ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ 鑑賞

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【東京駅八重洲口出口24番にあった看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

ずっと以前からROCKHURRAHに誘われていたのは、「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ」展だった。
もしかしたら昨年から約束していたのかもしれない。
SNAKEPIPEの入院により展覧会鑑賞が叶わず、会期終了間際での鑑賞になってしまった。
前回、会場のアーチゾン美術館を訪れたのは2022年11月の「Art in Box マルセル・デュシャンの《トランクの箱》とその後」だったので、およそ3年半ぶりになるんだね。
その間にROCKHURRAH RECORDS事務所移転があり、東京都民から神奈川県民に変わったことも、足が遠のいた理由かもしれない。
久しぶりに「これは!」という企画展なので、とても楽しみにしていたよ!
アーティストであるアルプ夫妻について、少し勉強しておこうか。

ゾフィー・トイバー=アルプ
絵画、彫刻、テキスタイルデザイン、舞踊、建築、インテリアデザインなど、多岐にわたる分野で活動し、芸術と工芸、抽象と具象の境界を越える作品を生み出す。

1889 スイスのダヴォスに生まれる
1906〜1910 テキスタイル・デザインを学ぶ
1915 舞踊学校でダンスを学ぶ
この年、夫となるジャン・アルプに出会い、ダダイズムに参加
1916〜1929 チューリッヒの応用芸術学校で刺繍やデザインの講師を務める
1926 ジャン・アルプとともにフランス国籍を取得
1930〜 ロシア構成主義のレビュー「Plastique(Plastic)」をパリで設立
1943 ストーブの故障による一酸化炭素中毒により事故死

ジャン・アルプ
フランスとドイツの両文化に根ざした彫刻家、画家、詩人であり、20世紀初頭の前衛芸術運動、特にダダイズムとシュルレアリスムの中心的存在。

1886 ドイツのシュトラスブルク(現在のフランスのストラスブール)に生まれる
1904 パリで詩を初めて出版
1905〜1907 ドイツ・ワイマールの美術学校で学ぶ
1908 パリのアカデミー・ジュリアンに入学
1916 ダダ運動の創設メンバーとして活動を開始
1922 ゾフィー・トイバーと結婚
1925 シュルレアリスム運動に参加
1926〜1930 「アブストラクシオン=クレアシオン」グループの創設メンバーとして活動
1930~ 石膏や大理石を用いた彫刻制作を始める
1959 再婚し、スイス・ロカルノに新たな住居兼アトリエを構える
1966 死去

ご夫妻なので2人分書いてみたよ!
トリスタン・ツァラらと共にチューリッヒダダイスム宣言を発表したり、友人にはカンディンスキーやマルセル・デュシャンがいたり、豪華な顔ぶれが勢揃い!
憧れの1920年代をリアルタイムで経験した、アーティストご夫妻だもんね。
ゾフィー・トイバー=アルプは、スイスの50フラン紙幣(1995年〜2016年)に肖像が使用されるなど、高く評価されているんだとか。
年表の中に、ダダイズムやシュルレアリスム、ロシア構成主義といったワクワクする単語が並んでいて嬉しくなるよ。
2人の作品鑑賞、とても楽しみだね。(笑)

5月なのに夏日が続き、このまま一気に夏になってしまうのか心配したけれど、展覧会鑑賞予約をした日は、少しひんやりしていて歩きやすかった。
今までアーチゾン美術館へは銀座線の京橋から歩いていたけれど、東京駅からも歩いてすぐなんだよね。
地下道を通って行ったので、すんなり到着したよ!
アーチゾン美術館横に、先頭に旗を掲げた団体客が並んでいて、まさか同じ展覧会を鑑賞しにきたのでは?と危惧してしまう。
そして残念ながらその予想は的中してしまったんだよね。

会期終了間際にも関わらず、団体客のせいばかりではなく、実際にお客さんが多かった。
撮影はすべてOKだったのは良かった!
展覧会は4つの章に分かれて展示されていたよ。
気になった作品を紹介していこう。

第1章  形成期と戦時下のチューリヒでの活動

チューリッヒじゃなくてチューリヒなんだね?
「ハロー!チューリッヒ!」って宣伝も見てるのにね。(笑)
最近様々な表記が、以前見聞きしていた時とは違っていて、戸惑うことがあるよ。
画像はゾフィー・トイバー=アルプ、1917年〜1918年頃制作された手帳カバーで「抽象的なモティーフによる構成」。
麻布の土台にビーズ刺繍が施されているんだよね。
抽象的なモチーフの面白さと色合いの美しさが見事!
レプリカがあったら欲しいと思ったよ。

一方、夫であるジャン・アルプ、1915年の作品がこちら。
「トルソ=へそ」は木製の彫刻作品なんだよね。
ジャンには「へそ」と名付けた作品が多いことに気付く。
母親とのつながりというところから、起源や自然、生命の普遍性などがテーマになっていると説明されていたよ。
この作品を作った年、ジャンとゾフィーが出会っているんだよね。
2人共アブストラクトを志向しているので、意気投合するのは納得!
むしろ結婚まで7年かかっていることが不思議な気がするよ。

ゾフィーは、1918年に人形劇「鹿王」の人形制作を行っていたみたい。
展示されていたのは、2010年代に復刻されたレプリカだったよ。
ゾフィーの手にかかると、人形が抽象的なパーツの組み合わせになっていて面白い。(笑)
3体(!)の人形は「デラーモ王 」「守衛」「鹿」で、真鍮シートやベルが使用されているという。
当時も同じ素材でできていたのかな?
別の章でアルプ夫妻のアトリエ兼住居が紹介されていて、たくさんの人形が飾られていたんだよね。
きっと「鹿王」に登場した人形たちだったんじゃないかな。
これもミニチュアでフィギュアがあったら欲しかったなあ。(笑)

第2章 越境する造形 空間の仕事とオブジェ言語

1919年から1929年までの軌跡を紹介するチャプターで、最初に気になったのはゾフィーの作品。
1920年〜1924年頃制作された「パッチワークのズボン」がオシャレで目を引いたよ!
素材はビスコースと綿だって。
ビスコースというのは、レーヨン素材の一種で最も古い自然素材の合成繊維とのこと。
ゾフィーは元々テキスタイルの勉強をしていたので、布を扱うことに慣れていたんだね。
色彩のバランスが素敵で、斬新なパンツだよ!

1924年に制作されたジャンの「花の頭部をもつトルソ」は木に彩色している作品。
色がハッキリしていて好みだよ!
緑×ピスタチオグリーン×ブルーの3色、真似たくなるコンビネーションだね。
他に彩色した厚紙を使った作品「トルソとへそ」も並んで展示されていたよ。
また「へそ」だね。(笑)
もうこの時には二人は結婚しているね。
お互い刺激し合って、制作していたんだろうなあ!

アルプ夫妻は、18世紀に建造された歴史的な複合娯楽施設である「オーベット」の改築に伴う室内デザインを依頼され、大きな収入を得たという。
「オーベット」の室内デザインも展示されていて素晴らしかったよ。
得たお金でアルプ夫妻は住所権アトリエを建設したというから羨ましいね。(笑)
その建物の模型が展示されていた。
窓枠が赤でかわいいよね!
それぞれのアトリエと生活空間があり、2人にとって快適な住まいだったという説明があった。
日常生活と芸術が結びついて、お互いを高め合い創作活動できただろうね!

第3章 前衛の波の間で 各々の探求とコラボレーション

ゾフィー、1931年の作品「長方形と円による構成」。
単純な形を白、赤、青、グレーのみを使用して配置したシンプルさが素晴らしい!
バランスの良い構成で作品を作る日本画に近い雰囲気だよ。
マルだけに注目すると、まるで点字のよう。
未来人がこの作品を発見したら、エジプトのヒエログリフのような古代文字と勘違いするかもね?(笑)
ROCKHURRAHは「この時代にはないはずのコンピュータ回路のようだ」と感想を話す。
確かに、アナログなのにデジタルっぽいもんね!

1938年にジャンが制作したブロンズ製の「つぼみ」。
抽象的な彫刻は、タイトルと作品に関連を見いだせない場合も多いけれど、ジャンの場合はむずかしくなかったよ。
口を開けたヘビみたいにも見えてくるなあ。(笑)
有機的な形態を彫刻にする取り組みは、この頃から始まったみたいだね。
「具象彫刻」というんだって。
「つぼみ」は植物から、ジャン自身の詩作や民話から着想を得た彫刻作品も展示されていたよ。
つるんとした表面を撫でてみたい衝動に駆られたよ!

第4章トイバー=アルプ没後のアルプの創作と「コラボレーション」

年表にあったように、1943年ゾフィーは不幸な事故により急逝してしまうんだよね。
ジャンは強いショックを受け、4年間修道院にこもり、詩作することで妻を弔っていたんだとか。
人生のパートナーであり、同じ志向のアーティストだったゾフィーの不在は、ジャンに想像を絶する苦しみを与えたに違いない。
画像は1939年にゾフィーとジャンがドローイングのコラボレーションをした作品(左)と、1950年頃ドローイングを基に描かれた油彩画「共同絵画」(右)。
涙が出そうになるエピソードだよ。
ジャンはゾフィーの作品を立体にする試みを行っていくんだよね。

ブロンズ作品と絵画作品が上下に展示されている。
下の作品は1942年にゾフィーが制作した「幾何学的な構築」で、その作品を基にジャンがブロンズで彫刻作品にしているんだよね。
「晩年のコンストラクション」は1960年頃まで続いていたみたい。
ゾフィーの力強く伸びやかな作品のカッコ良さが立体化されていて、素敵だった。
SNAKEPIPE MUSEUMに所蔵したくなったよ!(笑)

1922年に結婚してから約20年間、寄り添ってきたゾフィーとジャン。
画像は1928年に「オーベット」前で撮影されたゾフィー(真ん中)とジャン(右)。
幸せそうな2人を見ると、事故が起きなかったら、と「IF」を想像してしまうね。
ジャンの心にぽっかりと空いてしまった空洞は、ゾフィーに思いを馳せながら行う制作で、少しずつ埋まっていったのか。
完全になくなることはなかっただろうと予想する。
夫婦で作品制作を行っていたというと、椅子で有名なイームズ夫妻を思い出すね。
2019年3月に「EAMES HOUSE DESIGN FOR LIVING」で、イームズ夫妻のアトリエ兼スタジオを鑑賞したっけ。
生活とデザイン、想像力(創造力)は連動しているよね。
「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ 展」鑑賞できて本当に良かった!
ROCKHURRAH RECORDSも2組のカップルを見習って、お互い切磋琢磨していきたいと思う。
まずは部屋の掃除から始めるかな。(笑)

ジャパン・アヴァンギャルドポスター見本市 鑑賞

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【アヴァンギャルド・ポスター展のフライヤー】

SNAKEPIPE WROTE:

2024年11月の「松谷武判展」以来、約半年ぶりに、当ブログのカテゴリー「行ぐぜ!exhibition」を更新しよう。
「行ってみよう」とROCKHURRAHから誘われたのは、渋谷ヒカリエで開催されている「第二弾 ジャパン・アヴァンギャルドポスター見本市」だった。
以前も書いたことがあるけれど、ROCKHURRAH RECORDSは「アヴァンギャルド」という言葉に弱いんだよね。(笑)
アヴァンギャルドなポスター展、とても楽しみ!

乗り継ぎとしては利用しているけれど、渋谷で下車して歩くのは久しぶりだよ。
駅周辺を工事している関係で、近道なのか遠回りなのか分からない感じで歩き回り、ヒカリエに到着。
以前ヒカリエのギャラリーでデヴィッド・リンチ展を観たっけ。
調べてみると2014年7月の「鬼才デヴィッド・リンチの新作版画/写真展」だったよ。
今から11年前か。(笑)

ヒカリエの8階のBunkamura Gallery 8/を目指す。
8階にはいくつものギャラリーがあるので、人の出入りが多いよね。
少し歩くとポスター展会場が見えてきた。
ポスターは展示販売されているためなのか、撮影禁止を注意書きされている。
ブログで載せている画像は、展覧会場で撮影したものではないのでよろしくね!
会場にはおよそ30点ほどの作品が展示されていたよ。
気になる作品を紹介していこう。

1960年代〜70年代のアヴァンギャルドなポスターというと、劇団の公演を告知する作品が多い。
当時の2大アングラ劇団といえば、寺山修司の天井桟敷と唐十郎の状況劇場!
SNAKEPIPEは当時の人ではないので、後付けで調べてるタイプだよ。
天井桟敷も状況劇場も、リアルタイムで観たかったなあ、と思う。
もし公演の様子がDVD化されたとしても、空気感や匂いなど、同時代の感覚までは再現不可能だもんね。
載せたのは、天井桟敷公演の「毛皮のマリー」で、ポスターデザインは横尾先生だよ!
横尾先生は天井桟敷のポスターを多く手掛けていて、ミュージアムショップなどで目にする機会も多いよね。

宇野亞喜良の作品も多く展示されていたよ。
鮮やかな色使いで、とても美しい!
販売されていた金額は、作品によってまちまちだったね。
地下で営業している、色っぽいマダムがいる店に飾ったら似合いそう。
この感覚がすでに昭和な感じか?(笑)
載せたのは、1968年に公演された天井桟敷「新宿版 千一夜物語」のポスターね。
こんなポスターが街に貼られていた60年代に憧れるよ!

グラフィックデザイナーである粟津潔が手掛けたのは、1969年に天井桟敷公演の「犬神」。
白のバックに赤一色だけを使用した斬新さが見事!
シンメトリー構図で、上部や手のひらに印鑑が押されているのが不気味だよね。
印鑑を作品に取り込んでいるのを初めて観たかもしれない。
犬神と聞くと「犬神家の一族」や「犬神博士」を連想してしまうね。
どちらにしても怖いイメージがあるので、このポスターは恐怖を煽るのにふさわしい。
粟津潔デザインによる他の作品もカッコ良かったよ!

画家の金子國義が劇団状況劇場に関わっていたんだね。
1970年の「ジョン・シルバー 愛の乞食編」のポスターに金子國義の作品が使用されている。
すぐに金子國義と分かる特徴的な絵画だよね。
便器に座る全裸の女性。
身につけているのは靴下と靴だけとは。(笑)
60年代や70年代はヌードに関して寛容だったことが分かる。
それにしても、ポスターで横位置は珍しいね!

麿赤兒が1972年に設立した大駱駝艦の「48.DANCE-桃杏マシン」公演ポスター。
艦隊を持ち上げる手と手前の足は確認できたので、人体を描いているのか?
真ん中に様々なポーズを決める5人のシルエットがあるね。
両サイドの2人は、とても人間とは思えない特徴を持っていることが分かる。
さすが70年代、自由だわ。(笑)
ここでSNAKEPIPEは、かつて「白虎社の体験をしてきた」という知人がいたことを思い出した。
ほぼ1日、うさぎ跳びのような動きをさせられていたらしい。
一体何年前の話をしてるんだろうか。(笑)
舞踏集団白虎社は1994年に解散したようだけど、大駱駝艦は今も公演を続けていることを知ったよ。
一度は「BUTOH」を鑑賞してみたいね!

天井桟敷が1974年に公演した「盲人書簡 上海編」のポスターを手掛けたのは、漫画家の花輪和一!
「丸尾末広のポスター?」
と間違えそうになってしまったROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
どちらにしてもエログロ系ってことだね。(笑)
「盲人書簡」らしく、ポスターの人物は全員眼帯やサングラスを着けている。
猫の目の光で書物を読む、とポスターの中に書かれているように猫の目だけは描かれているね。
このポスター、とても気に入ったよ!

1978年、状況劇場が公演した「河童」のポスターに、「ゲゲゲの鬼太郎」の作者である水木しげるの作画が使用されている。
花輪和一に続いて漫画家が連続してしまった。(笑)
妖怪といえば水木しげるの登場になるんだね!
河童にしがみつかれている女性が、どちらかというと「うっとり」した顔をしていることに注目したい。
妖怪を怖がっていないので、愛情を持って接しているように見えるよ。
一体どんな演劇だったのか。
河童役の役者は、着ぐるみを着たのだろうか?
色々と気になってしまうよ。(笑)

最後は合田佐和子の作品にしよう。
状況劇場1976年の「おちょこの傘持つメリー・ポピンズ」のポスターね。
「おちょこの傘」も、中央に立つ女性の目がイっちゃってるのも謎だよ。(笑)
この作品は、2023年3月の「合田佐和子展 帰る途もつもりもない」で鑑賞しているけれど、たくさんのポスターの中で観ても印象に残る作風だなと感じる。
ポスター下部に西武美術館「ドガ展」の告知があるね。
他のポスターにも同様の告知が載っていて、「エゴン・シーレ展」や「ムンク版画展」など1970年代の展覧会情報を知ることができる。
年に数回は海外大物アーティストの作品を渋谷で鑑賞できたとは羨ましい。(笑)

アヴァンギャルド・ポスター展はROCKHURRAH RECORDSの好みで、行って良かったよ!
1960年代〜70年代の雰囲気が皮膚を通して染み込み、ゾクゾクした。
「アングラ」や「アヴァンギャルド」にハズレなし、だね。(笑)

松谷武判展 鑑賞

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【松谷武判展覧会場入口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2024年7月に訪れた「軽井沢現代美術館」についてのブログで、
「今年の10月から東京オペラシティアートギャラリーで個展が開催されるようなので、是非足を運びたい」
と書いているSNAKEPIPE。
松谷武判のボンドを使用したカッコ良い作品に強い感銘を受けたんだよね。

オペラシティアートギャラリーには、独自の視点を持ったキュレーターがいるに違いない。
今までに「白髪一雄展」「石元泰博写真展」「ミケル・バルセロ展」「篠田桃紅展」など、印象的な展覧会を企画してくれているからね!
そのギャラリーでの展覧会開催ということで、一層期待してしまうよ。

まずは松谷武判の経歴を調べよう。(展覧会のサイトより抜粋)

1937 大阪市阿倍野区生まれ
1951 結核を発病
大阪市立工芸高校を2年で中退
1959 結核が全快
1963 具体美術協会会員となり、グタイピナコテカで個展開催
1966 フランス政府留学生選抜第1回毎日美術コンクールで一席を得て渡仏
1970 モンパルナスのシルクスクリーンの版画工房に移る
2017 第57回ヴェネチア・ビエンナーレに出品
2019 パリ、ポンピドゥー・センターで回顧展

今年87歳の松谷武判、現役で活動中なんだよね。
「具体」から出発してフランスでも認められたアーティストだったとは!
ポンピドゥー・センターで回顧展まで開催しているなんて、素晴らしい経歴の持ち主だよ。
ROCKHURRAHとワクワクしながら初台に向かったのである。

東京オペラシティアートギャラリーには、2022年8月の「ライアン・ガンダー展」以来、約2年ぶりの訪問になるよ。
予約の必要がない美術館で、思い立った時に立ち寄れる気軽さも良いよね!
いつも通り全く並ぶことなく、すんなりチケットを購入し会場入口に向かう。
すべて撮影可能だって、良かった!(笑)
展覧会は制作年順に並んでいるようだけど、全くキャプションが提示されていない。
受付で渡された作品リストには詳細が載っているけれど、鑑賞しながら確認するのは難しいかも。
載せたのはタイトル「作品-18」で1961年の作品。
キャンパスに木材や取っ手のような物が配置されている。
真っ赤なバックが目を引くよね。
観た瞬間にデヴィッド・リンチの絵画作品を連想したSNAKEPIPEは、思わず駆け寄ってしまったほど。(笑)
とても好みの作品だよ!

仕切りを抜けて次の部屋に進むと、そこには奇妙な形が張り付いた作品が並んでいた。
嬉しくなり笑みがこぼれるSNAKEPIPE。
「盲獣だね」
ROCKHURRAHが言う。
江戸川乱歩の小説「盲獣」に登場する彫刻作品を連想するのも納得だよ。
これはボンドを使用した作品とのこと。
球体が弾けて中身が出てきたような不思議な造形が素晴らしい!
「盲獣」のように、触ってみたくなるよ。
1960年代に「具体」で活動していた頃に発表された作品だという。
制作風景が分かる動画を載せてみよう。

松谷武判が英語で作品について説明しているところに驚く。
これだけでも十分国際的だよね!
更に接着剤に息を吹き込んで膨らませ、立体作品にしていることにもびっくり。
「私はこれを1962年から続けている」
と動画の中で語っているけれど、その方法を思いついたこともwonderfulだよね。(急に英語入れてみた)
面白いアーティストだなあ!(笑)

1966年の「作品66-2」は中央のボンドが今にも垂れ落ちそう!
横から観察すると「こんもり」盛り上がっていて、何か産まれてきそうな雰囲気。
ピヨピヨとかわいい小鳥が出てくるというよりは、未知の生物が似合いそうだよ。
もしくは大量の昆虫とかね。(笑)
不気味さと緊張感と美しさが混在している、もぞもぞした感覚は初めてかも。
まだ2つ目の部屋なのに、松谷武判の作品に興奮してしまう。
続きも観たいけど、まだその場にとどまっていたい気持ちだよ!
この作品を制作した年に、松谷武判はフランスに渡っているんだね。

1970年代の作品。
松谷武判はあまりタイトルに意味を含ませていないようなので、はっきり分からなくても問題ないのかな。
花札の月みたいな構図に途切れた四角形が斜めに刺さっている。
シンプルで力強いよね!
フランク・ステラを思わせるミニマル・アート。
デッサンのような鉛筆画も展示されていて、試行錯誤したのかもしれない。
抽象絵画は、色、形、構図で決まると思うので、納得いくまで考えるのかな。

カラフルだったシルクスクリーン作品などを鑑賞した後、次の部屋に移ると、そこには漆黒の世界が待ち受けていた。
鉛筆の黒は、鈍い光を放っていてきれいだね。
黒色一色だけの作品だけが展示されていて、シックでオシャレ!
SNAKEPIPは黒色が好きなので、とても落ち着く空間だったよ。
「グラファイトにホワイトスピリットを使用した」と説明されているので、意味を調べておこう。
グラファイトとは「石墨(黒鉛)」のことで、炭素の仲間なんだとか。
ホワイトスピリットはお酒ではなく(笑)、低臭で環境面の影響が少ない溶剤とのこと。
鉛筆で描いた後、ホワイトスピリットを流しているみたいだよ。
ボンドやホワイトスピリットを作品に使用する発想力がすごいね!

2023年の作品「丸い丘」は、緑と紫が使用されているよ。
制作している動画が会場に流れていた。
助手(?)の女性が、松谷武判にお伺いを立てながらマスキングテープを貼ったり、キャンバスを傾けたりして手伝っている。
最初の動画で松谷武判が話していたように「偶然性」に重きを置いているようで、完成を思い描いて制作しているように見えなかったよ。
動画の中で「最初からこうなることを計算されていたのですか?」のような質問を受けても、はっきり「計算した」とは答えてなかったから。(笑)
感覚的に制作しているんだね!

3階から4階に上がる階段脇に展示されていた最新作「ichi」は、松谷武判のパフォーマンスを観ないと意味が分からないかも。
上に載せた動画は、今回の展覧会における「こけら落とし」の様子。
カツンカツンと杖をつきながら登場する松谷武判。
両サイドの脚立から布を持ち上げる女性2人に、布の上げ下げを指示する。
横に大きく「一」と描き、パンと手を叩き、パフォーマンス終了!
この動画を観て笑い転げてしまったSNAKEPIPEだよ。
さすが関西人、笑かしてくれるね!(笑)

松谷武判の全貌を紹介してくれた展覧会、作品数も多く、見応え十分だった。
60年代から一貫して抽象の作品を制作し続けている、ブレない姿勢にも感服したよ!
これからも制作を続けて欲しいね。
行って良かった展覧会だよ。(笑)

マルセル・デュシャンを考える 鑑賞

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【カスヤの森現代美術館入口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2024年9月に表参道のジャイルギャラリーで鑑賞した「ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展」をまとめたブログで、「若江漢字が創設した『カスヤの森現代美術館』も気になる」と書いたSNAKEPIPE。
調べてみると現在開催されているのは「開館30周年記念 マルセル・デュシャンを考える」という企画展とのこと。
興味深い展示なので、訪問の計画を立てる。

カスヤの森現代美術館へのアクセスは、JR横須賀線衣笠駅より徒歩15分とのこと。
衣笠駅というのは「これっきりこれっきりもぉ〜これっきりですかぁ〜」で有名な(?)横須賀駅の隣駅で、ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも初めて訪れる場所。
10月の三連休を利用し、とても天気の良い日に行ってみる。
行楽日和だったためか、北鎌倉駅、鎌倉駅でごっそり観光客が降りた後の電車内はガラガラ。
衣笠駅で電車から降りる人はほとんどいなかったようだ。
改札を抜けて歩き始める。

カスヤの森現代美術館は、1994年にオープンした私設の美術館だという。
国立や市立の美術館や博物館は知っているけれど、個人が開設するというのは聞いたことがないかも。
ROCKHURRAHに道順を検索してもらい、テクテク歩いていく。
民家しか並んでいないので、本当に美術館に向かっているのか不安になってしまう。
ようやく美術館の看板を発見!
迷いながら進んでいたので、長い距離だった気がするよ。(笑)

受付の男性から館内のマップをもらい、いざ展示室へ。
「開館30周年記念」と銘打っている企画展だけれど、少々こじんまりしている。
マルセル・デュシャンの「トランクの箱」の複製が展示されていた。
2022年11月にアーチゾン美術館で開催された「Art in Box マルセル・デュシャンの《トランクの箱》とその後」で、実物を鑑賞しているROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
石橋財団とは規模が違うので、レプリカやデュシャンへのオマージュ作品の展示は仕方ないかな?

デュシャンのシルクスクリーンを使ったセルフ・ポートレート。
若江漢字の作品がガラスに写りこんでいるね。
今までデュシャンのシルクスクリーン作品は観たことなかったので、新鮮だった。
もう一点、ブルーと赤のハートがプリントされた作品もあったよ。
あのハートの缶バッチあったら欲しかったなあ。(笑)
デュシャンの「大ガラス」からインスパイアされた若江漢字の作品群も色合いが鮮やかで目を引いたよ。
チェス・セットの作品はシンプルで美しかった!
デュシャンが晩年チェスに没頭していたというエピソードは有名だよね。
SNAKEPIPEもチェスをやってみたくなったよ。(笑)

2階の会場に入ると、そこはヨーゼフ・ボイスの部屋だった。
若江漢字と現在カスヤの森現代美術館館長である妻・若江栄戽は、1975年から1年間ドイツに滞在していたという。
そこで最初にボイスのサインが入った黒板消しを7千円くらいで手に入れたことから、ボイスのコレクションが始まったという話がネットに載っていた。
日用品にサインを入れる、いわゆるレディ・メイドがアートとして認知されることになったのはデュシャンのおかげ。
ここでデュシャンとボイスがつながってくるよね。

ボイスがパフォーマンスで用いた物品やメッセージなどをガラスケースに並べていた作品「ヴィトリーヌ」の隣に、映像が流れている。
コヨーテの鳴き声を真似てボイスが叫んでいるシーンが印象的だったので、ROCKHURRAHとじっくり鑑賞する。
ピアノの演奏とボイスのヴォイス(笑)が絡み合い、エキサイティングなパフォーマンスが繰り広げられていたんだよね!
「これは1984年に来日した時、草月ホールで行われたパフォーマンスなんですよ」
背後にいた女性が説明してくれる。
この方はもしかしたら館長の若江栄戽さんでは?
ジャイル・ギャラリーでボイス展を鑑賞したことを告げると、嬉しそうに微笑んでくれた。

「外には別の展示室もありますから、ご覧ください」
2000坪の敷地内に別館が点在している。
ROOM2には若江漢字の作品群が展示されていた。
載せたのは1974年の「見える事と視えること_ 釘II」という作品。
様々な物に釘が刺さっていて、抑圧や封印などの単語が頭に浮かぶ。
先日ジャイル・ギャラリーで鑑賞した6点組作品「気圧」もカッコ良かったし、SNAKEPIPEの好み!
立体作品も制作しているので、もっと作品を観てみたいと思ったよ。

松澤宥の作品が展示されていたのはROOM1。
1964年に「オブジェを消せ」という啓示を受け、それ以降物体としての作品制作をやめて言語による作品を作っていたというコンセプチュアル・アーティストだという。
言語によるアートというのは初めて知るタイプの作品だよ。
画像に「言明」や「公案」といった文字が見えるように、政治的な文言がつづられていたよ。
「会田誠の檄は、このパロディだったのかもね」
ROCKHURRAHに言われて「なるほど」と思ったSNAKEPIPE。
ブラック・ユーモア好きの会田誠なら、やっててもおかしくないかも。
それにしてもパッと記憶を蘇らせたROCKHURRAH、エライ!(笑)

ROOM3には、ナム・ジュン・パイクの作品が展示されていた。
1986年に開催された国際平和展のオープニング・イベントで、山下洋輔とのジョイント・コンサートが行われ、その際使用されたピアノが作品として制作されたという。
下のテレビにはイベントの様子が流されていた。
山下洋輔とナム・ジュン・パイクが似て見えて、たまにどっちだか分からなくなってしまったよ。(笑)
壁面にはナム・ジュン・パイクの代名詞ともいえるビデオ・アートも展示されていて、嬉しかった。
リアルタイムでは鑑賞していないからね!

すべての展示室を鑑賞し終わり、竹林を散策する。
木漏れ日が差し、サワサワと竹の葉が揺らいでいる中を歩くのは、とても気持ちが良かった。
広大な森の中には、無数の石仏や涅槃像などが配置されている。
宮脇愛子の彫刻作品の展示もあり、景色に溶け込んでいたよ。
こんなに素敵な竹林があるなんて、羨ましい環境だよね!

カスヤの森現代美術館を創設した若江漢字は、ヨーゼフ・ボイスの足型を取った人物として有名なんだとか。
1983年、デュッセルドルフにあるボイスのアトリエを訪れ、石膏で型を取っている画像がネットに載っていた。
その時の足型も森の中に展示されていたよ。
ボイスに直接会い、文字通り肌に触れたことがある人物ってことだよね!
若江漢字、すごい。(笑)
落ち葉と水が効果的な一枚を撮らせてもらったよ!

竹林の散策を終え、とても清々しい気分になる。
「とても楽しかったです」
館長に感想を言うと、嬉しそうに笑ってくれた。
美術館にはキジトラの親子が暮らしていることを教えてもらった。
館長がとても気さくな方なので、ついおしゃべりしてしまうよ。
出口の扉を開けると、猫ちゃんがお見送りしてくれて、とてもかわいかった!(笑)

カスヤの森現代美術館は、難解と言われるボイスのコレクションを常設展示していることに驚いた。
多くの人に門戸を開くタイプのアートではないからね。(笑)
開設して30周年を迎えていることが素晴らしいし、これからも続けて欲しいと思ったよ。
なんといっても竹林が素敵だったね。
面白そうな企画があったら、また足を運んでみよう!