ジョニー・リコは戦場へ行った

【スターシップ・トゥルーパーズ3劇場用ポスター】

SNAKEPIPE WROTE:

カルトSF映画として名高いシリーズ「スターシップ・トゥルーパーズ3」を観てきた。
なんと公開初日の第一回目の一番に乗り込み、最前列の「かぶりつき」で観て来てしまったROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
とは言っても、別にガンダムの大ファンではないのでよろしく!(笑)

スターシップ・トゥルーパーズは以前にDAVID LYNCH評論家として有名な滝本誠氏が大絶賛していた記事を読んだことがあり、気になっていた映画の一本だった。
パンク系の写真家Shigeo“Jones”Kikuchi氏のブログにも「スターシップ・トゥルーパーズ3の公開嬉しい!」なんて記事を目にしたこともある。
近所のレンタルDVD屋でスターシップ・トゥルーパーズ1と2を発見し、ROCKHURRAHと観たのは先月のことだったろうか。
評判を裏切らず、とても面白かったのである。

スターシップ・トゥルーパーズ」は1997年のアメリカ映画で、監督はポール・バーホーベン
原作はロバート・A・ハインラインの「宇宙の戦士(1959年)」とのことだけど、これは未読!
主人公ジョニー・リコの軽薄だけど熱血キャラという設定と、かなりリアルな残酷シーンのギャップが見事!
地球連邦軍(人間) VS バグス(巨大昆虫)の戦いが主題の映画である。
両親は被災して亡くなり、リコの恋人(フィービー・ケイツ似?古い!)は簡単に違う男に走る、仲間達はあっけなく戦場で死んでいく、と散々な目に遭う主人公リコ。
リコ持ち前の能天気さのおかげで映画全体は暗くはない。
途中途中で入る地球連邦軍のCM「FEDERAL NETWORK」も効果的だ。
ヴァイオリンを弾く軍隊仲間がまるで「サイコビリーバンドにいそう」なタイプだったのが非常に気になった。
映画は高度な知能を持つブレイン・バグを捕らえたところで終わる。

スターシップ・トゥルーパーズ2」は前作で主役だったジョニー・リコが出て来ないサイドストーリーだ。
これは2003年のアメリカ映画でフィル・ティペットという別の監督作品。
どうやらアメリカでは劇場公開されなかったらしい。
全く1作目の話とは関係がなく、人物設定にもつながりはない。
画面は全体に暗く、単純にバグスとの戦いを描いている。
前作のユーモラスな部分や残酷なシーンもあまり出てこないので、1作目でファンになった人は物足りなさを感じるかも?
しかも前作同様、バグスとの戦いに使用する武器に無理があるので、観ているこっちがハラハラしてしまう。
もっと空中からミサイル打ち込むとか、火炎放射器使うとか策はないものかね?
バグスが人間に寄生して支配する、という方式は「遊星からの物体X」や「エイリアン」そのもの!
訳の分からない生物に支配されるという構図はやっぱり怖いけどね!
今回の主人公はショーン・コネリー似で、いかにも主役顔だったのが面白かった。

そしてついに「スターシップ・トゥルーパーズ3」である。
最初の監督、ポール・バーホーベンが製作総指揮で再登場、主人公ジョニー・リコも復活!
やっぱりあの「能天気さ」がないとね!(笑)
1作目から11年が経過した、という設定から始まるためリコもやや老け気味。
残念ながらリコ以外は登場人物がかぶることはなかったので、密かに楽しみにしていた「サイコビリー系の人」も出演しなかった。
今回はサイキックで総司令官役のアノーキなる人物が「死に日和(It’s A Good Day To Die)」なんて歌を歌い、大ヒットしてる、なんて設定がおかしい。(笑)
「FEDERAL NETWORK」CMも相変わらずの悪ノリで笑ってしまった。
バグスは進化してるのに、連邦軍側はそこまで武器の強化はないのが歯がゆい。
後半にやっと「マローダー」なるガンダムの元祖とも言えるモビルスーツが登場したけど、活躍はほんの少しだけ。
またもや知能バグス「ベヒモコイタル」という更に巨大な存在が出現したり、リコが死んだことになったり、と1作目に近い内容の3作目だった。
SNAKEPIPEがとても気に入ったのはローラ役のJolene Blalock
美しさとたくましさの両方を持つ素敵な女性だった。
今回でシリーズは終わってしまうのか?
まだバグスとの戦争は終わってないのにね!

エンドロールが流れる頃、客席に揺れを感じる。
まさかこれも映画の効果?
と思ったら本当に地震だっ!
慌てて席を立ち、非常階段前で待つ時間の長かったこと!
どうやらそれほどの震度ではなかったみたいだけど、ビルの6階での上映だったため余計に揺れを体感したようだ。
SNAKEPIPEはてっきり巨大バグスが襲ってきたのかと思ったよ!(笑)
とりあえず何事もなくて良かった。

好き好きアーツ!#03 松井冬子&金村修

【金村修風?SNAKEPIPE撮影の写真を加工して制作】

SNAKEPIPE WROTE:

ターナー賞の歩み展」と「真っ赤なバラにゃトゲがある」に登場した友人Mから昨日の午前中に電話があった。
「今日の午後3時から松井冬子のトークショーがあるから一緒に行こう」
とまた突然のお誘い。
午後はROCKHURRAHと買い物に出かける予定だったのだが、急遽変更。
恵比寿に向かうことになった。
これはかつて表参道にあった洋書店&ギャラリー「ナディッフ」が再オープンした記念イベントとのこと。
松井冬子は旬なので、トークショーなんていったらきっと大勢の人でごった返しているだろう、との予想は大ハズレ!
多くても40人はいなかったと思う。
しかも友人Mは何度もギャラリーに電話し、整理券は発行しない、トークショーまでの時間を並んで待たせることはしないと確認済み。
椅子の数は20個、トークショー開始30分前から並べる、なんて情報まで入手していた。
ってことは…これは椅子取りゲームだ!(笑)
そしてまんまと友人M、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEの3人は前から2列目のバッチリな席でトークショーを見ることができた。ラッキーだね!

トークショーは松井冬子ご本人、成山画廊の成山明光氏をゲストに雑誌DUNE編集長の林文浩氏がインタビュアーとして登場。
松井冬子は髪をアップにしたピンクの浴衣姿、成山氏は以前成山画廊で目撃した時と同じように黒の3つ揃え。
松井冬子、テレビで見るよりずっとキレイで艶やか!
びっくりたまげた~!(笑)
今回は軽い話題で、という前フリ通りに松井冬子が好きな音楽や食べ物の話など、ほとんど作品や制作に関する話題がないトークショーだった。
ちなみに制作の際に聴く音楽は「テクノなどの反復が多い音楽」で、学生時代はPUBLIC ENEMYが好きだったとのこと。
PUBLIC ENEMYはSNAKEPIPEも大好きだったので、よく解る!
そして今現在気に入っているのはTOM TOM CLUBって…古っ!(笑)

終始なごやかに笑顔を絶やさずトークしていた松井冬子。
質疑応答の時間もあり何人かが松井冬子に質問した。
「どうしても気力が湧かない時はどのように対処してますか」
「幽霊を実際に見たことがありますか」
「静岡での好きな神社はどこですか」
といった今回のトークショーに似合った(?)軽い質問。
実はSNAKEPIPEも聞いてみたいことがあったけれど、ディープ過ぎるかなと思って遠慮した。
Mにその質問内容を話してみたら
「それはきっと上野千鶴子さんにしか答えないんじゃない?」
と言われた。
確かにそうかも。(笑)
それにしても突然びっくりハプニングで、生・松井冬子が見られて良かった!
成山氏もイイ味出してて楽しませてもらった。(笑)

さて続いては「好き好きアーツ第3弾」として好きな写真家・金村修を取り上げたいと思う。

金村修は1964年生まれの写真家だ。
国内外を問わず評価が高く、1996年にはニューヨーク近代美術館主催の「世界の注目される6人の写真家」に選ばれ、2000年には土門拳賞を受賞という輝かしい経歴を持っている。

金村修を知ったのはいつだったろうか。
好き好きアーツ#1 畠山直哉」の記事にも書いている1998年に東京国立近代美術館で行われたグループ展「写真の現在—距離の不在」で金村修が出品していた時、すでにその作品を知っていたのでそれ以前のことになるだろう。
一目で「あ、金村修の写真だ」と分かる、個性的な写真である。

金村修の作風は
乱雑(CHAOS)
暴力的(VIOLENCE)
破壊的(DESTROY)
とパンク要素が三拍子揃った(?)モノクローム写真だ。
焼きはかなり黒めである。
よく目にするような、あえて特別ではない風景をスペシャルな場所に変えてしまう。
それが「金村マジック」とでも言おうか、写真家としての力量であり魅力なのだろう。
金村修の写真そのものに共感して似た写真を撮りたい、とは思わない。
嫉妬するならその「マジック」の部分になるのかもしれない。

金村修本人もパンク好きらしく、パンク写真家なんて書いてあるのを見たことがある。
金村の写真集に「CHINESE ROCKS」という「まんま」のタイトルがあり、自身が解説している文章の中にジョニー・サンダースについて語っている部分がある。
恐らく年齢から考えても、金村修は70年代オリジナルパンクが好きに違いない。(笑)
写真展開催のために海外に行くときにもライダースにサングラスが必須だった、と以前何かで読んだことがあるから尚更そう思ったけれど。

今調べてみると2000年だったらしいが、金村修がNHKのトップランナーという番組に出演したことがある。
SNAKEPIPEも興味深く鑑賞!
この時初めて喋っている金村修を見ることになる。
「写真学校で作品を見せたら先生達に汚い写真だ、汚い写真だと嬉しそうに言われた」
「早見優と西田ひかるの区別がつかなかったから人物写真はあきらめた」
などの貴重な話を聞き、益々好感を持つ。(笑)
シニカルでややブラック気味な口調、人をおちょくっているような態度など、さすがパンクスだ!

現在は日本カメラで「作家になりたきゃなればいい」というタイトルの執筆をしていたり、2001年9月から始めているワークショップも継続しているようだ。
写真そのものの評価はもちろんだけれど、キャラクターにも注目されているようでいろんな仕事してるんだな。

バンド関係以外にも頑張ってる40代がここにもいた!(笑)
これからも応援していきたいと思う。

それにしても金村修のページ、きっと何年もデザインの更新してないような。
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEに任せてくれたらパンクテイストいっぱいのカッコいいページお作りしますのに。
ご依頼、お待ちしております!(笑)

革イイ!ベイビー!(中尾ミエ?)

【色とりどりのレザー。さて、何を作ろうか?】

SNAKEPIPE WROTE:

昨年も「おめでとう!ROCKHURRAH!」として記事にしたが、またその季節がやってきた!
5日はROCKHURRAHの誕生日である。
おめでとうROCKHURRAH!(笑)
去年はプレゼント探しに右往左往し、やっとの思いでエンジニアブーツを購入した。
ROCKHURRAHが欲しがる物って大抵が冬物なんだよね。
夏生まれなのに夏嫌いときている。
困ったもんだ。
今年は運良く(?)ネットで冬物を探すことができたから良かったけどね。
苦労せずにプレゼントを渡すことができてホッとしている。
それにしても7月に防寒着のプレゼントとはね!(笑)

最近とんとご無沙汰なのがBINARY ARMYの商品制作やら自分自身のための創作活動。
すっかりミシン踏むこと忘れてる!
これではイカン、ということで久しぶりに革の問屋さんに行ってきた。
様々な色の革、革、革!
この革だったらアレ作ろう、みたいに次々と頭の中にアイディアが。
素材を目の前にするとムクムクと創作意欲が湧いてくるではないか。
やっぱりこうして出かけないとダメね!

そして厳選した挙句にSNAKEPIPEが購入したのがシルバーの革とショッキングピンクの革の2枚。
シルバーのほうが大きい革だけれど、こっちはバッグを予定している。
ショッキングピンクのほうはできればもっと大きいのが欲しかったけど
「半端だからその値段で出してる」
とつっけんどんに店員に言われながらも、すでにピンクのライダースジャケットが頭の中に出来上がっていたため、ちょっとムクれながらも購入。
老舗っぽい素材屋さんにはありがちだけど、客を客と思わないような接客態度に首をひねることがある。
よくあれで商売になってるよね。
足元見られてるんだな、きっと。

ま、嫌な記憶はさておき、そのピンクの革はとても柔らかくて見事な色合い。
これでカッコいいライダース作るぞ!
早いうちから秋冬用の洋服に取り掛からないと間に合わないからね!
できあがった暁にはまた紹介したいと思う。

ROCKHURRAHは今回ベルト用の革を購入。
ハサミで裁断できるのか分からないほどの厚い革。
ベルトの自作は初めてなので、どうなるのかとても楽しみだ。

真赤なバラにゃトゲがある

【元祖怨み系といえばこの人!梶芽衣子「怨み節」】

SNAKEPIPE WROTE:

先週のブログ「ターナー賞の歩み展」に登場した友人Mから新たな誘いがあった。
「九段下で開催している松井冬子展に行きたい」
とのこと。
それ誰?の問いに
「知らないのぉ~?」
と怪訝な顔をされてしまったSNAKEPIPE。
どうやら最近話題の日本画家で、しかもかなりの美人らしい。
スミマセン、あんまり雑誌やテレビを見ないもので。(笑)
で、ネットで検索すると出てくる出てくる!
うん、確かに本人がモデルみたいな「すごい美人」だ!
そしてその作品は「えっ、この人が描いたの?」とびっくりしてしまうほど残酷で、グロテスクな日本画。
確かに友人M、いいとこ目をつけてる!(笑)

更にMより「松井冬子の特集が再放送されるからDVDに焼いて欲しい」との依頼を受ける。
我が家は前述したようにあまりテレビを見ない家庭なのに、実はHDDレコーダーを持っているのだ。
「お任せあれ!」と簡単に引き受けたSNAKEPIPE。
録画はちゃんとできて、いざDVDに焼こうとすると
「ダビングに失敗しました」
なんだとぉー!
気を取り直してもう一回。失敗。もう一回。失敗…。
どうやらハードには問題なくても焼きこむ部分がイカれてしまったようで。
「永久保存版にするからよろしく」
というMの言葉がよぎる。
このままではMに渡すのはおろか、今後一切録画したものをDVD化することは不可能になってしまう。

ということで出かけてきましたY電機!(笑)
新しいHDDレコーダーの購入のためではなく目的はTVキャプチャである。
元々持っていたHDDレコーダーとパソコンの間にTVキャプチャをはさみ、エンコードすることでパソコンで動画編集とDVD化ができるようにしたわけ。
本当は新しいHDDレコーダーを買ったほうが楽なんだけれど、これがあると例えばビデオをDVD化することも可能!
二度と手に入らなさそうな映像も思いのまま!(笑)
帰宅後、ROCKHURRAHに接続してもらうとバッチリめでたくDVDが出来上がった!
さすが配線が得意なだけあるね!
HDDレコーダーの焼きこみ失敗という記事が意外と多かったので、パソコンでDVD焼けるタイプの人にはお薦めの方法である。
修理に出すよりも新たに購入するよりもお手頃だし、録画してた映像も消えないしね!

そして行って来たのが九段にあるギャラリーナルヤマ
九段はほとんど降りたことがない駅だけど、日本武道館やら靖国神社やら有名な建物がいっぱいある所なのね。
マンションの一室を改造してギャラリーになっているようで、想像していたよりも「こじんまり」していた。
一度に入場できるのは6名まで、と書いてあるのも納得である。
作品が「むきだし」で展示してあるので気を付けて、というような注意書きもある。
確かに額や仕切りがあるわけではなく、目の前にストンと掛けてあるのでかなり近付いて鑑賞することができる。
展示されていたのはデッサンなどを含めて7点ほど。
目の細かい絹地に描かれた細い線や、キレイにぼかされた色彩。
はみ出た内臓やうつぶせにされた死体がモチーフと書くと「おどろおどろ」しているが、実際に絵を観るとそれらは大変美しい。
日本画はほとんど観たことがないし、よく知らないSNAKEPIPEなので、手法やら技巧については勘弁して!(笑)
鉛筆で描いたデッサンをジークレープリント(複製版画らしい)やフォトグラビュール(写真製版を用いた腐蝕銅版画の一種らしい)にして14万円から30万円で販売されていた。
ナンバー付きは売り切れました、なんて書いてあったよ!すごいね。(笑)

テレビで特集されていた松井冬子の「痛みが美に変わるとき」を観て
「松井冬子が痛々しくてかわいそう」
と思ったSNAKEPIPE。
きっと心に深い傷を負い、恐らく復讐のために
「ほら、私はこんなに傷付いたのよ」
という絵を描いているんじゃないかな、と想像する。
そしてその傷は癒されないまま増殖や変身を繰り返しているような気がする。
特定の個人に向けられたメッセージなのか、男性一般、というような集合体に向けられたものなのかは不明だけど。
ネガティブなエネルギーを創造の糧にする、という姿勢はSNAKEPIPEも大きくうなずき理解できるが、
「ネガティブなままでいる」
というのはかなりストレスのたまる状態だろう。
そしてその作品が評価される、というのは画家にとって単純に嬉しい、とは言い切れないのでは?とも想像する。
それは一種の自傷行為—骨身を削り己自身を人前で暴露している行為と同等ではないかと思うから。

番組の中で東京大学教授の上野千鶴子氏と対談するシーンがあった。
上野氏は松井冬子の絵からほとんどの情報をキャッチしたようで、かなり的確な問答をしていたように思う。
「人は幸せになる権利がある」
「幸せになった松井さんの絵も観たいのよ」
なんてセリフをハキハキと語る上野氏に
「幸せになることがあれば」
と返答する松井冬子。
いつまで重たい十字架を背負って歩くつもりなんだろう?
いや、その十字架がなければ描き続けられない、ということなのかもしれない。
天に二物以上を与えられたあんなにキレイな人が不幸、なんて悲しすぎるよ!