SNAKEPIPE MUSEUM #64 Mikhail Ray

20230115 02
【ミハイルがいっぱいいるよ!】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のSNAKEPIPE MUSEUMは、ウクライナのアーティストを紹介しよう。
ROCKHURRAH WEBLOGでは、政治的な意味や解釈についてほとんど言及してこなかったし、する予定もないので純粋に作品について書いていくよ!
アーティストの名前はMikhail Ray、読み方はミハイル・レイで良いのかな。
まずは簡単に経歴から。

1984年、ウクライナのヘルソンに生まれる。
船のコックをしていた家庭だった影響もあり、海兵隊員としてキャリアを積む。
2009年にデジタル写真のコラージュ作品と出会い、それ以来趣味として制作活動を続ける。
2014年から数々の賞を受賞し、展覧会も開催しているようだね。
2019 年にはミハイル・レイによって資金を提供されたNew Level Ray Prizeを設立。
ウクライナのヘルソン・トーテム・センター協力のもと、創造性を促進するために地元のアーティスト支援を行っているという。
現在39歳のミハイルが、後輩のために一肌脱いでるってことだよね。(笑)
今も海兵隊員のままなのか不明だけど、(元?)軍人によるアートというのが珍しい。
ではどんな作品なのか観ていこう。

最初に気になった作品がこれ。
タイトルは「Selfie」。
顔は出ていなくても、中央にいる人物がミハイル本人だよね。
まるでエッシャーのだまし絵のような背景と、十字架のように見えるシンメトリー構図。
落ち着いた色味も含めて好みだよ!
ミハイルは制作中の動画をYoutubeに載せているので、気になる人は観てみてね。
30分以上ある動画なので手の内が分かるよ。(笑)

続いての作品は「The Waterfall」。
直訳すると滝だけど、作品に込めた思いは深いみたいよ。
座禅を組んでいるところからは精神世界の探求といったイメージが浮かぶよね。
例えば敬愛する映画監督であるデヴィッド・リンチも一日2回TM瞑想を実践して自分の中にあるエネルギーや幸福に気付いた一人。
正方形の箱は自分だけの宇宙ということかな?
周りの手から汚れをつけられても、超然と自分自身であることに挑戦しているように見えるよ。

「Persona」はペルソナ、つまり仮面のことだよね。
見事に仮面が割れて、本当の自分が現れたところなのかな。
選んだ作品順に観ると、物語になりそうだよね。(笑)
photoshopの画像処理で作成されている、いわばフォト・コラージュだけど、元のパーツはどこから持ってきてるんだろうね?
ミハイル本人は別として、例えば実際にガラスを割って素材にしているのか気になるよ。

タイトルが「Salvador Dali」だって。
恐らくミハイルが好きなアーティストがダリなんだろうね。
この作品から、SNAKEPIPEにはダリっぽさは感じないけれど、額縁の中で泳ぐ魚と、服を着た溶岩のように燃える肉体といったシュールさは「いかにも」な感じで良いかも。(笑)

雰囲気がダリっぽい作品がこちら。
タイトルは「Fest」(祭)だって。
空と雲の様子と、手前に丸いテーブルがあるところなど、ダリの影響を受けているように感じるよ。
皿に乗っているのがパンやコショウではなかったり、空を飛んでいるのが鳥ではなかったら、もっとシュールだったかもしれないね。

最後はショッキングな作品ね。
目鼻口がなくなって、縫い込まれた顔。
これは「O」で、他に「V」と「Z」、蜂の巣が埋め込まれたバージョンがあるんだよね。
これらは2022年の作品で、完全に政治的なメッセージを含んでいる。
今の状況でなくても、この作品は観た瞬間にギョッとしてしまう。
ミハイルは、直接的な表現で作品制作もするんだね。
インパクトは大きいけれど、上に紹介した作品とは趣が違い過ぎるよ。

ミハイルは作品を販売していないようなので、個人的に制作して提示しているんだね。
趣味のレベルを超えたphotoshopのテクニックと、コラージュのセンスが素晴らしい!
次はどんな作品を見せてくれるのか楽しみに待っていよう。

映画の殿 第54号 韓国ドラマ編 part10

20230108 top
【ドラマの気になる登場人物たち】

SNAKEPIPE WROTE:

相変わらず韓国ドラマを毎日観ているROCKHURRAH RECORDS。
備忘録を兼ねて「映画の殿」に感想をまとめておこう!
まずは「ナルコの神(原題:수리남 2022年)」のあらすじから。

南米のとある国で、政府の極秘作戦に参加することになった民間人事業家。
その目的は、その地で麻薬取引を行う韓国人麻薬王を検挙すること。
実話を基にした物語。(Filmarksより)

続いてトレイラーね。

韓国ドラマではウェブトゥーン原作が多い中、実話ベースということに注目だよね!
全6話という短い話数だった理由はそこにあるのかも。
あらすじにある「南米のとある国」というのはスリナム共和国で、恐らくほとんどの人が初めて聞く国名のはず。
SNAKEPIPEも同様で、ドラマの中のフィクションなのかと思ってしまったよ。(笑)
これも実在の国で、韓国人麻薬王の暗躍も現実だったと知り驚いた!
更に民間人が麻薬王逮捕に向けて協力していたことも、本当にあった話だったとは。
麻薬王を演じたファン・ジョンミンは、今までも何度か映画で観たことがあったようだけど、あまり覚えていなかった。
このドラマでの演技は強烈で、SNAKEPIPEはジョンミンに悪役のレッテルを貼ってしまった。
この後「ベテラン(原題:베테랑 2015年)」で、熱血刑事を演じるジョンミンを観ると違和感があったよ。(笑)
最初に観た役の印象が強い時に起こる現象だね!
最近では「イカゲームの」と修飾されることが多いパク・ヘスも、ROCKHURRAH RECORDSでは「刑務所のルールブックのピッチャー」として記憶しているため、国家情報院の役人と聞くと変な感じなんだよね。(笑)
「ナルコの神」は毎回ハラハラしながら引き込まれていく、骨太のドラマだったよ。
ちなみに制作費は350億ウォン、日本円で約36億円!
6回のドラマでこの金額ってすごいよね。(笑)

続いて「ある日~真実のベール(原題:어느 날 2021年)」を紹介しよう。
これは2008年にイギリスBBCで放映されたドラマ「クリミナル・ジャスティス」のリメイクとのこと。
インド、アメリカに次いで3番目とのことなので、イギリスのオリジナル版も気になるところだね!
一体どんな物語なのか、あらすじから書いていこう。

どこにでもいるような普通の大学生ヒョンスは偶然ホン・グクファと出会い、互いに引かれ、酔って一晩を共に過ごす。
目が覚めるとグクファは殺されていて、ヒョンスは殺人事件の容疑者となってしまう。
絶望するヒョンスを見た弁護士のシン・ジュンハンは、事件の弁護を引き受けることにする。
無罪立証のため孤軍奮闘するヒョンス。
ヒョンスを信じてはいないが無罪を立証したいシン・ジュンハン。
自分が見たことだけを事実とする警察と検察。
それぞれの「正義」を守る。(naviconより)

トレイラーはこちら。

「太陽を抱く月」や「サイコだけど大丈夫」でお馴染みのキム・スヒョンが大学生、韓国バラエティ番組「3食ごはん」で「チャおばさん」として親しまれている料理の達人チャ・スンウォンが弁護士役で出演している。
この「3食ごはん」が面白くて、大好きなんだよね!(笑)
チャおばさんは、アトピーに悩まされる三流弁護士という役で、何故か肩にかかるほどの長髪。
普段は後ろで結んでいるのに、カップラーメン食べる時に髪をおろし、振り乱しながら麺をすする姿に大笑いしたよ。(笑)
事件そのものより、刑務所内でのドラマと法廷での争いが中心になっていたね。
女検事を演じたのは、「地獄が呼んでいる」や「怪物」などのドラマに出演しているキム・シンロク。
憎らしくなるほど気が強い性格を見事に演じていたよ。
元ネタであるBBCのドラマを観ていないので違いなどは分からないけれど、あまりスッキリしない幕切れだった。
今まで観たことがあるキム・スヒョンとは違い、少しダークな部分が出ていたところが良かったね。

花遊記<ファユギ>(原題:화유기 2017年)」は2022年の夏頃から週末に観ていたドラマなんだよね。
全20話と少し長めだったこともあり、4ヶ月くらいかけて観終わったよ。
あらすじはこちら。

「西遊記」をモチーフに繰り広げられる新感覚ファンタジー・ラブコメディ。
幼少期から妖怪が見える少女ソンミは、ひとり孤独な日々を過ごしていた。
そんなある日、偶然出会った牛魔王ウ・フィに五行山に行ってあるものを取ってきてほしいと頼まれる。
言われるがまま五行山へと向かったソンミは、そこで大きい罪を犯し五行山に閉じ込められている孫悟空と出会う。
ソンミは悟空を助ける代わりに自身を守ってほしいと提案するが、解放した途端に逃げられてしまう…
月日は流れ、ソンミは不動産屋を営む女社長に成長。
一方、悟空は飲むと無敵になる「三蔵法師」の血を継いだ人物が現れたと聞きつける。
やっとの思いで見つけたものの、その人物は自身が置き去りにしたソンミだった…。(amazonプライムより)

 

西遊記をネタにしているので、孫悟空、三蔵法師、沙悟浄、猪八戒という馴染みにあるキャラクターが登場する。
孫悟空役には「バガボンド」でアクションをこなしていたイ・スンギ。
髪型を猿っぽくしていて、悟空が似合っていたね。
沙悟浄は年上なのに悟空のことを「アニキ!」と呼び、大企業の社長にもかかわらず家事が大好きという設定が面白い。
猪八戒は歌手PKとして芸能活動を行っている人気者。
名前の由来はピッグだろうね。(笑)
牛魔王を演じていたのは「チャおばさん」こと、チャ・スンウォンで、「ある日」の弁護士と魔王とのギャップが激しいよ!
魔王は芸能事務所の社長で、オシャレが大好きなファッショニスタ。
モデル出身のチャおばさんだけあって、スタイリッシュに着こなしていたよ!
アイスクリーム屋を営む冬将軍と、バーを経営する夏将軍が双子で、同じ役者が男装と女装で役を切り分けているところが秀逸だった。(笑)
途中まではとてもおもしろかったのに、孫悟空と三蔵法師のラブ・ストーリーが中心となった後半は少しダラけ気味。
20話まで引っ張らなくても良かったような?(笑)

最後は「シスターズ(原題:작은 아씨들 2022年)」。
主演が「トッケビ」のキム・ゴウンなので、期待して観始める。
名前を知っている俳優が出ていると興味が湧くし、「シスターズ」はNetflixで「今週の1位」などと表示されていて気になっていたんだよね!
まずは、あらすじを書いてみよう。

貧しいが仲睦まじく育った三姉妹は、お金のためにプライドが傷つく経験が少なくなかった。
そんな彼女たちは、700億ウォンの謎の大金を手に入れたことで事件に巻き込まれ、やがて韓国で最も裕福な有力一族に立ち向かうことになる。(Wikipediaより)

「トッケビ」では高校生だったキム・ゴウンが、7年経ってすっかり大人の女性になっていたね!
そして、ひょんなことから大金を手にしてしまうことからドラマが始まる。
700億ウォンを日本円に換算すると約73億円!
ジャンボ宝くじの10億円どころの騒ぎではないので、「もし手に入ったら」と想像するだけでも興奮してしまうよ。(笑)
三姉妹はタイプが違っていて、長女は妹たちを思って着服しようと目論むのに、次女は「汚れた金を手にするのは間違っている」と正義を振りかざす。
三女は更に冷めていて、姉妹との縁を切るのも厭わない様子。
キム・ゴウンの味方になり、「この分からず屋が!」と次女と三女を叱りつけたくなるSNAKEPIPE。
降って湧いた人様のお金だけど、なんとかして手に入れようとしてるお姉さんの気持ちも解るからね。
途中でベトナム戦争に関わった軍人の話が入り、政治的な側面も絡んでくる。
このシーンのためにベトナム政府から国内での配信停止要請があったというから、「いわくつき」ドラマになってしまったかも。
一応はハッピーエンドと言って良い終わり方なので、あれで良かったのかな?(笑)

今回は4つのドラマについて書いてみたよ!
一つ観終わると、新しいドラマが配信されていて、どれから観たら良いのか迷うほど。
韓国ドラマ、面白いね!(笑)

好き好きアーツ!#57 TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇

20230101  01
【TAROMANから勇気と活力をもらおう!】

SNAKEPIPE WROTE:

明けましておめでとうございます。
ついに2023年になったね!
例年通り、成田山へ初詣に出かけたROCKHURRAH RECORDS。
完全防備だったおかげもあり、快適にお参りすることができた。
今年は2人揃っておみくじは「吉」だったよ!
良いことも悪いこともあるってことだね。(笑)

新年1回目のブログは、2022年の7月に初回が放映された「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」について書いてみよう。
まずはROCKHURRAH RECORDSとTAROMANの馴れ初めからね。

面白そうな番組をチェックし、マメに録画予約設定してくれるROCKHURRAHが
「岡本太郎の実写ヒーロー物があるよ」
と教えてくれたらしいけれど、あまり記憶に残っていない。
実際、ほとんど気乗りしない返答をしたらしく、ROCKHURRAHは録画予約をしなかったという。

2023年の抱負1:人の話を真剣に聞くこと

次にTAROMANについて話題になったのは、2022年12月のこと。
「ほら、これだよ」
NHKがYouTubeにアップしている動画をROCKHURRAHから教えられる。
「なんだこれは!」
思わず岡本太郎と同じセリフが口をついて出てしまうほどのクオリティ!
生返事をしていた(らしい)SNAKEPIPEは深く反省する。
慌ててTAROMAN全編を鑑賞できないか検索すると、丁度前日に全話一挙放送されていたことが判明!
気付くのが一日遅かったとは!
他に方法がないのか検索すると、見逃した番組をNHKプラスで観ることができることを知る。
早速入会手続きし、一気に鑑賞したのである。

現代アーティストである岡本太郎の作品に登場するモチーフを奇獣として、正義の味方ではないヒーローTAROMANが戦う1972年に放映された特撮活劇の再放送、という設定なんだよね。
初回は「森の掟」という奇獣が現れ、ビルを壊して街を破壊していく。
この奇獣は、岡本太郎の同名作品に登場していて、SNAKEPIPEも大好きなんだよね!(笑)
ジッパー好きにはたまらないキャラクターで、2011年に東京国立近代美術館で開催された「生誕100年 岡本太郎展」のポスターにもなっていたよ。
奇獣を倒すためにTAROMANが行う攻撃は「でたらめなことをやる」という、岡本太郎の言葉を体現するもの。
かなりトホホで、遊んでいるように見えるTAROMANに、いわゆるヒーローらしさがないところが新鮮だよ!(笑)

次々と奇獣が現れるけれど、岡本太郎が残した名言と共にTAROMANの活躍は続く。
「同じことを繰り返すくらいなら死んでしまえ」
「好かれるヤツほどダメになる」
など、岡本太郎が自身を鼓舞するために使ったのかな、と想像する力強い言葉を知る。

2023年の抱負2:岡本太郎語録のような心に突き刺さる言葉や作品を多く知ること

2022年7月から10月まで大阪中之島美術館で開催されていた、岡本太郎展のプロモーションとして制作されたTAROMAN。
TAROMANを制作したのはNHKで、映像作家の藤井亮が監督している。
CGなどで「いかにリアルに見せるか」が主流のはずなのに、チープでキッチュな70年代風映像を作り上げ、時代に逆行していているところに拍手を送りたい。
カラーの色合いや音声、セリフ回しまで70年代だったもんね。(笑)

TAROMANは大人気のようで、1月3日に再放送が決定したという。
未鑑賞の方には、是非オススメしたいね!
ROCKHURRAH RECORDSも改めて鑑賞することにしよう。

TAROMANに出てきた岡本太郎語録で、ROCKHURRAHが気になったのは「自分の歌を歌えばいいんだよ」だって。
他人の評価を気にしないで、自分らしく好きなことをしなさいという意味で良いのかな。
SNAKEPIPEは、番組内には出ていなかった言葉「きみはあなた自身を創造していると思いなさい」をチョイスしたいと思う。
生きていくことが、SNAKEPIPEを創っていくことにつながるという深い言葉だね!

2023年の抱負:日々を大事に、楽しく笑って過ごすこと

3つの抱負を忘れないようにしよう!
今年もROCKHURRAH RECORDSをよろしくお願いします。