好き好きアーツ!#04 スタンリー・キューブリック

【キューブリック作品をキューブにしてみた。イカス!】

SNAKEPIPE WROTE:

特別に好み選んでいるわけではないのに、実はほとんどの作品を観ている映画監督にスタンリー・キューブリック(Stanley Kubrick)がいる。
既知の通り1999年に亡くなってしまったので、もう新作の鑑賞ができなくなってしまい残念である。
最近ROCKHURRAHとよく映画鑑賞をするのだが、ほとんどが旧作。(笑)
キューブリック作品も多く登場している。
今更ながらではあるが、SNAKEPIPEが自分自身のまとめの意味も含めて好きな作品について書いてみたいと思う。

年代順に、ということで最初は「2001年宇宙の旅(2001: A Space Odyssey)」から。
改めて鑑賞してみたが、やっぱりすごい!
これが1968年に公開されていた、という事実も調べて2度びっくり。
40年前とは思えない程に洗練された美しい映像に圧倒される。
その後の宇宙モノ(例えばスターウォーズなど)ほとんどすべてがこの映画からの影響を受けているだろうな。
「人類の夜明け」の猿のシーンがとても印象的。
「武器の所持」と「仲間殺し」の始まりである。
きっと地球上でもあんな感じで物事が始まったんだろうなあ。
急に出現する物体「モノリス」に猿と一緒に動揺してるうちに舞台は宇宙へ。

意志と感情を持ってしまったコンピュータ、HAL9000の存在が怖い!
機械なので表情は見えないけれど、どの位置からでも監視が可能な赤い光が不気味。
思考部分を徐々に削除されて言語が乱れていくシーンは「ハンニバル」を思い出させる。(あの食事のシーン!)
仲間を失い、一人になった船長の絶対的な孤独も恐怖だ。
そして人類未踏の木星への道のりがキレイだけれど、目が開けていられないほどの光の洪水。
ラストシーンは個人個人で違う感想を持つのではないだろうか。
「スターチャイルド」と名前が付いているので、転生や誕生でいいのかな。
原作も読んでいるはずなのに、昔のことなので忘れてしまった!
頭が冴えている時に観ないと、かなりゆっくり静かに映像が流れるシーンが多いため眠くならないように注意が必要かも。(笑)
それにしても「モノリス」といい「HAL」といい、未だに見かけるネーミング!
影響力絶大な映画の一本だと思う。

続いては「時計じかけのオレンジ(A Clockwork Orange)」1971年について。
この映画に関しては「アドビ製じゃないFIREWORKS」の時にも少し書いているけれど、もう少し書き足してみようか。
この映画の素敵なところはファッションと美術!
白いシャツにサスペンダー付きの白いパンツ、編み上げブーツにボーラーハット(山高帽)を合わせたところがポイント!
紳士の国イギリスなので、帽子はマナーなのかな。
いや、それにしても通常ならあの服装にあの帽子は合わせないんじゃないの、というところを合わせてスタイリッシュに見せたところが素晴らしい。
ADICTSをはじめ、HATTRICKERS(笑)などのPUNKバンドや、数多くのOi!バンドにも影響を与えているファッションだ。
70年代初期にはモロに影響を受けたCOCKNEY REBELなどというバンドもいたらしい。(ROCKHURRAH談)
現代でも十分通用するファッションだと思う。

この映画の美術監督は誰だったんだろう?
調べてみるとピーター・シールズとラッセル・ハッグと出てきたが、他の映画で特別目立った活動はしていない模様。
色彩、フォルムや空間のバランス、壁にかかっている絵画の一つ一つがすべて素晴らしい。
SNAKEPIPEもコレクションしたくなるような作品がいっぱいである。
なんといってもお気に入りは「コロヴァ・ミルク・バー」で、あんなバーがあったら行ってみたい!
あのマネキン人形も一体欲しい。(笑)
ストーリーや以前書いたスラングなどの魅力はもちろんだけれど、細かい演出がカッコいい映画である。
早回しの映像はどうやら松本俊夫監督の「薔薇の葬列(1967年)」からの影響を受けているらしい。
やっぱり?そっくりだもんね!(笑)

続いては1980年の「シャイニング(The Shining)」。
何度観ても怖い映画である。
ジャック・ニコルソンの怪演が見事なのは言うまでもないけれど、奥さん役の女優さんや息子役など、すべてが完璧!
時々挿入されるイメージが更に恐怖心を煽り効果的である。
姉妹が手をつないで並んだショットは写真家ダイアン・アーバスからの影響だな。
ん?意外とキューブリックは流用が得意な監督なのか?(笑)
大量の血液がものすごい勢いで流れ出て、部屋中いっぱいに広がるシーンは背筋が冷たくなる。
キューブリックは人が恐怖を感じるための最大公約数を知っていたのだろう。
ネット上で発見した2004年の記事によるとロンドン王立大学の研究チームがホラー映画の恐怖度を決定づける数学的公式を開発し、世界最高のホラーを「シャイニング」に決定したらしい。
ホラー映画の重要要素は緊張感、リアリズム、血に加えて、緊張感を高める音楽、現実と虚構のバランス、どれくらいの血や内臓が含まれているかを考慮し研究開発した、というから信憑性が高い!
堂々の一位とはすごいぞキューブリック!えらいぞ、ジャック!(笑)
原作のスティーヴン・キングがこの映画を気に入らなかった、という記事を読んだけれど、いやいや素晴らしいですよ!キングの旦那さん!(←人差し指くねくねシャイニング中)

最後に1987年の「フルメタル・ジャケット(Full Metal Jacket)」。
ベトナム戦争を描いた映画である。
割と最近観た記憶があったのに、かなり前だったとは!(笑)
前編、後編と2部構成になっている映画で前編だけ強く印象を持っていた。
結局のところ前述のシャイニングと同じで「人格崩壊」がテーマなんだよね。
ジャック・ニコルソンの演技と比較してしまうとかわいそうだけれど、迫力が違うためやや狂人らしさに欠けるのが残念。

後半は戦場のシーン。
アメリカ兵に対する対照的な女性の姿が印象的だった。
かたやお色気勝負、アメリカ兵は金の成る木と体とくねらせる女。
かたやどこかで厳しい訓練を受けたのか凄腕のガンマン(ウーマン)。
「Shoot Me!」を繰り返すシーンはなんとも言えない残酷な気分とせつなさとが混ざった、かなり複雑な心境になってしまった。
うーん、やっぱりどうも戦争映画は得意じゃないな。

キューブリック作品は他にも「ロリータ」「博士の異常な愛情」「アイズ・ワイド・シャット」を観ているが、上の4本でやめとくか。
「キューブリックは最高の恐怖映画監督」としてまとめにしよう。

ROCKHURRAH RECORDS残暑見舞い

【残暑御見舞い申し上げます】

SNAKEPIPE WROTE:

お盆休みの真っ最中、皆様いかがお過ごしでしょうか?
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEも休みで引きこもり中!(笑)
出かけるにしてもこの暑さだもの、少し歩いただけでバテバテ。
今年は全然出歩かない、おとなしい夏を過ごしている。

ということで今週は残暑見舞いのポストカードを制作してみた。
アグレッシブな魚がMOSHしてガラス割っちゃった、というパンクテイストあふれる一枚に仕上がった。
ライブのチラシみたいでイイ感じだ。(笑)

お盆を過ぎたら秋の訪れもすぐかな。

アドビ製じゃないFIREWORKS

【あり得ない光景!工場地帯に降る花火写真を制作】

SNAKEPIPE WROTE:

先週の3日、4日は近所で花火大会が開催された。
3日の土曜は江戸川花火大会だったようで、いきなりドドーンと爆音が鳴り響いたときには「すわ、また雷か!」と思ってしまったSNAKEPIPE。
全く情報を知らなかったので驚いてしまった。
かなり長い時間花火が打ち上げられていて、ようやく外に出て眺めてみた頃にはもう終了間際。(笑)
「明日行くからいいよね」
とROCKHURRAHと翌日の花火大会に期待した。

そして翌日。
2年前にも同じ場所での花火大会に行ったことがあり、会場の様子は多少分かっていた。
午前中には場所取りのために会場入り!
すでに5割くらいの場所はビニールシートが張られている。
みんな早っ!(笑)
それでもちゃんと場所が確保できてラッキーだね!

実はこの花火大会は「シークレットギグ」ならぬ「シークレット花火大会」で、全く告知がされない「ご近所様専用」である。
そのためSNAKEPIPEもあまり詳しいことを書くのは控えようと思う。

さていよいよ夕方になり、お弁当や飲み物持参のピクニック気分で会場入りしたROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
午前中に来た時と様子は一変していて、会場にはあふれんばかりの人、人、人!
告知されていないはずなのに、すごい人気にびっくり。
場所取りをしていたのがどこだか分からなくなるくらいである。
確か2年前も同じくらい大盛況だったな、と思い出す。
やっとこさ(死語)たどりつき、胸をなでおろすSNAKEPIPE。
みなさん、大宴会のような雰囲気であちらこちらで酒盛りが始まっている。
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEはノンアルコールでお茶だけ!
酩酊していてはせっかくの花火もおじゃん(死語)だろうと思って。(笑)

お腹もいっぱいになり、程好く風に吹かれたお陰でリラックスした状態で、さあ開幕!
花火の打ち上げ開始である。
息つく間もないほどジャンジャン打ち上げられる花火。
「おおーっ!」
「きれいーっ!」
など黄色い歓声がそこかしこで聞こえる。
SNAKEPIPEもカメラを構えながら鑑賞。
カメラを覗くのと空を見上げるのに忙しくなり、ついにはノーファインダーでシャッターを切ることにした。(笑)
後ろで「すっげえ!ヤバイよ、これ!」なんて若者の声が聞こえたので、恐らく前日の江戸川よりも素晴らしい花火だったのではないだろうか?
ま、その若者が江戸川に行ったかどうかは不明だけど!(笑)

ここで、余談であるが最近の若者言葉「ヤバイ」について少し書いてみたい。
元々「ヤバイ」というのは「危ない」とか「不都合な状況」などを意味し、調べてみるとどうやら江戸時代からあった言葉らしい。
ところが最近は「すてき」とか「かっこいい」のような褒め言葉としての使い方をする人が増えているようだ。
「危ない」時にも「ヤバイ」、「すてき」な時にも「ヤバイ」では一体どっちの意味で使っているのか分からなくなりそう。(笑)
ボキャブラリーが貧困というか、表現力が欠落してるというのか。

ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも大好きな映画に「時計じかけのオレンジ」がある。
映画の中で主人公アレックスをリーダーにした4人組が、チームの中でだけ通用するスラングを使う。
映画はアンソニー・バージェスの小説を映画化したもので、原作に出てきたスラングを忠実に再現している。
これがなんとも面白い!
完全にオリジナルで、部外者には解らない造語である。
1962年に発表されている原作は、約50年も前とは思えないほどの想像力/創造力!
せっかくだったら日本人もこれくらいのスラングを使って欲しいなあ。
あんまり考えてるとガリバー熱が出そうだからこれくらいでやめておくか。
ライティライト?(笑)

話題を花火に戻そう。
今回観た花火は2年前よりもスケールアップ、かなりボリュームがあったのではないだろうか。
銀河系が迫ってくるような錯覚を覚える。
時間はそれほど長くはなかったはずなのに、矢継ぎ早の花火は感覚を麻痺させてしまったようだ。
眼前に広がった小宇宙を今年の夏の思い出にさせてもらおう。

不条理でシュールな夏

【ああっ、太陽がまぶしいっ!不条理色に変えてみた夏の写真】

SNAKEPIPE WROTE:

いつの間にやら8月に突入し、まさに夏本番。
毎日暑い日が続いてますな!
年々暑く感じるのはやっぱり地球温暖化のせい?

その昔は毎年日焼けで真っ黒になっていたSNAKEPIPEだけれど、寄る年波には勝てず最近は日焼け止めを常用。(笑)
今年は日差しが強いので日傘を買おうかどうしようか迷ったくらい。
うーん、人も変わるもんだね!

日焼けが好きだった頃もSNAKEPIPEの歴史と言えるけれど、全体で見た場合には「夏の思い出」と呼べる経験はほとんどない。
毎年恒例になっているサマーソニックフジロック、なんていう夏のイベントに参加したこともないしね。
今年はSex Pistolsも来日するとか?
サマーソニック東京といっても実は幕張なので(笑)、千葉県民のSNAKEPIPEだったら会場に入らなくても外でも音が聴こえるかも。
その昔PILでのジョン・ライドン(ジョニー・ロットン)を観たからもういいか!

と、ここで思い出したのがレゲエサンスプラッシュだかジャパンスプラッシュだったか名前は忘れたけど、随分前に行ったこと。
ただしこれは例の野外イベントではなく屋内、中野サンプラザだったような。
デニス・ブラウンが出演していたので、1999年より前になるのかな。
調べようと思っても、2000年より前の情報は非常に少ないためうろ覚えなので間違ってたら済みません。
ピョンピョン跳ねながら歌うデニス・ブラウンがとても可愛かった。(笑)
後にも先にもレゲエ系のイベントに行ったのはこれだけだ。

夏、ということでもう一つ思い出すのは学生時代の夏休みか。
宿題の定番である「読書感想文」を書くために選んだのが久保田早紀じゃなくて(笑)カミュの「異邦人」。
これは夏休みに読む人が多い本ではないだろうか。
実家にはエアコンがないため(笑)本当に暑い中で読んだ「異邦人」は、妙に説得力を持って迫ってきた。
「太陽がまぶしかったから」
ええーっ!
多感な学生だったSNAKEPIPEは「そんな理由」を堂々と言ってのける主人公にびっくりたまげて腰を抜かした。(笑)
新人類だなーと思ったものだ。(古い!)
不条理、という言葉だけでは説明が不十分な気がした。
SNAKPIPEの中では全てが根底から覆されるほどの衝撃だったのだ。
同時期に読んだカフカの「変身」と共に、現在のSNAKEPIPEが形成されるために必要だった本として記憶している。(大げさ)

ここでちょっとだけ上述した「衝撃を受けた」の部分の補足をさせてもらおう。
異邦人の主人公ムルソーはとても淡々とした、ほとんど感情を表すことのない人間である。
何かしらの物事が起きて喜怒哀楽が表現されている小説に慣れていたSNAKEPIPEにとって、感情表現のない主人公という設定や事件の理由は驚きだったのだ。
決してムルソーの言動を礼賛しているわけではないし、ましてや昨今の「無差別殺傷行為」をする人々を擁護したり理解しているわけではない。
特に昨今の事件は日頃の鬱憤をはらすための行為であり、異邦人のムルソーとは全く性格が違うと認識しているからだ。
誤解のないようにお願いしたい。

当時は絵描きになろうとして(笑)一生懸命描いていたのは心象画だった。
今から思えばそれはシュールレアリズムを目指していたようだけど、その時はシュールレアリズムという言葉も運動も知らなかった。
前述した文学からの影響が大きかったのだろう。
シュールと不条理について論文的・学術的に語るのはその筋の方にお任せすることにして。(笑)

SNAKEPIPEが敬愛するDAVID LYNCHもカフカの影響を受けてるし、「審判」の主人公から付けたジョセフ・Kというバンドがいたり。
自分のレーベル名を「COCTEAU RECORD」と名付けたビル・ネルソン
あ、80年代にはコクトーツインズっていうのもいたっけ。(笑)
軽く思いついただけでこれだもの。
まだまだ他にもいっぱいあるはず。

他分野からの影響を受けたアート、などと考察すると面白いかもしれない。