好き好きアーツ!#01 畠山直哉

【LIME WORKSっぽい?SNAKEPIPE撮影の一枚】

SNAKEPIPE WROTE:

写真好きでROCKHURRAH RECORDSの「ABOUT US」にも「写真担当」と記載されているのにもかかわらず、今まで一度も写真家について書いていなかったSNAKEPIPE。
今回はSNAKEPIPEお気に入りのアーティスト・第一弾を書いてみたい。
タイトルはHaircut 100「Favourite Shirts 」の邦題、「好き好きシャーツ」をもじって付けてみた。
何故、シャツをあえて「シャーツ」と伸ばすのか疑問だが、面白いので採用!(笑)
この「好き好きアーツ」はシリーズ化できたらいいな、と考えている。

「好きな写真家は?」と質問されたら「畠山直哉!」と即答する。
もちろん他にもたくさん好きな写真家はいるけれど、一番は畠山氏である。
最近の活動についてはあまり詳しくないので申し訳ないが、畠山直哉氏と言えばやっぱり「LIME WORKS」と「アンダーグラウンド」だろう。

1996年というと今から12年前のことになる。
当時は毎月「アサヒカメラ」を購読していたSNAKEPIPE。
「今月の新刊—–LIME WORKS   畠山直哉—–シナジー幾何学より」
2cm×3cmほどの小さなモノクロ写真と共に紹介されていた記事を見た瞬間に強い衝撃を受けたSNAKEPIPE。
「これだっ!」
と確信し、早速写真集を買いに走った。
パッケージを外しドキドキしながら震える手でページをめくる。
間違いないっ!これこそSNAKEPIPEが求めていた写真だ!

セメント工場を中心に撮影されているこの写真集はインダストリアル好き、工場好き、廃墟好きにはたまらない垂涎モノ!
これは本当に日本なのか?と疑ってしまうほどの華麗な色彩。
近未来的(最近あまり使わなくなった言葉だな)な光景が「これでもか」とばかりに繰り広げられる。
当然ながら構図もバッチリ!
こりゃ言うことナス!グンバツな写真群だ!(笑)

出版社の「シナジー幾何学」という名前も気に入った。
ほんの小さな写真記事を観ただけなのにビンゴ!だったSNAKEPIPEは本当にラッキーだったのだろう。
1997年、畠山氏は写真家としての登竜門「木村伊兵衛写真賞」受賞!
応援している写真家の快挙はSNAKEPIPEも本当に嬉しかった。
そして自分の目に狂いがないことも証明された気がして自画自賛。(笑)
以来、畠山直哉氏の情報を探し、友人に写真集を薦めたりするようになる。

余談であるが、SNAKEPIPEが気に入った「シナジー幾何学」はなんと1998年12月に倒産してしまい、以来「LIME WORKS」は絶版になっていた。
これは友人にプレゼントしようと思い探しまくって知った事実。
あらま、あんなに素晴らしい写真集が絶版とは…。
2002年にアムズ・アーム・プレスから復刊されていたらしい。
がっ!またもや絶版に。
再復刊版は青幻舎より2004年に出版されている模様。(入手可能)
2度も絶版の危機に遭うとは悲運な写真集ですな!

1998年に畠山氏のグループ展「写真の現在—距離の不在」を東京国立近代美術館まで観に行く。
この時の畠山氏の展示は「光のマケット」。
人が全くいない夜間の高層ビルの照明—蛍光灯の光をモノクロームで撮影した写真群で、ライトボックスを写真の後ろに置いて展示している。
このため写真上の蛍光灯がまるで本当に光っているかのように錯覚してしまう。
写真展、というよりは「現代アート展」と呼ぶべきか?
なかなか興味深く拝見し、また更にファンになる。
このグループ展は他に斎藤さだむ、楢橋朝子、松江泰治、パンク写真家・金村修、という豪華メンバー!
一粒で二度おいしい企画だった。(笑)

続いて写真集第2作目の「アンダーグラウンド」について。
この写真集の出版が2000年。
記憶が定かじゃないのと古過ぎて情報が集められなかったため、うろ覚えだがタカ・イシイ・ギャラリーがまだ恵比寿にあった時にこの写真展を観に行っている。
この時の写真展は販売もおこなっていたようで、展示してある写真の横に小さな紙があり、いくつもシールが貼り付けてある。
購買者が「これ、買うよ」という印のようだ。
ちなみにお幾ら万円?と聞いてみると
「一枚35万円!」
という答えが返ってきた。(と、思う…たぶん。うろ覚えなんで)
うぎゃー!高い!
確かに素晴らしいし、お洒落なデザイン事務所などに飾ってあったらものすごく映える写真群なので、高くても買う人がいっぱいいるのも納得。
お金があったらSNAKEPIPEもオリジナル・プリント欲しかったなあ!

アンダーグラウンドは東京・渋谷を流れている渋谷川、その地下水路を撮影した写真である。
地底トンネル入り口の柔らかな光と映し出される影、それらを表現する色彩が大変美しい。
縦位置で上部を渋谷のビル街、下部を渋谷川で撮影した細長い写真群もある。
それらは注視しないと一枚の写真であることが判らない、まるで「だまし絵」ならぬ「だまし写真」のような印象。
写真集の中にはゲーテのファウストからの引用文もあり、さすがはインテリゲンチャ・畠山氏だな、と感心させられる。

畠山氏は他にも石灰石鉱山の山が爆発により砕け散る瞬間を撮影をした「BLAST」やドイツの廃工場「Zeche Westfalen I/ II Ahlen」、大阪球場の解体など様々なテーマに取り組んでいるようである。
現在はニコンサロン選考委員を務め、写真展の作品選考・決定を行っているエライ先生になってるそうで。
今後の活動にも期待、ですな!

この桜吹雪に見覚えがねぇとは言わせねえ!

【実写版花札!桜に幕と赤短。ROCKHURRAH制作】

SNAKEPIPE WROTE:

すっかり春めいて、恐らく今日あたりが桜の見納めかな?という季節になりました!
SNAKEPIPEとROCKHURRAHは先週、すでにお花見を済ませてしまった。
1年前に「四月バカ一代・改」として書いた、近所のガランとした公園にて、である。
少し時期が早かったのと、その公園に桜の樹が少ないせいもあって
「外でお弁当を食べる会」
になってしまった。(笑)
ま、毎年恒例のことだから良しとするか!

今年のSNAKEPIPEは昼休みをブラブラ散歩して、例年よりも多くの桜の写真を撮影。
いかにも名所という公園じゃなくて、ひっそりとした場所でほんの数本だけでも見事に満開にさせている桜を鑑賞するのが好みだ。
丁度SNAKEPIPEの理想に近い場所を発見!
ほとんど人が来ない、しかもこれ以上ないというくらい大きな桜の樹を。
観てもらうために咲いてるんじゃない。
自分で咲きたいから咲いてるんだ、といった意志の強さを感じる。
ま、これはSNAKEPIPEの勝手な考えだけど。(笑)

桜の花びらが風で舞う、桜吹雪の中で意識はうつろになる。
降っている雪を下から見上げた時なども同じだが、桜の花びらにだけ焦点を合わせていると、自分の位置が定まらなくなってくる。
ナチュラル・トリップのようなものか?
その陶然とした意識の中ではとりとめもない思考が連想ゲームをしていたり。
桜の樹といえば、やっぱり梶井基次郎だよな…樹の下にはやっぱり…。
櫻吹雪にハラハラすがり、といえば「六本木心中」、アンルイスか、古い…。
先日読んだ京極夏彦の「絡新婦の理 」の冒頭も桜吹雪の印象的なシーンがあったな…。
などなど、連想はとどまることを知らない。(笑)
今年は桜を満喫できて大満足のSNAKEPIPEである。

「花」つながりであるが、今年の年賀状は花札モチーフを使ったROCKHURRAH RECORDS。
実はSNAKEPIPE、小学生くらいの時には実家で花札遊びをしていたのである。(笑)
もちろん賭け事ではなく、本当にカードゲームとして。
ゲームも面白かったし、花札の絵も大好きだった。
そんなことが念頭にあって、ちょっと気になっていた花札を購入してみたSNAKEPIPE。
聞けばROCKHURRAHも花札で遊んだことがある、とのこと。
では早速、と始めてみたけれど二人共すっかり「遊び方」や「役」を忘れている!
まずはやり方を調べよう、とネットで検索。
すると非常によくできたフラッシュ花札ゲームをROCKHURRAHが発見!
このサイト、とても無料とは思えない程の出来!素晴らしい!(笑)
勝てないようにプログラミングされているようで、かなり苦戦してしまう。
勝てぬなら勝つまでやろう花あわせ!
丁度時間となりました。(笑)

前髪切らんかいっ!

【ご飯食べるところが見てみたい!BALZACのギターとヴォーカル】

SNAKEPIPE WROTE:

3月23日、下北沢シェルターでの「ロビンvsバルザック」に行って来た。
もちろんお目当てはロビン!
バルザックは名前だけは前から知っていたけれど、今回初見である。

漫画家T氏からライブのお誘いがあったのは1月中だったろうか。
「バルザックはどお?」
との問いに対してT氏の返答は
「バルザックはミスフィッツだよ~!」
であった。
うーん、、、
実はSNAKEPIPE、以前にROCKHURRAHからミスフィッツを聴かせてもらった時に
「SNAKEPIPEの好みとちょっと違う」
という感想を持っていたのである。
その「ちょっと違う」ミスフィッツに似てるのか…。
そいつは困ったわい。(笑)
ま、行ってみて聴いてからまた考えよう、ということで!

余談であるが、SNAKEPIPEはずっとその「見かけ」からミスフィッツをサイコビリー系バンドだと勘違いしてたのだ。
何度ROCKHURRAHから指摘されても、である。
正しくはパンクバンド、なので皆様ご注意を!(笑)

さて、ライブである。
当然のようにロビンの出番が先で、バルザックが後である。
バルザックのほうがバンド歴も長いし、知名度、人気共に高いので仕方ないか。
ほとんどの観客がバルザックのロゴ入りTシャツやら手袋やらを身に付けていて、8:2、いや、9:1くらいの割合でバルザック派が優勢である。
SNAKEPIPEとROCKHURRAHは少数派のロビンファンに仲間入り!
ちなみに漫画家T氏もバルザックTシャツ着てたし。(笑)

ロビン、スタート。
開始1曲目から激しいパンチ合戦ですごい盛り上がり!
おや、隣にいたはずのROCKHURRAHが忽然と消えている。
な、なんと、いつの間にかパンチ合戦に巻き込まれているではないか!
パンチ合戦参加、おめでとう!(笑)
後で聞いてみると熱狂的な外人のロビンファンとパンチ合戦やってたとか。
2曲目からは帰ってきてたけど。

ロビンは大体10曲、約1時間程を演奏。
毎度ながらパワフルなステージを展開してくれた。
そのうちの2曲は新曲を披露。イイ感じだ!
ロビンの新譜は今年の秋頃、と告知があった。
ちょっと前作から間があり過ぎだなあ。
楽しみに待つことにしよっ!
今回はアンコールもなし、なので少し物足りない気がした。
メインがバルザックだからねー。

そしてバルザック。
うわっ、前髪長っ!
ラーメン食べられるのかな?
食べる時は髪を結んでからにするのかな?
髪の毛が口に入るんじゃないか?
などとライブとは全然違うことに考えを集中させていたSNAKEPIPE。(笑)
さすがにバンド歴15年の貫禄、演奏すごい上手い!
4、5曲目は好きな感じだったけど、全体にはやっぱり「違う」みたい。
6曲目まで聴いて途中退場。
ライブで途中退場したのは今回が初めてだな。
ROCKHURRAHのパンチ合戦やら途中退場やら、珍しい経験をしてしまった。(笑)

後でT氏からの報告があり、バルザック終了後のアンコールでロビン・ヒロシも出て「アメリカン・サイコ」を演奏したらしい。
それが観られなかったのは残念!

毎月20日はソドムの市!(うそ)

【ソドムの市のポスター】

SNAKEPIPE WROTE:

久しぶりにレンタルDVDでも借りに行こう、と出かけてみたけれど、「新作コーナー」には何ひとつ気になる映画がない。
ROCKHURRAHも同じだったようで、苦労して決めたのが次の2本。
1本は2人共以前に観たことがある「ソドムの市」で、監督別コーナーだったため隣に置いてあった「デカメロン」も追加。
2本だけだけど「パゾリーニ・デイ」と洒落込むことにした。(笑)

デカメロン」はボッカチオ原作の同名小説から成っている映画だ。
デカメロンは名前は知ってても読んだことがないので調べてみると、イタリア版のアラビアン・ナイトのようなお話らしい。
時は1348年(一体何百年前だ?)ペストを恐れた男女10人が邸宅の中で退屈しのぎに10人が10話ずつ、合計100話の物語を語るお話だとか。
で、今回の映画「デカメロン」ではその中から7話が収録されている。
昔々××村でこんなことがありましたとさ、みたいな寓話や笑い話である。
パゾリーニ自身が高名な画家の一番弟子、という役柄で登場。
「夢の中のほうがうまく描けるのに、何故それでも絵を描き続けるのだろう」
と自問するところが印象的だった。

ソドムの市」はマルキ・ド・サド侯爵の「ソドム百二十日あるいは淫蕩学校」が原作となっている映画で、1975年に謎の死をとげたパゾリーニの遺作でもある。
大統領、大司教、最高判事、公爵の4人の権力者が己の欲求のために欲望の館を作り、その中で行われる様々な行為について描いている作品である。
「地獄の門」「変態地獄」「糞尿地獄」「血の地獄」という4つの構成で成り立っている。(ダンテ神曲に倣っているらしい)
「地獄の門」でその館を作るまでのお話があり、「変態地獄」からは自らの実体験を話す「語り部女」に触発されながらそれぞれのテーマに沿った話が展開していく。
前述したように「変態」「糞尿」「血」の話なので、およそ考え得る限りの悪行—-背徳的で残酷なシーンが目白押しである。
時代設定を1944年のヒトラー占領下のイタリアとしたために、よりファシズム色が強くなっている。
お、この1944年というのは「4番煎じもおいしい?」「二人の情熱男の物語」の時に書いた「ハンニバル・ライジング」の時代設定と全く同じ!
ヨーロッパにおける1944年というのが、かなり重要な年だということが解りますな。
詳細は専門書に譲りますが。(笑)

「ソドムの市」はどうしても「変態映画」として認識されてしまいがちだけれど、パゾリーニ本人には
「変態・異常性欲・残虐行為を消費社会と現代の暗喩として用い、消費市場主義・快楽主義の後期資本主義社会に無理矢理適合させられている現代人の有様を描き出そう」
という主題を持っていたようである。(DVDの中より引用)
うむ、そう聞けば「成る程!」と思ってしまうSNAKEPIPE。

そしてもう一つ忘れてならないのはイタリア、という場所。
ローマ市内に世界最小の国家「ヴァチカン市国」がある国である。
カトリック教会の総本山、全市民が何かしらの聖職者というキリスト教とは切っても切れない関係にある国だ。
そのためなのかキリスト教の「7つの大罪」(傲慢 嫉妬 憤怒 怠惰 強欲 暴食 色欲)に触れる表現が多い。

「デカメロン」の中で「姦淫は大した罪ではないと神に言われた話」とか「尼僧も男性に興味津々の話」とか「僧侶が人妻をかどわかそうとする話」など、やはりキリスト教と深い関係のある話が多々登場する。
規範、規定や規律のような厳格な約束があるからこそ、破りたくなる輩が出るのか。
日本人は武士道の影響から「恥」を最も悪いことと認識する民族だが、キリスト教徒の場合は「罪」に重い意識を持つようである。
その意識の違いを文化の違いと言ってしまえばそれまでかもしれないけど。(笑)

30年以上前の映画であるが、今観ても充分衝撃的だった。
宗教的アナーキスト(こんな言葉があるのか?)パゾリーニの他の作品も観る機会を持ちたいと思った。