなったように、「トンイ」を観て17世紀後半から18世紀前半までの朝鮮王朝に詳しくなった人も多いだろうね。(笑)
フィクションが混ざっていても、大筋は史実に基づいているみたいだからね。
「トンイ」は15年以上経った今でも、引き込まれる内容で人気があるのも納得のドラマだった。
韓国ドラマ好きの方からお勧めされてきたけれど、ようやく鑑賞できて良かったよ!

SNAKEPIPE MUSEUM #77 Tempest Doll

20250907 03
【ティーソーサーに横たわる球体関節人形】

SNAKEPIPE WROTE:

当ブログのカテゴリー「SNAKEPIPE MUSEUM」では、定期的に人形作家の特集をするんだよね。
前回は2019年1月の「Pasha Setrova」だったようなので、およそ6年半ぶりの更新になるのかな。
定期的とは言い難い年月が経過していたね。(笑)

今回特集するのは、ポーランド、ザモシチ在住の人形作家Tempest Doll、直訳すると「嵐の人形」になるのかな。
ブランド名として確立されているようなので、カタカナでテンペスト・ドールと書いていくことにしよう。
テンペスト・ドールはMarta Żary(マルタ・ジャリ)という個人が手作りしているらしい。
Webページにテンペスト・ドールのページをいくつか発見できたけれど、詳細については不明だよ。
今回は年表などは無しで、作品のみを紹介していくことにしよう。

一番最初にSNAKEPIPEが観たのは動画だった。
その動画を観てコレクションしたい!と思ってしまったんだよね。
動画の共有が許可されていないので、こちらからご覧ください!
この人形は「「Porcelana(ポルセラナ)」で、「磁器」を意味するポーランド語だという。
青色に染付された中国の陶磁器みたい。
どんな動画なのか、文章で簡単に説明しよう。
左のように、箱に入ったバラバラのパーツから始まるんだよね。
体の中央になるバストからスタートし、腰や手足にゴム紐を通しながら、体が作られていく。
関節部分のゴールドがひょうたん型で面白い。
最終的には10頭身くらいのモデル体型人形(身長45cm)が出来上がる。
パーツから、こんな人形ができあがるなんて、素敵だよね!

上のポルセラナに似た中華風の「Epergne(エペルヌ)」。
飾り皿や花器などを意味する言葉らしいので、やっぱりモチーフは陶磁器なんだね。
この人形は、ポルセラナの約半分の大きさで18cmなんだって!
手のひらサイズで、この精巧さにはびっくり。
腕が4本あって、頭に金ピカの装飾が施されているので、仏像っぽくも見えるよ。
テンペスト・ドールが使っている素材はポリウレタン樹脂で、磁器や陶器に似た質感が出て繊細な造形が可能だという。
着色もしやすいらしいので、扱いやすい素材なんだね。

頭の飾りがグレードアップしているよ!
この人形には「The Observer(観察者)」という名前がついているよ。
上の2つとは造形が違い、胴体を細く長くし、腕を短くし、顔やパーツがリニューアルされているという。
ポリマー石膏に変更したことで、磁器のような見た目と質感を持ちながら、レジンよりも割れにくく環境耐性の高い仕上がりを実現することができたんだとか。
ところどころ、まるで青い血管のように走っているように見えるのは、ひび割れを強調し塗装しているんだって。
欠点を受け入れデザインとして取り込むことにした、テンペスト・ドールの新たなアプローチだと説明があったよ。
人形に対してというよりも、テンペスト・ドール自身の生き方を宣言しているようで、応援したくなってしまうね。

テンペスト・ドールの作品は販売されているんだよね。
ここまで観てきて、欲しくなった人も多いはず。
SNAKEPIPEも手に入れたくなってしまったからね!
現在販売されているのは、画像の「Carat(カラット)」で、身長45cmのタイプ。
王冠やウィッグ、衣装などが全てセットになっているという。
名前の「カラット」は、征服に人生を捧げあらゆる物を手にして、今では金そのもののように冷たく生気のない存在になってしまった女王というイメージなんだって。
テンペスト・ドールは、見聞きしたものからインスピレーションを得て、背景と共に制作に取り組んでいるんだね。
「カラット」のお値段は、送料を含めて日本円で約565,000円ほど。
1点物で、自分の好きなポーズを取らせることができる自由度を考えると、お手頃なのかな?
SNAKEPIPEは、ポルセラナで素材がポリマー石膏のタイプがあったら欲しいと思うよ。
テンペスト・ドールにリクエストして特注で作ってもらおうか。(笑)