大人社会科見学—明治大学博物館・爆音劇場—

【鉄の処女と爆音劇場原画展DM】

SNAKEPIPE WROTE:

本来であれば歌川国芳展後半戦を鑑賞するつもりでいたROCKHURRAHと友人Mを加えた3人組。
先日の「人と人の隙間から『覗き』みたいな感じで鑑賞する」のにはこりごりだったため、急遽予定を変更!
前々より行ってみたい場所だった明治大学に足を運ぶことにした。
何故明治大学なのか?と疑問に思われる方も多いだろうね。
なぜなら明治大学には博物館があり、その中に「刑事関係資料」の展示を扱うコーナーがあることを聞き知っていたからなのである。

「江戸の捕者具、日本や諸外国の拷問・処刑具など人権抑圧の歴史を語り伝える実物資料をご覧ください。とくにギロチン、ニュルンベルクの鉄の処女は、我が国唯一の展示資料です。」

と説明されているように、明治大学博物館の目玉(?)はギロチンと鉄の処女!
是非とも鑑賞してみたい!と思うのはSNAKEPIPEだけではないでしょ?(笑)
江戸時代の補者道具や刑罰についての資料も同時に展示されているとのこと。
これは興味津々!

御茶ノ水駅から歩いてほんの数分の所に明治大学はあった。
この年齢になって初めて大学キャンパス内を歩くSNAKEPIPE。
聞いてみるとROCKHURRAHは友人がいた九州大学に、友人Mは学園祭などで早稲田大学に遊びに行ったことがあると言う。
一度も経験がないのはSNAKEPIPEだけみたいだけど、結局3人共大学生活を送ったことがないという点では一致してるんだよね。(笑)

明治大学の博物館はアカデミーコモンの地下にある。
いつでも誰でも鑑賞することができるという、なんとも太っ腹な対応にびっくり。
しかも業務用ではない個人的な撮影はオッケーと書いてあり、より一層好感を持つ。
商品部門、刑事部門、考古部門とそれぞれセクションで区切られ、係員も警備員もいない状態で展示がされている。
鑑賞に訪れている人が意外と多くてびっくり。
やっぱり人気は「ギロチン」の刑事部門だった。

よく時代劇などでみかける「刺又(さすまた)」やお役人が持っている「十手」の展示から始まる刑事部門。
「刺又」や「突棒」などの補者道具は、時代劇ではハッキリ判らなかったけれど、じっくり詳細を眺めると細工の細かさや棒の長さや重量などを推測することができてとても興味深い。
あの長い棒を振り回せるのは、かなりの体力自慢じゃないと無理だろうね。
江戸時代の男性の体格について調べたことはないけれど、恐らく現代人よりは小柄で体重も軽かったんじゃないかしら?
棒を持つコツがあったのかもしれないね?(笑)

自白を強要するための措置として設けられたのが「笞打(むちうち)」「石抱(いしだき)」「海老責(えびぜめ)」「釣責(つるしぜめ)」で、列記した順番にどんどん辛い責めになるという。
その装置の展示と、「こんな感じだよ」という絵の展示がされていた。
SNAKEPIPEには「釣責」よりも「海老責」のほうが辛そうに見えたんだけど、実際に責めを受けたことがないから判断できないよね。(笑)
「恐れ入りました」と言うまで拷問が続いた、と書いてあったよ。

一番衝撃的だったのは、1869年(明治2年)に外国人によって撮影された処刑写真の展示である。
店の小僧が強盗に手引きをしてその店を襲わせ金を奪った、という事件内容だったと思う。
手引きをした小僧は磔刑、強盗は斬首という裁きを受けたらしく、その様子が写真として残っていたとは驚き。
教科書などで習う「明治時代」というのは「散切り頭を叩いてみれば、文明開化の音がする」のように明治時代=西洋文化だと思っていたSNAKEPIPEだったけれど、写真の明治2年では頭を結った着物姿。
年号が変わっても庶民の生活や文化はまだそれほど変化してなかったことが判る。
これはちょっとした発見だったね!
そして当時の裁きの厳しさにもビックリしちゃうよね。
密通でも死罪と書いてあったよ?
現代よりも道徳に厳しかったみたいだね。

この写真展示がかなり衝撃的だったため、国内唯一の展示品である「ギロチン」と「鉄の処女」にはそんなに感動しなかった。
どちらもレプリカで、恐らく縮尺も変えてあるだろうから余計かもしれないね。
そして「鉄の処女」の造りをジッと観て、3人共に同じ感想を持つ。
「扉を閉めるの、大変だったろうね?」
「鉄の処女」は中が空洞になった立った棺のような内部に、様々な長さの釘が打ち付けられていて、中に人が入り扉を閉めることで釘が全身に刺さる仕組みになっている拷問具なのである。
扉を閉めた瞬間には、釘が全身を貫いていることになる寸法だから、余程の力自慢じゃないとできない作業だと思われる。
調べてみると「空想上の拷問具の再現ではないか」という説が多いとのこと。
やっぱり!無理があるなと思ったからね!

明治大学にはミュージアムショップもあり、そこには「鉄の処女」をモチーフにしたTシャツや便箋などが販売されていた。
SNAKEPIPEが興味を持ったのが「土偶のコースター」。
博物館には考古部門もあり、「土偶」と遭遇!(韻を踏んでる)
あのカタチは不思議でならないよね。
古代宇宙飛行士説なども確かに考えられるかも、などと思いを馳せるSNAKEPIPE。
土偶コースター、とっても素敵!買うっ!
と勢いづいているSNAKEPIPEを横目で見る友人M。
いいよね?とROCKHURRAHに同意を求めても、すぐには反応なし!
えー?なんでー?
ものすごく気に入ったので購入したSNAKEPIPE。
今見てもやっぱりとってもかわいい!土偶ちゃん、最高!(笑)

この日の大人社会科見学はまだ続き、なんと御茶ノ水から原宿に移動!
眠くなったから帰る、と友人Mはこの時点で脱落。(笑)
原宿に行くのなんて何年ぶりだろう?
恐らく5、6年は行っていないはず。
以前の用事が何だったのかも忘れてるよー。とほほ。
今回の原宿行きは友人である漫画家丹波鉄心氏の原画展の鑑賞が目的である。
「え~!A STORE ROBOTが会場だってよ~!」
と叫んでしまったSNAKEPIPE。
ROBOT…なんて懐かしい響き!
遠い昔、そうSNAKEPIPEがまだまだ子供だった時には、ほぼ毎週のように通っていた憧れのお店だったROBOT…。
JUMPIN’, KICKIN’, TWISTIN’ SHOES」や「ファッション雑誌なんかいらない!」でも書いたことがあったね。
「お小遣いに対してROBOTのラバーソールは目ん玉飛び出るほど高くて、それでも欲しくて欲しくて買った一番の宝物だった」
うっ、懐かしい過去の自分にタイムスリップして涙が出そうなくらい!
俺も良く通ったもんだよ、とROCKHURRAHも遠い目をする。
何年どころじゃない、何十年ぶりか判らない程の長い年月を経て、ROCKHURRAHと二人でROBOTに向かったのである。

それにしても…かつてはあんなに足繁く通っていた道のりだったはずなのに、二人共すっかり忘れているとはね。
街並みが変化したせいもあるけれど、人の記憶の曖昧さを再認識させられますなあ。(笑)
店舗に到着してやっと「こんな建物だったな」とうっすら思い出す始末。
ああ、情けない!

ROBOTに足を踏み入れると、赤×黒のモヘアボーダーセーターを着た丹波鉄心氏の姿が目に入る。
手土産のビールを渡すと、とても嬉しそうにしてくれた。
そしてすぐさま栓を抜く鉄心氏。
な、なんと!MY栓抜き持参とは!さすが鉄心氏、やるねえ!(笑)

と、ここで丹波鉄心氏の簡単なプロフィール紹介をしようか。
丹波鉄心氏は少年マガジンで漫画家デビューを果たし、音楽雑誌「DOLL」で4コマ漫画を連載していたパンク漫画家である。
きっとそう聞けば「ああ、あの漫画!」と思い当たる方も多いと思う。
熱烈なファン、いっぱいいただろうからね!
漫画家というと部屋にこもりきりのイメージがあるけれど、鉄心氏はパンク系のライブといえば必ず顔を出すアクティブ&アグレッシブな方!
SNAKEPIPEは恐らく10年程前にライブにご一緒したのが縁で、不定期にライブ参戦や飲み会などでお付き合いをさせて頂いている仲である。
鉄心氏は音楽についてはもちろんのこと、映画や小説などあらゆる分野における知識をお持ちなので、一緒に飲んでて楽しいんだよね!
新しい情報も積極的に取り入れる柔軟な方だなあ、といつも感心してしまう。
キチンと健康管理もされているようで、お会いする度にどんどん体脂肪が減っているように見受けられる。
やっぱりパンクはスリムじゃないとね!(笑)

今回はその「DOLL」で連載をされていた4コマ漫画の原画を展示、そして1999年から始まった10年分の連載をオリジナル単行本「丹波鉄心の爆音劇場 総集編」として販売しているのである。
なんとこの単行本、限定100部でサイン入り!
これは絶対に買わなければ!(笑)
ちなみに購入した単行本のナンバーは68/100!
残念、せっかくだったら69が良かったのになあ!
いや、ROCKHURRAHだから68でいいか。(笑)
それにしても、鉄心氏の漫画はとても面白い。
普段は無口なROCKHURRAHが声を出して笑ってたくらいだよ!(笑)

この原画展は2月19日まで開催しているので、是非ROBOTまで足を運んでね。
どうしても期間中原宿に行かれない方には、ROBOTの通販で購入する手もあるよ!
鉄心氏のオリジナルグッズとして「オヤジクッション」や「マカロンブローチSET」などもあり、鉄心氏から
「バッジ、買わない?」
と強くお薦めをされたSNAKEPIPEだけれど、ごめんなさい勇気がなくて。(笑)
目立つこと間違いなし!のブローチなので、是非みなさん購入しましょうね!

今回の大人社会科見学は「鉄の処女」と「丹波鉄心」で、「鉄つながり」の一日だったなあ!(笑)
おあとがよろしいようで!

没後150年 歌川国芳展

【歌川国芳展のチラシ。鯉の表現が見事!】

SNAKEPIPE WROTE:

SNAKEPIPE今年初のブログは、「没後150年 歌川国芳展」について書いてみたいと思う。
国芳展については数ヶ月も前から情報を入手していて、絶対に観に行こうと決意を固めていた展覧会である。(おおげさ)
そう言っている割には開催されてから、少し時間が経ってからの鑑賞となってしまったね。
成人の日、長年来の友人Mを交えて、ROCKHURRAHと共に3人で六本木に向かったのである。

開催している森アーツセンターギャラリーは、先月にも「メタボリズムの未来都市展」を鑑賞した、今まで何度も通っている場所…と思いきや!
通常「森美術館」と呼んで、鑑賞していたのは53Fのギャラリーだったことが判明!
今回の歌川国芳展は52Fでの開催なので、かなり久しぶりに行く場所だったみたい。
恐らく52F展示会場がメジャーな催しで、53Fはアヴァンギャルドな展示が多いのかもしれないね。
友人MもSNAKEPIPEもアヴァンギャルド志向だからねえ。(笑)
52Fの展示会場入り口に人が並んでいるのを横目で見て、上に上がっていたことを思い出す。
52Fはメジャー系だからお客さんが多いんだ、と入り口で待たされながら気付くSNAKEPIPE。
恐ろしや!入場制限をかけられるほどの大盛況、会場はお客さんで溢れかえっていたのである。

「どうぞ」と案内の方にうながされて会場に入るなり、飛び込んできたのは人、人、人!
思わず友人Mと顔を見合わせてしまう。
ちょっと待ってよ!なんなの、この人の群は?
浮世絵の展覧会が初めてだったため、会場の様子や浮世絵のサイズについて想像していなかったSNAKEPIPE。
浮世絵ってサイズが小さいのね…。
そして一枚の浮世絵に群がる大勢の人達。
「入り口付近が一番混雑しているので、空いている場所からご鑑賞下さい」
なんてアナウンスまでされてるし。
「せっかく来たから、展示順を無視して観て回ろう」
とかなり奥のほうまで歩いて鑑賞を始める。
浮世絵の真正面でじっくり鑑賞できることは稀で、ほとんどが人と人の隙間から「覗き」みたいな感じで鑑賞するハメになってしまった。
こんな鑑賞スタイルになるとは非常に残念!
今更ながら浮世絵人気を思い知り、こういう展覧会もあるんだな、と再認識したSNAKEPIPEである。

展示は10の括りで分けられていたので、それぞれについて簡単に感想をまとめてみたいと思う。
1:武者絵―みなぎる力と躍動感

「入り口付近が最も混雑」の原因は、最初のチャプターに「武者絵」があったからなんだよね。
そして国芳の他の展覧会では「妖怪画」として括られていたジャンルも、今回の展示では混在していたので尚更大人気だったみたいね。
ものすごい迫力と色調に圧倒されてしまう。
どの作品も、とてもカッコ良いなあ!
こりゃ、人が動かなくなるのも納得だね。
一枚一枚ゆっくり鑑賞したくなるもん。
牛歩になるはずだわい。(古い)
調べてみると「武者絵の国芳」と言われていたと書いてある。
うん、確かに一番初めに結論を言うのは心苦しいけれど、この武者絵シリーズが一番ガツンと効いたね!
国芳の代表作とされる作品群は、ほとんどがこの「武者絵シリーズ」の展示になってたね。
今回の展覧会で絶対に鑑賞したかった「相馬の古内裏」も無事に「覗き」で拝観!
いやあ、カッコ良いことこの上なし!(笑)
1845-46年の作品とのこと。
ひ~!今から160年も前だよ~!
この想像力、素晴らしいね!

上の作品、「源頼光公館土蜘作妖怪図」の構図の斬新さを御覧なさいよ!
上斜め半分が妖怪なんだよね。
ほとんど水木しげるの世界よ!(笑)
1843年の作品だって。すごいっ!
ゲゲゲの鬼太郎好きにはたまらないね!

2:説話―物語とイメージ

古くからの故事伝説や物語を視覚化したシリーズ。
上は「龍宮玉取姫之図」1853年の作品。
荒れ狂う波の表現と、空想上の生き物であるドラゴンの躍動感が見事!
「藤原鎌足は唐から渡来の霊玉を途中で龍神に奪われるが、志渡の海女が竜宮へ潜入して取り返す。だが眷属に追われた海女は、自らの乳房の下を切って玉を隠し、ようやく敵から逃れ、鎌足に玉を渡して死ぬことになる」という部分を表現しているらしい。
波の間に見え隠れしている魚達が着物を着ているところが素晴らしい!

3:役者絵―人気役者のさまざまな姿

歌舞伎役者のブロマイド的な作品である。
友人Mは歌舞伎について詳しいので余計に楽しめたようだけれど、ほとんど知識のないSNAKEPIPEには構図とか色彩などを鑑賞するにとどまった。
それにしても歌舞伎役者の名前というのはずっと変わっていないんだねえ。
上は「坂東しうかの唐土姫・三代目尾上菊五郎の天竺冠者・五代目沢村宗十郎の斯波右衛門」1847年の作品。
ガマガエルの妖術を使っている場面らしいけど、なんとも斬新な構図だよね。

4:美人画―江戸の粋と団扇絵の美
浮世絵の美人画というと、浮世絵の中でも花形的な存在だと思うけれど、国芳に限っては少し様子が違っていた。
なんと、女の顔にほとんど違いがないのである。
武者絵や役者絵のイキイキとした雰囲気はあまり感じられない。
もしかしたら女の顔より男を描くほうが得意だったのかもしれないね。
「鏡面シリーズ」という女が鏡に映った自分の姿を描いている作品群は、鏡の縁にかけられた布まで描かれていて、なんとも凝った構成になっているのが興味深かった。

5:子ども絵―遊びと学び
こちらも美人画同様、かなりぞんざいな顔の描き方だった。
江戸時代の子供の「遊び」や「学び」を主題にした浮世絵、ということなので余計に面白みに欠けたのかもしれないけどね。
サーッと鑑賞しただけで終わりにしてしまった。(笑)

6:風景画―近代的なアングル
風景を描いたシリーズ。(まんまじゃん)
SNAKEPIPEには「東海道五十三次」との違いが感じられなかった。
ずっと前から「東海道五十三次は江戸時代のスナップフォト」と思っているSNAKEPIPEなので、人物描写を含めた秀逸な作品だと思っている。
歌川広重とは同年生まれの同時代絵師だったようなので、風景画に関しては広重のほうに軍配が上がりそう。
特別国芳らしさが表れてるな、と感じた作品は見当たらなかったな。

7:摺物と動物画―精緻な彫と摺
摺物というのは特別注文の非売品だった作品のことらしい。
木版技術の粋を集め、素材も金粉や銀粉などを使用したり上質の紙に摺っているとのこと。
江戸時代の印刷技術の高さにびっくり。
これらは恐らく印刷物になった状態で鑑賞しても、よく解らない部分かもしれないね。
とても美しい作品群だった。

8:戯画―溢れるウィットとユーモア

動物やダルマ、妖怪などを擬人化して江戸っ子に仕立てあげている作品である。
これも国芳の得意分野だったようで、とてもイキイキとしている。
ユニークな作品が多く、江戸時代の笑いについても考えさせられる。
意外と日本人の「笑い」というのは、江戸あたりから変化していないのかもしれないね?
非常に細かい部分まで精緻に描かれていて、観ていて飽きない。
それにしても、国芳はネコ好きで有名だったようで、確かにネコの絵が多いんだよね。
でも全然顔がかわいくないの。なんでだろう?(笑)
上の作品「みかけハこハゐが とんだいゝ人だ」は複数の人で一人の男の顔を作っている寄せ絵である。
手の部分までも人で形作られていて、とても面白い。
16世紀のイタリアの画家、アルチンボルドの寄せ絵を感じさせるよね。
今回の展覧会では、鼻の部分の人が一番最後に飛び乗って顔を完成させるイメージフィルム(?)が流れていてニヤリとさせられた。

9:風俗・娯楽・情報
時事世相の報道メディア的な題材を錦絵にしたコーナーである。
そのため題材が幅広いのが特徴的だ。
浮世絵というのが当時の新聞・雑誌の代わりだったり、写真の前身だったということが良く解る。

10:肉筆画・板木・版本ほか
浮世絵というのは版画のことだけを指すんじゃないんだね。
いわゆる絵、肉筆画と呼ばれるモノも浮世絵の中に入るということを初めて知ったSNAKEPIPE。
皆様は御存知でしたかな?(笑)
最後のチャプターでは国芳の肉筆画、そして国芳の下絵を元に彫られた木版の展示などがされていた。
肉筆画はほとんどが美人画だったので、前述したように「同じ顔」オンパレードでイマイチ面白くなかった。
木版は、ものすごく細かく彫られていてびっくりした。

これもまた鑑賞後に得た知識だけれど、浮世絵の世界というのには必ず4人が関わっているらしいんだよね。
版元から依頼を受けた絵師が下絵を描き、それを彫師が彫り、摺師が色を乗せて擦る。
こういう役割分担があって一枚の浮世絵が出来上がるようなんだけど、一枚の作品となった時に名前が出るのは伝統的に絵師だけだったみたい。
恐らく「凄腕の彫師」とか「技を持った摺師」みたいな一流の職人はいたはずだけど、名前が出ることがない裏方稼業だったんだねえ。
そんなことを知ることができたのも、初めて浮世絵鑑賞をしたからなんだね。
人が多過ぎてキチンと鑑賞できたとは言い難い展覧会だったのは残念だけど、浮世絵をもっと知りたいと思うきっかけになったのは良かった。

国芳展は前期と後期の2期に分けられていて、作品のほとんどを総入れ替えするそうなので、本当はどちらの展覧会も鑑賞したいと思っていたんだけどね。
あの人の多さ、牛歩での鑑賞には正直ゲンナリしてしまったので、後期はパスだな。
今回の森アーツセンターギャラリーの対応にも問題アリだなと感じたしね。
お客さんの誘導もなし、白線を越えて鑑賞している人への注意喚起もしていない。
展覧会図録を会場でしか販売していない、なんてちょっとビックリ。
鑑賞した人しか買えないシステムにしてるんだよねえ。
森美術館はやっぱり53Fの展覧会に期待だね。(笑)

ウィリアム・ブレイク版画展/メタボリズムの未来都市展

【ブレイク展とメタボ展を合わせた画像。意味不明。(笑)】

SNAKEPIPE WROTE:

長年来の友人Mから連絡をもらい、横浜美術館で開催中の松井冬子展へ誘われたのは今から2ヶ月ほど前のことである。
予定を合わせ、せっかくだからお昼は中華街にでも繰り出して豪勢にいこうか、などと約束の前日に電話していた時に
「げえっ!うそーーー!」
といきなり大声を出す友人M。
何事かと思い聞いてみると、な、なんと!
約束をしていた木曜日は横浜美術館の休館日!
せっかくの計画がお流れになってしまった。
二人共全く休館日のことを調べていなかったとはなんとも不覚!深く反省!(ぷっ)
それでも「アート鑑賞をしたい確率95%と推測されます」という、ゼルダのファイに指摘される状況だったので、今鑑賞できる面白そうな企画はないものか、と調べまくったのである。
ROCKHURRAHも一緒に調べてくれて、探し当てたのがウィリアム・ブレイク版画展。
これは良い!と横浜から急遽上野に行き先を変えたのである。

上野は中田商店動物園に行く用事で年に何度か訪れる場所である。
そういえば今年の花見も上野公園に行ったんだっけ。
身近に感じられる土地だけれど、上野に点在する美術館や博物館の全てを巡った記憶がほとんどない。
今回ウィリアム・ブレイク版画展を開催している国立西洋美術館にはもしかしたら初めて行ったのではないだろうか。
現在開催している目玉はゴヤ展なので、ウィリアム・ブレイク展はオマケ程度の扱いだろうと予想はしていたけれど、ここまで予想的中とは!
常設展の中の一角に設けられた特設会場といった感じで、その場所に行くまでの道のりの長いこと、長いこと!
友人MもSNAKEPIPEもあまり興味を示さないような何枚もの「西洋絵画」を通り抜け、移動距離にして恐らく1万マイル程歩いて(大げさ)やっと会場に到着。参るな!(プッ)

ウィリアム・ブレイクは1757年イギリス生まれの詩人、画家、版画職人である。
「当時、英国の版画家たちの主な仕事は、画家から提供された原画を忠実に複製することでした。この趨勢に抗い、自らの創意に従って制作を進めたブレイクは、異色の存在であったと言えるでしょう。」
という西洋美術館の説明にあるように、ブレイクは独自のセンスと創造力で作品作りをしていたようである。
そしてその仕事は同時代人にはほとんど理解されることはなかった、という悲しい事実も初めて知ったSNAKEPIPE。
今では世界中にファンがたくさんいるのにね!
多くのアーティストに多大な影響を与えていることは、wikipediaなどでご確認頂きたいと思う。
実はSNAKEPIPEはブレイクについてそこまで詳しいわけではなくて、興味の対象となったきっかけは、トマス・ハリスの著作「レッド・ドラゴン」の巻頭に「巨大な赤い龍と太陽の衣をまとった女」というブレイクの水彩画が載っていたこと。
小説の中でかなり重要な役割を担っていたこの絵画がとても幻想的で、すっかり魅了されたSNAKEPIPE。
ウィリアム・ブレイクと聞いて初めに思い浮かべたのが「レッド・ドラゴン」というのは友人Mも同じだったようである。

今回の版画展では、旧約聖書「ヨブ記」やダンテの「神曲」の挿絵が展示されていた。
エングレービングという版画の技法で制作された30点程を鑑賞することができる。
細部まで丁寧に描きこまれた幻想的な世界観は、非常に魅力的で、是非ブレイクの挿絵付き「ヨブ記」と「神曲」を入手し、読んでみたいと思ったSNAKEPIPE。
だけど本の挿絵なので、B5くらいの小ささしかないんだよね!
しかも大人気のゴヤのあとで「ついでだから」みたいな人が大勢いる中、この展示だけを目的に来た友人MとSNAKEPIPEには非常に残念な鑑賞時間になってしまった。
せめて図録やポストカードを手に入れたいと思ったのに、ブレイク関連は全く販売されていない。
うーん、とってもガッカリ!

ブレイク展だけではとても「アート鑑賞満足度」がアップしなかったので、もう一つ観に行こうということで六本木に移動。
森アーツセンターギャラリーで開催されている「歌川国芳展」はROCKHURRAHを加えた3人で行く予定なので今回はパス!
ということで「メタボリズムの未来都市展」を鑑賞することに決定!
恐らくほとんどの方が「えっ?メタボ?」と腹回りのサイズを気にする例のあの言葉を思い浮かべるはずであり、SNAKEPIPE自身も同じように思っていたのである。
ところが!なんとこれは「1960年に開催された『世界デザイン会議』を機に、建築家の黒川紀章菊竹清訓槇文彦大髙正人、デザイナーの栄久庵憲司粟津潔、建築評論家の川添登らによって結成されたグループの活動」とのこと。


「生物学用語で『新陳代謝』を意味する『メタボリズム』。それは、環境にすばやく適応する生き物のように次々と姿を変えながら増殖していく建築や都市のイメージでした。戦争で荒廃した日本が復興し高度経済成長期へと移行した時代に、東京湾を横断して伸びていく海上都市、高く延びるビル群を車が走る空中回廊でつないだ都市などを発想し、未来の都市像を考える活動でした。」

SNAKEPIPEが少し文章を要約したけれど、メタボリズムの活動とはなんぞや?には上のような説明がされている。
建築家を中心により良い社会、環境との共存、狭い日本の土地問題など、様々な観点から都市計画を考えていたグループ、といえるんだろうね。
そしてこの計画というのが、奇想天外なモノ、いわゆるSF的な感じの建築、などがたくさんあって非常に興味深い。
1950年代から1960年代の建築家というのは、空想を実現する力があったんだね!
それらのほとんどが計画のみで「実施せず」とされていたので、何かしらの原因があって実現には及ばなかったんだろうけど、発想の豊かさには驚かされる。
もしそれらの計画が全て実施されていたら、現代の日本はかなり変わっていたんだろうね。
ただし、DNAらせん状の家とか、ビッチリと横並びに並んだ幾何学模様型の建築などは、方向音痴のSNAKEPIPEには厳しいかもしれないな。
自分の家に帰れない人続出、なんて事態が大量発生しそう。(笑)

どの世界でも同じだと思うけれど、例えば写真家といえば?などと質問をした場合、恐らく返ってくる答は「アラーキー篠山紀信!」の二人くらいだと思う。
この現象ってきっと30年前から変わってないような気がするけどどうだろう?
そして同じことが建築の世界にもあるように感じる。
というのも、SNAKEPIPE自身が「建築家といえば?」と質問を受けた場合に、知っているのが「磯崎新と黒川紀章」しかいなかったからである。(笑)
以前建築を志している友人と話をした時その話になり、SNAKEPIPEが2名しか知らないことを打ち明けると非常に驚かれたものだ。
えっ、それしか知らないの?と思ったに違いない。
でもきっとその友人に写真家について尋ねたら同じレベルだっただろうね。
今回展示で紹介されていた建築家も、初めて名前を知った人ばかり。
その世界に入らないと知らないことっていっぱいあるもんね!

50年も前に斬新な空想力で都市の変革を真剣に考えていた日本の建築家がいたことを知ることができて、今回の「メタボリズム」展を鑑賞できて良かったと思う。
それにしても図録4800円は高過ぎ!買えましぇ~ん!(涙)

ゼロ年代のベルリン展鑑賞

【毎度お馴染み?展覧会告知ポスターを撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

「やっぱり文化の日には文化的なことがしたいよね」
と出かけたのが東京都現代美術館
2008年の文化の日にも全く同じようなことをしていたことに後から気付いたよ。(笑)
3年前に観たのは森山大道とミゲル・リオ=ブランコの共同展示で、「大道・ブランコ・コーヒー」としてブログにまとめてるね。
今回の現代美術館の企画は「1989年の壁の崩壊後、政治、経済、文化の実験場として世界の注目を集めてきたベルリンに住む18組のアーティストの紹介」とのこと。
元々そんなにドイツのアートについて詳しいわけでもないし、特にベルリンと限定されてしまった場合には一人のアーティストも知らない状態での鑑賞となる。
興味を感じることができるのかどうか判らないまま、文化的なモノを求めて美術館に向かったのである。

11月3日は薄曇りの、散歩を楽しむには丁度良い気温の日だった。
東京都現代美術館までの道のりには木場公園が広がっているので、毎回美術館を訪れる時には公園内をゆっくり散歩するのがならわしになっている。
今回もいつも通り散歩を楽しみながら歩くROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
都会の喧騒を忘れるような緑に囲まれた公園って気持ち良いねー!
かなりの数のランナーが走っていて、その足の筋肉に見惚れるSNAKEPIPE。
結構な年配の方も走り慣れた様子で、しっかりとした筋肉を保持。
うーん、負けていられませんな!
SNAKEPIPEも頑張って筋力アップしないとね。(笑)

現代美術館の館内は、文化の日だというのにガランとしていて予想していたよりずっと来客数が少なく感じた。
いいねー!ゆっくり鑑賞するには最適!(笑)
関係ないけど、チケットもぎりの女性が菊地凛子に瓜二つでびっくり!
絶対「似てる!」って言われてるんだろうなあ。(笑)
凛子似の彼女から受け取ったリーフレットを見ながら会場を歩く。
ほとんどのアーティストが1970年以降の生まれ。
ということで40歳以下の若手が中心の展覧会なんだね。
18組の中でSNAKEPIPEが気になったのは3組のアーティスト。
それぞれについて感想をまとめてみようかな。

この展覧会ですっかりファンになってしまったのが、シンガポール生まれのミン・ウォン
パゾリーニ監督1968年の作品「テオレマ」を再演した作品なのである。
「テオレマ」というのは、突然現れた謎の青年がきっかけで崩壊していくイタリアのブルジョア階級を描いた物語とのこと。
「実生活を営むヨーロッパにおいても、映画の中でも『よそ者』を演じるウォンが示すのは、アイデンティティとは演じることで存在し補強されるが、その存在を維持するためには演じ続けなくてはならない」
という意味のアートらしい。
この説明を受ければ「なるほど」と思う人もいるのかもしれないけれど、SNAKEPIPEにとっては「ウォーリーを探せ!」みたいに劇中の「ミン・ウォンを探せ!」状態で映像に目が釘付け。

パロディと言ってしまって良いのかどうか迷うところである。
演じている時のミン・ウォンはワハハ本舗梅ちゃんに似ていて、そこもまた大注目!
残念ながら「テオレマ」を鑑賞していないので、ミン・ウォンがどこまで再演しているのか判らなかったけれど、その成り切りぶりには目を見張るものがあった。
だって、家族全員を一人で演じちゃうんだもん!
主人、妻、娘、息子、家政婦、訪問者とざっと数えただけで6人!
特に女装シーンの熱演はすごい!
現代アートの鑑賞で腹を抱えて笑ったのは初めての経験だったかもしれないなあ。(笑)
結局ミン・ウォンがやりたいことは森村泰昌と同じなんだろうね。
森村泰昌は写真を使い、ミン・ウォンはその映像版っていう理解で良いのかもしれないね。
そして劇中の演じているウォン自身を肖像画として油絵にしている展示もあって、興味深かった。
このポストカードがあったら欲しかったなあ!(笑)

次に気になったのはフィル・コリンズの「スタイルの意味」という映像作品。
そう、元ジェネシスの…じゃなくて!(笑)
同姓同名の別人で、ターナー賞候補になったこともある1970年生まれのアーティストなんだよね。
イギリス生まれとのことなので、もしかしたら意外と多い名前なのかな?
ちなみにあっちのフィル・コリンズは1951年生まれだから60歳、還暦だね!(笑)
「スタイルの意味」という作品は、何故なのか解らないけど「Oi!/スキンヘッズのブーム」が起きているマレーシアが舞台。
1960年代にイギリスで流行した反体制的なスタイルである、Oi!/スキンヘッズの代表的なファッションであるMA-1にジーンズ、編上げブーツでイキがる若者の集団を記録した作品である。
熱帯雨林気候で、平均気温が27℃という国でMA-1着るのは暑くないか?(笑)
恐らく日本人もそうだと思うけど、マレーシアでOi!を気取っている彼らも、本場イギリス人からは僧侶に見えるんだろうね。
どこかの寺院で、仏像レリーフの前に立たせて撮影したのはそういう意味だったんじゃないかな?
「スキンヘッズのスタイルがいかに『ねじれ』を持って受容されているか」
に焦点を当てたそうなので、きっと「滑稽さ」を表したかったんだろうね。
以前ROCKHURRAHが「ROCK連想ゲーム」で紹介したことがあるジェネレーション69というシンガポールのOi!パンクバンドを知った時に感じた違和感と似た種類なんだろうね。(笑)

最後にもう一つ。
マティアス・ヴェルムカ&ミーシャ・ラインカウフの作品「ネオンオレンジ色の牛」。
これもまた映像作品だったんだよね。
前にも書いたことがあったけど、「現代アート」とされる作品で最近多いのが映像作品だから仕方ないのかもしれないけどね。
本当はチラッと観て「?」と思ったら最後まで観ないSNAKEPIPEなんだけど、今回は一応観たんだよね。(笑)
タイトルは「時計じかけのオレンジ」みたいで何が起こるのか想像がつかない感じだけど、実際の作品は単純なものだった。
地下鉄の線路内や橋の下などの「こんな場所で?」というような場所でブランコをする、というパフォーマンスを記録した映像だったんだよね。
アート、というよりはシルク・ドゥ・ソレイユなどのサーカスっぽい感じ。
なーんて例えで書いたけど、観たことないんだよね。(笑)
もしくは、いつでもどこでも同じ振り付けしてるVISAカードのCFに出演してるマットさんみたいな感じ、とでも言えば良いのか。(笑)
マティアス・ヴェルムカ&ミーシャ・ラインカウフは無許可でゲリラ・パフォーマンスを行うと紹介されていて、止まっているバスや電車の窓をゲリラ的に「無許可で」掃除するアートも行なっているとのこと。
ウチの近所で毎週同じジャンパー着て「ゲリラ的に」掃除している中高年の方々がいるんだけど、もしかしたらアレもパフォーマンスアートなのかも?(笑)

紹介した3つの作品共に共通して感じたのは「現代アート定義領域の拡張」かな。
それぞれをパロディ、ドキュメント、大道芸などと言葉を替えて紹介することもできる作品だったからね。
ただ、やっぱり全体的には物足りなさを感じてしまった。
SNAKEPIPEには現代美術館の常設展のほうが好みだなあ。
もっと面白い企画を用意してもらいたいと思うし、展覧会開催中に図録が用意できていないという事態は避けて欲しいよね。
9月下旬から始まっている展覧会なのに、未だに図録が出来上がっていないなんてちょっとひどい!
図録を購入するのが楽しみなSNAKEPIPEには、特にお気に入りの美術館だけに残念に感じてしまった。