映画の殿 第28号 パンクロッカー、スクリーンに現る

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【これらの者どもが映画で大暴れ】

ROCKHURRAH WROTE:

何回かブログ記事にも書いてるように本日、3月4日はSNAKEPIPEの誕生日でウチにとっては記念日となる。
おめでとう、SNAKEPIPE。
さらに3月6日は尊敬するミステリー作家、鳥飼否宇先生の誕生日なのだ。
おめでとうございます、鳥飼先生。
ついでと言っちゃ何だが3月5日はROCKHURRAHの兄の誕生日、おめでとう。

メデタイ日が続くという事で今週のブログはハッピーにまつわる曲を選んで・・・おっとっと、それは既に1月に書いてしまっていたよ。
では今回のはハッピーともバースデイとも関係ないけど、「映画の殿」にしてみよう。
このシリーズ企画「映画の殿」をROCKHURRAHが書くのも久しぶりで最後に書いてから2年くらいは経ってるみたいだね。

そもそも感想文みたいなのが非常に苦手なROCKHURRAH。
映画について素直に書くよりも、映画の中でかかった80年代ニュー・ウェイブについて、とか本筋とは関係ないところばかりに着目して今まで記事を書いてきた。
しかし好きだった曲がたまたま映画の中で使われるなんて、確かにそうそうある出来事じゃない。
偶然見つけたらメモっておいていくつか貯まったら書くという手法だから、そりゃ記事数が少ないのも当然だとは思うよ。

今回はパンクやニュー・ウェイブのミュージシャンが演奏シーンでもドキュメンタリーでもなく、役者として登場する映画を軽く書いてみようかな。さて、どんな名演技が飛び出してくるのか?

ROCKHURRAHが知る限り最もリアルタイムでパンクのミュージシャンが登場した映画はデレク・ジャーマン監督の「ジュビリー(1978)」だと思う。

元々はケン・ラッセル監督の下で働いてたという経歴を持つデレク・ジャーマン。
ケン・ラッセルと言えばイギリスのぶっ飛んだ映像で知られる異端監督だった。
ザ・フーのロジャー・ダルトリーを主演にした「トミー」や「リストマニア」などのいわゆるロック・オペラと呼ばれる作品でよく知られているね。
ROCKHURRAHはリック・ウェイクマン(イエスのキーボード奏者)による「リストマニア」のサントラを所有していたが映画の方はなぜか未見。

で、別にケン・ラッセルの下で経験を積んだからという因果関係はないだろうけど、このデレク・ジャーマンもパンク世代でパンク・ミュージシャンが出て来る映画を撮ったので、誰かが両者の映像美やエキセントリックさを比較した文章でも書いてないかと探したんだが、うーん、まるで期待したようなのは出てこないなあ。

デレク・ジャーマン作品は例えば80年代に読んでた音楽雑誌「フールズメイト」などでもちょっとした特集記事になるほど、ニュー・ウェイブ世代では比較的知られた監督だった。何で映画雑誌じゃなくて音楽雑誌で?と思われるかも知れないが、作品の音楽にややマニアックなミュージシャンを起用したり、プロモーション・ビデオを撮影したり、音楽にもこだわった映画監督であったからだ。
監督自身もゲイであり(エイズで亡くなった)LGBTの世界でも有名な人。

そこそこ文化的な街の品揃えのあるレンタルビデオ屋(まだDVDやブルーレイが主流になる前の時代ね)だったらコーナーがあるくらいのネームバリューだったけども、今現在はどうなんだろう?
この手の映画っていつもそうなんだけど、一番観たかった時には映像ソフト化されてなくて、忘れた頃に「遂に初DVD化」なんて事になって需要と供給の時期に大きな隔たりがあるのが常だよ。
「ジュビリー」がいつDVDになってたのかは知らないが、これを本当に観たかった時じゃないのは確かだと思う。
ちなみにSNAKEPIPEはかなり昔に劇場で観たらしいけどROCKHURRAHが最初に観たのはいつの話だろうか?全然記憶にないんだよね。

エリザベス1世が魔法の力で未来(1977年頃の英国?)にやってきてパンクでアナーキーな荒廃した世界を見て嘆く、というような大筋なんだけど、え?簡単すぎ?
実は途中で眠くなるような部分もあって、ストーリーの詳細まで覚えてないのだ・・・。それで特集しようと思う自体が無謀か。

エリザベス1世の生まれ変わりだと思われる暴力的な女(左の写真:後列のサングラス)とその一団のワルな女たちがメインで話が進んでゆくんだが、その中で主役級なのがジョーダンとして知られているパメラ・ルーク(左の写真:一番右)だ。

マルコム・マクラーレンとヴィヴィアン・ウエストウッドがロンドンで営んでいたSEX、セディショナリーズというパンク・ショップ、そこの名物カリスマ店員だったのがジョーダンらしいが、見てきたわけじゃないので詳細は知らない。
その店にたむろしていた中からセックス・ピストルズが出てきてロンドン・パンクが「単なる街の若者の流行」だけじゃなくなった時代の変革期、メディアに登場しまくったジョーダンの役割は大きかったんじゃないかな、と想像するよ。
彼女の髪型やメイク、ファッションを真似てロンドン・パンクの派手で過激な部分が出来上がったんだろうかね。
このジョーダン、初期アダム&ジ・アンツのマネージャーをやってたらしいが映画の中では演技もするし歌も踊りも披露して、存在感も抜群。
この顔立ちから想像も出来ない「意外な事にぽっちゃり体型」というアンバランスさも際立ってるな。なぜモデル体型になれなかったのか謎だよ。

この女軍団の中で一番やんちゃな役割を演じていたのがトーヤ・ウィルコックス(上の集合写真:真ん中のオレンジ短髪)だ。
キング・クリムゾンのロバート・フリップの奥さんとしてプログレ界では有名なんだけど、元々は1970年代の終わり頃、つまりパンクからニュー・ウェイブへの変換期にデビューした歌姫。
イギリスでは大ヒットしたシンガーで日本でもそこそこの人気と知名度もあったんだが、この映画の中ではまさにパンク真っ盛りのぽっちゃり娘でビックリしたもんだ。目つきは一緒なんだけど顔や体がコロンコロンじゃないか?
トーヤはモッズ映画として名高い「さらば青春の光」でも熱演しているがこの時もやっぱりぽっちゃりんこなんだよね。
ROCKHURRAHが知ってるニュー・ウェイブ時代のトーヤはもっとほっそりしてたはずだが・・・。
なぜ短期間にモデル体型になれたのか謎だよ。

意外なところでは80年代にベルギーのクラムド・ディスクなどからレコードを出していたハーマイン(上の集合写真:後列の横向き)がこんなパンク映画に出ていたので驚きだよ。
ニュー・ウェイブ世代のフレンチ・ミュージックみたいな感じの音楽をやっていてニコのソロっぽい雰囲気もあった。同時代のクレプスキュール(同じくベルギーのレーベル)などで活躍したイザベル・アンテナやアンナ・ドミノなどと比べると知名度も低く通好みだったな。
ROCKHURRAHが北九州から上京した頃は渋谷のアフタヌーンティーで友人が働いてて、その友人の同僚たちとも少しだけ交流があった。店内のBGMで流すようなのがそれこそ上記のクレプスキュール系やチェリーレッド(というレーベルがあった)系などのあまり自己主張しないようなネオ・アコースティックっぽい音楽だったのを思い出す。ハーマインもそういう流れで知ったアーティストだったな。
そんな80年代当時のおしゃれ系アーティストだったハーマインにもパンクやってた時代があったというのが驚きの理由だ。
5人の美女軍団の中では最も目立たなく、いつもアイロン掛けや拭き掃除をしてるという意味不明の役どころ。目立たないからなのか役名「Chaos」が頬に書いてあるので人名が覚えられないROCKHURRAHにとっては非常にわかりやすかったよ。なぜか劇中で綱渡りまで披露してくれるがそのココロは不明。

熱演というほどもなく、出てきてあっさり殺される役ではチェルシーのジーン・オクトーバーもいかにも「らしい」出演だね。
日本ではあまりレコードが出てない(この辺あまり調べてないから記憶のみで記述)から知らないパンク・ビギナーもいたはずだが、ごく初期にはジェネレーションXのビリー・アイドルやトニー・ジェイムスも在籍していたロンドン・パンクの大御所バンドだったのがチェルシーだ。
ジーン・オクトーバーの鬱陶しいまでの不敵さ、アクの強さやゴリラ顔もあって、バンドとしての存在感だけは抜群だね。
下のビデオのデビュー曲「Right To Work」や80年代になってからの「War Across The Nation」とかは個人的に今でも愛聴してる名曲だよ。

1977年から現在までしつこく延々と歌い続ける代表曲がこれ。
パンクの中で強そうな人物と言えばストラングラーズのジャン・ジャック・バーネルを筆頭にシャム69のジミー・パーシィ、アンチ・ノーウェア・リーグのアニマルなどが思い浮かぶが、ジーン・オクトーバーはどうだろうか?パッと見は粗野なふるまいと顔立ちなんだけど、大口の割には意外と弱そうな気がする。物流系とかでも見た目はいかにもなのに大した事なくて粗野なだけ、というタイプがいるからね。
動きを見ていると脇のあたりにスキがあるような・・・などと格闘技評論家には言われてしまいそう。 

熱演はしているが出てきてあっさり殺されると言えば、ウェイン・カウンティも忘れちゃならない大役だね。
ニューヨーク・パンクが誇るドラァグ・クイーンで後に性転換して本気の人になるけど、この頃はまだエレクトリック・チェアーズという物騒な名前のバンドを率いてた。
後にスキッズのドラマー、さらにガーデニング・バイ・ムーンライトをやってたJ.J.ジョンソンもこのバンドの出身だね。
パンクとは言ってもロンドン・パンクとは違ったテイストを持つニューヨークのパンク。
その中でニューヨーク・ドールズを思わせるような毒々しいロックンロールで独自路線を築いたウェイン・カウンティが、なぜロンドン・パンク満載のこの映画に出てたのかは不明だ。
ロンドンが勝ってニューヨークが負けた、などという短絡的なものじゃないだろうけどね。

映画ではTVに映る演奏シーンと自分が出演するTV観ながら歌うようなシーンがあったが、その曲ではなく初期の代表曲を挙げてみた。鼻にかかった声とコミカルなパフォーマンス、行って楽しいライブなんだろうね。

「ジュビリー」に登場したパンク・ロッカーの中では最も大役だったのが若い頃のアダム・アントだろう。
アダム&ジ・アンツはニュー・ロマンティックの時代に海賊ルックで大ヒットしたアイドル系バンドの印象が強いが、アダム・アントは元々は(後の)ヴァイブレーターズのメンバーなどと一緒にバズーカ・ジョーというパブ・ロックのバンドをやっていたらしい。
このバンドは音源として残ってないのかな?
詳しい事はちょっとわからなかったが、パンク・ロッカーとして名高い人たちにも当然、パンク以前の時代があるという事だね。
アダム&ジ・アンツを結成した初期の頃は結構変わり種のパンク・バンドとして知られていた。
「Young Parisians」などはシド・バレット(ソロの時の)みたいな曲調でアダム・アントのルーツが垣間見える名曲だが、パンク時代の大衆には受けそうもない要素が満載。デビュー曲からこんなんでいいのか?とこっちが心配してしまうよ。
ちなみにジ・アンツの初期メンバーとアート・アタックスというパンク・バンドのメンバーが合わさってモノクローム・セットの原型が出来上がったというから、意外なところで意外な人脈がつながってるもんだね。 

映画の中でアダム・アントは、まだあどけなさの残る容姿でパンク・スターを目指すような役どころだったが、出演時間の長さの割にはセリフも少なく、無気力なのかナイーブなのかはにかみ屋なのか、とにかく何考えてるかわかりにくい青年を演じた。
役柄の性格のせいであまり熱演っぽくは見えないよね。
最後には警官二人に暴行を受け、生死がよくわからないままフェイドアウトしてしまう。
その損な役柄の褒美(?)としてなのか、ちゃんとした演奏シーンがあるのは嬉しい。

その他、ほんの意味不明のチョイ役でスリッツのメンバーらしいのもちょっと出てくる。嬉しそうに車を破壊するだけのシーンでパンクのデストロイを表現したのか?どこに出演してるのか探すのに苦労したよ。
さらに探すのに苦労したのがスージー&ザ・バンシーズだ。劇中でアダム・アントが眺めてるTVの中で演奏シーンがちょっと映るだけ、これで出演者と言えるのかいな?

これだけのメンツが出てきて、パンク好きとしては大満足、といいたいところだけど、何だかよくわからないシーンも多く説明不足の感があるのは確か。
この監督で最もわかりやすくてキャッチーな映画がこの「ジュビリー」だと思えるし、きっちりしたストーリーを追うタイプの映画ではないからまあそれでいいのかな。

以上、映画のテーマや内容については全く語ってないが、こういうのがROCKHURRAH流のアプローチだと思ってけれ。

実はこの後、もう一本別の映画について語ろうとしてたんだけど、今週はもうこれで時間切れとなってしまった。また別の機会があったら他の映画も特集してみるからね。

それではまた、ド・ヴィゼーニャ(ポーランド語で「さようなら」)。  

映画の殿 第27号 Pedro Almodóvar「セクシリア」

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【ノリノリでステージに立つアルモドバル監督】

SNAKEPIPE WROTE:

2013年に当ブログで驚きの4回連続で特集したのは、スペインの映画監督ペドロ・アルモドバルだ。
スペインに移住を考えるほど熱中して鑑賞していたスペイン映画!(笑)
そのきっかけを作ってくれたのがアルモドバル監督の作品だったのである。
特集4回目の最後に、下の文章を書いていたSNAKEPIPE。

セクシリア
マタドール
欲望の法則
ハイヒール
ライブ・フレッシュ

この5本はいつか是非鑑賞してみたいなあ!

これはその記事を書いた当時は、観ることができなかったアルモドバル監督作品の一覧である。
何時の間にか日本でもDVDが発売されていたらしく、長年の夢が叶うことになったのだ。
1番最初に書いてある作品「セクシリア」を鑑賞することができたんだよね!
「セクシリア」(原題:Laberinto de Pasiones Sexllia)は1982年の作品で、アルモドバル監督の第2作目に当たる。
今から35年も前の作品だけれど、好きになった監督の作品は全部観たいのがファンの心情。
アルモドバル監督の初期の作品には奇天烈な印象があるので、未鑑賞作品に興味があったんだよね!

簡単に「セクシリア」について書いてみようか。  

舞台はスペインのマドリード。
主人公はロックバンドのメンバーでニンフォマニア(淫乱症)の女、セクシリア。
その父親は人工受精の権威、ドクター・ペニャである。
一方、マドリード亡命中のティラン国の皇太子リサはゲイで、変装してジョニーと名乗り恋人探しの毎晩。
その恋人の中には偶然、ティラン国の反皇帝派にして彼の誘拐をもくろむ男サデックがいた。
ある夜、セクシリアはクラブ・カロリナでリサに会い、彼の元へ走るのだった…。

アルモドバル監督自身がゲイだと公言しているので、映画の内容もLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)関連が多いんだよね。
上のあらすじの中にもゲイの男性が2名登場しているよね。
そして「セクシリア」にはアルモドバル監督がステージに立つシーンも収録されているのが注目点かな。 

画面左、レザーのコートをミニワンピースのように着ているのがアルモドバル監督ご本人!(笑)
現在66歳なので、この映画の時には30歳くらいだったのかな。
「いかにも」な感じの装いなので、公言しなくても「そっちの人」だと分かるよね?
曲のタイトルも「Suck it to me」という、これまた「いかにも」な内容で大笑いしてしまう。
観ている途中で「似てるな」と思っていたら、本当にアルモドバル監督だったようで驚いたね。
どうやらこの曲、シングル・レコードとして発売されていたようで、ROCKHURRAHが左の画像を見つけてくれたよ!
「Gran Ganga」という曲も、映画の中で別のバンドが披露する曲なんだけど、どちらの曲もアルモドバル監督の作品のようだね。
元々パンク・バンドやっていたとWikipediaに書いてあったので、ステージに立つのは慣れているるだろうし、自分のレコードが出せるのも嬉しいことだよね!
もしかしたらこれよりも前にレコード・デビューしてるかもしれないけど?
映画の中でどうしてもこのライブのシーンは外せなかったようで、かなり長いことカメラが回っているよ!(笑)

主人公セクシリアを演じているのがセシリア・ロス。
「オール・アバウト・マイ・マザー」でも主役だったし、「アイム・ソー・エキサイテッド!」ではSMの女王役で出演していたよね。
アルモドバル監督作品の常連と言っていいセシリア・ロスだけど、こんなに若くて美しい姿を見るのは初めて!
どうやらアルモドバル監督の処女作にも出演しているようだけど、こちらはまだ未鑑賞なんだよね。
いかにも80年代ニューウェーブ、カラフルで奇抜なファッションに身を包み、スペイン女優らしく(?)ヌードも厭わず体当たり演技に挑戦している。
26歳のセシリア・ロスの美貌にも驚いたけれど、やっぱり注目したのはファッションかな。
アクセサリーも含めて、とてもおもしろいデザインを身に着けていたんだよね。
金持ちの家の娘で、バンドをやっているという設定だから派手にしたのかもしれないけど、オシャレだったよ!

皇帝の息子でありながら身分を隠して男漁りをするのが、左の画像中央で赤い服を着ているリサ。
演じているのはイマノル・アリアス。
他のアルモドバル監督作品で観たことあったかな?
調べてみたら「私の秘密の花」で、主人公レオの夫として出演していたようだけど、あまり印象に残ってないね。
「一目合ったその日から恋の花咲くこともある」の言葉通り、セクシリアと一瞬で恋に落ちるリサ。
ゲイだったのに、好みが女性に変わったのかな。
人を好きになるのに、性別は関係ないということなんだろうね。
それにしても男なのにリサという名前は、女性みたいで勘違いしちゃうよね。(笑)

元皇帝夫人トラヤを演じたのはヘルガ・リーネ。
「元」が付くので、今は夫人じゃないんだろうけど、どういう立場なのか今ひとつ分からなかったよ。
皇帝の息子であるリサとの関係も親子ではなさそうだったし?
リサの母親の後で妻になったのかもしれないね。
この女優がとても美しくて気品があって、すっかりファンになってしまった。
どうやらベルリン生まれのドイツ人で、ポルトガルに移住したみたいね。
ホラー映画やスパイ映画で活躍していたようなので、他のアルモドバル監督作品では観たことないのかもしれないな。

「セクシリア」が映画のデビュー作品だったのがアントニオ・バンデラス。
あらすじの中にあった「ゲイで反皇帝派の男サデック」を演じているんだよね。
犬のように鼻が利くのが特徴で、皇帝の息子を探し当てるのである。
この時のバンデラスは22歳くらいだと思うけど、もっと若く見えたね。
最初はバンデラスだと気付かなかったくらい、顔の形が違っていたような?
歳を重ねるにつれ、少しずつ面長になったのかもしれないね。

人工授精、淫乱症、ゲイ、近親相姦など「性」をテーマにしているので、家族団らんの場には、全くそぐわないタイプの映画には間違いない!
ものすごく大雑把に言ってしまえば、様々な「愛」についての映画とも言えるかもしれないけど?
その「愛」の探求をする登場人物達は、みんな「濃い」タイプばかり!
最も強烈な印象を与えてくれたのが右の画像の方。
調べてみたけど、名前がよく分からなかったよ。
「女優」ということになっていたんだけどね?(笑)
映画冒頭から登場していて、マニキュアを吸ったり(!)、電気ドリルで虐待されている様子を撮影していたのは、きっとアルモドバル監督のブラックジョークなんだろうね。
ドラッグとしてのマニキュア、血まみれ写真集、みたいな。
アルモドバル監督作品の最大の魅力は、「そんなのアリ?」と思うようなハチャメチャな展開なので、今回も期待を裏切らず楽しませてもらったよ。(笑)

アルモドバル監督の処女作「ペピ、ルシ、ボンとその他大勢の娘たち」「ライブ・フレッシュ」「欲望の法則」もDVD化されていることが分かったので、鑑賞したいね!

2017年も今日で終わり。
あっという間の一年だったなあ。
2006年から始まった当ブログは、12年の間毎週日曜の更新を続けている。
来年以降も継続していく予定である。
これからも拙い文章にお付き合い頂ければ、と思っている。 

皆様どうぞ良いお年を!
来年もよろしくお願い申し上げます! 

映画の殿 第26号 松尾スズキ part2

【役者、映画監督、脚本家、小説家。いろんな顔を持つ男】

SNAKEPIPE WROTE:

前回「映画の殿」で特集した松尾スズキの第2弾を書いてみよう。
特定の個人を気に入ると、関連している作品をROCKHURRAHが調べてくれて、鑑賞が可能な作品を探し出すのがROCKHURRAH RECORDS流。
ウィル・フェレルやジャック・ブラックなども、そんな感じで作品を鑑賞したっけ。(笑)
そういえば最近、ウィル・フェレル関連の新作情報を調べてなかったよ。
元々日本での知名度が低く、劇場公開されずDVDだけで販売・レンタルされることが多かったウィル・フェレルだけど、DVDすら出ない作品が続いてるんだよね。
ついにはネット配信のみになっているため、TSUTAYAの新作情報には載っていない。
もしくはネット配信すらされなくなる日も来るのだろうか…。

今回の特集とは関係のないことを書いてしまったね。(笑)
松尾スズキは劇団「大人計画」を設立し、役者、映画監督、脚本など一人何役もこなし、更には小説も書いているマルチな才能を持っている人物なんだよね!
NHKのドラマ「ちかえもん」からすっかりファンになり、関連する作品を鑑賞しているところである。
今回はドラマを中心に紹介していこうかな!

TAROの塔」(2011年)は岡本太郎生誕100周年を記念して制作されたNHKのドラマである。
これは2011年に書いた「生誕100年 岡本太郎展」と同時期のことだったんだね!
その時には全く気付いていなかった情報だったけど、DVDで鑑賞することができて良かったよ。
少年期から晩年に至るまでの岡本太郎の人生を全4回のドラマにしていて、松尾スズキは岡本太郎の中年から晩年期を演じている。
漫画家だった岡本一平を父に、歌人で作家だった岡本かの子が母という家庭に生まれた太郎は、かなり特殊な環境で育っていったことがよく分かる。
奔放な母親は、現代でも珍しいタイプの女性だと思うし。
更に岡本太郎は、多感な青年期をパリで過ごしているんだよね。
シュルレアリスムの時代のパリだもんね!
型破りな日本人になるのは当然、という感じ。
岡本太郎という人格が形成されていく様子がよく表されていたと思う。
松尾スズキは半分モノマネのような演技で、本当に岡本太郎みたいだったよ。
あまりに熱演し過ぎて、笑ってしまうほど。
養女だった平野敏子を常盤貴子が演じていたんだけど、あの太郎ぶりを目の当たりにして、よく吹き出さなかったと感心してしまう。(笑)
松尾スズキを主役に決定したNHK、すごい決断だよ!
あ、またNHK好きを披露してしまったね。

松尾スズキ関連を探索していたら、昔のドラマが鑑賞できることが分かった。
演歌なアイツは夜ごと不条理(パンク)な夢を見る」(1992年)は日本テレビの深夜枠で放映されていた全5回のドラマである。
ツイン・ピークス並に昔のドラマなのに、2006年にDVD化されたみたいだね。
松尾スズキは脚本を担当、出演もしている。
このドラマの主演はなんと、竹中直人!
ダーク五郎という手品師なんだよね。(笑)
そして松尾スズキは性的不能を専門にしている精神科医の役。
阿部サダヲのデビュー作にもなっているドラマで、「カルトなドラマ」とされているんだよね。
それもそのはず。
今だったら放映できないだろうと思われる、タブー(性とか薬とか)がいっぱいの内容だからね。(笑)
イカ天バンドだった「マサ子さん」のメンバーが出演していたりして、かなりクセのある俳優が多かったのも魅力の一つ。
途中で挿入されるイラストの出来が素晴らしかったんだよね。
劇中イラストは青木すみれ(天谷すみれ)という方のようで。
今もどこかで描いているのかな。
もっと鑑賞してみたいんだよね。

こちらも医者の役だった「イン・ザ・プール」(2005年)。
奥田英朗原作の小説を映画化したもので、やっぱりこれも精神科医だったね。(笑)
原作は5話の連作短編集だったようだけど、映画ではその中の3話を描いていた。
何かしらの精神的な疾患を抱える人物が、松尾スズキ演じる精神科を訪れる、という物語なんだよね。
オダギリジョーは継続性勃起症で、市川実和子は強迫神経症になっている。
市川実和子の「家の鍵、かけたっけ?」「ガスの元栓しめたっけ?」と、自分の行動に自信がなくなる症例は、誰にでも経験あるんじゃないかな?
もちろん程度が軽いので、一年に一度あるかないかの「不安」だけど、それが毎日になったら相当苦しいだろうね。
田辺誠一はプールで泳がずにはいられない病気になっている。
これも一種の強迫神経症なんだろうね。
「何かをし忘れると気持ち悪くて眠れない」くらいは誰にでもあることだからね。
全て程度の問題だろうけど、他人事と思えないリアルさが面白かった。
松尾スズキはかなり変な医者役で、とても似合っていたね。

医者ではないけれど、やっぱり白衣を着ていたのは「悪人」(2011年)でのこと。
人当たりが良くて、老人達には軽口が大ウケ!
皆から「先生」と呼ばれて親しまれている存在。
ところがそれは仮の姿なんだよね。
実は詐欺まがいの商売のため、騙しのテクニックとして「良い人」を演じている、という役だった松尾スズキ。
この役もぴったりだったね!
騙された役の樹木希林も見事な演技だったよ。
SNAKEPIPEが樹木希林の映画出演を観るのは「ツィゴイネルワイゼン」(1980年)以来かなあ。
えっ、古過ぎ?(笑)

現在「ツイン・ピークス The Return」を鑑賞するためにWOWOWに加入しているので、WOWOWが制作したドラマも鑑賞できるんだよね。
松尾スズキが出演していることを知ったROCKHURRAHが録画予約しておいてくれたのが「北斗 ある殺人者の回心」である。
石田衣良原作の小説をドラマ化した作品で、我らが松尾スズキは国選弁護人という役どころ。
あれ?いつの間にか「我らが」になってるよ。(笑)
やっぱり「先生」と呼ばれる役なんだけど、今回はかなーりシリアスなので、全く「おかしな」要素はないんだよね。
どうしても松尾スズキじゃないとダメな役ではなかったように思う。
松尾スズキは良い人より悪い人、もしくは「おかしな人」が良いのかもしれないね?

まずは観てみよう、と第一話を観てあまりの凄まじさに驚いてしまう。
「僕は生まれてこないほうがよかった」
というセリフに説得力を感じてしまう悲惨な家庭環境だったからね。
もうこれから北斗の父親役だった村上淳と母親役の中村優子は、違う役で観たとしても「あの虐待の両親!」と思ってしまうだろうね。(笑)
それだけ演技が上手だった、ということなのかもしれないけど、悪い役をやるのって役者さんも勇気が要るだろうなあ。
宮本信子が演じた義母の器の大きさには驚かされた。
あんなに優しい人が近くにいたら、別人になれるかもしれないね。

いとうせいこうのエッセイ「ボタニカル・ライフ 植物生活」を原作にした「植物男子ベランダー」が全シリーズDVD化されていないのが残念でならない。
youtubeなどで何話かだけ観ることができるんだけど、とても面白そうなんだよね。
2013年から2014年にかけてNHKのBSプレミアムで制作されていたようなんだけど。
あー、またNHKだ。
どうやらROCKHURRAH RECORDSはNHK好きみたいだね。(笑)
主演は田口トモロヲ!
自宅のベランダで植物を愛でる温厚な男なんだよね。
松尾スズキは田口トモロヲの先輩で、盆栽好きという役。
いとうせいこうと田口トモロヲの好みなのか、テーマ曲がセックス・ピストルズの「Anachy in the U.K.」が採用されているところもポイント!
パイロット版からシーズン3まである大人気企画だったようなので、今からでもDVDにして欲しいな!

今まで観てきた松尾スズキに関連する作品についてまとめてみたよ!
これからも注目していきたい興味ある人物だね。
今度は「大人計画」の演劇も鑑賞してみよう。
WOWOWに加入しているうちがチャンスだね。(笑)

映画の殿 第25号 松尾スズキ part1


【松尾スズキのアップ画像。現在54歳。】

SNAKEPIPE WROTE:

久しぶりに「映画の殿」を書いてみよう。
週末毎の映画鑑賞の習慣は続いているけれど、「ツイン・ピークス The Return」が始まってからは、優先順位は「ツイン・ピークス」が1番になっている。
2番が「PGAゴルフ」鑑賞か。(笑)
映画を観る時間を利用して、録画しておいたゴルフ中継をまとめて休日に鑑賞しているからね。
そのため週に2本は観ていた映画は週に1本になることもあるんだよね。
これが「映画の殿」 をなかなか書けなかった理由かもしれないね?

実はもう一つ理由があることに気付く。
ほとんど邦画を観ないROCKHURRAH RECORDSだけれど、最近は邦画の鑑賞もしているのである。
ルールを決めているわけではないけれど、邦画に関しては「CULT映画ア・ラ・カルト!」 でカルト映画について特集したことがあるくらい。
それ以外の邦画について書いたことないんだよね。
どうしても書きたい、特集したいと思った映画ではなかったのも理由だろう。

「面白いから絶対観て!」
長年来の友人Mからの強い勧めがあったのは去年のことだった。
友人Mは情報収集能力に優れ、SNAKEPIPEの好みを熟知している心強い味方なのである。
そして友人Mのすごいところは、自身の「好き」や「面白い」という枠を作らないこと。
つまりは新旧や老若男女を問わず、映画でも音楽でも小説でも、なんでも知ろうとする姿勢を持っているのである。
SNAKEPIPEなどは「いまどきの若者みたい」と体験する前に敬遠することがあるので、友人Mの柔軟性には感心している。
その友人Mからの強い勧めにより、ROCKHURRAHを巻き込んで鑑賞することにした。
それがNHKのドラマ「ちかえもん」だったのである。
NHKの時代劇?人形浄瑠璃?近松門左衛門の話?
最初は恐る恐る、まずは1話観てみようか、ということになった。
こうしてROCKHURRAH RECORDSと松尾スズキが出会ったのである。(笑)

時は元禄16年(1703年)。
現代にも通じる格差広がる世の中で、戯作者・近松門左衛門(松尾スズキ)は、 定番の「歴史モノ」しか書けず、妻に逃げられ、母にあきれられ、スランプに陥り、堂島新地の「天満屋」に入り浸り、 年増遊女のお袖(優香)相手にちびちび酒を飲んでいた。
そんな近松の前に、ある日謎の渡世人・万吉(青木崇高)が現れる。
近松と万吉の二人は、お初(早見あかり)や徳兵衛(小池徹平)など、人形浄瑠璃「曾根崎心中」に登場する ひと癖もふた癖もある人々と出会い、さまざまな騒動に巻き込まれていく…。
果たして近松は傑作を書きあげることができるのか?
(Amazon販売ページより引用)

「ちかえもん」のあらすじを書いてみたけど、ちょっと長いね。(笑)
全8回のドラマなので、これくらいになるのは仕方ないかな?

松尾スズキ演じる主人公、近松門左衛門は人形浄瑠璃作家で、現在はスランプ状態の中年男。
そこへ青木崇高演じる「不幸糖売り」の万吉が現れるのである。
全く接点がないはずの2人が出会ったことから物語が始まる。
青木崇高という俳優は全然知らなかったけれど、万吉役がぴったりだった。
粗野だけれど純粋でまっすぐな性格、どんな時にも物怖じしないで突き進む。
近松門左衛門はそんな万吉に振り回される形で話が展開していくのである。

主役の松尾スズキの演技が最高だった。
顔芸とでもいうのか、表情で魅せる演技力。
替え歌まで披露していたしね。(笑)
「曽根崎心中」はタイトルだけは知っていても、内容についてはほとんど知らなかったので、「ちかえもん」のような軽快な語り口で教えてもらうと馴染みやすいかもしれない。
途中でアニメーションが入ったり、劇中劇が始まったりするところも斬新!
時代劇でこんなに笑ったのは初めてかもしれないな。
配役も見事で、優香や高岡早紀がとてもキレイだったのも印象的。
最終回が近づくと、寂しさを感じるようになっていた。

友人Mのお勧め通り「ちかえもん」は非常に面白かったのである。
「ちかえもん」はSNAKEPIPEが持っていた「NHKの時代劇」という観念を完全に打ち崩すドラマだった。
ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも、すっかり松尾スズキのファンになってしまった。
友人Mに至っては、あまりにも「ちかえもん」を好きになり過ぎてDVD-BOXまで購入するほど!
一体何回観たんだろうね?(笑)

松尾スズキについては90年代からTV情報誌「TV Bros」の連載で名前だけは知っていた。
今調べてみると、連載していたタイトルは「お婆ちゃん!それ、偶然だろうけどリーゼントになってるよ!!」だったね。(笑)
名前は知っていても、実際に松尾スズキ(当時は松尾すずき)が何をやってる人なのか、よく知らなかった。
少し調べてみようか。
1962年福岡県北九州市生まれ。
なんとROCKHURRAHと同郷じゃないの!
リリー・フランキーもそうなんだよね。
村上龍原作の「55歳からのハローワーク」が2014年にNHKでドラマ化された時に、二人共出てたっけ。
3年も前に観ているけれど、リリー・フランキーの回だけは明確に覚えているよ。
偏屈な感じの役だったせいもあり、その時点では松尾スズキに注目していなかったけどね。

松尾スズキの略歴に戻ろう。
1980年代後半に劇団「大人計画」を設立する。
「大人計画」からは脚本家としても有名な宮藤官九郎を筆頭に、阿部サダヲなど今をときめく俳優が多数選出されているね。
「大人計画」の社歌があったので載せてみよう。

「南平台じゃアイドル」のところで笑ってしまった。(笑)
松尾スズキについて知りたいと思ったら、まずは「大人計画」の舞台なんだろうね。
現在加入しているWOWOWでは「大人計画」の舞台も放映されているので、今度観てみようかな!

松尾スズキは劇団での活動以外にも俳優、小説家や映画監督としても活躍している。
出演している作品リストを見ると、意外と観たことがある映画にも出てるんだよね。
松尾スズキの場合は、印象的な脇役というイメージが強いんだけど、あまりにも観たのが昔過ぎて覚えてないよ。(笑)「ちかえもん」からすっかりファンになってしまった松尾スズキにまつわる映画やドラマを探し、鑑賞することにした。
その作品をいくつか紹介してみよう。

監督と脚本、出演もしている映画「恋の門」は2004年の作品である。
羽生生純の漫画が原作である。

「恋の門」の主人公、蒼木門を演じるのは松田龍平。
石を使って漫画を描く、という現代アートのような作品に真面目に取り組んでいる不思議な男である。
コスプレマニアで、同人誌で漫画を描いている証恋乃を酒井若菜が演じていて、この二人の名前を合わせると「恋乃・門」なんだよね。(笑)
かつては売れっ子漫画家で、今は漫画バーのマスター、毬藻田を松尾スズキが演じている。
初監督作品なのに俳優としての出番も多かったんだよね。
監督としての役割と俳優を最初から同時進行させるなんて、器用な人なんだねえ。
漫画がテーマなだけあって、映画には原作者である羽生生純本人やしりあがり寿、内田春菊をはじめとする漫画家が出演しているところも見どころ。
今は亡き忌野清志郎も出演していたね。
漫画が原作だと、どうしてもドタバタした感じになってしまうね。
ヴェネツィア国際映画祭に出品されたということだけど、どんな評価を受けたのかな?

続いての監督作品は2007年の「クワイエットルームにようこそ」である。
これは松尾スズキが自身の小説を映画化したもので、脚本も手がけている。
原作、監督、脚本の一人三役だね。
途中で踊るシーンがあったけど、その振り付けも担当だって。(笑)

フリーライターである主人公、佐倉明日香を演じたのは内田有紀。
薬とアルコールを同時に摂取したせいで、救急車で運ばれる。
着いた先は精神病棟、通称クワイエットルームであった。
ここは精神に何かしらの異常がある女性が収容されている病院で、映画の舞台なんだよね。

内田有紀の夫で放送作家の焼畑鉄雄を宮藤官九郎が演じている。
さすがに劇団「大人計画」つながり!
恐らく私服と思われるパンク色の強い身なりをしている。
宮藤官九郎が演技をしているのを見るのは、京極夏彦原作の「魍魎の匣」以来かな?
久保竣公よりは今回の焼畑鉄雄のほうが等身大だったろうね。
宮藤官九郎も監督作品あるよね。
少年メリケンサック」(2009年)や「TOO YOUNG TOO DIE!若くして死ぬ」(2016年)も観たっけ。
意外と邦画観てるなあ。(笑)

拒食症を患っている役どころの蒼井優は、このためにダイエットしたのかな?
本当に患者のように見えてしまったほど、リアルだったよ。
ゴス・ロリ・ファッションをしているので、余計に病気っぽかった。

「クワイエットルームにようこそ」では「おかしな人」がいっぱい登場するけど、やっぱり大竹しのぶの存在感はすごいね。
貴志祐介の小説が原作の「黒い家」(1999年)については、「好き好きアーツ!#14 貴志祐介 part1」で記事にしているSNAKEPIPE。
その時にも「見事な演技」と称した大竹しのぶだけれど、「近くにいたら怖い人」の系譜はここらへんから始まっているのかな。
先日鑑賞した「後妻業の女」(2016年)での主役も「はまり役」だったしね!
「クワイエットルームにようこそ」の中でも、タバコやテレフォンカードを「親切で」貸したりあげたりしているように見せかけて、後から取り立てる悪どい商法で稼ぐ女の役だった。
大竹しのぶの演技が自然過ぎて、「大竹しのぶ、怖い」と思ってしまうね。(笑)

続いて監督と脚本を手掛けた作品は、いがらしみきおの漫画を原作にした「ジヌよさらば〜かむろば村へ〜」(2015年)である。

2004年の「恋の門」に続いて、また松田龍平が主役なんだよね。

お金アレルギーになってしまった銀行マン高見武晴(松田龍平)は会社を辞め、お金を使わない生活をすべく東北の寒村に移住。
そこには謎めいた過去を持つ世話焼きな村長(阿部サダヲ)や、自ら神と称し周囲から人望のある老人(西田敏行)など、強烈な個性を持つ村人たちがいた。
一筋縄ではいかない彼らと向き合い自給自足の生活を目指すうちに、高見の生活は予期せぬ展開を見せるのである。
(Yahoo映画より引用)

「ジヌよさらば」では松尾スズキは俳優としても出演している。
監督、脚本、俳優とまたもや一人三役とはすごいよね!
映画では足の悪いヤクザという役どころ。
松尾スズキは声に迫力があるので、渋い役も合うんだよね。
NHKのTVアニメ「龍の歯医者」では声優もやっていたけれど、悪役が似合う野太い声で、すぐに松尾スズキだと分かったよ。
このブログの中で、一体今まで何回NHKと書いたかな?
NHK大好きって感じだよね。(笑)

原作の漫画と映画では、設定や展開は同じなんだろうか。
あらすじにあった「強烈な個性を持つ村人」の存在が面白いんだよね。
なんといっても「大人計画」所属の阿部サダヲ!
越してきた松田龍平の世話をするとはいっても、荷物を投げ飛ばして室内に入れるような乱暴者。
かなり暴力的な人物だけど、村長なんだよね。
この設定と阿部サダヲの演技がマッチしていたよ。

西田敏行も良い味出していたし、片桐はいりがハーレーを乗りこなしているのには驚いた!
ジャンプスーツが似合うほどの細身なのもびっくり。
顔だけ見てるとスレンダーな印象がなかったから余計だよね。

「ジヌよさらば」は漫画が原作だけど、処女作の「恋の門」のドタバタ感はなくて、非常に面白い作品だった。
「ジヌ」とは東北弁で「銭(ゼニ)」のことで、なまって「ジヌ」になったみたい。
幸せに生きていくことと、お金との関係について考えさせられる映画ということになるのかな。
あまり深く考えないでコメディ映画として鑑賞しても良いと思う。

今回は松尾スズキファンになったきっかけの「ちかえもん」から松尾スズキ監督作品3本についてまとめてみたよ!
実はまだ松尾スズキ関連作品は鑑賞しているので、part2を計画しよう!
次回はどんな松尾スズキに出会えるかな?(笑)