好き好きアーツ!#08 鳥飼否宇 part2 –太陽と戦慄/爆発的–

【「爆発的」にちなんで作ってみました】

SNAKEPIPE WROTE:

前回の「好き好きアーツ!#08 鳥飼否宇–痙攣的–」は鳥飼先生の著作「痙攣的」の感想をまとめ、登場人物の名前の謎解き(?)に挑戦した記事である。
今回はまた別の著作を特集した第2弾を書いてみたいと思う。
ネタバレの部分があるかもしれないので未読の方は注意してください。

4冊でもご本」を書いた2007年6月からずっと探していた「太陽と戦慄」。
それ以来本屋に行っては必ず「タ行」を探していたけれど見つからない。
一読してすっかりファンになってしまった「痙攣的」より前の著作のため、どうしても読みたかったのである。
そして去年ついにネット通販にて購入。
いやあ、最近はほんとに便利になりましたなあ。(笑)
2年越しで待ちわびた「太陽と戦慄」をわくわくしながら読み進めたのである。

読み始めてほんの数ページで「やっぱり面白い!」と思う。
「粛清せよ」という曲の詩はSNAKEPIPEが大好きなザ・スターリンのよう。
導師、泉水和彦が歴代バンドメンバーの命日を覚えているとはすごい!(笑)
それにしてもこの導師の経歴が興味深い。
お金持ちの息子→戦場カメラマン→ヴェトナムで天啓を受け→導師になったとのこと。
なんだか本当にありそうな話だよね?(笑)
そして「太陽と戦慄」の中で一番SNAKEPIPEが関心を持ったのは、この導師の思想である。
もしかしたら「危険思想」になるのかな。
蜘蛛の糸」のカンダタよりもその後から「我も我も」と付いてくるその他大勢に嫌悪感を持つSNAKEPIPEは、「まさにその通り!」と導師の言葉に大きくうなずいてしまった。
いや、テロ礼賛ということではないので勘違いしないでね!(笑)

バンドの話として読んでも、もちろんミステリーとして読んでもとても面白かった。
導師の書いた詩がヒントになっているとはね!
そして最後まで犯人が判らなかったSNAKEPIPE。
えっ、鈍過ぎ?(笑)

続いて鳥飼先生2008年の著作「爆発的」について。
これは「痙攣的」の続編にあたる作品とのこと。
パラパラとページをめくっただけで「日暮百人(ひぐらしもんど)」と「藍田彪(あいだあきら)」という「痙攣的」に登場していた名前を発見!(笑)
非常に楽しみである。

「爆発的」は副題に「7つの箱の死」とあるように7つの章から成り立つ小説である。
1章ごとに色が入った曲名をタイトルに付けている。
そして章ごとに一人の現代アーティストが登場するのだが、これがまた!
「痙攣的」と同じように「もう1つの謎解き」になっているのである。
登場人物の名前が実在するミュージシャン(ノイズやアヴァンギャルド、プログレなど)からの名前のパロディであることが鳥飼先生の作品の特徴なのである。
小説内で発生する事件は小説の中で解決して犯人が誰、というのは判る。
でもこの「もう1つのミステリー」のほうには「これが正解だよ」という解答はないので、勝手に「多分こうじゃないか」と想像するほかない。(笑)
ROCKHURRAHの協力の下、夜な夜な謎解きに明け暮れたSNAKEPIPEである。
その推理を含めて感想を書いてみよう。

1.黒くぬれ!あるいは、ピクチャーズ・アバウト・ファッキング
タイトルは「Paint It Black」、ローリング・ストーンズの曲である。
わざわざ説明するほどでもないか?(笑)
画家として登場するのが須手部有美(すてべあるみ)という女性。
すてべ、すてべ。変わった苗字だ。
で、思いついたのがビッグブラックレイプマンのスティーブ・アルビニ。
須手部を「すてーぶ」、有美を「あるび」でどうだ?(笑)

ホストとして登場する相生十二男(あいおいとにお)。
これはブラックサバスのトニー・アイオミだね!
ナンバーワン・ホストの王子凡雄(おうじつねお)。
音読みすると「おうじぼんお」。
おぅじぼんぉ、おずぃぼんぉ、おずぼぉん、あっ!おずぼーん!(笑)
ということでブラックサバスのオジーオズボーンでどうだろう?
ホストクラブの名前も「サバト」だしね!
店長の虎場はブラック・ウィドウのキップ・トレバーとか?違うかな?(笑)

須手部有美が発表する、人種問題をテーマにしたアクションペインティングって本当にありそう。
それにしても性同一障害から性転換した登場人物が登場するとは驚き!
実際SNAKEPIPEにもかつて同じことを真剣に考えている友人がいたので、そんなに珍しいことじゃないのかもしれないね。

2.青い影 ないしは、ノーサイドインサイド
タイトルはプロコル・ハルムの「A Whiter Shade Of Pale(青い影)」。
前衛演劇の俳優として出口日多尊(でぐちひだたか)が登場する。
実はこの名前、ROCKHURRAHと二人で長い間考え続けた難問!
顔を合わせる度に「でぐちひだたか」「うーむ」とうなっていたのである。
ブルーと付くバンドをかたっぱしから調べようとするも、SNAKEPIPEが思いつくのは「青い三角定規」や「ジャッキー吉川とブルー・コメッツ」だったり。(笑)
日多尊を「ぴーたーそん」と読むのはどうだろうということで考えついたのが、ブルー・チアーのディッキー・ピーターソン!
無理矢理過ぎ?(笑)
ただしこのブルー・チアーにはランディ・ホールデンとレイ・ステファンズというメンバーがいるようでこれはもしかしたら堀手蘭(ほりでらん)と堀手玲(ほりでれい)なのでは?(笑)

甲本ヒロコ(こうもとひろこ)と増間正敏(ましままさとし)はブルーハーツの甲本ヒロトと真島昌利というのすぐに分かったけどね!
鳥飼先生の作品にブルーハーツというのがちょっとびっくり。

出口日多尊は能楽の融合や凝った舞台装置などを合わせた演劇という、確かに海外ウケしそうなスタイルを構築。
<ノーサイドインサイド>に出てくる機械の蜘蛛は、ラ・マシンのラ・プリンセスみたいな感じなのかな。
うーん、こんな舞台が本当にあったら観てみたいな!(笑)

3.グレイとピンクの地 もしくは、ウィッシュ・ウィー・ワー・ヒア
タイトルはキャラバンのIn the Land of Grey and Pinkとピンク・フロイドのwish you were hereのもじりね!
彫刻家として登場する是水大(これみずだい)と是水海(これみずかい)の双子ユニット、是水トゥインズ。
是水大はトゥインド、是水海はトゥインクと名乗っている、というのがヒントになった。
ピンク・フェアリーズにトゥインクと、そのまんまの名前を発見!(笑)
美術商として登場する黒眼帯の砂野半太(すなのはんた)も同じくピンク・フェアリーズのラッセル・ハンターとダンカン・サンダーソンのミックスかな?
砂だからサンド、で。
苦しい?(笑)

彫刻家として登場する久米一村(くめいっそん)。
これはピンク・フロイドのニック・メイソンね。
ニッを飛ばしてク・メ/イソンと本当に日本名にありそうな仕上がり!
このセンス、さすが!
大笑いしちゃったよ。(笑)
そして同じく彫刻家の志度場礼人(しどばれいと)は、ピンク・フロイドのシド・バレットに間違いなし!
この名前ってちょっと苦しくない?(笑)

千体もの人形というと一番初めに思いつくのはYMOの「増殖」だけど(古い?)、それが全裸のアンドロギュノスとなるとかなり迫力があるだろうね。
何年か前、秋葉原でものすごく精巧にできている美少女人形を見たことあるけれど、あんな感じじゃないかと想像する。
あれがいっぱいだったらすごいだろうなあ。
その道のマニアじゃなくても欲しくなる逸品だろうな。(笑)
これも観てみたいアートだね。

4.白日夢 さもなくば、エレクトロニック・ストーム
タイトルはホワイト・ノイズのAn Electric Stormかな?
続いては音響アートの辺根戸美留(べねとよしとめ)。
これはホワイト・ハウスのウィリアム・ベネットね!
美留を「びる」と読むと丁度いいんだよね。
ウィリアムの愛称はビルみたいだし。(笑)
辺根戸美留と共に活動していた織地創生(おりじきずお)。
この名前もかなり悩んだけれど、ある日ROCKHURRAHが
「おりじ、おーりっじ、おりっじ・・・あっ!スロッビング・グリッスル!」
と叫び、ジェネシス・P・オリッジじゃないかと言い出す。
「おりっじ」は良しとして「創生」は?
「ジェネシスは創世って意味じゃなかったっけ?」
とのこと。(笑)
なるほどね!
名前はそれでなんとかクリア(?)したとしても、バンド名にその章のカラーがついてる、という点はクリアできるのだろうか。
スロッビング・グリッスルに色はないよね?
と、またジェネシス・P・オリッジについて調べていると、ホワイト・ステインズというバンドと活動を共にしていたみたいで。
全然違うかもしれないけど、推理していくのは楽しかったな。(笑)

どうしても分からなかったのが坊屋昌巳(ぼうやまさみ)。
これは全く何も出てこなかったのがちょっと悔しい。(笑)

辺根戸美留の<エレクトロニック・ストームI>はアイソレーションタンクに入って音楽を聴く、という作品。
貴志祐介の「十三番目の人格 ISOLA」にも出てきた、閉所恐怖症の人は入ることができない子宮をイメージした装置だったはず。
立花隆が前世を知るための実験(だったと思う)で入っているのをテレビで見たことあるけど、とても怖そうだった。
ゆったりした気分にはなれそうにないけど、ちょっと経験してみたい気もするね!

5.赤い露光 でなければ、ソルジャー・ウォーク
タイトルはクロームのRed Exposure(赤い露光)とレッド・クレイオラのSoldier-Talk のもじりかな。。
政治的パフォーマンス・アートの東風村麻世(こちむらまよ)。
これはレッド・クレイオラのメイヨ・トンプソンか。
東風村を「とんぷそん」と読むとあーら不思議!
ぴったりの名前が出来上がったよ!(笑)
この名前も秀逸だね!

政治家、能見(のうみ)の秘書、木出(きで)はRed Hot Chili Peppersのアンソニー・キーディスか?
団子屋の古詩庵(ふるしあん)も同じくRed Hot Chili Peppersのジョン・フルシアンテじゃなかろうか?
ぷぷぷ、フルシアンテが古詩庵!(笑)
そう考えるとコンパニオンの茶奴(ちゃやっこ)もRed Hot Chili Peppersのチャド・スミスかもしれないね!
能見は頑張って探したけど、残念ながら分からなかった。

この手の政治色の強いパフォーマンスというのがSNAKEPIPEにとっては難しい。
結局世界情勢とか政治に疎いのが原因だと思う。
そして今回の東風村麻世のパフォーマンスも解り辛かった。
もっと勉強が必要ね。(笑)

6.紫の煙 または、マシン・ヘッズ
タイトルはジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのPurple Hazeとディープ・パープルのアルバムMachine Head だね。
登場するのは映像作家の城間英一(しろまえいいち)。
これは日本のバンド、のメンバー、城間正男と宮永英一を混ぜた名前か?
そう考えるととてもすっきりまとまるんだけどね。
なんとROCKHURRAHも紫持ってたよ、だって。(笑)

城間英一の作品<マシン・ヘッズ>は映像とボディ・アートの融合になるのかな。
観に行こうと思っている森美術館の「医学と芸術展」が近いように思う。
今まで誰も観たことがない究極の映像か。
観たいような観たくないような。(笑)

7.紅王の宮殿 またの名を、デス・イン・セブン・ボクシーズ
タイトルはキング・クリムゾンのIn The Court Of The Crimson King(クリムゾン・キングの宮殿)の漢字バージョンかな。

「紅の処刑室」にあった分断された豚の標本は、ダミアン・ハーストの牛みたいで想像し易いね。
それにしても豚の血がこびりついたために出来上がった赤い部屋って・・・。
SNAEKPIEPは怖くて入れないだろうなあ。

事件は探偵、星野万太郎の推理で解決なのだろうか。
「こういう可能性もある」という示唆だから、これが絶対じゃないんだよね。(笑)
そしてもし星野万太郎の推理が正しいとしても、犯人の動機が謎なんだな。
快楽殺人の一種と言われればそうかもしれないけど。
SNAKEPIPEなりに推理してみるかな!

事件そのものの面白さに加えて、いろんなジャンルの現代アートの話、そして登場人物の名前の謎解き、と話題がいっぱいの「爆発的」はとても刺激的だった。(笑)
鳥飼先生の新作は1月22日発売予定の「このどしゃぶりに日向小町は」のよう。
「入村徹に届いた、ルビーからの謎めいた手紙」
なんて書いてあるよ!
これって「痙攣的」に登場のバンド、鉄拳のメンバーだよ!(笑)
また楽しみが増えて嬉しいな!

時に忘れられた人々【06】ヴィンテージ漫画篇1

【ROCKHURRAHが少年時代に愛読した漫画の登場人物たち】

ROCKHURRAH WROTE:

何と大晦日から元旦、2日にかけてROCKHURRAHとSNAKEPIPE、二人して風邪をひいてしまい、絵に描いたような寝正月となってしまった。特に今ブログを書いてる本人のROCKHURRAHは通常の風邪も微熱程度で終わるはずなのに39度近い高熱を出して下がっても37度以上というありさま。それくらいは大した事ないよという人も多かろうが、普段あまり高熱を出さない者にとってはビックリのハプニングだ。元旦の風邪など生まれてはじめての経験かも。とりあえず市販の風邪薬や解熱剤が効かなくはないのでインフルエンザではないと思えるけど。

さて、SNAKEPIPEも熱はなくても年末の疲れからちょっぴりダウン気味なので、今回は二人ともブログどころじゃない状況。だけど開設以来一度も休まずに毎週日曜日に更新してるものだから思考力もあまりない朦朧とした頭でROCKHURRAHが書くことにする。何だか新年早々悲壮な決意だな(笑)。
今日の内容はほとんど初めてといってもいい話題だが過去漫画について。

昔は大変に漫画好きの子供だったROCKHURRAHだがある時期よりピタッと読まなくなってしまった。原因は今でも不明なんだが「漫画より小説や映画の方が面白くなった」とかそういう理由ではないのだけは確かで、おそらく好きな漫画が絶版になって手に入らなくなってしまったとかそういう時代的な理由で買うのをやめたんだと思う。

そんなROCKHURRAHが個人的に好きだった作品について軽く思い出話を語ってみようというのが今回の趣旨だ。ちなみにROCKHURRAHには兄が二人いて、その二人のコレクションも読んでるので実年齢よりもさらに古い作品が含まれている。漫画はほとんどがコミックスで読んで漫画雑誌を毎週買ったりもあまりしてなかったしね。
では思いつくまま書いてみよう。熱があるのでリンクなど一切なしで勘弁してね。

「デビルマン/永井豪」
漫画家自体の大ファンでこの人の作品ならばどれでも好き、と言えるほどのめり込んだわけではないが、70年代前半の永井豪の暴走っぷりは確かに誰が見ても素晴らしくとんでもないものだったろう。個人的に好きな作品も多く、この時代の漫画の中では最も過激な表現に衝撃を受けた子供たちも多かったろう。
主人公が雪山で怪物に食い殺されるという衝撃的な発端の「魔王ダンテ」、痛快時代劇から出発して後半は何だか収拾がつかなくなる永井豪版「魔界転生」とも言える「ズバ蛮」、学生運動という特異なテーマを扱ったヴァイオレンス・アクションの傑作「ガクエン退屈男」、この辺はとにかく大好きで何度読み返したかわからない。ちなみに三作とも朝日ソノラマのサン・コミックスから出ていて、ROCKHURRAHはなぜかここの装幀が大好きだったとみえる(落丁が多いのがタマにキズだったが)。
そんな永井豪の代表作とも言えるのが誰でも知ってるこの「デビルマン」だろう。有名だから敢えてストーリーとか感想については書かないけれど、後半の暴走ぶりは凄まじく、当時の漫画ではタブーとされていた(に違いない)表現を少年マガジンというメジャー誌で堂々と行なったところが凄い。後半の魔女狩りという歯止めの利かなくなった民衆のエピソードも衝撃的だったが、個人的には前半のシレーヌ編も捨て難い。デビルマンが敵とするのは血も涙もない悪魔ではなくて愛も感情もある悪魔なのだ、というところがROCKHURRAH少年の琴線に触れたらしい。

「ワースト/小室孝太郎」
上記の「デビルマン」とかと比べるとかなりマイナーな部類に入るのかな?とりあえず天才的漫画家と言われる小室孝太郎の唯一の代表作だ。
世界中で同時に降った雨に濡れた人間はみんな死に絶えて、その後に食人鬼として甦る。彼らは残った人類をどんどん食い殺してゆき、ワーストマンと呼ばれる怪物だらけの世界になるという発端から始まる物語。ホラー映画好きならば誰もが思うだろう。これはジョージ・A・ロメロ監督の代表作「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」「ゾンビ」とほぼ同じシチュエーションなわけである。この漫画は70年くらいであるからまだ「ゾンビ」は誕生してなくて、もし作者が着想を得たとしても「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」からという事になる。さらにロメロ監督の作品が割とローカル限定だったのに対してこの「ワースト」は生き残った人類VSワーストマンという壮大なスケールの物語になっていて、主人公も三世代にわたる。そして最後の決着は氷河期のあとという途方もないSF作品となっている。ゾンビも最終的にはちょっと喋れるようになったり進化はしたがこのワーストどもはたった数十年と思える三世代にして空を飛べるようになったり海を泳いだり、恐ろしく進化の度合いが速い生き物というのがありえなくも怖かった点だ。

「青の6号/小沢さとる」
潜水艦を主役としたSFアドベンチャー大作の第一人者とのことだが、そういう特殊なジャンルを描いた漫画家はその後も滅多には現れず、たぶんずっと第一人者のままだったのではないかと思われる。先に大ヒットした「サブマリン707」も無論好きだったのだが、この「青の6号」の方が単に出てくる潜水艦が好きだったというわけ。主役はヒゲにパイプのダルマおやじとも言える艦長とポンコツ潜水艦青の6号。しかし撃沈された青の1号コーバック号や敵艦ムスカの方がなぜか恰好良かった。上記の2つなどと比べると危ない思想もなく、単純に少年漫画の王道とも言える善悪の図式、この作品に関しては漫画そのものが云々というより、純粋にメカに対する興味(というほどメカに興味持った覚えもないが)だけが思い出に残る。「原子力潜水艦シービュー号」「スティングレイ」などの海外特撮TVドラマもそうだったが「青の6号」シリーズもプラモデルとなって風呂での遊びに活躍したものだ。しかもなぜか同じシリーズなのに全然縮尺合ってなくて青の6号搭載のミニ潜水艇フリッパー号よりも青の1号コーバック号の方がずっと小さかったり、なんだかいいかげんな大らかな時代。

「聖マッスル/ふくしま政美」
一時期Quick Japanなどで再評価されて多くの人がそれをきっかけに復刻版を手にしたはずだが、オリジナルは少年漫画史に残るカルト漫画であり醜悪で奇っ怪な作品として伝説だったものだ。何がすごいってこの主人公(名前はない)物語の大半で究極に鍛えられた筋肉を惜しげもなく披露しっ放し、つまりほとんどの場面で全裸なのである。古代ローマとかその辺をミックスした世界でこの名無しの青年が自慢の肉体を武器に渡り歩いてゆくというただそれだけのストーリーなんだが、とにかく見せ場はど迫力のコマ割りと筋肉のぶつかり合いのみというノーマルな少年少女の読者には理解不能という世界。独特のいやらしいタッチの絵も好き嫌いが分かれる(というか好きと言える人はめったにいなかったはず)ところだった。本来ならばこの当時の少年だった者たちの間でのみひっそり語られるはずの作品が後の世代の人間に見出されるというのは音楽の世界でも数多くあることだけれども「消えた漫画家」とかそういうネタ本じゃなくて、どうか自分の力で見出すようにしてもらいたいものだ。

「ワイルド7/望月三起也」
どちらかと言えばSF的な漫画を好むような作品を挙げてきたがここに書けなかったものも多数、スポ根から少女漫画まで幅広い趣味があったのが自分でも意外だと思える。望月三起也作品も「ケネディ騎士団」「秘密探偵JA」「竜の旗」などなど子供の頃から大好きなジャンルで、特に代表作の長編「ワイルド7」は日本のアクション漫画の中では最も好きな作品だ。少年キングという当時からかなりマイナーな雑誌で連載していたにも関わらず大ヒットしたので知っている人も多かろうこの作品。ごく簡単に書くならば法の力で裁く事が出来ない悪党を「退治」するために集められた札付きの不良どもがワイルド7なる警察の非合法組織となり、悪の組織と戦うという話だ。飛葉、ヘボピー、両国、オヤブン、八百、ユキなどという個性的な面子の性格設定もよくされていて各人が乗るバイクや拳銃も素晴らしく凝っていたのが多くの読者に受けた原因だ。これまでの日本の漫画とは明らかに違うダイナミックな描写とあっと驚くアクション、ストーリー展開も素晴らしい。特にコミックス9巻分にもなる最終章「魔像の十字路」ではいい味を出していたキャラクターが一人一人犬死してゆくというやりきれない展開で最後まで読むのが辛かったという思いを漫画ではじめて経験した作品。

ここまで書いたけどやっぱり一回のブログで書ききれなかったため、とりあえず今日はここまで。レコード屋について書いてたブログ記事も中途半端のままだし、今年一年も何だか宿題の多い年になりそうだな。では今から療養に専念しマッスル。

BREAK ON THROUGH TO THE OTHER SIDE

【イアン・カーティスを偲んで作ってみました】

SNAKEPIPE WROTE:

2週間ほど風邪のためダウンしてしまったSNAKEPIPE。
実はまだ完全には治っていないけれど、ブログを書くことを決意。(大げさ)
今年の風邪は長いみたいなので皆様もご注意を!

さて今回は「若くして亡くなってしまったアーティストの伝記映画」について書いてみたいと思う。
恐らく探せばもっとたくさん制作されているだろうけど、思いついた映画3本をまとめてみた。

まずは「ドアーズ」(原題:The Doors)1991年のアメリカ映画。
監督はオリバー・ストーン。
1971年に27歳で亡くなったドアーズのヴォーカル、ジム・モリソンの伝記映画である。
大学時代から死ぬまでが描かれている。

なんといってもこの映画のすごいところはジム・モリソンを演じたヴァル・キルマー
ジム・モリソンが乗り移ったんじゃないか、と思ってしまうほどそっくり。
吹き替えなしでヴァル・キルマー本人が歌っていたというのもびっくり。
顔立ちが似てると声質も近いだろうけど、それにしても「ものまね王座決定戦」で優勝できるほど。(笑)
ジム・モリソンの歌い方って難しいと思うけど、よく特徴を捉えてるよね。

ヴァル・キルマーの圧倒的な存在感のお陰でなんとか保ってはいるものの、映画として観た時にはやや物足りなさを感じてしまうのは事実。
同じ大学に通う友人とバンドを始め、あっという間にバンド名が決まり、「Light My Fire」のあの印象的なオルガンのイントロをほんの数分で作り、あれよあれよと人気バンドになっていく。
全部が本当のことなのかもしれないけど、ちょっと展開早過ぎないか?
ジム・モリソンに焦点を当ててるから仕方ないとしても、他のメンバーについてはほとんど何の情報もなし。
少し乱暴な感じがするのはSNAKEPIPEだけかな。

バンドは知名度も上がりセールスも絶好調で、ジム・モリソンは時代の寵児となる。
それでも何故だかジム・モリソンは心に空洞の部分を抱えている。
グルーピーと遊んでも、黒魔術のような儀式をやっても、ドラッグでも満たされない。
そこにすっぽり収まるのがインディアンの幻影に象徴される死の匂いだ。
ジム・モリソンは死を恐れながらも、同時に強い憧れを持っていたように思える。
だからこその破滅的な、死に急いだ生き様だったのかもしれない。
ジム・モリソンの最期はバスタブの中。
やっと安息の地に行かれたような、穏やかな表情だった。

実はSNAKEPIPEはドアーズが好きで、ジム・モリソン詩集まで持っているのである。(笑)
一応読んではみたものの、やっぱり詩の世界は何回読んでも非常に難解。(ぷっ)
原文で読んで、意味を理解し、言葉の響きを堪能するなんて技は持ち合わせていない。
それでもジム・モリソンの心の深淵に少しでも触れることができるような気がして、ドアーズの曲に自分なりの物語を作ってみたりする。
時代がそうさせたということもあるんだろうけど、ジム・モリソンはやっぱり稀有な存在だな、と思う。

そういえばドアーズはカルトのヴォーカル、イアン・アシュベリーを加えて新生ドアーズとして活動再開し、来日もしていたようで。(現在は休止中?)
過去にあれほどまでに輝いてしまったバンドが、また現代に以前以上のまばゆい光を発することができるだろうか?
過去をなぞる結果になることが多いように思う。
バンド復活って厳しいよね。(笑)

続いては「コントロール」(原題:Control)、2007年。
監督は有名な写真家アントン・コービジン。(最近ではコービンというのが主流みたいだけど、80年代風にコービジンと読みたい)
1980年に23歳で亡くなったジョイ・ディヴィジョンのヴォーカル、イアン・カーティスの伝記映画である。

物語はイアン・カーティスの高校時代から始まる。
その当時のガールフレンド、デボラと19歳であっさり結婚。
卒業後は公務員、とバンドのヴォーカルとはかけ離れた人生設計にびっくり!
イギリスは日本と違って18歳から自分の意思で結婚ができるようなので、こういうのもアリなのかも?
それにしても早過ぎだよね?
それからバンド結成である。
うーん、やっぱり順番逆じゃないの?(笑)
バンド名は初め「ワルシャワ」、次にジョイ・ディヴィジョンに変更される。
ジョイ・ディヴィジョンってナチス・ドイツ将校の慰安所って意味なんだって?
ワルシャワにナチスって・・・政治的要素の強いパンクバンドを目指してたのかな。

バンドはトントン拍子でデビュー、当時できたばかりのマンチェスターのインディーズ・レーベル「ファクトリーレコード」の看板スターとして順風満帆なスタートを切る。
正直言ってSNAKEPIPEは、この手の音楽が一度聴いた人全てを納得させることができたのかなと疑問に感じてしまった。
この手の音楽というのは、地味で暗くて、ルックスなどに特別な特徴がないバンドなのにという意味である。
その手の音楽が得意なROCKHURRAHに聞いてみると
「パンクが終わって孤独感や不安感を持った行き場のない若者達が、次に精神的な支柱として求めたような音楽であり、そういう時代の流れに乗ってみんなが拠り所とするバンドになったのではなかろうか」
と返ってきた。
ふむ、なるほどね!(笑)
SNAKEPIPEは音楽よりも「あの」ヘンなグルグル腕振り回しダンスに目が点!
そして「あの」シャツにスラックスという公務員ファッション。
SNAKEPIPEが知ってるイギリスのバンドって、みんなお洒落に気配りする印象なんだけど・・・?

バンド活動をしていくうちにベルギー人のアニック・オノレと愛人関係になる。
アニック・オノレは音楽レーベル「クレプスキュール」の創始者で、ジョイ・ディヴィジョンの理解者。
当然のようにイアン・カーティスの理解者でもあった。
仕事をバリバリこなし、音楽を含む芸術活動を理解するお洒落な女性。
子供の世話にかかりきりで、生活臭がする妻を厭うようになるのも無理はない気がしてしまう。
SNAKEPIPEは決して不倫を良し、と言っているわけではないのでお間違えなく。

そして突然発症してしまった「てんかん」の恐怖がイアン・カーティスを襲う。
映画はとても上手にイアン・カーティスが精神的に追い詰められて行く様を描いている。
イアン・カーティスを知らなくても、伝記映画じゃなくても、ドラマとして充分完成されていると思う。
最期のシーンは観ていて悲しくなってしまった。

イアン・カーティスという人は非常にもろく、傷つき易く、一人になるのが怖いタイプだったんだろうね。
だからいつまでも、本当はとっくに愛なんて感じていない妻とも続けている。
子供に対しても愛というよりは恐怖を感じている。
これはもしかしたら子供も同じ「てんかん」の血を受け継いでいるかもしれないということと、そのことで子供から冷たくされるかもしれないという2重の恐怖。
そんな心持では「我が家でくつろぐ」なんてことは難しいだろう。
早く離婚して、愛人のアニック・オノレと一緒になっていたら結果は変わっていたのかもしれないね。

最後は「シド・アンド・ナンシー」(原題:Sid And Nancy)、1986年。
監督はアレックス・コックス
告白すると、なんとSNAKEPIPEはこの映画を今まで観たことなくて、今回初めて鑑賞してみたのである。
なんで今まで観なかったのかって?
いや、なんとなく。(笑)

今さらだけど一応書いておくと、1979年に亡くなったセックス・ピストルズのベーシスト、シド・ヴィシャスを描いた伝記映画である。
映画はナンシーが死んでシドが取り調べられているシーンから始まり、シドの回想として物語が進行する。

初めに観たから「あの黒髪の人がシドか」と分かったけれど、冒頭シーンで一緒に登場しているオレンジ色の髪でベレー帽の人が誰なのか分からない!
話の文脈から「どうやらジョニー・ロットンらしい」と推測。
似てないよー!(笑)
シドはモデルといってもいいくらいのスタイルの良さが特徴なので、ゲイリー・オールドマンでは役不足だと思った。
オーディションなどで募集したらもっと似てる人いたんじゃないかな?
映画の中で唯一似ていたのはマルコム・マクラーレン役のみ!
他の人は誰も似ていなかった。

そして前からピストルズのファンだった、というナンシーと知り合う。
ここで前から疑問だったので調べてみると、どうやらナンシーはシドより1歳年下!
えっ、うそでしょー!と叫ぶ人多いはず。
ナンシーのほうが10歳くらい年上に見えるもんね。(笑)
いつの間にかシドとナンシーは「二人で一つ」状態、くっついてないと生きられないほどになっている。
ここの過程がよく描かれてなくて、はっきり分からなかったのが残念。
シドにはいっぱいファンいただろうに、わざわざナンシーを選ぶには理由があったんだろうなと。(笑)

シドとナンシーはどんどんドラッグに深入りし、堕落していく。
部屋は散らかり放題、寝てるのか起きてるのか分からないような怠惰な毎日。
あんな状態では明日への希望なんて何もなくなっちゃうよね。
それがパンクな生き方、と言えるのかもしれないけど?

ここまで書くと「どうして今まで観なかったのか」の答えが分かってきたように思う。
やっぱりあんまり面白くないし、シドやナンシーへの共感もないし、ゲイリー・オールドマンだし。(笑)
シドは一体何がやりたかったのかな。
21歳じゃ若過ぎる死だったね。

こうして3本についてまとめてみたけれど、前述したように映画として見ごたえがあったのは「コントロール」だった。
何故なのかと考えると、監督が実際にジョイ・ディヴィジョンと関わっていたことや原作が妻のデボラだったことが原因かな。
現実に本人に会って話したり見ていたら、より忠実に伝記映画ができるからね。
オリバー・ストーンやアレックス・コックスが本人と関わっていたのかどうかは不明だけど、どうしても「あとづけ」の感じはする。

イアン・カーティスは本当に追い詰められて、ギリギリのところまで行ってしまったんだろうね。
ジム・モリソンとシド・ヴィシャスはドラッグの過剰摂取。
これも広い意味では自殺になるんだろうけど、ひょっとしたら事故の可能性もある。
ドラッグに手を出していなかったら、今もまだ活動していたアーティストだったのかもしれないね。

CULT映画ア・ラ・カルト!【05】恨み・女任侠編

【お色気玲子とクールな芽衣子。どちらがお好み?】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のCULT映画ア・ラ・カルト!は70年代の女ヤクザ映画でテーマが恨みになっている2つのシリーズについて特集したいと思う。
恨みと言えばこの人、ご存知梶芽衣子
そしてもう一人は池玲子
二人がそれぞれ主演した「修羅雪姫」と「姐御伝シリーズ」について書いてみよう。

まずは「修羅雪姫」から。
これは小池一夫原作、上村一夫の漫画が元で、映画化されたのが1973年。
その漫画は未読のSNAKEPIPEなので、どこまで原作に忠実でどこが違っているのかを書くことができないのが残念だ。
時は明治時代、日露戦争の後が舞台になっている。
SNAKEPIPEには時代考証などは所詮無理な話だけれど、それにしても明治時代にこんな女性刺客がいたとはびっくり!

簡単にあらすじを書いてみよう。
あまりに不当な理由で亭主と子供を殺された女が、殺したメンバーの一人を殺害し投獄される。
そして復讐を託すために獄中で子供を産む。
雪の降る日に生まれたからという理由で名前は雪という女の子だ。
出産後に母は帰らぬ人となる。
修羅の道を行く運命を背負い母の恨みをはらす目的で生まれてきた子供、という設定だ。
恨みをはらす、というのは母の亭主を殺した残りの3人を同じ目に遭わせるというものである。

獄中で母親に「雪をよろしく」と頼まれた女が幼い修羅雪を連れて行った先がお寺。
そこの和尚さんが剣豪だったため特訓を受けるのだ。
寺の和尚さんが殺人マシーンにするために少女をしごくシーンがすごい!
しかも和尚さん役は水戸黄門様で有名な西村晃
ますますギャップを感じてしまう。
普通に考えて和尚さんが復讐に手を貸すというのは設定としておかしいと思うけれど、映画ということで良しとするか。(笑)
とても女の子相手とは思えないほどキツい特訓を受け、雪は剣の腕を上げ、空中で回転するような技も身につける。
こういうアクロバット的な要素も含まれているので、アクション映画として観ても面白いんだよね。

そして成長した修羅雪は女刺客として「その道」で有名で、いろんな仕事を請け負って生活しているようだ。
そのため賭場にも自由に出入りできて、壺振りまでやってるからすごい!
「入ります」「よ、ござんすか」のあれ、ね。
ここら辺はヤクザ映画らしいシーンで、梶芽衣子は凛とした雰囲気があるからよく似合っていた。
ふすまが花札の柄になっていて、その前に座る白黒の縦縞の着物を着た修羅雪がとてもカッコいい!

話の途中から登場する新聞記者役の黒沢年男演じる足尾龍嶺。(若い!)
なんと特訓をしていた和尚の知り合いで、修羅雪の身の上を知ることになる。
いつしか修羅雪の味方のような存在になっていく。
が、とても悲しい事実が発覚。(ここではあえて言わないでおこうか)
修羅雪は少しは心を通わせていたと思われる足尾龍嶺に対しても、ほとんどためらわずバッサリ。
恋愛よりも当初の目的「恨みをはらす」ほうが先、という初志貫徹ぶり!
シビれる~!

修羅雪の母の恨みをはらす目的は成就し、めでたしめでたし。
とならないのは次回作があることでも分かるよね。
修羅雪はすっかり「おたずね者」になっちゃって。

というところから始めるのが「修羅雪姫 怨み恋歌」1974年公開作品だ。
前作からの続きなので、時代設定などはもちろん全て同じ。
「日本勝った、日本勝った、ロシア負けた~」
なんて歌を子供が歌っているシーンも出てきた。
あの歌は本当にあったのかな?

修羅雪は警察に追われ続け、ついに御用となってしまう。(表現古い?)
37人を殺害した罪ということで絞首刑を言い渡されるが、執行当日に何者かの手により身柄を拘束されてしまう。
「命の恩人」と思った人物は、修羅雪の腕を買い仕事をしてもらいたいと切り出すのだった・・・。

と、まるでWikipediaのあらすじのような書き方をしてみたけど。(笑)
囚人として馬車で移送されている修羅雪を開放しに来た賊(?)が面白かった。
時代ということを考えてだろうけど、「おかめ」の仮面を付け帽子をかぶり馬に乗って来るのだ。
せめて般若の面くらいにして欲しかったんだけどね。
ちょっと間が抜けて見えたのはSNAKEPIPEだけかしら?(笑)

仕事の依頼をするのが秘密警察所属の岸田森演じる菊井。
あまり岸田森が出演している映画って観たことないんだけど、すごい役者さんだね。
まずは顔がすごい!
ドラキュラ役、と聞いて納得だね。
この菊井という男が非常に嫌なヤツで、修羅雪のライバルといったところか。

今回は原田芳雄が修羅雪の淡いロマンスの相手といった役どころで登場。
無政府主義者(アナーキスト)、明治時代当時は反政府主義者とみなされ、いつでも警察にマークされている兄(伊丹十三)がいる設定だ。
この伊丹十三の妻役として吉行和子
この映画で吉行和子の濡れ場を見ることになるとは思いもよらなかったわい。(笑)

今回の修羅雪は前回よりも更にアクション度アップ!
着物姿の女で馬にまたがるのは初めて観た!
横座りじゃなくて、またがってるとこね。(笑)
坂を下りながらの殺陣シーンは難しかったんじゃないかな。
海際での波しぶきをあげながらの横走り殺陣はチャンバラではお馴染みだけど、キレイな女性でのバージョンはあまりないよね。
ラストの急な階段での殺陣。
梶芽衣子は「他の役者さんが上手に動いてくれただけです」なんてインタビューで答えてたけど、動きがきれいでとても様になっていると思う。

ラストではまたちょっと心を通わせていた原田芳雄を背中から一突き!
今回は「とどめをさす」のが「優しさ」ともいえたけど。
修羅雪はどうも恋愛が似合わない設定みたいね。

心の中にメラメラと炎が燃えてるのに、ぐっと睨みつけるまなざしだけで表現ができる女優はあまりいないと思う。
もしかしたら日本特有の文化なのかもしれないけど、仁義な世界というのはストイックな感じだからね。
タランティーノ監督が修羅雪姫から影響を受けて映画を製作した、というのは分かる気がするね。

さて続いては梶芽衣子にはないものを持った女優、池玲子の登場だ。
池玲子って誰、という人が多いと思う。
たまたまROCKHURRAHが石井輝男監督について調べている時に知った女優だったのだ。
石井輝男はこのブログで何度か紹介しているけど、カルトな映画をたくさん残したお気に入りの監督である。

「不良姐御伝 猪の鹿お蝶」は1973年の東映作品。
普通のヤクザ映画かと思いきや、観始めて5分もしない内にびっくりする。
なんと池玲子、全裸で殺陣!(笑)
入浴シーンからいきなり襲われ、反撃に出るという設定だったから不自然ではないにしてもタイトルバックが始まる前にすでにお色気満点!
雪が降る中を全裸でバッサバッサと斬りつけるのは、なんともお見事。
一体どんな展開になるのかとても楽しみになる。

池玲子扮する葛西杏子、通称「猪の鹿お蝶」は子供の頃に目の前で父親を殺される。
父の恨みをはらす、というストーリーである。
時代設定も明治時代の同じ頃、身内の恨みをはらすために女が頑張る、という大筋も前述の修羅雪姫とほぼ同じ!
ただどちらも同じ1973年公開作品で、どっちが先なのかよく分からなかった。

梶芽衣子の修羅雪姫は剣の腕前で悪人をなぎ倒していったけれど、池玲子の猪の鹿お蝶は使えるものはなんでも使う。
武器はドスも拳銃も使う。
相手が敵と分かっていても、自分の肉体まで差し出しとどめをさす。
女だからできる、いや女ならではの方法で手段を選ばず目的達成するところが梶芽衣子との大きな違いだ。

そしてその脱ぎっぷりの良さには恐れいってしまうほど。
ヌードモデルをやっていたというだけあって、さすがに整ったプロポーション。
演技力もあって、殺陣の動きもいい。
池玲子、すごい!とすっかりファンになってしまった。(笑)

お色気シーンあり、でもやっぱり任侠の道も忘れてないのよ、というミックス感が新しい感じがする。
明治時代だから鹿鳴館、と外人がいっぱい出てくるのも珍しい。
スウェーデンの女優クリスチーナ・リンドバーグまで出演しているし。
セリフが英語になっちゃうところもあって、国際的な映画でもある。

最後にどんでん返しがあったけれど、猪の鹿お蝶は当初の目的である父の仇を討つ。
雪の降る中、足をひきずりながら歩いて行くところで終了。
一体猪の鹿お蝶はどうなっちゃったのか、と想像にお任せしますというラストね。

次回作の「やさぐれ姐御伝 総括リンチ」も1973年と同年の作品だ。
こちらの監督が石井輝男。
1年のうちに2本も撮ってるってすごいパワフルだね!

今回の姐御伝シリーズは前作の続き、というわけではなくて別の物語が進行する。
池玲子の「猪の鹿お蝶」という設定だけが同じ。
麻薬密売しているヤクザにお蝶が関わる話である。

今回はタイトルバックの殺陣のシーンで、またまたやってくれてる池玲子。
誰も着物に刀入れてないと思うのに、どんどん着物が脱げていつの間にか全裸に。(笑)
池玲子=全裸殺陣の構図が出来上がったね。
面白過ぎだよ!

麻薬取引に利用された女スリ集団やまた別のズべ公グループ(死語)など、女ばかりの集団が入り乱れ、その時代にこんなに悪さをする女が多かったのかなと疑問。
最後にはそれらの女集団が一丸となって麻薬密売ヤクザを撲滅するために立ち上がる。
そしてその時にまた全員がわざわざ脱いじゃうところがおかしい!
あまり必然性がないところでヌードお披露目があるんだよね。
その昔「女ばかりの水泳大会」などでよく「出ました、ポロリ!」なんてヤラセ放送があったけど、そんなの目じゃないほどの女全員脱ぎまくり!(笑)
あそこまで「あっけらかん」としていると笑いになるから面白い。

前作に比べると「恨み」の度合いが低いため、壮絶感はあまりない。
いくつかの女集団が出てきたことで話も複雑になっていて、スカッとしない。
この映画の魅力は池玲子だけ、かな?(笑)

梶芽衣子と池玲子、名前も似てるし。
恐らく梶芽衣子の向こうを張るような女優として存在してたのかなと想像する。
今回の修羅雪姫と姐御伝も役柄に近いものがあるしね。
他にも梶芽衣子主演の「野良猫ロック」に対抗したと思われる池玲子の「女番長ブルース」があるので、またの機会に書いてみたいと思う。