トニー・アウスラー「Transmission」 鑑賞

【マイク・ケリーとのコラボ「POETICS PROJECT」の会場風景】

SNAKEPIPE WROTE:

先週、現代アート好きの友人Hと行った「田名網敬一 記憶の冒険」展の感想を書いたSNAKEPIPE。
国立新美術館で3時間もの間、異界の迷宮をさまよった後、もう一つの展覧会に立ち寄ったんだよね。
それはSCAI PIRAMIDEで開催されているトニー・アウスラー「Transmission」!
かなり遅めのランチをいただき、国立新美術館方面からピラミデビルに向かう。

「なんとなくこっちかも」と思いながら歩くSNAKEPIPEとは異なり、友人Hは素晴らしい方向感覚の持ち主であることが判明。
的確な道案内に従い、すんなりピラミデビルに到着したのである。
頼りになる友人Hに感謝!(笑)
ピラミデビルは2015年11月にワコウ・ワークス・オブ・アートでの「Gerhard Richter Painting展」や2022年5月にはSCAI PIRAMIDEで「アニッシュ・カプーア展」を鑑賞した場所。
販売目的のギャラリーなので、入場無料。
撮影についてもオッケーなことが多いのが嬉しいね!

SCAI PIRAMIDEで展示されているトニー・アウスラー(Tony Oursler)について調べておこう。

1957 ニューヨーク生まれ
1979 カリフォルニア芸術大学で美術学士号取得
1981 ニューヨークに戻り、エレクトロニック・アーツ・インターミックスに参加
1999 ニューヨーク市庁舎の近くにスタジオを構える

父親が世界最大級の発行部数を誇る雑誌であるリーダーズ・ダイジェストの元編集長で、裕福な家庭に育ったというから羨ましいね。
カリフォルニア芸術大学でマイク・ケリーと同級生だったと知り、驚く。
マイク・ケリーといえば2018年にワタリウム美術館で鑑賞した「マイク・ケリー展 デイ・イズ・ダーン」は、初めて経験した作品群で、衝撃を受けたからね!
マイク・ケリーと共に学んだ美大での教師がローリー・アンダーソンだったというのもびっくり。
パフォーマンスや音楽、マルチメディアの先駆者であるローリー・アンダーソンの授業ってどんな内容なんだろうね?(笑)

マイク・ケリーの個展についてまとめたブログに「マイク・ケリーがソニック・ユースのアルバム・ジャケットを手掛けた」ことを書いている。
トニー・アウスラーも交流があったようで、1970年代後半にキム・ゴードンと出会い、1985年に短編映画「Making the Nature Scene」を制作したという。
このタイトルで検索するとソニック・ユースの曲がヒットしたよ。

1983年に発表したアルバム「コンフュージョン・イズ・セックス(Confusion Is Sex)」に収録されている曲のようなので、映画のもとになっているのかもしれないね?
キム・ゴードンが監督した短編映画は、ニューヨーク・ダウンタウンにあった伝説的なナイトクラブ「ダンステリア」を舞台に撮影されているという。
友人Hはキム・ゴードンのファンだったよね!(笑)
映像を載せてみようか。

途中で入るナレーションと最後に踊っていたのはキム・ゴードン本人かな?
トニー・アウスラーはエディターとしてクレジットされているね。
この映像を観て、2024年6月に友人Hと一緒に鑑賞した「Mark Leckey Fiorucci Made Me Hardcore」を連想したよ。
マーク・レッキーの作品もクラブ(ディスコ)を舞台にしていたからね!
マイク・ケリーやキム・ゴードンと一緒に活動していたトニー・アウスラーはどんな作品を制作しているんだろうね?

SCAI PIRAMIDEに到着する。
「OPEN」という文字がなかったら閉館しているように見える。
恐る恐るドアを開けると、少し薄暗い照明の中、スタッフの姿が見える。
「どうぞご覧ください」
撮影について確認すると大丈夫とのこと。
最初に目に入ったのは「Bigger Than Life(2024年)」だった。
目と口の部分が動いている。
途中で何やら音も発していたようだった。
この作品が自宅の壁にかかっていたらイヤだろうなあ。
ずっと監視されている気分になりそうだもん。
どうやらそれがトニー・アウスラーの目論見みたいだね。

「Wicca」も2024年の作品とのこと。
火山の上をホウキにまたがり飛んでいるのは魔女?
顔の部分に映像プロジェクションが投影され、表情の変化や違った縮尺の顔が出現する。
長い時間鑑賞していたら違った感想があったかもしれないけど、SNAKEPIPEが観ていた時には美しい女性の顔が映し出されていた。
説明にあるような「疑似科学やオカルトへの新たな関心」を寄せるまでは感じなかったかも。(笑)

SNAKEPIPEがゾクゾクしたのは「Blue Mood(1992年)」だった。
トランクの中に座らされている布製の人形。
頭部は白い卵型。
ここに映像が投影されている作品で、非常に不気味なんだよね!
布製の身体部分が「ぞんざい」な造りになっていて、全体として3頭身くらいのサイズなのに、映っている顔は成人なので、そのギャップが気持ち悪さの原因かも。
京極夏彦の「魍魎の匣」みたいな実験だったり何やら犯罪めいた雰囲気で、とても気に入ったよ。
トランクごと欲しくなってしまったSNAKEPIPEだよ。(笑)

「Noumana」も2024年の作品なので、これも新作なんだね。
小さな人形や宝石みたいに光るチープな素材が組み合わさってキュート!(笑)
いくつかの場所に映像が投影されているんだけど、小さすぎて何の映像なのかよく分からなかった。
何か動いているだけで面白いよね。
全体のバランスや「おままごと」っぽい小型サイズが、とてもかわいい。
こんなブローチがあったら欲しいな!(笑)

白いカーテンで仕切られた別室に入ってみると、そこでは映像作品が展示されていた。
スクリーンの手前に大小3つの球体がぶら下がっている。
「My Saturnian Lover(s)」は2016-2017年に制作された作品とのこと。
1940年代後半を舞台にしたストーリーが展開されていたようだけど、意味はよく分からなかった。
映像の途中から鑑賞して、最後まで観なかったからね。
ぶら下がっている球体にスクリーンとは別の映像が投影されたり、鮮やかな色彩に目を奪われたりして楽しい時間だったよ。
最初は友人HとSNAKEPIPEしか鑑賞していなかったのに、いつの間にか数人の鑑賞者が増えていた。
席を他の人に譲り、会場をあとにする。

テクノロジーやメディアがいかに人々の心理に影響を及ぼしているかを探求しているというトニー・アウスラー。
メディア・アートの先駆者として名高いアーティストの作品を鑑賞できたのは収穫だね。
一緒に行ってくれた友人Hも楽しんでくれて良かった!
六本木に行った時には、なるべく立ち寄りたいギャラリーだよ。
道に迷わないように気をつけようね。(SNAKEPIPEだけか)

田名網敬一 記憶の冒険 鑑賞

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【毎度お馴染み!国立新美術館の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

現代アート好きの友人Hと久しぶりの会合を開くことになった。
前回は2024年6月で「GOMA ひかりの世界」を鑑賞し、表参道〜原宿を闊歩したっけ。(笑)
国立新美術館の「田名網敬一 記憶の冒険」が気になる、という友人Hの言葉を受け、行ってみることに。
すっきりとした秋晴れの日、六本木に向かったのである。

友人Hとは美術館で待ち合わせたので、SNAKEPIPEは一人で六本木駅から歩いて向かう。
六本木を歩くのは2023年9月の「テート美術館展」以来、約1年ぶりだったことに気付く。
随分久しぶりだったんだね!
そろそろ美術館が見えてくる。
前方に何やらピンク色の巨大な物体が見えてきた。
お目々ぱちくりの大きな金魚が「いらっしゃい」と言わんばかりにお出迎えしてくれているよ。
まつげがピンと張っていて可愛いね。(笑)
乃木坂駅から到着した友人Hと落ち合い、ピンクの金魚の前で記念撮影して楽しむ。
実はSNAKEPIPE、田名網敬一について全く知識がないんだよね。
ここで少し経歴を調べておこうか。

1936 東京都京橋生まれ
1957 日宣美展で特選を受賞
1958 武蔵野美術大学卒業
1975 月刊「プレーボーイ」誌 アートディレクター就任
1991 京都造形芸術大学 情報デザイン学科 教授
2013 京都造形芸術大学 大学院芸術研究科 教授
2024 死去

今回の展覧会開催2日後に、享年88歳で亡くなっているとは!
世界初の大規模な個展だというので、心して鑑賞しよう。

8月から開催されている展覧会なので、通常のチケット売り場は閉鎖され、展覧会場入口でチケットを購入するシステムに変更になっていた。
お客さんが多くないという証拠だね。(笑)
会場に入ると「すべて撮影OK」と案内され、嬉しくなる。
蔡國強展」の時もオッケーだったことを思い出した。
アーティスト側の判断なのかな?
会場に入ると黒をバックに、色鮮やかな、というよりド派手な屏風が目に入る。
「ここから始まりますよ」
と耳元でこっそり囁かれている気分になる。
進んでしまったら最後、異界をさまよう覚悟を決めないといけない。(笑)

「第1章」に歩を進めると、そこはサイケデリックな部屋だった。
1966年から67年に制作された「NO MORE WAR」という作品を中心に展示されていた。
作品の一部を切り取って壁までもペイントされているところが素敵!
通常、壁紙は白など単色のまま作品のみが展示されていることが多い中、どこを切り取って撮影してもカッコ良い一枚になる演出が素晴らしいよ。
「オレンジ色が強いですね」
友人Hが感想を言う。
サイケデリック・アートが大好物のSNAKEPIPE、この壁紙ごと欲しくなったよ!(笑)

この構図が良い、と友人Hからアドバイスされて撮ったのがこれ。
黒と白とオレンジの3色がとてもスタイリッシュだよね。
黒インクだけで描かれた作品もあったよ。
雑誌から切り抜いた女性のヌードを貼り付け、イラストと融合させた1967年の「WONDER WOMAN」シリーズ。
描かれているモチーフは、70年代以降も繰り返し使用されているんだね。
中央に見えるオレンジ色の「自画像」も謎めいていて面白い。
この作品を描いた1966年「田名網敬一の肖像」(イラスト集)を出版し、アーティストとしてのキャリアをスタートさせたと説明があったよ。

第1章の展示室だけで興奮してしまい、かなり時間を費やす友人HとSNAKEPIPE。
2人が反応したのが左の画像「モーターサイクル」だった。
「ヒステリック・グラマーみたい!」
田名網敬一の作品を観て、1969年のアメリカ映画「Hell’s Belles」のポスターに似た女性をシンボル・マークにしていたヒステリック・グラマーを思い出したんだよね。
制作年を確認すると2008年?
田名網敬一72歳の作品ということになるのかな。
「いい年してオンナの裸描いて、あなたヘンタイですよっ!」
と横尾先生に叱られるよね、と友人Hと大笑いしてしまう。
これは以前日曜美術館で宇野亞喜良を特集した時、横尾忠則が発した言葉をパロディにしたんだけど。
分かる人は笑ってくれるはず。(笑)

フォト・コラージュ作品も多く展示されていた。
作品をじっくり観ていると、何枚もの切り抜きが重ねられていることが分かる。
漫画や雑誌から、よくもここまで集めて貼り付けたよね!
そして作品数の多さにも驚く。
「雑誌の切り抜き」と入っている作品を軽く数えると、ゆうに60を超えている!
まるで偏執狂のように、切り貼りをしていたんだろうね。
一体何冊の雑誌や漫画を使ったんだろう?

田名網敬一はアニメーション(動画)制作にも取り組んでいて、アニメーション原画と動画の展示もあった。
画像は1973年「Oh Yoko!」の原画で、ジョン・レノンとオノ・ヨーコを題材しているんだよね。
動画がとても面白くて、涙を流して笑い転げてしまったSNAKEPIPE。
前のほうの席でスクリーンを見上げて鑑賞していたので、少し首が痛くなってしまった。
我慢してでも観続けたかった田名網敬一の作品、どうやらDVD販売されているようで、今でも入手可能かも?
「シャバダバシャバダバ〜」で有名な深夜番組「11PM」の依頼で制作された「Good-by Elvis and USA(1971年)」や「Good-by Marilyn」「Commercial War」はもう一度観たいよ。
「Oh Yoko!」の動画を載せておこう。

木やFRP(繊維強化プラスチック)に黒、赤、緑などのラッカーで色付けしている作品群が並んでいる。
何を表しているのか理解できない、不思議な造形なんだよね。
宗教や儀式に使用される、などと説明を受けたら信じてしまうかも。(笑)
足が極端に長い象や人体の一部に見えるような作品もあり、想像力を掻き立てられる。
「なんだこれは!」という驚きがあったら、作品として大成功だよね!

ピカソの母子像をモチーフにした作品が展示されている第9章に足を踏み入れるなり、声が出る。
ピカソの模写をするということ自体、あまり聞いたことがないと友人Hと話す。
更に驚いたのは、その数の多さ。
壁一面、ピカソなんだよね!
2020年のコロナ禍で模写を始め、500点を超える作品を描いているんだとか。
写経に近い感覚と説明されているけれど、継続力と執念に感服だよ!

2023年の作品「記憶は嘘をつく」のタイトルを読んだ瞬間、「確かにね」と口に出すSNAKEPIPE。
思い込みや勘違いにより、記憶が歪められている可能性大だもんね!(笑)
デジタルカンヴァスプリントと書かれているので、カンヴァスに印刷しているんだね。
田名網敬一が繰り返し使用してきたモチーフに歪みが生じている。
混沌(カオス)を再構築している感じかな。
赤塚不二夫とのコラボ作品もあり、「ドカーン」などと漫画で使われた文字がそのまま使用されているよ。
アメリカン・コミックの効果音を表すオノマトペを使ったコラージュやアニメーションを制作していた「クリスチャン・マークレー」を思い出したSNAKEPIPE。
マークレーもコロナ禍で始めた作品だったはず。
引きこもることで制作に没入できるアーティストもいるんだね。

「まだ展示が続いている!」
「いつになったら終わるんだろう」
友人Hと迷宮をさまよっている気分になってしまった。
ここでいよいよ最後の展示になったようだ。
マネキン大のバービー人形や田名網敬一とコラボした商品がびっしり並んでいる。
こんなに商品化されているとはびっくりだよ。
同じ衣装を着けたバービーはミュージアム・ショップで販売されていて、ちょっと欲しくなってしまった。
お値段3万円ほど。
SNAKEPIPE MUSEUMに飾りたいよ!(笑)

「田名網さんはDJみたい」
友人Hの感想が面白かった。
何枚ものレコードから音をつなぎ合わせて行く作業に近い作品だから、だって。
なるほど!(笑)

会場を出て時間を確認すると、3時間も鑑賞していたことが分かった。
こんなに長い時間一つの展覧会にいたことないかも?
暗闇の中で怪しげに輝く極彩色の世界に、完全に飲み込まれたみたいだよ。
スマホのバッテリー残量が極端に減っている。
写真を撮り過ぎたからだね。(笑)

SNAKEPIPEは「エロ・グロ・ナンセンス」のグロがない「エロ・ナンセンス」だなと思った。
「エロ」とは言っても「あっけらかん」とした「エロ」なんだよね。
70年代の「11PM」や芸能人水泳大会で「ポロリ」があったりする、裸に寛容だった時代背景も関係しているかもしれない。
予備知識ゼロで出かけた田名網敬一展、行って良かった。
友人Hさん、またご一緒しましょ!

両大戦間のモダニズム:1918-1939 鑑賞

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【版画美術館の入口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2024年9月14日から町田市立国際版画美術館で開催されている企画展「両大戦間のモダニズム:1918-1939 煌めきと戸惑いの時代」が気になる、とROCKHURRAHから聞いたのは数週間前のことだった。
展覧会が始まる前だったので、連休を利用して鑑賞する計画を立てる。
9月は3連休が2回あるからね!
町田市立国際版画美術館といえば、2020年6月に「横尾忠則展」を観に行ったことを思い出した。
ものすごく急な坂を上ったり下りたりした記憶があるなあ。

ROCKHURRAHと町田で下車したのは、今回が初めてのこと。
町田市立国際版画美術館は駅からの道順を写真付きで教えてくれているので、迷わないで歩けるよ!
4年前に通った道とは違ったようで、森の中を通って美術館に到着。
町田駅から10分程度しか離れていないのに、森林浴できちゃうってすごいね。
坂道を使わないルートがあるのは良かった。(笑)

会場はそこまで混雑していなくて、ゆっくり作品鑑賞ができたよ。
撮影可能だった作品について感想を書いていこう。

chaper1:両大戦間に向かって:Before 1918

ベル・エポックというのは19世紀末から1914年頃の華やかだったパリの時代や文化を指す言葉だという。
その時代に活躍したヴァロットンの木版画だよ。
1893年の作品で、タイトルは「街頭デモ」だって。
日本では明治26年なんだね。
木版の多色使いが美しい浮世絵と比べると、モノクロームの作品は少し物足りなく感じてしまう。
人の動きを切り取ったスナップショット風の滑らかなラインが魅力的だね。

ガラスケースの中に収められていたのは、1901年から1912年に刊行された「L’Assiette au beurre(バター入りの皿)」という風刺雑誌だった。
アナーキストの編集者シュヴァルツは、ベル・エポック時代の貧富の差を批判し、市民に寄り添うテーマで雑誌を作っていたという。
1人の作家が各号を担当していたというのが画期的!
この雑誌は中断の後、1921年から1925年まで月刊誌として発売され、1936年には廃刊になったみたい。
総勢200人のデザイナーが関わっていたという雑誌、現代でも通用する素晴らしさだよね!

chaper2:煌めきと戸惑いの都市物語

続いての章では、パリ・モードやファッションについての作品が並んでいた。
1921年から1925年までフランスで刊行されていた「Gazette du Bon Ton( 良き趣味の新聞)」の1920年第10号に載っていたシャルル・マルタンの作品だよ。
素敵な配色や着物風のコート(ガウン?)がオシャレだね!
1920年代のモードは、2023年に東京都庭園美術館で開催された「交歓するモダン」などでも鑑賞したことがあるよ。
テキスタイルもデザインも、とてもカッコよくてうっとりしちゃったんだよね!
エレガント過ぎてSNAKEPIPEが着てみたい洋服ではないけれど、当時の女性たちが憧れたのはよく分かるよ。

第2章はパリのモード以外にアメリカや日本の女性向けファッション雑誌の紹介もされていたよ。
パリに追随する形で各国がこぞってモードを追い求めていたことが分かる。
載せた画像はドイツのマックス・ベックマンが手がけた1921年の版画集で「メリー・ゴーランド」という作品。
じっくり観ると縮尺がおかしかったり、不気味な様子も感じられるよ。
1918年から始まったベルリン・ダダの作品も展示されていて狂喜する。
2013年8月のブログ「SNAKEPIPE MUSEUM #22 Hannah Höch」で紹介したハンナ・ヘッヒの作品を直に観たのは初めてだからね!
シュルレアリスムの作品展は開催されても、ダダはなかなかお目にかかれないことを残念に感じていたので、とても嬉しかった。
撮影が禁止だったので記憶にとどめておこう。
この作品、どうやら町田市立国際版画美術館が所蔵してるみたいなので、また鑑賞できる機会ありそうだね。

ロシア・アヴァンギャルドの展示もあり、顔がほころんでしまった。
ROCKHURRAHもよだれを垂らしていたに違いない。(笑)
ロトチェンコ、マヤコフスキー、リシツキーらの作品は、ドキドキするほど魅惑的!
こういう作品に出会うと心が喜ぶよ。
載せた画像は、20年代から30年代の子ども向けの絵本だって。
教育や道徳などを絵本を通して伝えていたようだけど、ロシア語読めないので意味は不明だよ。(笑)
内容が分からなくても、絵とフォント、構図や色使いなど完成度が非常に高い絵本だったことは一目瞭然。
ロシア・アヴァンギャルドの素晴らしさを再認識したよ!

chaper3:モダニズムの時代を刻む版画

この章では、1910年代末から1920年代に登場した抽象表現主義の作品が展示されていた。
当ブログでは、今年に入って何度も1920年代というフレーズを書いているね。
きっとこれから先も書き続けるに違いないよ。(笑)
載せたのはピエト・モンドリアン、1927年の「色面によるコンポジション No.3」。
1957年に、モンドリアンの油彩画をシルクスクリーンとして複製したものだという。
この作品も町田市立国際版画美術館が所蔵しているというから、嬉しくなってしまうね!
ハンナ・ヘッヒの作品と共に、また鑑賞できる時があるはずだよ。
モンドリアンのコンポジションは、かつてSNAKEPIPEがオマージュさせてもらい、帽子やTシャツ作ったことがあるんだよね。(笑)
シンプルだけどインパクトがあって大好きなシリーズだよ。

第3章では「シュルレアリスム」の部屋もあり、ROCKHURRAHと2人で手を取り合って喜んだよ!
デュシャン、マグリット、マン・レイ、エルンスト、ダリといった錚々たる顔ぶれの作品が並んでいたからね。
すべて撮影禁止だったのが残念だけど、素晴らしいラインナップで大満足だったよ!

chaper4:「両大戦間」を超えて:After 1939

この章では亡命したアーティストを特集していた。
イギリス出身でニューヨークに移転したスタンレー・ウィリアム・ヘイターの作品が印象に残った。
ミロやエルンストに版画技法を伝え、ニューヨークではジャクソン・ポロックに影響を与えたアーティストだという。
作品の撮影ができなかったので、文章だけ書いたよ。
載せた作品は、1947年のイブ・タンギーの「棒占い」。
細いペンで線を描き水彩絵の具で淡く色づけたように見えるけれど、こちらはエッチングだって。
タイトルと作品の意味は分からないけど、不思議な雰囲気があるよね。

最後はフェルナン・レジェ、1950年の挿絵本「サーカス」が展示されていた。
レジェ晩年の作品だという。
載せた作品は「ヘタウマ」みたいで、おどけているように見える。
散文詩のような文章と共に、80点近いリトグラフが収められているという。
レジェといえば、2024年3月に「ポーラ美術館」で、力強いくっきりした線とポップな遊び心がある作品を鑑賞したことを思い出す。
マン・レイが撮影を担当した1924年の実験映画「バレエ・メカニック(原題:Ballet Mécanique)」などでも有名はレジェは、多方面で作品を残しているアーティストなんだね。

企画展「両大戦間のモダニズム:1918-1939 煌めきと戸惑いの時代」は雑誌の展示なども含めて、約120点ほどの見応えがある展覧会だった。
じっくり観ていたので、かなり時間がかかったよ。(笑)

常設展は「明治時代の歴史物語―月岡芳年を中心に」を開催している。
せっかくなので、こちらも鑑賞していこう!

月岡芳年というと、2012年10月に原宿の太田記念美術館で「没後120年記念 月岡芳年展」を鑑賞したっけ。
あの時は「無惨絵」を含め、月岡芳年が手がけた作品を十分に堪能させてもらったよ。
残酷なモチーフが多い印象だけど、今回は歴史をテーマにした展覧会なので「血みどろ」の作品はなかったよ。
載せたのは、明治18年(1889年)から明治25年(1892年)にかけて制作された「月百姿」シリーズの作品。
「つき百姿 千代能がいたゝく桶の底抜けて みつたまらぬは月もやとらす」とタイトルに書いてあり、どうやら鎌倉時代の安達一族の娘であった安達千代野をモデルにしているみたい。
月岡芳年の画力がもちろんだけど、錦絵の色使いは改めて素晴らしさを感じるね。
欧米の版画を観た後なので、違いが明確になったのかもしれないね。

町田市立国際版画美術館の企画展も常設展も、大満足だったよ!
坂道を通らなくていかれるなら、気軽に訪問できそう。(笑)
次の企画展も楽しみにチェックしていこう。
誘ってくれたROCKHURRAHに感謝だね!

ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展 鑑賞

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【いつも通りジャイル・ギャラリーの入口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

表参道にあるジャイル・ギャラリーで「ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展」が開催されている。
7月の開催当初から展覧会情報は知っていたけれど、もう少し涼しくなってから行こうと思っているうちに9月になってしまった。
展示が終わりに近づいてしまったので、暑さに耐えながらROCKHURRAHと一緒に会場に向かったのである。

今回の展覧会は「ヨーゼフ・ボイスとの対話」とのこと。
そもそもヨーゼフ・ボイスって何者?というところから始めようか。
SNAKEPIPEは、ヨーゼフ・ボイスと聞いて思い浮かぶのは「フエルトのスーツ」くらいなんだよね。
時代的には、ナム・ジュン・パイクらと共に「現代アート」の旗手だったことは分かるんだけど。
どんなことをやっていたアーティストなのか、詳しく語ることができないなあ。
少し調べてみよう。

1921 ドイツのクレーフェルトに生まれる
1941 第二次世界大戦中に空軍に従軍
1943 ソビエト連邦で飛行機が墜落し、タタール人によって救助される
1946〜1951 デュッセルドルフ美術アカデミーで学び、彫刻を専攻
1951 美術アカデミー卒業後、フリーランスのアーティストとして活動を開始
1961 デュッセルドルフ芸術アカデミーの教授に就任
1964 パフォーマンス「How to Explain Pictures to a Dead Hare(死んだウサギに絵をどう説明するか)」を行う
1965 「Fat Chair(脂肪椅子)」を発表し、異物や素材を使った彫刻作品が注目される
1972 ドキュメンタ展に参加し、「7000本のオークの木(7000 Oaks)」というプロジェクトをスタートさせる
1974 「Coyote I Like America and America Likes Me (コヨーテ 私はアメリカが好き、アメリカも私が好き)」というパフォーマンスを行う
1976 「自由国際大学(Free International University)」を創設し、教育と社会改革に力を入れる
1982 再びドキュメンタ展に参加し、環境芸術プロジェクト「7000本のオークの木」を完成させる
1984 来日し、東京藝術大学の体育館にて対話集会が行われる
1986 心不全のためデュッセルドルフで死去

亡くなる2年前に来日しているんだね。
現代アーティストの宮島達男が、東京藝術大学での対話集会について語っていたのを観たことがあるよ。
「ボイスが歩いた後に、星飛雄馬が投げた球みたいな強い光が走っていた」
とボイスのオーラについて表現していたっけ。
ちょっと大げさな気はするけど、実際に現場にいたら興奮したはずだよね。(笑)

ヨーゼフ・ボイスの作品は、コンセプチュアル・アートになるのかな。
マルセル・デュシャンに系譜があるというコンセプチュアル・アートは、誤解を招くことを承知の上で簡単に説明すると「物議を醸すアート」ということかも。
観ただけで理解できるアートではなく、解説が必須の難解な作品が多い気がするよ。
ボイスは、1972年にスタートさせた「7000本のオークの木」を、社会とアートを結んだ「社会彫刻」として発表しているという。
アートという概念の拡張を問いかける、仕掛け人みたいな人物なのかなと思ったSNAKEPIPEだよ。

2018年2月のブログ「会田誠展 GROUND NO PLAN 」で、現代アーティストの会田誠が、沢田研二の「カサブランカ・ダンディ」を熱唱していたことを書いている。
タイトルを「アーティスティック・ダンディ」として「ボイス、あんたの時代は良かった」とボギーをボイスに入れ替え、詐欺師呼ばわりしていたっけ。(笑)
歌を聞いたSNAKEPIPEは大笑いしてしまったことを思い出したよ。
作品の思想的な意味を理解できないと「なんとなくアートかも」という作品にしか感じられないところに、ツッコミが入ったようで面白かったからね。

今回鑑賞した企画展「ヨーゼフ・ボイスとの対話」では、ボイス自身の作品と共に、ボイスから影響を受けた現代アーティスト6人の作品が展示されていたよ。
ジャイル・ギャラリーは撮影オッケーなので、良いね!
展示作品を紹介していこう。

まずはボイスの作品から観ていこう。
ガラスケースの中に入っているのは黄色い電球。
「カプリバッテリー」という作品だって。
この展覧会のキュレーターである飯田高誉氏による説明があった。
「この作品は人間と自然との親和性が高まるメタアファーとして提示されている」とのこと。
飯田氏もデヴィッド・リンチ大ファンの方なので、同じ嗜好の持ち主として尊敬しているSNAKEPIPE。
できるだけ飯田氏が企画した展覧会には足を運びたいと思ってるんだよね!
観念的な展示が多いので、頑張って理解したいと思っているよ。
「カプリバッテリー」は「自然から発生したエネルギーを活用し、永久に持続させることを示唆している」という。
作品観ただけでは、到底理解できないなあ。(笑)

「ヴィトリーヌ」は、ボイスがパフォーマンスで用いた物品やメッセージなどをガラスケースに並べていた作品だという。
カスヤの森現代美術館」の創設者である若江漢字が、所蔵しているボイスのコレクションから選んで並べたんだとか。
「ヴィトリーヌ」というのは、フランス語で科学標本などを展示するガラスケースを意味するんだって。
どうやらアウシュヴィッツに関係する物が並んでいるようだね。
「鑑賞者に対して生死の境界を意識させると同時に、価値の転換を示す装置」と説明されているけれど、観ただけで理解するのは難しいかも。

1984年にボイスが来日した時、一緒についてまわっていたというのが写真家の畠山直哉。
2008年4月に書いた「好き好きアーツ!#01 畠山直哉」で取り上げたアーティストだよ!
好き好きアーツ!」の第1回目が今から16年も前のこととは。(笑)
今回の展覧会ではボイスを撮影した写真4枚が展示されていた。
どうして畠山直哉がボイスを撮影していたのかは不明だよ。
2024年9月28日まで、タカ・イシイギャラリーで畠山直哉の展覧会が開催されているという情報を入手。
メッセージ性の強い作品を撮り続けているみたいだね。
好きな写真家なので、動向をチェックしていかないと!

磯谷博史の「花と蜂、透過する履歴」は、コロンとしたかわいらしい形の作品だった。
中に入っているのは蜂蜜で、光っているのは集魚灯らしい。
琥珀色がとても美しいね。
磯谷博史は1978年東京生まれ。
2003年に東京藝術大学建築学科卒業の2年後に東京藝術大学院先端芸術表現科修士課程修了し、2011年ロンドン大学も卒業しているんだとか。
どうやら2019年4月に鑑賞した「六本木クロッシング2019展:つないでみる」に出品していたようなので、SNAKEPIPEは以前、磯谷博史の作品を観たことがあるみたいだよ。

今回の展覧会で一番気に入ったのが、若江漢字の6点組作品「気圧」だよ。
若江漢字流の「ヴィトリーヌ」ということらしい。
近寄ってみると、写真と共に電球やビンなど、ボイスっぽいオブジェが収納されているんだよね。
線路など鉄でできた構造物の写真も好みだし、6点セットを家に飾りたいくらいだよ!
先にも書いたけれど、若江漢字が創設した「カスヤの森現代美術館」も気になるね。
現在開催中の企画展は「マルセル・デュシャン」だって。
行ってみたいな!(笑)

加茂昂の「惑星としての土/復興としての土1」を写真作品だと勘違いしていたSNAKEPIPE。
「油彩だったよ」
断言するROCKHURRAHは、近付いて観察していたという。
素材を調べると「油彩、堆肥顔料」と書いてある!
じっくり観ていなかったことがバレてしまったね。(笑)
それにしても堆肥顔料ってなんだろう?
「堆肥化された有機物から作られた顔料」だって。
いろんな技術があるんだねえ。
加茂昂は1982年東京都出身で、 2008年に東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
2010年には東京芸術大学大学院絵画研究科修了と調べたところで、上で紹介した磯谷博史と似た経歴であることが分かったね。
みなさん、エリートだなあ。(笑)

AKI INOMATAは、2022年「世界の終わりと環境世界」や「金沢21世紀美術館」などで作品を鑑賞したことがあるアーティストだよ。
動物をモチーフにした作家として認識していたので、散歩している犬が登場しても驚かなかったSNAKEPIPE。
展示してあるのは、洋服と髪の毛?
タイトルは「犬の毛を私がまとい、私の毛を犬がまとう」だって。
犬の毛とAKI INOMATAの髪を数年にわたって集め,その毛/髪で,互いの衣服/毛皮をつくり着用した作品だというから腰を抜かしてしまった!(笑)
ちなみにAKI INOMATAも東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻修了だって。
何年間もかけて毛を集めるという執念が怖いくらいに素晴らしいよね。

最後は武田萌花の「Day Tripper」というビデオ・インスタレーション作品ね。
こちらは電車の座席が置かれ、車窓風景が流れる。
移動している感覚になるけれど、動いているのは窓の外側に映る景色だけなんだよね。
ROCKHURRAHが動画を撮ってくれたので載せてみよう。

「心は変わりやすいけれど、ほんとは何も変わっちゃないのさ。まわりだけがぐるぐる回るのさ」
を思い出してしまったSNAKEPIPEだよ。
ジャックスの「堕天使ロック」なんだけど、分かるかな?(笑)

地下から5階に続く吹き抜けに、ギャラリーに関連するインスタレーションが飾られてるんだよね。
今回のヨーゼフ・ボイス展では、垂れ幕のような布が下がっていてカッコ良かった。
せっかくなのでエレベーターから動画撮影してみたよ!

なかなか面白いよね。

いつもジャイル・ギャラリーに行くと、新しい発見があり楽しくなるよ。
今回の収穫は「カスヤの森現代美術館」と若江漢字だね。
毎回無料で鑑賞させてもらって感謝だよね。
次の企画展も楽しみにしていよう!(笑)