SNAKEPIPE MUSEUM #72 Marissa Anca Sira

20241006 10
【キャンパスとして使用されている頭蓋骨】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のSNAKEPIPE MUSEUMは、アメリカの女流アーティストを特集してみよう。
長年に渡り、多種多様なアート作品を鑑賞してきたSNAKEPIPEだけど、この素材は初めてかも?
アーティストの名前はMarissa Anca Sira、読み方はマリッサ・アンカ・シラで良いのかな。
まずはマリッサの経歴を調べてみようか。

1982 ニューヨーク市立芸術デザイン高校卒業
1986 ニューヨーク市立美術学校 美術学士
2016 デスタギャラリーにて個展を開催

全米で2名しか選出されない美術奨学生に選出され、ニューヨーク市立美術学校で学んだというから素晴らしい才能の持ち主なんだね。
年表には書いていないけれど、美術界の巨匠マックス・ギンズバーグとアーウィン・グリーンバーグの弟子だったことも経歴に入っている。
SNAKEPIPEが最も驚いたのは、メトロポリタン美術館の模写画家として5年間勤務していたこと!
ニューヨークにある、あのメトロポリタン美術館だからね。
模写画家としての役割がはっきり分からないけど、特別な職業であることは間違いないよね。

マリッサは、「アーティスト / 鍼灸師 /錬金術師」と自身のサイトに自己紹介している。
アーティストは分かるけど、鍼灸師の資格も持ってるのかなあ。
錬金術師って名乗る人には初めてお目にかかったかも。(笑)
SNAKEPIPEは、錬金術と聞いて真っ先に連想するのがアレハンドロ・ホドロフスキー監督の「ホーリー・マウンテン(原題:The Holy Mountain 1973年)」だよ!
マリッサは、カバラ、エジプトの秘教的な文献、薔薇十字団の神秘、ヘルメス主義の文献、神智学の書物、ルドルフ・シュタイナーの人智学などの研究に没頭してオカルト科学の論理を吸収したんだとか。
研究の結果、頭蓋骨は生と死の境界を超えた無意識の使者であり、直感と想像力の領域を象徴するものとして考えるようになったという。
それが頭蓋骨を作品に使用する理由なんだって。
マリッサの作品を観ていこうか。

載せたのはバイソンの頭蓋骨にアクリル絵の具とリキッド・インクで図柄が描かれた「Binah」という作品。
本物の骨を素材として使用していると聞くと、おどろおどろしい感じがしそうだよね?
頭蓋骨を加工する物といえば髑髏杯を思い浮かべるよ。
髑髏杯について調べてみると「敵の頭骨を使って盃にした」のように血塗られた復讐話が多い。
メキシコの「死者の日」でも装飾を施した頭蓋骨(を模した砂糖菓子らしい)が飾られるよね。
死者を偲び、思い出を語り合い、生きている喜びを分かち合うお祭りなので、マリッサの作品はメキシコに近い印象かな?
美しく彩色されたマリッサの作品は、2016年に展覧会を開催した時に、全作品が完売したという逸話が載っていたよ。
この作品を飾るのには、どんな部屋が似合うだろうね。

マリッサの作品にはキャプションが付いていないため、一体何の動物の骨なのか分からないんだよね。
高校生だったSNAKEPIPEが、美術の授業で骨のデッサンした遠い記憶が蘇ってきたよ!
あれは確か牛の頭骨だったはず。
何も不思議に思わず描き、水彩絵具で仕上げたっけ。
本物の骨だったのか、模造品だったのか覚えてないなあ。
マリッサの黒一色だけで描かれている作品は、模様のせいもあるけどトライバル調だよね。
呪術や祭祀などの単語が浮かんでくるよ。

立派な角が目を引く作品。
これも牛の頭蓋骨なのかな。
赤、白、黒の3色が美しいね。
こうした素材はどこから手に入れているのか気になるよ。
写真家のジョエル=ピーター・ウィトキンが、ドキュメンタリー映像の中で、死んだ動物の連絡を受けると引き取って素材にしていたことを思い出したよ。
マリッサも何か「つて」があるのかもしれないね?

一番最初に載せたバイソンとは図柄が違うタイプの作品。
真ん中に円形が描かれていて宇宙を思わせるよ。
マリッサのサイトには「情熱こそが真の不死鳥である」というゲーテの言葉が載っている。
生と死、再生という永遠の循環について探求するマリッサに、強く響く言葉になっているという。
NHK「世界ふれあい街歩き」のワイマール編で、街中にゲーテの言葉があふれている様子を観たことがある。
たくさんの人に影響を与え続けているゲーテの偉大さを改めて認識したよ!
情熱を絶やさないことをSNAKEPIPEも心がけよう。(笑)

骨を素材にしたアートと聞くと、道徳や倫理を持ち出し、眉をひそめる人もいるかもしれない。
アーティスト側にはタブー視する批評を逆手に取り、宣伝に利用する輩がいてもおかしくない世の中。
今回紹介したマリッサ・アンカ・シラは、独自の哲学を基に作品を制作しているようで、大々的に手広く商売としているタイプではないみたい。
2016年の個展以降、目立った活動はしていないのかもしれない。
模写画家、鍼灸師、錬金術師といった経歴を持つ女性が、今は何をしているのか気になるよ。
続報も調べてみよう!

ビザール・ランプ選手権!55回戦

20240929 05
【カスタマーからの評価が低いマッシュルーム型のランプ。画像では素晴らしいのにね?】

SNAKEPIPE WROTE:

今まで何度となく米国Amazonで購入可能なビザールな逸品を紹介してきた「ビザール・グッズ選手権」。
55回戦目に特集するのはランプだよ!
2016年3月に「ビザール・ランプ選手権!21回戦」として書いた時には、Amazonに限定していなかったんだよね。
Amazonの中にはどんな逸品があるのか、見てみようか!

ROCKHURRAH RECORDSの事務所周りには、たくさんのカラスが生息している。
カラス達は連携して人間を観察しているように見えるよ。
洗濯物を干していた針金ハンガーだけ盗まれ、Tシャツだけがベランダの床に取り残されていたこともあった。
知能が高い、紫外線が見えるほど視力が良い、人間の顔を記憶しているなど、カラスに関する褒め言葉(?)がたくさん聞こえてくるのも納得しちゃう。
ちなみに洗濯物を干す時には、グリップ付きのプラスチック・ハンガーに変えたら大丈夫。(笑)
カラスによる被害について書いてはみたけれどSNAKEPIPEは、カラスが好きなんだよね。
Amazonで一番最初に気になった逸品はこちら!
Bieye L10954 Raven Sitting on Bare Tree Branch in Full Moon Nightは、高さ61cmで横幅41cmのステンドグラス製とのこと。
1点1点職人による手作りだというから凝ってるよね。
お値段$349.99、日本円で約49,700円!
手作りと考えたら妥当かもしれないね?
このランプの横でエドガー・アラン・ポーの「大鴉」を読んでみたいものだよ。(笑)

続いてもカラスをモチーフにしたランプを選んでみたよ!
Raven Table Lampは、壁に取り付けるタイプなんだね。
室内にあったら、カラスに観察されてる気分になること間違いないよ。(笑)
全長30cmだというから、実物に近い感じかな。
この商品は高評価を得ていて、注文した人が喜んで使用しているみたい。
カラスって人気があるんだね。
お値段は$39.99、日本円で約5,700円くらい。
ROCKHURRAH RECORDSの事務所周辺にいるカラス達が、室内のカラス・ランプと遭遇したら、どんな反応を示すのか確認したくなっちゃうよ。
実験のために買ってみるか?(笑)

鳥類ということで、次はニワトリにしてみよう。
「物価の優等生」と言われてきた卵の価格が上がっている、というニュースを知ったばかり。
先日の米不足も同様、高くなっても買わないわけにはいかない食材だよね。
家でニワトリ飼ってたら、卵の心配ないかもね?(笑)
こちらのランプは、今にも卵を産み落とす瞬間を捉えた逸品だよ。
3D LED Hen Night Light with USBには、ひよこのおまけ付きというところで笑ってしまった。
ファニー・ギフトとしての需要が高いようで、人気のある逸品みたい。
お値段が$18.88、日本円で約2,700円程度なのもお手頃なんだろうね。
SNAKEPIPEは、プレゼントされたら置き場に困るなあ。(笑)

このランプはプレゼントされたら嬉しいかも!
MAYOLA Modern Chameleon Table Lampは、カメレオン型のランプなんだよね。
くるりと巻いた尻尾に、絶妙なバランスで配置されているよ。
樹脂製で体長約20cmとのことなので、場所を選ばずに置くことができるね。
画像は金色だけど、白や黒のカメレオンを選ぶこともできるみたい。
お値段$37.99、日本円で約5,400円。
このランプの前でカルチャー・クラブの「カーマ・カメレオン」を歌いたいよね!(笑)

次はバナナ型のランプを紹介しよう。
バナナで連想するのはアンディ・ウォーホル!
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのアルバム・ジャケットだよね。(笑)
MAYOLA Modern Banana Table Lampを見た瞬間から脳内に音楽が鳴り響くとは。(笑)
「期待していた以上に素晴らしい」などとレビューにあり、高評価のランプだよ。
高さ約30cmほどなので、オブジェとしてサイドテーブルに置いてもオシャレかも?
お値段$94.99、日本円で約13,500円なので、プレゼントに選んでも良いかもしれないね。

最後はこちら。
2017年8月の「ビザール・ゴシック選手権!26回戦」に登場していても良かった商品。
商品名がGothic Skeleton Table Lampで、とゴシックという言葉が入っているからね!
腕の骨がクロスされ、不気味な雰囲気が漂っている。
骨は手書きで精巧さを高めているという。
とても良い出来だと思うけど、ランプシェード部分だけ取ってつけたようでアンバランスじゃない?(笑)
シェードまでデザインされていたら完璧だったのにね。
「プレゼントしたら大喜びされた」など、評価は高いみたいだよ。
お値段は $109、日本円で約15,500円。
ゴシックやホラー好きにはたまらない逸品かもね?

今回は米国Amazonで購入できるビザールな逸品を特集してみたよ!
2016年に書いたビザール・ランプには及ばなかった感じがするけど、どうだろう。
またビザール・グッズを探してみよう!
次回をお楽しみに。(笑)

両大戦間のモダニズム:1918-1939 鑑賞

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【版画美術館の入口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2024年9月14日から町田市立国際版画美術館で開催されている企画展「両大戦間のモダニズム:1918-1939 煌めきと戸惑いの時代」が気になる、とROCKHURRAHから聞いたのは数週間前のことだった。
展覧会が始まる前だったので、連休を利用して鑑賞する計画を立てる。
9月は3連休が2回あるからね!
町田市立国際版画美術館といえば、2020年6月に「横尾忠則展」を観に行ったことを思い出した。
ものすごく急な坂を上ったり下りたりした記憶があるなあ。

ROCKHURRAHと町田で下車したのは、今回が初めてのこと。
町田市立国際版画美術館は駅からの道順を写真付きで教えてくれているので、迷わないで歩けるよ!
4年前に通った道とは違ったようで、森の中を通って美術館に到着。
町田駅から10分程度しか離れていないのに、森林浴できちゃうってすごいね。
坂道を使わないルートがあるのは良かった。(笑)

会場はそこまで混雑していなくて、ゆっくり作品鑑賞ができたよ。
撮影可能だった作品について感想を書いていこう。

chaper1:両大戦間に向かって:Before 1918

ベル・エポックというのは19世紀末から1914年頃の華やかだったパリの時代や文化を指す言葉だという。
その時代に活躍したヴァロットンの木版画だよ。
1893年の作品で、タイトルは「街頭デモ」だって。
日本では明治26年なんだね。
木版の多色使いが美しい浮世絵と比べると、モノクロームの作品は少し物足りなく感じてしまう。
人の動きを切り取ったスナップショット風の滑らかなラインが魅力的だね。

ガラスケースの中に収められていたのは、1901年から1912年に刊行された「L’Assiette au beurre(バター入りの皿)」という風刺雑誌だった。
アナーキストの編集者シュヴァルツは、ベル・エポック時代の貧富の差を批判し、市民に寄り添うテーマで雑誌を作っていたという。
1人の作家が各号を担当していたというのが画期的!
この雑誌は中断の後、1921年から1925年まで月刊誌として発売され、1936年には廃刊になったみたい。
総勢200人のデザイナーが関わっていたという雑誌、現代でも通用する素晴らしさだよね!

chaper2:煌めきと戸惑いの都市物語

続いての章では、パリ・モードやファッションについての作品が並んでいた。
1921年から1925年までフランスで刊行されていた「Gazette du Bon Ton( 良き趣味の新聞)」の1920年第10号に載っていたシャルル・マルタンの作品だよ。
素敵な配色や着物風のコート(ガウン?)がオシャレだね!
1920年代のモードは、2023年に東京都庭園美術館で開催された「交歓するモダン」などでも鑑賞したことがあるよ。
テキスタイルもデザインも、とてもカッコよくてうっとりしちゃったんだよね!
エレガント過ぎてSNAKEPIPEが着てみたい洋服ではないけれど、当時の女性たちが憧れたのはよく分かるよ。

第2章はパリのモード以外にアメリカや日本の女性向けファッション雑誌の紹介もされていたよ。
パリに追随する形で各国がこぞってモードを追い求めていたことが分かる。
載せた画像はドイツのマックス・ベックマンが手がけた1921年の版画集で「メリー・ゴーランド」という作品。
じっくり観ると縮尺がおかしかったり、不気味な様子も感じられるよ。
1918年から始まったベルリン・ダダの作品も展示されていて狂喜する。
2013年8月のブログ「SNAKEPIPE MUSEUM #22 Hannah Höch」で紹介したハンナ・ヘッヒの作品を直に観たのは初めてだからね!
シュルレアリスムの作品展は開催されても、ダダはなかなかお目にかかれないことを残念に感じていたので、とても嬉しかった。
撮影が禁止だったので記憶にとどめておこう。
この作品、どうやら町田市立国際版画美術館が所蔵してるみたいなので、また鑑賞できる機会ありそうだね。

ロシア・アヴァンギャルドの展示もあり、顔がほころんでしまった。
ROCKHURRAHもよだれを垂らしていたに違いない。(笑)
ロトチェンコ、マヤコフスキー、リシツキーらの作品は、ドキドキするほど魅惑的!
こういう作品に出会うと心が喜ぶよ。
載せた画像は、20年代から30年代の子ども向けの絵本だって。
教育や道徳などを絵本を通して伝えていたようだけど、ロシア語読めないので意味は不明だよ。(笑)
内容が分からなくても、絵とフォント、構図や色使いなど完成度が非常に高い絵本だったことは一目瞭然。
ロシア・アヴァンギャルドの素晴らしさを再認識したよ!

chaper3:モダニズムの時代を刻む版画

この章では、1910年代末から1920年代に登場した抽象表現主義の作品が展示されていた。
当ブログでは、今年に入って何度も1920年代というフレーズを書いているね。
きっとこれから先も書き続けるに違いないよ。(笑)
載せたのはピエト・モンドリアン、1927年の「色面によるコンポジション No.3」。
1957年に、モンドリアンの油彩画をシルクスクリーンとして複製したものだという。
この作品も町田市立国際版画美術館が所蔵しているというから、嬉しくなってしまうね!
ハンナ・ヘッヒの作品と共に、また鑑賞できる時があるはずだよ。
モンドリアンのコンポジションは、かつてSNAKEPIPEがオマージュさせてもらい、帽子やTシャツ作ったことがあるんだよね。(笑)
シンプルだけどインパクトがあって大好きなシリーズだよ。

第3章では「シュルレアリスム」の部屋もあり、ROCKHURRAHと2人で手を取り合って喜んだよ!
デュシャン、マグリット、マン・レイ、エルンスト、ダリといった錚々たる顔ぶれの作品が並んでいたからね。
すべて撮影禁止だったのが残念だけど、素晴らしいラインナップで大満足だったよ!

chaper4:「両大戦間」を超えて:After 1939

この章では亡命したアーティストを特集していた。
イギリス出身でニューヨークに移転したスタンレー・ウィリアム・ヘイターの作品が印象に残った。
ミロやエルンストに版画技法を伝え、ニューヨークではジャクソン・ポロックに影響を与えたアーティストだという。
作品の撮影ができなかったので、文章だけ書いたよ。
載せた作品は、1947年のイブ・タンギーの「棒占い」。
細いペンで線を描き水彩絵の具で淡く色づけたように見えるけれど、こちらはエッチングだって。
タイトルと作品の意味は分からないけど、不思議な雰囲気があるよね。

最後はフェルナン・レジェ、1950年の挿絵本「サーカス」が展示されていた。
レジェ晩年の作品だという。
載せた作品は「ヘタウマ」みたいで、おどけているように見える。
散文詩のような文章と共に、80点近いリトグラフが収められているという。
レジェといえば、2024年3月に「ポーラ美術館」で、力強いくっきりした線とポップな遊び心がある作品を鑑賞したことを思い出す。
マン・レイが撮影を担当した1924年の実験映画「バレエ・メカニック(原題:Ballet Mécanique)」などでも有名はレジェは、多方面で作品を残しているアーティストなんだね。

企画展「両大戦間のモダニズム:1918-1939 煌めきと戸惑いの時代」は雑誌の展示なども含めて、約120点ほどの見応えがある展覧会だった。
じっくり観ていたので、かなり時間がかかったよ。(笑)

常設展は「明治時代の歴史物語―月岡芳年を中心に」を開催している。
せっかくなので、こちらも鑑賞していこう!

月岡芳年というと、2012年10月に原宿の太田記念美術館で「没後120年記念 月岡芳年展」を鑑賞したっけ。
あの時は「無惨絵」を含め、月岡芳年が手がけた作品を十分に堪能させてもらったよ。
残酷なモチーフが多い印象だけど、今回は歴史をテーマにした展覧会なので「血みどろ」の作品はなかったよ。
載せたのは、明治18年(1889年)から明治25年(1892年)にかけて制作された「月百姿」シリーズの作品。
「つき百姿 千代能がいたゝく桶の底抜けて みつたまらぬは月もやとらす」とタイトルに書いてあり、どうやら鎌倉時代の安達一族の娘であった安達千代野をモデルにしているみたい。
月岡芳年の画力がもちろんだけど、錦絵の色使いは改めて素晴らしさを感じるね。
欧米の版画を観た後なので、違いが明確になったのかもしれないね。

町田市立国際版画美術館の企画展も常設展も、大満足だったよ!
坂道を通らなくていかれるなら、気軽に訪問できそう。(笑)
次の企画展も楽しみにチェックしていこう。
誘ってくれたROCKHURRAHに感謝だね!

ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展 鑑賞

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【いつも通りジャイル・ギャラリーの入口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

表参道にあるジャイル・ギャラリーで「ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展」が開催されている。
7月の開催当初から展覧会情報は知っていたけれど、もう少し涼しくなってから行こうと思っているうちに9月になってしまった。
展示が終わりに近づいてしまったので、暑さに耐えながらROCKHURRAHと一緒に会場に向かったのである。

今回の展覧会は「ヨーゼフ・ボイスとの対話」とのこと。
そもそもヨーゼフ・ボイスって何者?というところから始めようか。
SNAKEPIPEは、ヨーゼフ・ボイスと聞いて思い浮かぶのは「フエルトのスーツ」くらいなんだよね。
時代的には、ナム・ジュン・パイクらと共に「現代アート」の旗手だったことは分かるんだけど。
どんなことをやっていたアーティストなのか、詳しく語ることができないなあ。
少し調べてみよう。

1921 ドイツのクレーフェルトに生まれる
1941 第二次世界大戦中に空軍に従軍
1943 ソビエト連邦で飛行機が墜落し、タタール人によって救助される
1946〜1951 デュッセルドルフ美術アカデミーで学び、彫刻を専攻
1951 美術アカデミー卒業後、フリーランスのアーティストとして活動を開始
1961 デュッセルドルフ芸術アカデミーの教授に就任
1964 パフォーマンス「How to Explain Pictures to a Dead Hare(死んだウサギに絵をどう説明するか)」を行う
1965 「Fat Chair(脂肪椅子)」を発表し、異物や素材を使った彫刻作品が注目される
1972 ドキュメンタ展に参加し、「7000本のオークの木(7000 Oaks)」というプロジェクトをスタートさせる
1974 「Coyote I Like America and America Likes Me (コヨーテ 私はアメリカが好き、アメリカも私が好き)」というパフォーマンスを行う
1976 「自由国際大学(Free International University)」を創設し、教育と社会改革に力を入れる
1982 再びドキュメンタ展に参加し、環境芸術プロジェクト「7000本のオークの木」を完成させる
1984 来日し、東京藝術大学の体育館にて対話集会が行われる
1986 心不全のためデュッセルドルフで死去

亡くなる2年前に来日しているんだね。
現代アーティストの宮島達男が、東京藝術大学での対話集会について語っていたのを観たことがあるよ。
「ボイスが歩いた後に、星飛雄馬が投げた球みたいな強い光が走っていた」
とボイスのオーラについて表現していたっけ。
ちょっと大げさな気はするけど、実際に現場にいたら興奮したはずだよね。(笑)

ヨーゼフ・ボイスの作品は、コンセプチュアル・アートになるのかな。
マルセル・デュシャンに系譜があるというコンセプチュアル・アートは、誤解を招くことを承知の上で簡単に説明すると「物議を醸すアート」ということかも。
観ただけで理解できるアートではなく、解説が必須の難解な作品が多い気がするよ。
ボイスは、1972年にスタートさせた「7000本のオークの木」を、社会とアートを結んだ「社会彫刻」として発表しているという。
アートという概念の拡張を問いかける、仕掛け人みたいな人物なのかなと思ったSNAKEPIPEだよ。

2018年2月のブログ「会田誠展 GROUND NO PLAN 」で、現代アーティストの会田誠が、沢田研二の「カサブランカ・ダンディ」を熱唱していたことを書いている。
タイトルを「アーティスティック・ダンディ」として「ボイス、あんたの時代は良かった」とボギーをボイスに入れ替え、詐欺師呼ばわりしていたっけ。(笑)
歌を聞いたSNAKEPIPEは大笑いしてしまったことを思い出したよ。
作品の思想的な意味を理解できないと「なんとなくアートかも」という作品にしか感じられないところに、ツッコミが入ったようで面白かったからね。

今回鑑賞した企画展「ヨーゼフ・ボイスとの対話」では、ボイス自身の作品と共に、ボイスから影響を受けた現代アーティスト6人の作品が展示されていたよ。
ジャイル・ギャラリーは撮影オッケーなので、良いね!
展示作品を紹介していこう。

まずはボイスの作品から観ていこう。
ガラスケースの中に入っているのは黄色い電球。
「カプリバッテリー」という作品だって。
この展覧会のキュレーターである飯田高誉氏による説明があった。
「この作品は人間と自然との親和性が高まるメタアファーとして提示されている」とのこと。
飯田氏もデヴィッド・リンチ大ファンの方なので、同じ嗜好の持ち主として尊敬しているSNAKEPIPE。
できるだけ飯田氏が企画した展覧会には足を運びたいと思ってるんだよね!
観念的な展示が多いので、頑張って理解したいと思っているよ。
「カプリバッテリー」は「自然から発生したエネルギーを活用し、永久に持続させることを示唆している」という。
作品観ただけでは、到底理解できないなあ。(笑)

「ヴィトリーヌ」は、ボイスがパフォーマンスで用いた物品やメッセージなどをガラスケースに並べていた作品だという。
カスヤの森現代美術館」の創設者である若江漢字が、所蔵しているボイスのコレクションから選んで並べたんだとか。
「ヴィトリーヌ」というのは、フランス語で科学標本などを展示するガラスケースを意味するんだって。
どうやらアウシュヴィッツに関係する物が並んでいるようだね。
「鑑賞者に対して生死の境界を意識させると同時に、価値の転換を示す装置」と説明されているけれど、観ただけで理解するのは難しいかも。

1984年にボイスが来日した時、一緒についてまわっていたというのが写真家の畠山直哉。
2008年4月に書いた「好き好きアーツ!#01 畠山直哉」で取り上げたアーティストだよ!
好き好きアーツ!」の第1回目が今から16年も前のこととは。(笑)
今回の展覧会ではボイスを撮影した写真4枚が展示されていた。
どうして畠山直哉がボイスを撮影していたのかは不明だよ。
2024年9月28日まで、タカ・イシイギャラリーで畠山直哉の展覧会が開催されているという情報を入手。
メッセージ性の強い作品を撮り続けているみたいだね。
好きな写真家なので、動向をチェックしていかないと!

磯谷博史の「花と蜂、透過する履歴」は、コロンとしたかわいらしい形の作品だった。
中に入っているのは蜂蜜で、光っているのは集魚灯らしい。
琥珀色がとても美しいね。
磯谷博史は1978年東京生まれ。
2003年に東京藝術大学建築学科卒業の2年後に東京藝術大学院先端芸術表現科修士課程修了し、2011年ロンドン大学も卒業しているんだとか。
どうやら2019年4月に鑑賞した「六本木クロッシング2019展:つないでみる」に出品していたようなので、SNAKEPIPEは以前、磯谷博史の作品を観たことがあるみたいだよ。

今回の展覧会で一番気に入ったのが、若江漢字の6点組作品「気圧」だよ。
若江漢字流の「ヴィトリーヌ」ということらしい。
近寄ってみると、写真と共に電球やビンなど、ボイスっぽいオブジェが収納されているんだよね。
線路など鉄でできた構造物の写真も好みだし、6点セットを家に飾りたいくらいだよ!
先にも書いたけれど、若江漢字が創設した「カスヤの森現代美術館」も気になるね。
現在開催中の企画展は「マルセル・デュシャン」だって。
行ってみたいな!(笑)

加茂昂の「惑星としての土/復興としての土1」を写真作品だと勘違いしていたSNAKEPIPE。
「油彩だったよ」
断言するROCKHURRAHは、近付いて観察していたという。
素材を調べると「油彩、堆肥顔料」と書いてある!
じっくり観ていなかったことがバレてしまったね。(笑)
それにしても堆肥顔料ってなんだろう?
「堆肥化された有機物から作られた顔料」だって。
いろんな技術があるんだねえ。
加茂昂は1982年東京都出身で、 2008年に東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
2010年には東京芸術大学大学院絵画研究科修了と調べたところで、上で紹介した磯谷博史と似た経歴であることが分かったね。
みなさん、エリートだなあ。(笑)

AKI INOMATAは、2022年「世界の終わりと環境世界」や「金沢21世紀美術館」などで作品を鑑賞したことがあるアーティストだよ。
動物をモチーフにした作家として認識していたので、散歩している犬が登場しても驚かなかったSNAKEPIPE。
展示してあるのは、洋服と髪の毛?
タイトルは「犬の毛を私がまとい、私の毛を犬がまとう」だって。
犬の毛とAKI INOMATAの髪を数年にわたって集め,その毛/髪で,互いの衣服/毛皮をつくり着用した作品だというから腰を抜かしてしまった!(笑)
ちなみにAKI INOMATAも東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻修了だって。
何年間もかけて毛を集めるという執念が怖いくらいに素晴らしいよね。

最後は武田萌花の「Day Tripper」というビデオ・インスタレーション作品ね。
こちらは電車の座席が置かれ、車窓風景が流れる。
移動している感覚になるけれど、動いているのは窓の外側に映る景色だけなんだよね。
ROCKHURRAHが動画を撮ってくれたので載せてみよう。

「心は変わりやすいけれど、ほんとは何も変わっちゃないのさ。まわりだけがぐるぐる回るのさ」
を思い出してしまったSNAKEPIPEだよ。
ジャックスの「堕天使ロック」なんだけど、分かるかな?(笑)

地下から5階に続く吹き抜けに、ギャラリーに関連するインスタレーションが飾られてるんだよね。
今回のヨーゼフ・ボイス展では、垂れ幕のような布が下がっていてカッコ良かった。
せっかくなのでエレベーターから動画撮影してみたよ!

なかなか面白いよね。

いつもジャイル・ギャラリーに行くと、新しい発見があり楽しくなるよ。
今回の収穫は「カスヤの森現代美術館」と若江漢字だね。
毎回無料で鑑賞させてもらって感謝だよね。
次の企画展も楽しみにしていよう!(笑)