映画の殿 第51号 韓国ドラマ編 part7

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【誰がどのドラマに出演していたのか、分かるかな?】

SNAKEPIPE WROTE:

2022年3月に「映画の殿 第50号 Netflixドラマ編 part6」を書いてから、約3ヶ月が経過。
ほぼ毎日1話、ドラマ鑑賞を続けているROCKHURRAH RECORDSだよ!
今回も備忘録を兼ねて、感想をまとめていこうと思っている。
part6までは「Netflixドラマ編」と書いていたけれど、今回からはNetflixに限定していないため「韓国ドラマ編」に変更したよ!
別にどうでもいいってか?(笑)

part6の一番最後に紹介した「未成年裁判」の次に観たのが「シグナル(原題:시그널 2016年)」。
なんとここでも「未成年裁判」で主役を務めたキム・ヘスが出演していたよ。
連続して観ているけど、特別ファンってことではないんだけど。
最初に観たドラマの役名で覚えてしまっているので「キム判事」って呼んじゃうんだよね。(笑)
トレイラーを載せてみようか。

続いてあらすじね!

警察のプロファイラー・パク・ヘヨンはある日、15年前の未解決事件を追うイ・ジェハン刑事から、壊れた無線機を通じてその未解決事件の有力な手がかりを教えられる。
時効まであと数日のところでかつてのジェハンの後輩・チャ・スヒョン刑事と共に事件を解決することに成功する。
その後もヘヨンはジェハンと交信を続けていくうちに、彼が過去の人間であることに気付く。
一方でスヒョンは、15年前に失踪したジェハンの行方を捜し続けている。
(Wikipediaより)

無線機を通して過去と現在がつながるという設定は、韓国映画「ザ・コール(原題:콜 2020年)」みたい、と書きそうになったけれど、「シグナル」のほうが早かったんだね。
ROCKHURRAH RECOREDSが鑑賞した順番が逆だっただけで。
「シグナル」の主役であるプロファイラー・パク・ヘヨンは「ムーブ・トゥ・ヘブン: 私は遺品整理士です」に出演していたイ・ジェフンだね。
チャ・スヒョン刑事をキム判事じゃなくて(笑)パク・ヘス。
過去で活躍する刑事ジェハンをチョ・ジヌンが演じていた。

特徴的だったのは、過去になると映像の縦横比が変化し、縦長になっちゃうところ!
現在使用されている16:9から地上波で使用されていた4:3に切り替わるシーンが面白かった。
6年前のドラマだけど、全く色あせてないね。
数々の未解決事件に挑む、という硬派な内容も見応え十分で、引き込まれたよ。

いても硬派なドラマをチョイス!
BS12で放映されていた「誰も知らない(原題:아무도 모른다 2020年)」というミステリー・サスペンス。
主演に「SKY キャッスル~上流階級の妻たち~」で、キム先生を演じたキム・ソヒョン。
キム先生のイメージが強すぎてしまい、今回は刑事役なのに正義の人に見えなくなってしまったのはSNAKEPIPEだけ?(笑)
凛とした雰囲気のため、男前な服装も多く、天海祐希に見えてしまったよ。
一体どんな事件を題材にしていたのか、あらすじを書いてみよう。

ソウル地方警察庁のチャ・ヨンジンは実績のみで警部に上り詰めた有能な刑事だ。
彼女が捜査を担当している聖痕殺人事件は、19年前に8人目の被害者が発見されてからは新たな被害が発生していないために捜査は打ち切られようとしている。
そんな中、ヨンジンだけが事件に執着するのには理由があった。
実は彼女は8人目の被害者と高校時代の親友だったのだ。
事件の捜査に打ち込む孤独なヨンジンには、唯一友達と呼べるコ・ウノという少年がいる。
ヨンジンが突き止めた真犯人が投身自殺を図ったことで事件の真相が闇に入りかけた時、ウノがホテルの屋上から墜落する事故が起きる。
ホテルのオーナーであるペク・サンホの取り計らいでウノは助かるが、事故ではなく事件だと判断したヨンジンはウノの担任イ・ソヌの協力を得てウノの事件を探り始めることに。
そこには誰も知らない事実が隠されていた。
(BS12より)

続いてトレイラーね。

コ・ウノを演じたアン・ジホは「今、私たちの学校は…」に出ていたね。
ホテルのオーナー役のペク・サンホは「アルハンブラ宮殿」の感想で「いつまでもずっと追いかけて来る死んだはずの友人(宮迫博之似)」と書いたパク・フン。
顔立ちのせいなのか、やっぱり嫌な役どころなんだよね。(笑)

19年前に起きた「聖痕殺人」は宗教絡みの連続殺人事件で、第1話でグッと引き込まれてしまった。
ドラマの根底には、ずっと「聖痕殺人」が影を落としているため、全体的にダークモードでシリアスなんだよね。
笑いとかボケ要素は一切なく、緊張感が続くドラマだったよ。
BS12で観たため、途中でCMが入ってしまうところが残念だった。

シリアスなドラマを連続で鑑賞したため、少し明るいドラマにしよう!
選んだのは「ラケット少年団(原題:라켓소년단 2021年)」。
主役のユン・ヘガン(画像左から2番め)は、「ムーブ・トゥ・ヘブン: 私は遺品整理士です」で障害がある役を演じたタン・ジュンサン。
「愛の不時着」にも出演していたので、大活躍している役者だね!
そして画像右から2番めに写っているのは、「椿の花咲く頃」でピルグを演じたキム・ガンフン。
ピルグ、大きくなったけど、まだ小さいよね。(笑)
トレイラーを載せよう。

父親の仕事の都合で、都会から田舎の中学校に転校してきた少年。
寄せ集めのバドミントン部を廃部の危機から救うため、コーチである父親とともに大奮闘。
(Netflixより)

随分あっさりしたあらすじだけど、まあいいか。(笑)
バドミントン部のメンバー達の仲の良さが微笑ましい。
村の老人達も良い味出してたよ!
「刑務所のルールブック」の脚本家が手掛けたドラマとのことで、ゆかりのある人物がカメオ出演するのも見逃せなかったね。
最終話での展開に、思わずニヤリ!
「刑務所のルールブック」観てないと笑えないかも。
「ラケット少年団」は、終わってしまうのが惜しくなるほど気に入ったドラマだったよ!

続いては「二十五、二十一(原題:스물다섯 스물하나 2022年)」。
こちらも青春とスポーツを描いたドラマだよ。
「ラケット少年団」はバドミントン、今回はフェンシング!
競技としての知名度は低めだと思うんだけど、韓国では人気があるのかな?

1998年という時代を背景に、夢を奪われた若者たちのジレンマと成長を描く。
ナ・ヒドとペク・イジンの2人が初めて互いの名前を呼び合ったのは、22歳と18歳のとき。
25歳と21歳になった2人は、胸躍る初恋と、温かい友情のはざまで揺れ動く。
5人の友人グループ内の人間関係やその中で巻き起こる問題で、彼らは頭を悩ますことになる。
(シネマトゥデイより)

天真爛漫な高校生ナ・ヒドを演じたキム・テリの実年齢が32歳とは驚き!
童顔なせいだけではなく、演技力が高いため、高校生に見えたもんね。
フェンシングも決まってたし、フランス語も上手だったよ。
「ラケット少年団」同様、高校時代の男女の区別がない友情が羨ましいくらい。
中でも筋が通っていて、生き様がカッコ良かったのは秀才の学級委員長!
あの子には将来、政治家になって欲しいよ。(笑)
成績1位の学生がメンバーにいるというのも、「ラケット少年団」に似てる設定だね。

かつて母親が暮らした部屋で、母親の若い頃を知るというのは「あまちゃん(2013年)」を思い出すよ。
アイドルとスポーツ選手の違いはあるけどね。
「二十五、二十一」は、最終話に近づくほど苦しくなった。
何がとか、誰が悪かったとは言い切れない、小さなすれ違いやほころびから、少しずつ気持ちが変わってしまう。
どちらの心情も理解できてしまうから、難しいよね。
どうすれば良かったんだろう、と鑑賞後も考えてしまう内容だったよ。

感想を書いたつもりでいたドラマがあったんだよね。
元カレは天才詐欺師 〜38師機動隊〜(原題:38사기동대 2016年)」を観たのは、2021年のはずなので、本来はpart4あたりに書くはずだったのに、すっかり忘れていたよ。
ROCKHURRAHに指摘されて気付いたので、まとめておこう。
画像左は「新感染 ファイナル・エクスプレス」などでお馴染みのマ・ドンソク!
長年来の友人Mは、スマホの待ち受け画面にするほどの大ファン。
一度観たら忘れない風貌だよね。
右が詐欺師、ヤン・ジョンドを演じるソ・イングク。
「サンガプ屋台」に出演していたユク・ソンジェと混同してしまったSNAKEPIPEだよ。

ターゲットは税金逃れをたくらむ富裕層。
税金徴収局で働くまじめな公務員が天才イケメン詐欺師とタッグを組み、不届き者たちから巨額の滞納金を取り立てる。
(Netflixより)

公務員が詐欺師と手を組むなんて、通常ありえないけれど、成敗目的だから良いのだ!(笑)
真面目な公務員役にマ・ドンソクっていうのも、あり得ない設定だからね。
そして詐欺を働いている時のマ・ドンソクが、生き生きしていて面白かった。
それぞれの専門家がいるチーム編成もワクワクしちゃったし。
みんな良い味出してたんだよね。
「元カレは天才詐欺師」も、終わらないで欲しかったドラマだったよ!

今回も様々なジャンルのドラマを楽しんだよ!
Netflixだけにとどまらずアマゾンプライムにも手を出したので、幅が広がるね。
どんなドラマがあるのか、今から楽しみ!(笑)

篠田桃紅展 鑑賞

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【毎度おなじみの構図で看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

毎週日曜日にNHKで放映されている「日曜美術館 アートシーン」は、15分という短い時間にも関わらず、展覧会情報を知るのに最適な番組なんだよね!
範囲は全国にまたがっているため、例えば山口県立美術館で開催されている展覧会に興味を持ったとしても、行くことは難しいけど。(笑)
全く知らなかったアーティストや文化について学べるので、楽しみにしているんだよね!
先日の放送された展覧会で、観た瞬間から「これ!行きたい!」と叫んだのが、東京オペラシティアートギャラリーで開催されている「篠田桃紅展」だった。

SNAKEPIPEには初耳だったアーティストだけど、1950年代から有名な方のようで。
まずは篠田桃紅の略歴をまとめておこうか。(東京オペラシティアートギャラリーサイトより抜粋)

1913 中国大連に生まれ、翌年父の転勤で東京に移る
1940 銀座鳩居堂で初めての書の個展を開催するが、「根なし草」と酷評される
1947 この頃より文字に囚われない抽象的な作品を制作しはじめる
1954 サンパウロ市400年祭の日本政府館(設計・丹下健三)に壁書を制作
ニューヨーク近代美術館「日本の書」展に出品。
1955 ベルギーの画家ピエール・アレシンスキーの映画「日本の書」撮影のために制作を実演
1956 単身渡米
主にニューヨークを拠点に2年にわたり活動、全米各地およびパリで個展を開催
1958 帰国し大田区田園調布に住む
日本で制作して海外で精力的に発表しながら、独自の抽象表現に取り組んでいく
1965 国立京都国際会館(設計: 大谷幸夫)のためにレリーフと壁画を制作
ベティ・パーソンズ画廊(ニューヨーク)で個展(以後複数回開催)
1974 増上寺(東京)のために壁画と襖絵を制作
2003 関市立篠田桃紅美術空間開館
2021 東京都内で逝去

昨年107歳で亡くなっているんだね。
番組内では100歳を超えても、作品制作に取り組む様子が映し出されていた。
1956年に40歳を過ぎて単身渡米とは、勇気あるよ!
ちなみに草間彌生の渡米は1年後の1957年だったようなので、先輩にあたるんだね。
海外での評価も相当に高かったことが、年表からも分かる。
建築家とのコラボも多かったようで、もしかしたら知らないうちに篠田桃紅の作品を目にしていたのかもしれない。
パワフルな活動をしていた篠田桃紅だけれど、制作中も着物姿というのが、なんとも粋じゃないの!
日本女性の気高さや気丈さを体現していたように感じたよ。

アートシーンを観てから、およそ2週間後にROCKHURRAHとオペラシティギャラリーに行く。
前回オペラシティを訪れたのは2022年3月の「ミケル・バルセロ展」なので、つい2ヶ月前のこと。
あの時は服装を失敗して寒かった記憶があるけれど、出かけた日は25℃を超える夏日の予報。
冷房対策したほうが良い気温になってるよね。

オペラシティアートギャラリーは、予約の必要がなく、会場でチケットを購入するシステムを採用している。
万が一混雑した場合には待たされるというシンプルさ!
今まで何度か訪れた経験では、そこまで混み合うことがなく、ゆったり鑑賞できるギャラリーだという認識を持っていた。
開場時間である11時少し前に着くと、今までとは違う光景を目にして驚く。
チケット購入のために列ができているじゃないの!
およそ20名程度の後ろに並び、観客チェックを始める。
ROCKHURRAH RECORDSと同じようにアートシーン効果なのか、以前より篠田桃紅を知っていてやってきたのか?
どちらかというと年齢層高めの観客が多い印象だよ。

いよいよ開場。
通常と違っていたのは観客の多さだけではなく、撮影が禁止だったこと。
白髪一雄やミケル・バルセロの展覧会では、一部のみ撮影禁止はあったけれど、すべてダメというのは初めてだよ!
作品一覧に印をつけておくためのペンもなく、本当に鑑賞するだけになってしまったよ。
それでは感想をまとめていこう!

書家を目指していた篠田桃紅が、初個展で酷評されたのは、伝統にとらわれない自由な書を発表したためらしい。
確かに一般的な書道とは大きく違い、感情の吐露と激しさが伝わってくる作品だよ。
パンクな感じがして好きだけど、1940年代に女性がこの表現を見せたら驚かれただろうね。

続いても書の作品。
万葉集に収められた大津皇子が詠んだ歌が書かれている。
「あしひきの山のしづくに妹待つと 我立ち濡れぬ山のしづくに」
原稿用紙に似せた格子に、一文字ずつ書き連ね、最後の一枡に小さく「大津皇子」と書かれているんだよね!
これを観てROCKHURRAHがフフッと笑っている。
篠田桃紅の遊び心が伝わってくる作品だよね!
画像奥には、また別のパンクな書が見える。
上の作品、大津皇子の作品、奥のパンクの書と比べてみただけでも、桃紅フォントの違いが分かるよね。

会場を進んで行くと、書から次第に抽象絵画に展示が変化していく。
「カッコいい!」
構図と色彩とデザイン。
すべてがバシッと決まってるんだよね。
陳腐な言い方だけど「和モダン」の先駆者なんだろうな。
墨の濃淡と赤色という非常にシンプルな色だけを使用しているのも特徴のひとつ。
日本画における間の使い方に似た構図は、篠田桃紅の場合アメリカの抽象絵画に近いのかもしれないね?
経歴には、家庭環境や少女時代についての記述が少ないので、どうしてこのような表現が生まれてきたのか謎だよ。
1950年代の日本といえば、前述の白髪一雄も参加していた「具体美術協会」などの前衛芸術まっさかりだったことを思い出す。
その当時、篠田桃紅と「具体美術協会」の接点はなかったのかな?
想像すると面白いよね!

1960年代になって、フィラデルフィア美術館から来日した刷師のアーサー・フローリーの勧めにより、リトグラフ制作を始める篠田桃紅。
この時の年齢47歳くらい?
40歳を過ぎてから渡米できる女性なので、年に関係なく新しいことにチャレンジするんだね。
リトグラフの作品も素晴らしくて、ロシア構成主義やバウハウスっぽい雰囲気で、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEはよだれがダラダラでたよ!(笑)
ジャポニズムミーツバウハウスだね。
とてもスタイリッシュだったよ。

まるで佐倉にある川村記念美術館のロスコルームか、といった部屋もあったよ。
真ん中に椅子が置いてあったので、座ってじっくり鑑賞してみる。
四面ある壁、それぞれに大型の作品が展示されていたんだよね。
これはもう桃紅ルームでしょ!(笑)
岐阜県関市や新潟県に篠田桃紅の美術館があるというので、是非この部屋を作って欲しいよ。
SNAKEPIPEが知らないだけで、もうすでに桃紅ルームあったりしてね?
およそ120点という相当な展示数を鑑賞できて、大満足の展覧会だった。

2階のフロアでは、篠田桃紅にちなんで「1960-80年代の抽象」が開催されていた。
こちらは撮影オッケー!
やったーと思ったのもつかの間、ガラスに反射してキレイに撮影できないよ。
写真の出来はいまいちだけど、一応載せてみようか。

韓国のユン・ヒョンクン(尹亨根/Yun Hyong-keun)の「Umber-blue ’77」。
ピンク・レディー「カルメン’77」の時代ってことね!(古い)
マーク・ロスコかバーネット・ニューマンか、といった感じだけど、実際70年代にニューヨークで触発されたらしい。
韓国の伝統的な水墨画を思わせる抽象絵画は、篠田桃紅の韓国版といったところかな。
黒色の濃淡や、ベージュの縁が淡くもやっとしているところにグッとくるよ。
最近は抽象絵画に心を惹かれるんだよね!(笑)
ユン・ヒョンクンも知らなかったので、記憶しておこう!

長年来の友人Mなら「あ!かずおちゃん!」と駆け寄るに違いない、白髪一雄の作品も展示されていたよ。
キャンパスからはみ出んばかりの迫力は、観間違わないね。
2020年2月に鑑賞した「白髪一雄 a retrospective展」でも観ているはずだけど、他のアーティストの作品と並んでいると、その特異性が際立つよ。
日本人離れした大胆さ、やっぱり最高だね!(笑)

「マーク・ロスコじゃないの?」
思わず声に出したSNAKEPIPEにタイトルを見るように促すROCKHURRAH。
「More Tragic! More Plangent!…More Purple! Rothko’s Chapel 1」 という作品名で、アーティストはなんとマイク・ケリー!
2018年4月にワタリウム美術館で鑑賞した「マイク・ケリー展 デイ・イズ・ダーン」は衝撃的で、今でもたまにあの時の映像が頭をよぎることもあるくらい。(笑)
画像が斜めで分かり辛いと思うけど、マイク・ケリー風のおふざけなのか、ロスコ風の作品を制作したんだろうね。
思わぬところで知った名前に出会えて嬉しかったよ!

100歳を超えても作品制作に取り組んでいたという篠田桃紅。
作品も素晴らしかったし、その生き様にも頭が下がる。
観客の年齢層高めだったのが、うなずけるかも。(笑)
2015年に出版された「一〇三歳になってわかったこと」がベストセラーになったという記事も見つけたので、いつか読んでみよう!

行って良かった展覧会だったけど、展覧会図録が手に入らなかったのが残念。
最近多いのは、図録完成が遅いこと。
鑑賞したら購入したいと思うのが普通なので、もっと早くショップに並べて欲しいよ。
どうかお願いします!

Anish Kapoor: Selected works 他 鑑賞

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【ピラミデビルで撮影。ギラついた太陽で暑さが伝わるね!】

SNAKEPIPE WROTE:

長年来の友人Mと六本木に行く。
ミッドタウン近くを歩いていたら、写真展のポスターを発見。
フジフィスムスクエア写真家エリオット・アーウィット作品展「観察の美学 筋書きのない写真たち」が開催されているではないの!
エリオット・アーウィットなんて写真の教科書に出てくる大御所中の大御所。
1928年フランスに生まれ、1947年からニューヨークを拠点に約70年活躍してきたマグナム・フォトのメンバーだからね。
せっかくなので行ってみることにする。

銀座にある富士フィルムフォトサロンは何度も通ったけれど、フジフィルムスクエアに入るのは初めてだよ。
A4より少し大きさのある、四切の印画紙が並んでいる。
大々的に宣伝している割には、展示数は少なめだなと感じてしまう。
壁一面のみ、およそ30点だからね。(笑)
「あ!この写真知ってる!」
名前は知らなくても、作品は知っていた友人M。
1955年に撮影された「カリフォルニア」は、ROCKHURRAHも知っていたよ。
「フェアーグラウンド・アトラクションのジャケットに使われてたよね」
80年代に「パーフェクト」という1曲だけヒットしたアコースティック系のバンドはSNAKEPIPEも知ってるけど、ジャケット写真まで知ってるのは、さすが元レコード屋。(笑)

全く予期していなかった、エリオット・アーウィットのオリジナル・プリントを観ることができて良かった!
フジフィルムスクエアは写真歴史博物館なので、カメラの展示があったり、フィルムの歴史などを知ることができるんだよね。
館内にいた初老のお客さんが、係員をつかまえて自身の写真歴なのかカメラ歴なのかを滔々と語り続けていたのが印象的だった。
かつては写真撮影に休日のほとんどを費やしていたSNAKEPIPE、使用していた印画紙はフジだったことを思い出す。
デジタルカメラとは違う、一枚の重みを感じた展覧会だった。

続いて向かったのはピラミデビル。
ここには複数のギャラリーが入っていて、2015年11月に「Gerhard Richter Painting展」を鑑賞したワコウ・ワークス・オブ・アートもこの場所!
ピラミデビル自体がカッコ良い建物なので、行くだけでもワクワクするんだよね。(笑)
今回はワコウ・ワークス・オブ・アートSCAI PIRAMIDEを目当てに訪れたよ。 

最初にワコウ・ワークス・オブ・アートへ。
開催されていたのはドイツ人作家グレゴール・シュナイダーの展覧会だった。
写真作品が並んでいる。
説明を読まないで観るだけでは分からない種類の作品みたいだね。
まずは簡単にシュナイダーの経歴を書いておこう。
1969年ドイツ生まれのシュナイダーは、10代から制作を始めたという。
穴を掘るパフォーマンスをしていたという記述からも、難解なタイプのアーティストだと想像できるよね。(笑)
ヴェネチア・ビエンナーレでは金獅子賞を受賞という輝かしい経歴の持ち主なんだって。

今回はシュナイダーのシリーズが3つ展示されていたようだけど、これも帰宅後調べて分かったこと。
画像は「400 meter black dead end」という2006年の作品。
興味の対象が「閉ざされた空間」だというシュナイダーにとって、400mの暗い一方通行の道はテーマそのものなんだろうね。
訪問した人は手探りで歩き、閉塞感と無限に続くような一方通行の暗闇により、精神的な臨界点まで追い詰められたんだって。
SNAKEPIPEは、あまり体験したくないアートだよ。(笑)

次は2014年の「ゲッペルスの生家でのプロジェクト」。
ナチス・ドイツの国民啓蒙宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルスの名前は有名だよね。
村上龍の「愛と幻想のファシズム」にも、鈴原冬二がゼロに「おまえがゲッペルスをやれ」と言うセリフがあったように記憶しているよ。
そのゲッペルスの生家をシュナイダーが買取り、家財や目録を調べ上げた後に、建物の内部の一切を破壊して残骸を破棄するまでを一連の流れとしている作品だという。
並んだ写真観ただけじゃ分かりませんがな!(笑)
グレゴールといえば、ザムザと思ってしまうSNAKEPIPEだけど、シュナイダーの名前も覚えておこう。
いつか別の作品観ることがあるかもしれないからね!

続いて向かったのがSCAI PIRAMIDE。
谷中にあるSCAI THE BATHHOUSEを訪れたのは2019年6月の「横尾忠則 B29と原郷-幼年期からウォーホールまで」を観に行った時だったね。
2021年、SCAI THE BATHHOUSEが谷中、天王洲の続いて会場に選んだのが、ピラミデビルだという。
先に行ったワコウ・ワークス・オブ・アートの隣だよ!(笑)
開催されているのはインドのアーティスト、アニッシュ・カプーアの展覧会なんだよね。
アニッシュ・カプーアの作品を一番最初に観たのは、2008年6月の「ターナー賞の歩み展」だったよ。

「Void #3」という空中にぽっかりと浮かんだ球体の前で眩暈を起こしそうになった。

自分が何を観て、どこにいるのか一瞬分からなくなってしまったのだ。
本当は立体物なのに、闇が目の前に迫っているように感じてしまう。

圧倒的な迫力について感想を書いているSNAKEPIPE。
アニッシュ・カプーアの名前は鮮明に記憶しているんだよね。(笑)
残念ながら撮影が禁止だったので、感想だけをまとめておこう。
会場入ってすぐ、入り口に展示されていたのは、青い円形の作品だった。
磨き上げられたブルーのステンレスは、鏡のように鑑賞者や周りの景色を写し込み、1歩左右に動くたび、写った顔が歪む。
観ているうちに目眩が起き、立っているのがつらくなるほど。(笑)
先にあげた2つの円形の作品は、反射の具合で色味が変化し、いつまでも観ていたくなったよ。
天井近くに黒い三角形があるので見上げると、黒色に吸い込まれていきそうになる。
ターナー賞の時と同じ現象だよ!
どうやらカプーアは、99.965%の光を吸収する「地上で最も黒い黒」Vantablack(ベンタブラック)の芸術的用途における権利を買い取り、作品にさらなる強度をもたらしているという。
地球にいるのに、ブラックホールを体感している気分になるのは、そのせいなのかもね?
鑑賞できて本当に良かった。
カプーアの作品、お金あったら欲しいわあ!(笑)

今回は3つの無料ギャラリーを「はしご」してみたよ。
これで無料とは、申し訳ないほどだよね。(笑)
六本木にはたくさんのギャラリーあるので、また探して出かけよう!

パンとサーカス展 鑑賞

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【ミヅマアートギャラリー外のポスターを撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

だんだん日が伸びてきたので、仕事帰りのウォーキングを再開することにした。
道中には、会田誠が所属しているミヅマアートギャラリーがあるので、ふらりと立ち寄ってみることにする。
パンとサーカス展」と書いてあるけれど、一体何を展示してるんだろう。
 
以前訪れた時、予約なしの場合には名前と電話番号などの記載を求められたことを思い出した。
「予約していませんが、観られますか?」
と尋ねるSNAKEPIPEに、怪訝そうな受付の男性。 
いいですけど、のような返答だったように記憶している。
名前書くんでしたよね?と重ねて訊くと
「別にどっちでもいいですけど」
と、書きたいなら書けばといった投げやりな態度に驚いてしまう。
前回訪れた「インディゲリラ Cosmic Waltz」の時にいた、感じの良い受付の男性とは大違い!
ミヅマアートギャラリーで、こんな対応をする受付がいて大丈夫なんだろうか、と心配になるほどだよ。
せっかく来たので、一応鑑賞しておこう、と気を取り直す。
撮影許可ももらったので、記事にまとめてみよう。

そもそも「パンとサーカス」って何だろう。
帰宅後ミヅマアートギャラリーのサイトで確認してみる。

島田雅彦氏による新聞連載小説「パンとサーカス」の挿画を担当した6名の作家によるアーティストユニット「コントラ・ムンディ」。
その全382回に及ぶ挿画の原画、および小説の世界観に着想を得た新作を一堂に集め展示いたします。
(ミヅマアートギャラリーより) 

新聞小説の挿絵を展示しているってことね。
ROCKHURRAH RECORDSでは新聞も読まないし、島田雅彦の小説も全く知らないよ。(笑)
今回挿絵を担当した6名のアーティストについての知識も皆無。
何も情報がない「フラットな状態」で鑑賞するのも面白いかもね?

感じの悪い受付から一番最初に展示されていた作品群。
本来が挿絵だったためなのか、アーティスト名の表示がされていない。
そのため帰宅後に調べてはみたものの、はっきりしないんだよね。(笑)
恐らく水野里奈のブースで良いはずだよ。
全体に作品が小さめなので、上のほうに展示されているものは良く見えないのが残念。
色彩が美しくて、女性的な雰囲気なんだよね。
毒気が強い作品が好みのSNAKEPIPEには、少し物足りなかったかも。
そして画像のように、ポストカード大の大きさの作品が反り返ってしまっていたのは「わざと」だったのかなあ。

6名のアーティストが1冊の本の挿絵を担当するというのは、あまり例がないんじゃないかな?
それぞれタッチがあるから、散漫な印象を受けてしまう恐れがありそうだし。
続いての金子富之の作品群は、最初に書いた水野里奈と、かなり違うよね。
なんと言っても目を引くのは、中央の怖い絵!
そして強い赤色が目立つんだよね。
邪悪そうな鳥と、まるで亡霊のような人の顔。
黒くて大きなマントによって、善良さが失われ、悪を伝染させるべく右往左往している人の群れなのか。
また勝手にお話作ってみたけど、陳腐かなあ。(笑)

観た瞬間に「こういうのは苦手」と思ってしまった。 
ものすごくキレイに描けているし、写実的だし。
誰に似てるかというと、クリスチャン・ラッセンかな。
ラッセンは人気のある作家なので、恐らく岡本瑛里を好む人も多いはず。 
SNAKEPIPEの個人的な好みの問題だね。(笑)
複数枚展示されている中で気に入ったのがこれ。
臓物をなびかせながら(?)背中に張り付く老人。
モノクロームだから穏やかな絵に見えるのかもしれない。
今際にいるような老人を背負う全裸の青年との間には、どんな物語があるんだろう?

ちょっとブレた感じで、中間色が美しい作品群。
先にも書いたようにアーティスト名が分からなかったので、てっきり男性の作品だと思っていたのに!
調べてみると荻野夕奈という知的な美人だと判明してびっくり。 
情報なしで観ると面白いのは、こういう点かもしれないね。
6名の作品の中で、一番挿絵らしいと感じたよ。
作品を鑑賞すると、SNAKEPIPEの陳腐な物語ができそうだったからね。(笑)
壺を使った計画殺人の後の絵、というのはどうだろう。
血しぶきを浴びても大丈夫なように全裸になっていて、壺についた指紋を拭き取ろうとしているシーンとか?
「パンとサーカス」知らないので、勝手に作ってるだけだからね!(笑)

全て同じ大きさの作品が63枚並んでいたよ。
妖怪が描かれていたり、パロディ風の物もある。
くっきりした線で、とても見やすいよ。
山本竜基の作品は、挿絵というより一枚で完結しているように見える。
手前のおじさんが何者なのか不明だけど、夜空をバックに歌川国芳のドクロや魑魅魍魎が夜な夜な夢の中で暴れているようだよね。
筒井康隆原作のアニメ映画「パプリカ」に通じる世界観が面白い。
もっと大きな作品が観たいと思ったよ。

最後は3コマ漫画のような作品だった。
縦に3枚の絵が並んでいるので、便宜的にそのような言い方をしたけれど、実際には3つのコマに関連性はみられない。
もしかしたら小説の内容にはリンクしてたのかもしれないけどね?
 独特の雰囲気があるので、今まで観てきた5人より年長の男性が描いているものだと思っていたら!
なんと熊澤未来子という1983年生まれの女性の作品だったよ。(笑) 
あまり女性らしさを感じなかったので、勘違いする人は多いはず。
武蔵野美術大学の日本画を専攻していた経歴を持つのに、作品は鉛筆画というのも変わっている。
今回鑑賞した中で一番好みだったかもしれない。

予備知識がないまま鑑賞することはほとんどないので、珍しい経験だったよ。
作者の名前も帰宅後知ったので、持っていた感想と実際が違う意外性も楽しめたしね!
ミヅマアートギャラリーは面白い企画があるので、また訪れてみたいと思う。
今度の受付は感じが良い人であることを祈って。(笑)