SNAKEPIPE MUSEUM #08 Michael Kenna

【世界の果てまで俺を連れてってくれるか?】

SNAKEPIPE WROTE:

今日のSNAKEPIPE MUSEUMはマイケル・ケンナを取り上げてみたいと思う。
マイケル・ケンナは風景写真家だからSNAKEPIPEが好きなのは珍しい、と思われる方も多いだろうね?
確かにマイケル・ケンナは自然写真が有名だもんね。
ただ写真の中には無機物と自然の調和、のようなモチーフもあるんだよね。
無機物も自然の一部と考えてるように感じられるのだ。
その点がSNAKEPIPEと同じ!(笑)
以前洋書で写真集を観た瞬間に「いい!」と思い、即決で買ってしまったことがある。
お値段は確か1万円近かったから高額だったのに…。
決してお金持ちとは言えないSNAKEPIPEに購入決断させるとは!
恐るべし、マイケル・ケンナ!(笑)

マイケル・ケンナは1953年イギリス生まれ。
現在はワシントン州のシアトル在住とのこと。
世界中を旅して風景を撮影している写真家である。
ハッセルブラッドの6×6カメラを使うことが多いらしい。
世界的にもかなり有名で、いくつか賞も受賞しているよう。
日本では北海道を撮影していて、写真集「HOKKAIDO」(まんま!)を出しているみたい。
撮影された特徴的なミズナラの木は「ケンナの木」としてファンが多かったとか。
ミズナラ?
おおっ!我らが鳥飼否宇先生の「樹霊」の中にも出てきたね!
残念ながらその「ケンナの木」はもう伐採されちゃったらしいけどね。

マイケル・ケンナの写真の特徴はなんといっても圧倒的な静謐感。
音のない、シーンとした世界。
人が登場しないため、未来的な印象を受ける。
それは人類が滅亡した後の終末的未来?
言うなればSFの領域になるのかもしれない。
マイケル・ケンナがいわゆる一般的な風景写真家と違うのはここなんだろうね。

燃えるような緑がキレイとか咲き誇る美しい花などという風景写真ならば、誰でもある程度の撮影はできるだろう。
そして実際に「〇〇フォトサロン」みたいなギャラリーではその手の写真展が今でもたくさん開催されているし。
撮影側も鑑賞側のどちらにとっても「最も害のない」ジャンルだろうね。
カレンダー用の写真を観ても、だいたい似た雰囲気だし。(笑)

観て癒しを感じる写真というのは人それぞれなので、上に書いたようなカレンダー的風景写真を観て清々しい気分になる人も多くいるだろう。
SNAKEPIPEだったら、と考えてみるとパッと浮かんだのは例えばマイケル・ケンナの空っぽの風景なんだよね。
なんにもなくてガラーンとした、人のいない場所。
以前取り上げたスティーブン・ショアーの時にも似たような文章を書いていたけれど、どうやらSNAEKPIPEは人がいない風景が好きなんだね。(笑)
同じように「空っぽ」の写真家とはいっても、スティーブン・ショアーの写真にはノスタルジーがあるけれど、マイケル・ケンナにはない。
人を寄せ付けない、いやそれ以上に拒絶しているような冷たさがあるんだよね。
何百年後なのか何千年後なのか分からないけど、かつて人類がいて文明があった形跡だけを撮影した写真という感じ。
だからといって世紀末的な絶望感は持たない。
一回りして、またスタートに戻ったような気分である。
これってもしかしたら輪廻転生?
はたまた雑念のない忘我の境地?(笑)
そんなことを考えながら、癒されるSNAKEPIPEなのである。

SNAKEPIPE MUSEUM #07 Francis Bacon

【フランシス・ベイコンの作品。3枚並んだレイアウトがお好みね。】

SNAKEPIPE WROTE:

ずっと欲しいと思いながらも未だに画集を所持していない画家の一人にフランシス・ベイコンがいる。
フランシス・ベイコンと聞いて、まず初めにルネサンス期の哲学者を思い浮かべたそこのあなた!
エライ!ちゃんと世界史の勉強してたんだね。
「知識は力なり」、帰納法。
テストに出たかな?(笑)
今回ブログに書きたいと思ってるのは哲学者じゃなくて画家のほう。
どうやらその哲学者のベイコンとは、本当に血縁みたいなんだけどね。

画家、フランシス・ベイコンを初めて知ったのは高校の美術の教科書だったろうか。
法王シリーズが一枚紹介されていた記憶がある。
解説は特に何も書かれていなくて、絵だけが掲載されていた。
その時には特別な興味を持つことはなかったベイコンに再び出会うのは、デヴィッド・リンチのおかげであった。(←知り合いみたいな書き方!)

90年代初頭に世界的ブームを巻き起こした「ツイン・ピークス」の解説の中にベイコンの絵を発見するのである。
記憶によれば解説を担当したのはリンチ評論家の滝本誠氏。
「ツイン・ピークス」で、牢獄に入れられたボビーが鉄柵を掴みながら雄叫びを上げるシーンがある。
その時に撮られた映像は叫んでいる口のアップ。
滝本誠氏ははその映像とベイコンの絵画との比較について考察していた。
デヴィッド・リンチが好きな画家としてフランシス・ベイコンの名前を即答していることもその時に初めて知る。
そして上述した美術の教科書を思い出したのである。
まるで拷問を受けている最中のような、椅子に括りつけられ、痛みに耐え切れずに叫び声を上げている「あの絵」。
なぜだかその時に
「そうか、そうだったんだ。なるへそ!」
と自分なりに妙な納得をしたSNAKEPIPE。(笑)
一枚しか知らなかったベイコンについて、もっと知りたいと感じた瞬間であった。

ここでベイコンの略歴について書いてみようか。

1909年アイルランド生まれ。1992年没。
27歳の頃から絵を描き始める。
「磔刑図」「教皇」「頭部」シリーズなどが有名。
20世紀を代表する画家の一人である。

簡単な説明だとこれだけでいいのかもしれないけど、ベイコンについて書きたいと思う時に忘れちゃならないのがベイコンが同性愛者だったということかな。
それから独学で絵を習得したようで、「~派」というような流派に属していないという点も重要かもしれないね。
だからパロディもやる、通常なら描かないようなモチーフも描く「なんでもアリ」なんだね。(笑)

ベイコンの絵のほとんどには人物が描かれている。
それが単なる肖像画ではなく、ベイコン独自の歪んだ味付けがされているところがポイント。
恐怖、苦痛、叫び、苦しみなど、ハッピーな感情とは逆の部分を表現しているところがベイコンなのである。
現在進行中の映像を一時停止させたような絵。
もしくは動きを連続して見せるために3枚一組にしてワンセット、という表現方法。
ベイコンの絵はまるで写真だったり、映画のスナップみたいな感じなんだよね。

そしてほとんどが室内の絵。
ケージ(檻)の中で椅子に座っている絵も多い。
そしてそこで苦痛を感じている人物。
部屋の中での檻の中にいるということは、ものすごく簡単に考えると肉体の中の精神、みたいな感じかな。
ストレス感じて苦しんでる絵、ってことなのかなと素人のSNAKEPIPEは考えるけど?
えっ、そんなに簡単じゃないって?
じゃ、ま、そこらへんは専門の評論家の方に解説をお願いして。(笑)

評論とか解説などを抜きにして、ベイコンの絵を部屋に飾りたいと思うSNAKEPIPE。
実際ポストカードを数点飾ってたしね。
それにしてもイギリスのテイト・ギャラリーに「ベイコンの部屋」みたいな一室があるというほど、イギリスを代表する画家のベイコンだけれど、ある一部の人にだけ好まれるような画家(画風)のような気がするな。
ドロリとしてるし、窮屈な感じもするし、グロテスクな部分もあるし。
「なんじゃこりゃ」と思う人が多くても不思議じゃないんだけどね?
美術的な評価と鑑賞者の好みがイコールとは限らないかもしれない。
世界中にある、もっと残酷だったり目を覆いたくなるような映像に慣れたせいなのかもしれない。
特殊な画家、とされないほうが画集や情報が手に入りやすくなったりするからいいのかな。(笑)

1998年に「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」という映画が公開された。
これはベイコンの伝記映画で、すでに画家として活動していた頃からの半生を描いた作品である。
実はSNAKEPIPE、ちゃんと映画館に観に行ったんだよね。(笑)
一言で感想を言うなら
「ベイコンってすっごい嫌なヤツ!」
である。
かなり性格が悪い。
歪んでいる。
画家じゃなかったら「嫌なジジイ」と言われていたに違いない。(笑)
アーティストだったら偏屈でもオッケー、個性とされることが多いからね。

ベイコン役の俳優さんがベイコンに非常に良く似ていて、嫌なヤツを見事に演じていたのが素晴らしかった。(褒めてるんだよ!)
泥棒に入ってきた男を愛人にしてしまう、という泥棒のほうが驚いてしまう展開。
その愛人と生活を共にするようになるベイコン。
愛人への意地悪、全開!(笑)
この映画を観て、ベイコンの作品について理解を深めることはできなかった。
さっき言ったようなベイコンの人柄について解っただけ。
音楽を坂本龍一が担当していて、思わずサントラ買っちゃったSNAKEPIPEだったな。

画家の性格はさておき。
今回ベイコンについて書いているうちにやっぱり画集が欲しくなってきたよ。
この前本屋で見つけたのは、ものすごい分厚い画集で確か金額が万を超えてたんだよねー。
衝動買いできなかったSNAKEPIPE。(笑)
どこかで展覧会やってくれないかなあ。
大量の現物を目の前で観たいものである。

SNAKEPIPE MUSEUM #06 Margaret Bourke-White

【巨大なコンクリートの建造物。フォート・ペック・ダムだって。カッコいい!】

SNAKEPIPE WROTE:

フォトジャーナリスト、と聞いてまず初めに思い浮かべるのは誰だろう。
ロバート・キャパユージン・スミスセバスチャン・サルガドとか?
日本人だったら沢田教一桃井和馬、雑賀辰巳(SPEED GRAPHER!)もしくは現在流行りの(?)戦場カメラマン・渡部陽一あたりか。
例外はいるけれど、有名なのはほとんどが1970年より前に活躍したカメラマンだろうね。
今回、具体的に取り上げたいと思うのは1930年代から1950年代までにフォトジャーナリズムの世界で評価が高かった人物についてである。

百聞は一見にしかず、の言葉通りに一枚の写真が力を発揮した時代。
テレビも、ましてやインターネットなんて存在しなかった頃に画像の魅力は計り知れなかったに違いない。
1936年にアメリカで創刊された写真を中心にした雑誌「LIFE」はその象徴的な存在と言えるだろう。
「LIFE」紙面を飾った錚々たるカメラマンはほぼ全員が男性。
ま、カメラ’マン’だし。(笑)
フォトジャーナリストって世界中を飛び回り、危険な場所で目を覆いたくなるような悲惨な状況などを写真におさめる職業というイメージだよね?
まさに「男の世界」って感じ。
ところがそんな「男の世界」で大活躍した女性がいたからたまげちゃうよね!

随分前のことだからタイトルは失念してしまったけれど、恐らく「ライフ」に掲載された写真を集めたような写真集を観ていたんだと思う。
ドキュメンタリー要素が強い写真群に混ざって、インダストリアルで構成美を感じる写真がある。
「これ、いい!」「これも好き!」
と思って作者の名前を確認すると必ずMargaret Bourke-Whiteと書いてある。
マーガレット?えっ、女性?
いやあ、まさかこんな男性的な写真を女性が撮るなんてことはないよね。
と思っていたのに、本当に作者は女性だったのである。

上の写真を撮影したのがマーガレット・バーク=ホワイト女史。
「ライフ」の創刊号表紙を飾った写真である。
マーガレット・バーク=ホワイトは1904年ニューヨーク生まれ。
紹介文を読んでいると「the first female」という言葉がズラリと並ぶ。
「女性初」の「ライフ」写真家、「女性初」の従軍記者、「女性初」の戦場写真家、そして「世界初」ソ連の工場写真を撮った人物、という次第。
なんたって20世紀初頭に「男の世界」へ行ったパイオニアだもんね!
ちょっと前に「ガテン系」に行く女性が話題になったことがあったけど、もっとずっと前にやっちゃってたんだね、マーガレット!(笑)

どうやらマーガレット女史は初めから写真に夢中だったようで。
写真を勉強したいがために大学をいくつも渡り歩いたらしい。
ものすごい情熱家だよね!
最初は商業写真の世界に入ったようなんだけど、その時のお得意様が製鉄会社。
おお!鉄!スティール!インダストリアルーーー!(笑)
それを知って大きくうなずいてしまう。
だってマーガレット女史の写真には無機質な物が多いから。
だからSNAKEPIPEの好みなんだなあ、と納得。

いろいろ写真観てたら、なんと戦闘機と共に写っているマーガレット女史を発見!
左の写真1943年、第二次世界大戦中に撮影されたセルフポートレイトらしい。
(多分)B-3の上下を着込んで、左手にはゴーグル付きの飛行帽、右手には大型カメラを持っている。
40年代に兵士じゃないのに女性がミリタリーファッションを着てたなんて、更にびっくり!
きっと飛行機に乗って写真撮りまくってたんだろうな。
くーっ、やってくれるね、マーガレットったら!
写真家としても素敵だけど、ミリタリーファッションの着こなしまでお見事。
しかも女優か、というようなルックスだし!
益々憧れちゃうよね!
ワンピース」のルフィが「すっげえ!」と言いながら目をキラキラさせてる、あんな状態のSNAKEPIPEなのである。(笑)

マーガレット女史はカッコいい写真いっぱい撮ってるんだよね~。
コレクションできるなら、きっと何枚も購入しちゃうな!
とは言っても、マーガレット女史の全ての写真を購入したいというわけではない。
やっぱり前述したように、無機質でインダストリアルな構成美を誇る作品がお目当て!

今後もジャーナリズム寄りの作家について書くことがあるかもしれないけれど、SNAKEPIPEはジャーナリズムの是非や倫理、ましてやテロリズムや戦争そのものについて言及したいわけではないことを付け加えさせて頂く。
あくまでも作家の作品について書きたいだけだからね!

SNAKEPIPE MUSEUM #05 Stephen Shore

【この風景を懐かしいと感じてしまうSNAKEPIPEはアメリカ人か?(笑)】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のSNAKEPIPE MUSEUMは「ニュー・カラー」の写真家として有名なスティーブン・ショアーを取り上げてみたいと思う。

スティーブン・ショアーは1947年ニューヨーク生まれのアメリカ人。
6歳で写真の暗室作業を始め、17歳の時にはアンディ・ウォーホルのスタジオ「ファクトリー」でたむろする人物を撮っていた、というから非常に恵まれた環境にお育ちで!(笑)
1972年頃より4×5や8×10の大型カメラで「ロード・ムービー」ならぬ「ロード・フォト」(というのか)を展開、アメリカやカナダの風景をカラーで撮影している写真家である。

実を言うとSNAKEPIPEは特別ショアーに思い入れがあるわけでもなく、写真集も所持していなければ写真展を観たこともないんだな。(笑)
たまに頭の中にフッと浮かんでは消える写真の中にショアーの色があるのだ。
そう、ショアーの写真の特徴の一つが色。
一番初めにニュー・カラーの写真家と書いたように、独特の色使いをする。
フィルターを使ってやや赤味を強めているために、それが昔っぽいなんとも懐かしい雰囲気を醸し出す。

そしてもう一つの特徴は「空っぽ」。
上の写真には人と犬が写っているけれど、景色の中に溶け込んでいるため存在感は薄い。
どことなく寂寥感があり胸がしめつけられるような感じがする。
あの時のあの空気、あの匂いを一瞬にして思い出させるような。
子供の頃にタイムワープする感覚に近いのかもしれない。
なんとも甘酸っぱくて、せつないよねえ。

ロバート・フランクの有名な写真に、まっすぐに伸びる道路を縦位置で切り取った作品がある。
あれは確かジャック・ケルアックの小説「路上」に使われていたような。
あの写真が撮影されたのが1955年らしいので、アメリカ人っていうのは50年代から「ロード」系が好みなんだね。
ケルアックの小説が1957年。
アメリカ大陸は広いから「放浪」とか「横断」が可能だし、車で行かれるとこまで行ってみようや!なんて若者文化が発生するのも納得。
日本ではロードムービーって難しいもんね。(笑)

ノーマンズランド (no man’s land)という言葉がある。
これは実際にオクラホマにある土地の名前だったり、軍事用語だったり、映画のタイトルにも使用されているようだけど、SNAKEPIPEが使いたいのは言葉通りの意味合いね。
人がいない、荒涼とした場所。
だだっ広くて、ずっと先のほうまで見通せる、歩いても歩いても変化のない風景。
人がいた気配はあるけれども、全く姿を見かけない。
ヴィム・ヴェンダースの作品「パリ・テキサス」の中に似た場面があることを思い出す。
SNAKEPIPEにはそんな寂しい土地への憧れがある。
そこで写真を撮ってみたい、とも思う。
その憧れを体験したのがショアーなんだろうね。(笑)

絶版となっていたショアーの写真集が手に入るらしい!
お値段的にも手が出せないほどではないからGETしたいな。
アメリカ人のノスタルジア。
ちょっとおセンチで感傷的な「アメリカ人の孤独」を垣間見ることができるような気がするからね。