永遠に僕のもの 鑑賞

20190908 13
【映画館の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

先週はギンザ・グラフィック・ギャラリーで「Sculptural Type展」を鑑賞した記事を書いたよね。
文中にもあるように、実はその前に映画を鑑賞していたROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
今週はその映画についてまとめてみよう。

トレイラーを載せてみたよ。
映画のタイトルは「永遠に僕のもの(原題:El Angel 2018年)」。
まずは、あらすじを書いておこうか。(Filmarks映画より)

ブロンドの巻き毛に透き通る瞳、艶やかに濡れた唇、磁器のように滑らかな白い肌。
神様が愛をこめて創ったとしか思えない美しすぎる17歳の少年、カルリートス。
彼は欲しい物は何でも手に入れ、目障りな者は誰でも殺す。
息をするように、ダンスを踊るように、ナチュラルに優雅に。
やがて新しい学校で会った、荒々しい魅力を放つラモンと意気投合したカルリートスは、二人で様々な犯罪に手を染めていく。
だが、カルリートスは、どんなに悪事を重ねても満たされない想いに気づき始める。

1971年のアルゼンチン、ブエノス・アイレスでの実話をベースにした映画なんだよね。
美少年のシリアルキラーという点も驚きの真実!
11件の殺人、17件の強盗などを犯し「死の天使」と呼ばれた、カルロス・エドゥアルド・ロブレド・プッチをモデルにしているという。
アルゼンチンでは有名な事件らしいけど、SNAKEPIPEは全く知らなかったよ。
シリアルキラーには精通しているつもりだったのに、失格だわ。
画像がその本人らしいんだけど、まるでアイドルだよね!
こんなに美形に生まれたのに、どうして犯罪に手を染めてしまったんだろうか。
他の道はなかったのかなあ?
カルロスには、きっと「プリズン・グルーピー」(犯罪者を崇拝する人)がたくさんいただろうな。
残忍な犯罪者だけど、画像だけ見るとファンができてもおかしくない容姿だもんね。

ペドロ・アルモドバルが、この映画をプロデュースしたと聞いて納得しちゃうよね。
同性愛者を公言しているし、監督した映画には必ずLGBT系の人物が登場する。
バッド・エデュケーション(原題:La Mala Educación 2004年)」では、女装したガエル・ガルシア・ベルナルを登場させたこともあったし。
その時の感想は「好き好きアーツ!#23 Pedro Almodóvar part2」にあるので、ご参照くだされ! 
画像は映画のプレミアに参加したメルセデス・モラーンと一緒のアルモドバル。
ロマンス・グレーで貫禄がある風貌になってるね!

それでは映画の感想をまとめていこうか。
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未鑑賞の方はご注意ください

主役のカルリートス。
実在のカルロスを意識した髪型や服装のせいもあり、画像検索すると区別がつかないほど似て蝶!(笑)
愛らしい童顔で、悪事を働き、平気で嘘をつく。
盗んだペンダントを「母の若い頃の物だけど」と言ってガールフレンドに渡す。
頭の回転が速いのか、嘘が巧妙なんだよね。
恐らく最初は冒険のつもりで留守宅に侵入し、そこで戦利品を得たんだろう。
少年院に入っていたというセリフがあったので、警察に捕まったこともあるようだけど、空き巣強盗はやめられない。
精神的に子供なので、短絡的に犯行に及び、善悪の区別がつかない。
人を殺すことに、何のためらいもない。
はっ!語尾に「ない」を3回も続けてしまったよ!(笑)
ピストルをあっさり撃って、へっちゃらな顔をしている。
人間的な感情を持っていないタイプのように見えるんだよね。
相棒のラモンに対する感情だけ、表れていたようだったけど。
単独で行動している頃は、小さな盗みで満足していたけれど、泥棒仲間と一緒になると犯行がエスカレートしていく。
もしかしたら「認められたい」と気持ちがあったのかもしれないよね。
歯止めがきかなくなって、仲間から見限られてしまう始末。
裕福ではなくても、良識のある家庭で育てられているカルリートスなのにね?
好物はお母さんが作ってくれる「ミラノ風カツレツ」。
どうして道を踏み外してしまったのか、疑問が残るよ。

カルリートスのお母さん役を、アルモドバル監督作品では常連のセシリア・ロスが演じていたよ。
最近観たセシリア・ロスといえば「アイム・ソー・エキサイテッド!(原題:Los amantes pasajeros)」なので、2013年なのかな。
5年程の間に、こんなに年齢が違ってみえるとは!
カルリートスの年齢が17歳から20歳として考えると、お母さんとしては老け過ぎかな?(笑)
息子を真っ当な道に戻すことができなかったのは、とても残念だね。

カルリートスの相棒、ラモン。
女の子みたいに見えるカルリートスに対して、男臭い風貌なんだよね。
恐らく映画のタイトルである「永遠に僕のもの」は、ラモンへの気持ちを表現しているのかなと思ったSNAKEPIPEだよ。
カルリートスはラモンに一目惚れしたようで、ちょっかいを出し、わざとケンカを売ることで近づいていく。
ラモン一家は泥棒を稼業にしている家庭なんだよね。
カルリートスも参加して、荒稼ぎをしていくことになる。
お金は稼いでいるけれど、ラモンの気持ちが自分に向くことはない。
カルリートスとラモンの怪しいシーンは何回かあって、観ている方が「じれったく」なってしまった。(笑)
カルリートスの恋心を考えると、成就させてあげたくなっちゃうんだよねえ。
ラモンにはその気は全くなかったのかなあ。

ラモンのお父さん、ホセ。
カルリートスの度胸と犯罪者としての素質(?)を見抜き、行動を共にする。
殺人に手を染めることはないようで、そういった意味での常識は持ち合わせている人物。
ホセがカルリートスにピストルの撃ち方を教えなければ、カルリートスがシリアルキラーになることもなかったのかもしれないよね。
それにしてもホセの衝撃的な「はみ出た」シーン、思わず笑ってしまったよ。(笑)

ラモンの母親であり、ホセの妻アナ。
旦那が泥棒であり、息子のラモンも同行していることを当然承知しているんだよね。
犯罪一家の家庭って、本当にあるのかな。
SNAKEPIPEは未鑑賞だけど、2018年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した「万引き家族」みたいな感じかな。
母親のアナは、カルリートスの美貌にクラクラしちゃったのか、ちょっかいを出そうとするんだよね。
まるでその気がないカルリートスは「ご主人に悪いよ」とお断り。(笑)
こうした機転が、カルリートスの頭の良さなんだろうね。
そう言われるとアナも引き下がるしかないもんね。

泥棒に入った家に飾ってあった絵を、カルリートスが気に入って持ち帰るシーンがある。
この絵にSNAKEPIPEも興味を持ったよ。
強烈な赤が印象的で、邪悪な雰囲気なんだよね。
SNAKEPIPE MUSEUMに所蔵したくなるよ。(笑)
アルモドバル監督作品には、アートが登場することが多いんだけど、今回も室内の装飾や絵画にその傾向があったね。
とは言っても、今回はアルゼンチンのルイス・オルテガが監督なんだけど。(笑)
恐らくこの監督の作品は初めてなんじゃないかな。
アルゼンチン映画で知っているのは「笑う故郷(原題:El ciudadano ilustre 2016年)」と「人生スイッチ(原題:Relatos salvajes 2014年)」くらいだもん。
「人生スイッチ」もアルモドバルが製作で関わっていたよね。

「永遠に僕のもの」は、実話を元にした映画だったけれど、クライム・ムービーというよりは、ゲイ映画として括ったほうがしっくりする感じがしたよ。
もっと強引に言ってしまえば、主人公カルリートスを演じたロレンソ・フェロのプロモーション・ビデオかな。
ちょっとぽっちゃりした幼児体型で、顔も丸くて子供のようだけど、実際には20歳だという。
「南米のディカプリオ」と噂されているらしいけど、どんな大人になっていくんだろうね。

映画館では、通常であればシリアルキラー物には興味がなさそうなのに、ロレンソ・フェロ目当てで鑑賞しているようなお客さんもいたようだったね。
男性が1人で来館している姿も目撃し、非常に気になったSNAKEPIPEだよ。
あの方々もロレンソ目的だったのかな。(笑)

モデルとなったカルロス・エドゥアルド・ロブレド・プッチは、現在67歳。
終身刑のため、服役中だという。
すでに45年以上、牢獄生活をしてるってことだよね。
どうやら同性愛者ではなかったようなので、映画で作られた設定になるみたい。
自分がモデルとなった映画が上映されていることに、どんな感想を持つのだろうか。

ペドロ・アルモドバルの新作に関するニュースがあるよ。

タイトルは「DOLOR Y GLORIA」。
アルモドバル監督の自伝的映画だという。
アントニオ・バンデラスやペネロペ・クルスの顔があるね!
日本公開はいつなんだろう?
今からとても楽しみだよ!(笑)

Sculptural Type 鑑賞

20190901 top
【毎度お馴染みの構図。ggg前を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

現在銀座グラフィックギャラリー(通称ggg)で開催されているのは、デンマークのデザイン会社であるKontrapunkt(コントラプンクト)による「Sculptural Type」展である。
タイポグラフィが大好物のROCKHURRAHは目ざとく展覧会を発見。
gggには2019年2月に「ポーラ・シェア:Serious Play」の鑑賞で訪れているので、約半年ぶりになるんだね。
ポーラ・シェアの展覧会も大満足だったことを思い出す。
今回展示されているコントラプンクトってどんな会社なんだろうね?

北欧デザイン、というフレーズはいつの頃から耳に馴染むようになったんだろう。
そしてそれは「色合いが美しく、センスの良い洗練されたデザイン」と同義語になっているんじゃないかな。
一言で言えば「オシャレ!」なデザインね。(笑)
インテリアや陶磁器、ファッションに至るまで、たくさんのメーカーが日本に進出している。
様々な場所で、北欧デザインを目にする機会が増えているよね!

コントラプンクトは英語だとcounterpoint、意味は「対位法」だという。
Wikipediaで調べると、音楽理論のひとつであり、複数の旋律を、それぞれの独立性を保ちつつ互いによく調和して重ね合わせる技法である、とのこと。 
多様な個性が一つのハーモニーを形作り、世界的に有名なデザイン会社になったということなんだろうね。
1985年の設立以来、政府機関、インフラ、NGO、文化団体から大企業に至るまで、多数のブランディングを手がけ、世界中のデザイン賞も多数受賞しているコントラプンクト。

私たちにとって、タイプ(書体)デザインは彫刻のように物語る一つの形であり、しかもそのストーリーはここで終わるのではありません

今回の展覧会の主旨を、コントラプンクトのデザインディレクターで代表取締役社長のボー・リネマン氏が一言でまとめている。
彫刻のような書体って、どんなことなんだろうね?

まだ暑い東京の夏、湿度も高く蒸した銀座をgggに向かうROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
実はこの日、映画を鑑賞した後でggg訪問、という順番になったんだよね。
鑑賞した映画については、次週感想をまとめる予定なので、お楽しみに!(笑)
前回のポーラ・シェアの時には道に迷ったSNAKEPIPEだったけれど、今回はすんなりと到着。
このギャラリーは過去にも撮影許可を確認したことがあるけれど、念の為、受付の女性に尋ねてみる。
オッケーとの返答だったので、バシバシ撮影させて頂こう!

今回の展示は、足元にあるフット・スイッチを踏むことにより、壁をスクリーンにしてフォントが現れる仕掛けがされていた。
フット・スイッチは5種類用意されていてフォントそのものを見せたり、使用例を映し出している。
コントラプンクトは、世界中からオファーを受けているようで、日本の企業のフォントも多数取り扱っているんだよね。

スポーツ・シューズで有名なアシックスタイガーのロゴも、コントラプンクトがデザインしていたとは!
丸みを帯びながらも、少しだけ縦長で、アルファベット同士が近く見えるフォント。
何気なく目にしていたので、じっくり見ていなかったことに気付く。
ロゴだけではなく、恐らくフォント全体をアシックス用に制作したんだろうね。
アシックスのHPをみると、商品名にも同じフォントが使用されているように見えたから。
それにしてもアシックスという社名が「Anima Sana in Corpore Sano(健全なる精神は健全なる身体にこそ宿るべし)」というラテン語から採用されていたという話を初めて知ったよ!

デンマークのレストラン「noma」のためにデザインされたタイプフェイス。 
これは英国の飲食業界誌が選ぶ『世界のベストレストラン50』で4年連続1位に輝いたレストランだという。
このフォントを制作するのに、かかった時間はたったの1週間だったというから驚いちゃうね。
短い時間でも有意義で価値のある仕事をした、とコントラプンクトのボー・リネマン氏が語っている記事を読んだよ。
手書きで有機的な形を作り、わざと不均等にして素朴さを出しているとのこと。
クライアントの個性やアピールポイントを、いかにフォントに表現するのか。
ものすごく重要な部分だろうね。

日本の化粧品ブランド資生堂が、2019年4月横浜みなとみらいに「資生堂グローバルイノベーションセンター」、通称S/PARKという美の複合体験施設をオープンさせたらしい。
「らしい」と書いたのは、SNAKEPIPEは全く知らなかったから!(笑)
2019年って今年のことじゃないの。
ものすごく最近の仕事ってことだったのね。
ここで使用されているフォントのデザインを請負ました、という紹介がされていたよ。
アルファベットを使用している国のデザイン会社は、漢字をどう処理するのか興味があったんだよね。
他の文字も見てみたいので、SNAKEPIPEも美の複合施設に行ったほうが良いかも。(笑)
コントラプンクトと関わるよりずっと前から使用されていた資生堂の「SHISEIDO」というロゴ・デザインの素晴らしさに、今更ながら気づいたよ。
「S」の文字が音符のように流れて斜めになったフォントは、大正時代に作成され、使用されているという。
ROCKHURRAH RECORDS憧れの1920年代はやっぱり良いね!(笑)
資生堂は、広告の世界でも中心的な存在になっている。
「美」を追求するメーカーは、やっぱりイメージ戦略ありき、なんだね。

「Danish」と名付けられたフォントが実にカッコ良かったんだよね!
アルファベットによって、次に続くフォントと「ひとつながり」に見えるような箇所もある。
右下に配置されている円形のデザイン、円形と直線のバランスが素晴らしいよね。
日本語だった場合には、直線部分を縦書きにしても面白いかもしれない。
デンマークのデザイン賞を受賞しているというのも納得!
こんなフォントを日常的に目にしているなんて羨ましい限り。(笑)
恐らく「デザイン・アワード受賞」の様子を表しているシーンだと思うんだけど、特別な説明がなかったので想像だよ。
立体的な「D」が金ピカに輝き、中央でぐるぐると回転する動画だったんだけど、静止画で失礼します。(笑)
バックには印象的な斜めに走った文字が並んでいるよね。
この斜めの雰囲気、ロシア構成主義っぽくてお気に入りだよ!

コントラプンクトは、文字を動かすという遊びも見せてくれた。
これは動画じゃないと伝わらないな。

東大阪市役所がコントラプンクトに依頼して作られたフォントの紹介ビデオなんだよね。 
今回の展覧会でも「HIGASHIOSAKA」として展示されていたよ。
隣の文字につながっていくタイプフェイスを、近畿大学と共同で開発したという。
動くことで、より一層面白さが増すよね!

展覧会でSNAKEPIPEが撮影した動画も載せておこうか。
まるで心臓の鼓動に合わせて、文字が胎動しているように見える。
文字が生きているっ!(笑)

フット・スイッチを踏むことで動きがでる、という展示方法もユニークだったし、TYPE(書体)の可能性について考えさせられる展覧会だった。
改めて周りにあるフォントを「まじまじ」と見てみたいと思っている。
日本にも「オシャレ!」で独創的なフォントがあるかもしれないよね!(笑)

SNAKEPIPE MUSEUM #52 Jody Fallon

【人間なのか動物なのか?もしくは怪物?!】

SNAKEPIPE WROTE:

今回は久しぶりにSNAKEPIPE MUSEUMをお届けしよう。
最近は展覧会に赴く事が多くて、アーティストを検索する時間が取れなかったんだよね。
たまには、と検索を始めたSNAKEPIPEの琴線に触れたのがJody Fallonの作品だった。

Jody Fallon(ジョディ・ファロン)は1971年、アメリカ合衆国ペンシルベニア生まれ。
アート系の学校に行ったわけではなく、近所の暗い野原や山、森を探索しながら、孤独な感情を表現する方法を探していたという。
その後、アメリカ海兵隊として沖縄にも来ていたらしい。
兵隊経験のある画家って、他にいるのかな?
1996年から2000年の間、ファロンは重要な3人のアーティストを見つけることになる。
フランク・フラゼッタ、ポール・レア、ロン・ウィングらの作品を通して、求めていた表現手段を探し出したという。
2000年以降、週末にペンシルベニアのスタジオでSFのイラストや彫刻を、イーストストラウズバーグの博物館でフラゼッタのイラストを勉強していたという。
漫画家で芸術家のロン・ウィングに師事し、芸術と絵画の哲学を発展させ、自分のスタイルを確立したジョディ・ファロン。
地元ペンシルベニアでの個展やグループ展、ニューヨークのギャラリーで作品が展示されている。
ネットでも販売しているようで、10インチ四方(25cm)の小さな作品で$350、日本円で約36,000円とのこと。
ジョディ・ファロンは現在もペンシルベニアに住み、作品制作を続けているという。

ジョディ・ファロンが心惹かれたアーティストの一人、ポール・レアの作品がこちら。
1950年代から80年代までパルプ本の表紙デザインをしたり、PLAYBOYなどの雑誌のイラストも手がけていたという。
小説の書評を読んでから本を購入するというよりは、表紙の絵を見て興味を持つことが多いんじゃないかな。
読者の気を引く、「そそる」表紙を描くのは大変だけど面白い仕事かもしれないね。
サイエンス・フィクションの世界を支配した、とまで言われたポール・レア。
1998年に亡くなるまで、活動していたという。
ポール・レアの作品も素晴らしいので、いつかブログで特集してみようかな!(笑)

ジョディ・ファロンもきっとポール・レアの作品を観て、ワクワクしたんだろうね。
似た雰囲気の作品もあるけれど、独自のセンスが光る、ちょっと不気味な作品も紹介していこう。

怪奇小説、幻想小説の先駆者であるアメリカの小説家、H.P.ラヴクラフト全集の表紙を手がけたジョディ・ファロン。
モノクロームで描かれた不気味な怪物(?)は、ラヴクラフトの小説にふさわしいように感じるよ。
と、言いながらも、実はほとんどラヴクラフトを読んだことないんだけど。(笑)
目標にしているアーティストが得意にしていた表紙の仕事を引き受けることは、きっとジョディ・ファロンにとって特別な意味を持っていただろうね。
他にもクラシックな小説の表紙を担当しているみたい。
どれも「おどろおどろ」しくて、きっと怖いんだろうと思わせることに成功しているよ!
もし本屋で見かけたら、手に取ること間違いなしだね。(笑)

ジョディ・ファロンのHPには、シリーズ毎に作品が載っている。
「Science Fiction」のシリーズは、まさにポール・レアの後継者と言うべき作品群を観ることができる。
レトロ・フューチャーという、懐古趣味的な未来像を表す言葉の通り、懐かしさを感じてしまう作品なんだよね。
このまま小説の表紙になったり、70年代のプログレッシヴ・ロック系のアルバム・ジャケットになっているような雰囲気。
実際プログレのバンドが、どんなジャケットを使用していたのかよく分かってないんだけどね。(笑)

SNAKEPIPEの琴線に触れたジョディ・ファロンの作品は「Imaginative Realism」というシリーズなんだよね。
この言葉も相反する単語が連なっていて、想像したものをリアルに描いた作品、という意味だと理解したけど、どうだろう?
夕暮れ時なのか、逆光になった人物(?)が、大きく口を開け、叫んでいる。
植物に棘があるのか、手から血が流れているように見える。
非常に不気味な絵で、歯しか見えない黒い物体が、まるでフランシス・ベーコンが描く人物のよう。
「孤独な感情を表現する方法を探していた」という、ジョディ・ファロンの自画像なのかもしれないね?

この作品も怖いよね!
背景がオレンジ色なので、より一層ベーコンっぽく見えてくるね。
人間には見えない物体もいれば、悲しみにくれ叫んでいるように見える顔もある。
一体どんなシチュエーションなのか不明だけど、こんな青い物体に追いかけられたらさぞや恐ろしいことでしょう。(笑)
夢に出てこないことを祈るよ!

うひゃー!今度は溶けてるよ!
頭は頭蓋骨なのに、腕だけは筋肉組織やら血管が見えるようじゃない?
これも一種の「叫び」なんだろうね。
さっきまで普通に会話していたのに、ウイルスやゾンビに感染した途端、全くの別人になってしまうシーンって、ホラー映画によくあるよね。
かつては人だったのに、今はもう人間じゃない、という恐怖を表現したように見えてしまう。
ジョディ・ファロンはSFとホラー映画が好きに違いないよ。(笑)
あくまでもSNAKEPIPEの想像だけどね。

この作品を観た瞬間、ROCKHURRAHが「永井豪みたい」と言う。
ぐわっと開いた大きな口と乱杭歯。
何かを噛み砕いた後なのか、それとも腹でも刺されて口から血が流れているのか。
状況はよく分からないけれど、尋常な顔立ちではないよね。
そしてこちらが永井豪の「デビルマン」。
雰囲気似てるよね?
きっとジョディ・ファロンは、漫画やアニメも好きに違いないと推測!
永井豪の漫画は今でも海外で人気があるようで、2019年7月にはフランス政府から芸術文化勲章シュバリエを贈られていることを知りびっくり!
エロや暴力を描くことが多い永井豪は、かつて教育に不向きという理由でバッシングを受けていたと読んだことがあったからね。
時代や場所が変わると評価も変わるものなんだと改めて実感したよ。

最後はこちらの作品ね。 
24☓36インチという大きさは、61cm☓91cmなので、恐らく30号のキャンバスになるのかな。
キャンバスについて調べてみたら、Fサイズ(人物)とかPサイズ(風景)のような種類があるんだね?
高校時代、美術部に所属していたSNAKEPIPEも30号のキャンバスを使って油絵描いていたけど、どの種類だったんだろうね。(笑)
黒い頭巾をかぶった黒衣の髑髏は一体何等身あるんだ、というくらいのモデル体型。
地面にはひび割れが見えるので、後ろに積み上がった骸骨の養分を吸い込んで、地面から生えているようじゃない?
すっくと立ったその姿から邪悪な精神は垣間見えないけれど、このまま佇んでいるとは思えない。
この絵から、様々な物語が作れそうだよね!(笑)

有名な美術大学在学中から注目され、個展を開いて、卒業後は当たり前のようにアーティストになる人が多い時代。
今回紹介したジョディ・ファロンは、独学からスタートして、自ら師を探し出し教えを請い、表現を追求しているので、とても身近に感じられるタイプのアーティストなんだよね。
これからもダークで不気味な作品を発表してもらいたいと思う。
調べたところでは、恐らく日本でジョディ・ファロンについて書いている人はいないみたい。
実物を観てみたいと思うのは、日本でSNAKEPIPEだけなのかな。(笑)

ROCKHURRAH RECORDS残暑見舞い2019

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【Der KFCの曲にちなんで作ってみたポストカード。地味だな】

ROCKHURRAH WROTE:

毎年夏になると「今年の暑さは異常」とか「夏嫌い」などと書いてるROCKHURRAHだが、今年こそは本当に危険な暑さと湿度ですっかりグッタリになってるよ。
去年までは汗をかいてもそこまでダラダラじゃなかったような気がしてたが、今はちょっと外に出て下を向くと顔からびっくりするほどの汗が落ちる。周りにそこまでブザマな発汗をしてる人はいないように見えるから、そういう体質なのか病気なのか?
誰からも心配されてないから、きっといつも汗っかきの人だと思われてるんだろうな。

お盆休みが人並みにあるので、その間はここまで汗ダラダラになる場所に行かなくて済むのが嬉しい。

あまりの暑さで外から帰ってくると服が全て汗だく、その場でシャワーを浴びて全部洗濯するのが日課になってる。
しかし先日、汗だくで意識が朦朧として(大げさ)大失敗。
何とポケットにiPhoneを入れたままジーンズを洗濯機に漬け込んでしまったのだ。
気づいたのが水や洗剤を入れて90分後、慌てて取り出したがもはや遅すぎて我がiPhoneはあえなく水没死。

ROCKHURRAHのは防水ではない旧機種なので、汗だくのポケットに入れておくだけでも良くないと前々から危惧していた矢先に、こんな事故になってしまったよ、トホホ。
不幸中のちっぽけな幸いだったのがその日は金曜日、翌日にiPhoneの水没修理をしてくれるところに早速行ったわけだが・・・。
そういう修理に疎いROCKHURRAHはもしかしたら直せるかもと思ってたんだが、要は中のデータをバックアップして新しいiPhoneに復旧させるだけのものです、という説明を受けて修理を断念した。
結局はiPhoneを買い替えしなきゃならないのは必至で、最終のバックアップ後からそこまで死守しないといけないデータはなかったから、さらに数千円(場合によっては数万)の出費はしたくなかったのだ。
その足で秋葉原に行き、全く同じ機種のSIMフリーiPhoneを買って、その日のうちにちょっと前のバックアップから復元。あっさり元の環境に戻す事が出来たよ。
これをきっかけにもう少し新しいiPhoneに機種変更とも思ったけど、たまたま安くなってる目玉商品もない。
この大きさに愛着もあるし機種変更するならSNAKEPIPEと同じタイミングの方が都合がいいから、今は現状維持でいいかなと思ったよ。
持ってはいても大した活用はしてないし、スマホ依存の人種が一体何を活用してるのかさっぱり不明なんだけど、なきゃないで不便なのは間違いない、というのが悔しいよ。

さて、こんな前フリは全く関係なかったが今年も残暑見舞いを作ってみたよ。
毎年、何らかのテーマを決めて作るのがROCKHURRAH RECORDSの方針だったが、今回は上記のハプニングもあって、制作にかける時間があまりなくなってしまって・・・などと言い訳しなくても自分が一番よく分かってる。
とにかく夏場はグッタリしてしまって何かを作る意欲が減退してるのは確かだよ。
自分でも何だかよくわからん「雰囲気だけ」のポストカードになってしまった。
SNAKEPIPEなら「色合いはキレイだったよ(この記事参照)」くらい言ってくれるかな?
毎年言ってるような気がするが、とにかく夏が終わらない事には活動的になれないROCKHURRAHなのだった。

それではまた秋に、さらば太陽圏。