Art in Box マルセル・デュシャンの《トランクの箱》とその後 鑑賞

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【Art in Box入り口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE: 

アーチゾン美術館で開催されている「Art in Box マルセル・デュシャンの《トランクの箱》とその後」に行ってみよう、とROCKHURRAHからの誘いを受ける。
アーチゾン美術館といえば、ジャム・セッションというアーティストとのコラボ企画を何度か鑑賞しているんだよね。
昨年の11月は「M式『海の幸』ー森村泰昌 ワタシガタリの神話」だったっけ。
その前は10月で「鴻池朋子 ちゅうがえり」だったので、ジャム・セッションは秋口に開催されるものと思っていたSNAKEPIPE。
今年はどうなってるんだろう、と調べてみると「セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策」は7月に終了していたよ。
情報を入手していなかったのは残念だね!
来年はマメにチェックしておこう。(笑)

1年ぶりのアーチゾン美術館は、「パリ・オペラ座−響き合う芸術の殿堂」が始まる前だったので、全体的に「ひっそり」したムード。
チケット料金が500円というのも納得だね。(笑)

会場に入ると、まずは美術館所蔵作品から展示が始まる。
アーチゾン美術館は、マネもモネもピカソも、ほとんどの作品が撮影オッケー!
この太っ腹には拍手を贈りたいね。(笑)

気になった作品をいくつか紹介していこう。
「馬の頭部のある静物」はポール・ゴーギャンの作品ね。
SNAKEPIPEが高校生だった頃、一人でゴーギャン展を観に行ったことがある。
今から思えば竹橋の東京国立近代美術館だったように記憶しているけど、どうだろう。
タヒチの女性を描いたポスターを買って帰ったけど、飾った覚えはないなあ。
今回観た作品は、馬の左上に中国風の人形があり、中央と右には日本の(?)うちわが飾ってあり、奇妙な印象を受ける。
特に人形の顔が不気味で、そこが気に入ったんだよね!(笑)

藤田嗣治、1940年の作品「ドルドーニュの家」。
FUJITAといえば、美術館でお目にかかるのは、女性を描いた作品がほとんどなんだよね。
今回目にした油絵は、室内をモノトーンで描いていて新鮮だよ。
壁に銃が下がっているところに、戦争の暗い影が見え隠れする。
前年から第二次世界大戦が勃発していることを思い出すね。
Wikipediaによれば、その頃日本に帰国しているようなので、もしかしたらこの作品は日本で制作されたのかもしれない。

ジャン・フォートリエという名前に聞き覚えがないよ。
「旋回する線」という作品も初めて観たかもしれない。
どうやら2014年に東京ステーションギャラリーで展覧会が開催されていたようだけど、未鑑賞。
抽象絵画に興味を持つようになったのは割と最近だからね。(笑)
少ない色で、何を意味しているのか不明な絵だけれど,抑えた色調とボールペンの試し書きみたいな線が面白いよ。
他にどんな作品を残しているのか、検索しておこう。

いよいよお目当てのマルセル・デュシャン「Art in Box」の会場へ。
企画展とは言っても、常設展の片隅に「こじんまり」と設けられている。
そして撮影可能とそうではない作品が半分ずつくらい。
会場で渡された冊子に、全ての展示作品が載っていたので、撮影できなかったものに関しては、その冊子から転載させていただくことにした。
右の画像はフルクサスという1960年代に起こった芸術運動の作品をトランクに収めたもの。
どんな内容だったのか気になるよね!

こちらもフルクサス。
30周年記念のサウンド・アンソロジーだって。
Eric Andersen、Marcel Alocco、Giuseppe Chiariらの名前がタイピングされているカセットテープ。
イベント開催のチラシなのか、悪魔みたいな人影が描かれた色紙がある。
1962年からの音源をまとめているようで、一体どんな音が奏でられていたんだろうね?

デュシャンの「グリーン・ボックス」。
通称「大ガラス」と呼ばれる「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」を制作するためのメモやスケッチ、ノート類をボール紙の箱に収めた作品だという。
1934年に、どうやって複製を作ったのか不明だけど、通常版を300部、豪華版を20部制作したとのこと。
展示されていたのは通常版だったのか?(笑)

展示されていたデュシャンの箱の中で、一番気に入ったのはこれ。
「携帯できる美術館」として、自らの作品の複製をミニチュアにしてまとめているという。
言ってみれば「デュシャン・セット」ってことだよね。(笑)
中央左に小さな便器が見えるし、髭のあるモナリザまであって、このトランクの複製があったら欲しくなっちゃうよね!

デュシャンのホワイト・ボックス。
ニューヨークの画廊と提携して出版されたという。
メモや冊子が入っているので、デュシャンが何を思ったり気に留めていたのかを知る手がかりになりそう。
コレクターなら手に入れたい逸品だろうね!
先日出かけた川村記念美術館にもデュシャンの作品あったんだよね。
箱に「ローズ・セラヴィ」と書いてあって、とても字が上手かった!
川村記念美術館の作品リストには「大ガラスと関連作品」と書いてあるよ。
意外と日本にも入ってきてるんだね。

デュシャンについて書かれた書籍の外観デザインをデュシャンが担当したもの。
デュシャンの経歴に加え、予備資料として作品目録を付けてあるんだとか。
紙がベコベコになっていて、手作り感満載の雰囲気が良かったよ!
中身を観てみたかったなあ。
土色と黒のコントラストも素敵だったよ。

箱を作品制作に取り入れるといえば、ジョゼフ・コーネルだよね!
川村記念美術館ほどの規模ではないけれど、アーチゾン美術館にもコーネル作品がいくつか並んでいたよ。
1949年の作品「見棄てられた止り木」。
鳥は飛び立ってしまったのか、姿が見えないよね。
床には鳥の羽とおぼしき物体が残されている。
分かりやすいタイプの作品だけど、コーネルの箱って可愛くて好きなんだよね!

コーネルのコラージュも展示されていた。
先程の鳥はここに登場したのかもしれないね?
「衛星の観測 I」は、スノードームのような形状のガラスに、ベラスケスの有名な「ラス・メニーナス」とハチドリが入っている。
空には宝石のような立体が浮かんでいて、これも可愛らしいよね。
他の作品もポストカードになっていたらほしい、と思ったよ。
残念ながらミュージアム・ショップが開いてなかったので販売されていたのかどうかは不明!

日本人のアーティストの作品もあったよ。
デュシャンと交流があった瀧口修造や、フルクサスのメンバーとして活動していた塩見允枝子などの作品展示もあり、「こじんまり」しているけれど、充実したコレクションだったね。
載せた山口勝弘の「ヴィトリーヌ」(1955年)も箱の作品といえるかも。
見る角度によって変化するガラスを前面に使用した作品は、紹介したコーネルのコラージュと同時代の制作なんだね。
白髪一雄が具体に参加したのも1955年なので、1950年代の日本について調べてみようと思ったよ。

アーチゾン美術館で「ご自由にどうぞ」と積まれていた「Art in Box」の冊子が素晴らしいの!
撮影できなかった作品も含めて画像が載っていて、詳しい説明まで書いてある。
この冊子は、ほとんどカタログ並のクオリティだよ。
アーチゾン美術館、ありがとう!(笑)
来年のジャム・セッションを楽しみにしよう。

マン・レイのオブジェ 日々是好物|いとしきものたち 鑑賞

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【DIC川村記念美術館行きのバス停を撮影】

SNAKEPIPE WROTE: 

ROCKHURRAH RECORDS結成記念日がある10月には、毎年何かしらのイベントを考えている。
今年はROCKHURRAHから「川村記念美術館のマン・レイ展に行こう」と提案があった。
川村記念美術館、随分と久しぶり!
しかもマン・レイは大好きなアーティスト!(笑)
二つ返事で佐倉に行くことに決めたのである。

曇りや雨の日が続く10月の連休中にROCKHURRAHと佐倉に向かう。
今まではJRの佐倉駅だったけれど、今回は初めて京成佐倉で降りる。
美術館行きのバス乗り場は写真屋の前にポツンと立っていて、JR佐倉にある屋根付きのバス停とは違う趣きだよ。
京成のほうがマイナーなんだろうね。(笑)
実際このバス停で待っていたのはROCKHURRAHとSNAKEPIPEの2人、バスが来たら1人女性が乗り込んできただけだったから。
バスを待っている間、スズメバチか、と見紛うほどの大きさの昆虫が近くを飛び回り、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEを恐怖に陥れる。
ハンバーガー屋辺りを何度も徘徊していたので、餌になるような物があったのかもしれないね。
昆虫から逃げながらバスを待つこと約20分、ようやくバスがやってくる。
京成佐倉をスタートし、次に向かうのはJR佐倉駅。
2つの駅はバスで10分もあるほど離れているとは知らなかった。
そこから更に20分程ガタガタした道を走り、ようやく川村記念美術館に到着!
2014年11月の「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」以来の来館なので、約8年ぶりだったとは。
ロスコ・ルームが恋しくなるはずだよ。(笑)

今回の川村記念美術館は「マン・レイのオブジェ 日々是好物|いとしきものたち」という企画展を開催している。
2010年8月に鑑賞した「マン・レイ展~知られざる創作の秘密」では、マン・レイの全貌を紹介していたっけ。
川村記念美術館ではマン・レイのオブジェに焦点を当てているところが珍しいよ。
「マン・レイって誰?」についても、2010年の記事で書いているので、今回は割愛!
詳しく知りたい方は過去記事を御覧くださいまし。

バスを降りてから美術館入り口まで庭園を歩く。
季節が良い時には、庭園の散策も楽しそうだよね!
入館すると1階のコレクションから展示がスタートする。
常設展から始まって、企画展に向かう順番なんだよね。
係の方に確認すると、展示品は全て撮影禁止だって。
以前は撮影していたこともあるので、アーティストによって対応が違うのかもしれないね。

川村記念美術館のコレクションは何度観てもワクワクする素晴らしさ!
ジョセフ・コーネルの新たな作品が加わっていて、「コーネル・ルーム」を鑑賞できて嬉しい。
念願の「ロスコ・ルーム」は、いつ訪れても全身が震えるほどの歓喜に包まれる場所だよ。
神社に似た静寂と荘厳さの入り混じったような、特別な空気なんだよね。
SNAKEPIPEにとって、まさに聖地と言えるのかもしれない。
世界に3つしかない「ロスコ・ルーム」だけど、他の2つにはどんな作品が収蔵されているんだろう?
調べてみるとロンドンのテートはピンク・赤・グレーが中心の作品で、ワシントンのフィリップス・コレクションではオレンジが主体となった上下2分割の作品が多いようで。
SNAKEPIPEの好みは川村記念美術館のロスコ・ルーム!
色彩も展示方法も、鑑賞できるベンチの配置も全てperfect!
日本に「ロスコ・ルーム」を作ってくれて、本当にありがとう!(涙)

興奮冷めやらぬまま2階へ。
大きな窓のある気持ちの良い展示室に、一枚だけ大型の作品が展示されている。
今まで観たことがない作品だよ。
どうやらこれは、前回の企画展「カラーフィールド 色の海を泳ぐ」の時に展示されていたジュールズ・オリツキーの作品「高み」とのこと。
マーヴィッシュ夫妻の所蔵らしいので、まだ返還されていなかったために鑑賞できたとはラッキー!(笑)
靄のような、なんとも言えない淡い色彩と、下方にあるラスタ・カラーのようなはっきりした色調とのコントラストが面白い。
とても気に入った作品だよ!

いよいよマン・レイの企画展へ。
撮影は禁止で、更に作品リストもない展覧会は珍しいかも。
川村記念美術館のサイトや、おぼろげな記憶をたよりに感想を書いていこう。(笑)
そのためブログに載せた画像は、SNAKEPIPEの撮影ではないんだよね。
今回の企画を思いついたのは、画像の「ニューヨーク」という作品を川村記念美術館が所蔵したことに拠るのかな、と推測する。
万力に鉄を挟み込み、林立するビルを表しているように見えるよね。
マン・レイのオブジェは、割と簡単な材料で制作されていることが多いので、親近感がわくよ。

写真でしか観たことがなかった「贈り物」。
アイロンに鋲が貼り付けられている、これも単純な仕掛けなのに、存在感は抜群!
鉄の塊のようなアイロンの形状も素敵だけど、パンク魂を感じる逸品だよね。
皮肉とカッコ良さやユーモアもある作品は、1921年の制作だというから、まさにシュルレアリスム真っ盛りの時期だよね。
およそ100年前に、この作品を発表したマン・レイは他のシュルレアリスト達から喝采を浴びたことは間違いないね。

「破壊されざるオブジェ」も有名な作品だけど、5作品並んで展示されていたことに驚く。
複数あるとは知らなかった。(笑)
メトロノームはそれぞれ違っていて、更に貼り付けられている目の写真も違っていたよ。
光の反射によって目が閉じたり開いたりする仕掛けのタイプもある。
調べて知ったけど、これはレンチキュラーシールというらしいね?
子供の頃はキラキラシールで見たような気がするよ。
今回のポスターに使用されていたのは八王子にある東京富士美術館収蔵作品だという。
日本にも「破壊されざるオブジェ」があるとは知らなかった。
これも嬉しい発見だね!

「ブルー・ブレッド」は、その名の通り青く塗られたフランスパンが秤に乗っている作品なんだよね。
またもや2つの組み合わせで制作のオブジェだけど、インパクトは強烈。
青いパンはまずそうで、とても食べられないよね。
でも秤にはバランス良く乗っている。
何かの比喩だったり洒落や皮肉が効いた作品なんだろうね。
あまり意味は考えなくても良いのかもしれないけど?(笑)

ウッド・ベースのヘッド部分に馬の毛を付けた「エマク・バキア」。
ほとんどのオブジェは、いわゆるレディ・メイド、既製品にプラスアルファした作品だったよ。
シュルレアリスムというよりはダダイズムになるのかも。
写真などをコラージュした2次元の作品が有名だけど、マン・レイの場合は3次元の立体だった、ということだからね。
「エマク・バキア」というタイトルはマン・レイが制作した実験映像にも使われていたよ。
バスク語で「一人にしておいて」、意訳すると「ほっといて」ということらしい。
意図は不明だけど、「エマク・バキア」という響きは良いね。

マン・レイの映像作品も会場で観ることができたよ。
YouTubeにあったので載せておこう。
「The Return To Reason(1923年)」は日本語訳にすると「理性への回帰」だって。
光と影の実験映像、とてもカッコ良い!

この映像を観て思い出したのが、2016年9月に鑑賞した「トーマス・ルフ展」。
トーマス・ルフは写真を使用した現代アーティストなんだよね。
マン・レイからヒントを得たフォトグラム・シリーズもある。
画像は、以前のブログにも載せたSNAKEPIPE撮影のもの。
マン・レイの影響を受けながらも、更に発展させているのが分かるよね。
この作品も、とても好きだよ!(笑)

オブジェ以外にも写真や絵画なども展示されていた。
2010年の国立新美術館では、有名な写真がほとんど展示されていなかったので、少し不満が残ったんだよね。
川村記念美術館では「涙」や「アングルのヴァイオリン」などの展示もあり、マン・レイの全体像を知ることができた。
本や雑誌で知っていても、やっぱり展示品として観たいからね。
川村記念美術館のセレクション、とても良かったよ!

ミュージアム・ショップでROCKHURRAHがフランク・ステラのTシャツをプレゼントしてくれる。
他では見たことがないオシャレなタイプで嬉しいよ。
ありがとう、ROCKHURRAH!(笑)
ROCKHURRAHもサイズ違いで購入したので、ペアルック。
一緒に着ることはないと思うけど、記念になったね。

バスを待つ間、少しだけ庭園を歩いてみる。
画像を観ても分かる通り、この日はとても寒かったんだよね。
素敵なお散歩というよりは、我慢大会のようになってしまった。(笑)
また季節の良い時に、ロスコ・ルームに行きたいな。
次回はお弁当持参で、庭園でくつろぎたいね!

装いの力 ー 異性装の日本史 鑑賞

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【松濤美術館入り口の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE: 

面白そうだから行ってみない?とROCKHURRAHから誘われたのは、渋谷区立松濤美術館で開催されている「装いの力 ー 異性装の日本史」という展覧会だった。
何年か前、松濤美術館のフランシス・ベーコン・デッサン展を見逃していたことを思い出す。
松濤美術館は、今回が初めての訪問になるね。

早速WEB予約を済ませ、晴れて暑いくらいの日、ROCKHURRAHと渋谷に向かう。
Bunkamuraを過ぎてから、更に奥へと歩みを進めると「こじんまり」した建物が見えてきた。
想像よりは小さめの館かもしれない。
受付でチケットを購入すると、地下の会場から進むように指示される。
会場前にあった張り紙には「撮影禁止」の文字が!
載せた画像は、展覧会で唯一撮影が許可されたもの。
フラッシュで撮影すると顔が変化するドラァグ・クイーン達なんだよね。(笑)
撮影がこれだけとは、とても残念だけど仕方ないね。

会場にはすでにたくさんのお客さんが列をなして鑑賞している。
古い時代からスタートしているので、全体的に作品が小さめなんだよね。
加えて説明書きが目線よりも下のほうにあり、文字が小さい。(笑)
お客さん達は、その説明を一つ一つ丁寧に読みながら鑑賞しているため、牛歩の行列ができているんだね。
観られるところは先に観て、また牛歩に戻って、などを繰り返しながら進む。

展示は8つの章に分かれていたので、気になった作品の感想を書いていこう。
先にも書いたように撮影は禁止だったため、購入した図録から載せているので4649!(笑)

第1章 日本のいにしえの異性装

「いにしえ」と書かれている通り、「古事記」や「日本書紀」の中に登場する異性装について展示されている。
ヤマトタケルノミコトが女装していた記述が「古事記」にあるということに驚く。
天皇の命を受け、討伐のためとはいえ、どうやら女装が似合っていて、可愛かったらしいんだよね。(笑)
載せたのは三重県の加佐登神社にある絵馬で、熊襲に襲いかかっているところが描かれている。
説明を聞かなかったら女性にしか見えないよね。
更に驚くのは、ヤマトタケル女装の話をROCKHURRAHが知っていたこと。
SNAKEPIPEは、その博識ぶりに尊敬の眼差しを送ったけれど、一般的に有名な話なのかなあ?

第2章 戦う女性-女武者

描かれたのは神功皇后で、日本の第14代天皇・仲哀天皇の皇后だった女性なんだよね。
ちなみに仲哀天皇は、ヤマトタケルの子供だって。
神功皇后は、西暦にすると169年から269年頃の人物らしい。
夫である仲哀天皇が亡くなった後、九州熊襲征伐に成功したという。
そんな時代に、皇后が自ら戦いに挑むとは驚き!
勇ましい姿を描いたのは歌川国貞。
江戸の時代にも、浮世絵のモデルになっていることにもびっくりだね。

日本の異性装として最初に思いつくのは歌舞伎だけど、展覧会でも展示品の約半数は歌舞伎に関する浮世絵だったよ。
予想通りだね。(笑)
第3章から第5章は飛ばして次にいってみよう!

第6章 近代化社会における異性装

ROCKHURRAHとSNAKEPIPEが反応したのは高畠華宵の作品!
大正から昭和初期に活躍していた画家とのことだけど、絵だけ観たらまるで丸尾末広か花輪和一だよね。
Wikipediaにも丸尾末広が影響を受けていることが書かれていて納得。
漫画や本などに詳しいROCKHURRAHも知らなかったという。
弥生美術館に作品が残されているというので、一度訪れてみたいよ。
今回の展覧会では1番の収穫だったかも。(笑)

第7章 現代の異性装

2階の会場では映像が流れていた。
何かと思ったら、松本俊夫監督作品「薔薇の葬列」を編集した物だった。
「薔薇の葬列」については、当ブログで何度か文章にしているけれど、特集したことがなかったんだね。
トレイラーがあったので載せておこう。

ピーターのデビュー作!
やっぱり好きだわ、この映画!

1994年のアマチュア女装交際誌「QUEEN くいーん」やアマチュア女装者情報誌「ひまわり」に目を奪われる。
どちらもまるで70年代かと思ってしまうような化粧や髪型なんだよね!
「アマチュア」という括りも気になるところ。
「交際誌」と「情報誌」の違いはあるけれど、写真投稿や交際希望欄、発展場情報などが載っていたのかもしれないね。
表紙を飾った方は、今はどうしていらっしゃるのかしら?

第8章 現代から未来へと続く異性装

やっぱりこの方に登場いただかないと!
現代美術家の森村泰昌!(笑)
マリリン・モンローやブリジッド・バルドーに扮した作品が展示されていた。
モデルを森村泰昌、撮影は篠山紀信という大型の作品もあったね。
森村泰昌といえば、2021年11月にアーティゾン美術館で「M式「海の幸」ー森村泰昌 ワタシガタリの神話」を鑑賞したっけ。
先日は浄瑠璃の人形になるドキュメント番組を観たばかり。
異性装を追求するアーティストなので、今回の展覧会にぴったりだね!

女装や男装という観点からの企画とは、とても面白い。
日本の歴史を通して、ということなので広く浅くといった、SNAKEPIPEには少々物足りない展示だったけどね。
ピーターは展示されたのに、どうして丸山明宏はいないんだろう、みたいな感じ。(笑)
漫画の展示では「リボンの騎士」「ベルサイユのばら」、そして「ストップ!! ひばりくん!」を久しぶりに観て、懐かしかったよ。
そしてROCKHURRAHは気付いていなかったようだけど、お客さんの中に女装者がいたことも付け加えておこうかな。(笑)
観に行って良かった展覧会だったよ。
また面白い企画誘ってね、ROCKHURRAH!

中野信子『数学的崇高』についての脳科学的考察/細谷巖 突き抜ける気配 鑑賞

20220925 09
【銀座 蔦屋にあるギャラリーの壁を撮影】

SNAKEPIPE WROTE: 

ROCKHURRAHの影響でタイポグラフィに興味を持つようになったSNAKEPIPE。
ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催される企画展情報は、マメにチェックしているんだよね。
今回は「細谷巖 突き抜ける気配」だって。
日本の広告デザインの第一人者として活躍してきたらしいけれど、SNAKEPIPEはよく知らないよ。
銀座だったら、他にも面白そうな展覧会があるはずなので、検索してみよう。
銀座 蔦屋書店のアートギャラリーで開催されている脳科学者である中野信子の『数学的崇高』についての脳科学的考察」ってどんな展覧会だろう?
中野信子は、NHK BSで放映されている「英雄たちの選択」のコメンテーターとして出演しているので、ROCKHURRAH RECORDSではお馴染みの人物なんだよね。
せっかくなので2つの展覧会を「はしご」してみることに決定!

ROCKHURRAHと一緒に銀座に向かった日は、湿度が高く日差しもあって、とても暑かった。
少し歩くだけで汗だくになるほど。
まずは銀座シックスの蔦屋に向かう。
今までも何度か訪れたことがある銀座シックスだけど、服飾の店舗はいつでもガラガラ。
SNAKEPIPEが心配することはないけれど、売上取れているのかなあ?
蔦屋書店が入っている6Fへ。
中央にあるイベントスペースでは、複数人のアーティストによる「Since 1989 NOMART -アーティスト×工房展-」が開催されていた。
名和晃平の作品も展示されていたよ。

中野信子の展覧会は、FOAM CONTEMPORARYという、別の会場で開催されていた。
扉を開けて中に入り、受付の女性に撮影について尋ねるとオッケーとのこと。
そして観賞用の「特別なスマホ」を手渡してくれる。
中野信子は東大で工学部応用化学や大学院では医学系研究科脳神経医学などを専攻し、現在は東京芸大の大学院で科学とアートの研究を行っているという。
この展覧会は脳波を使った作品とのことなので、今まで観たことがないタイプの作品に出会うはずだね!

脳波を可視化したという作品。
「3種類の波動が交錯する様子を1画面に収め、2.5次元のプリント技術で作品にした」
という説明がされているよ。
会場では、訪れた人の脳波をスクリーンに映し出すイベントが行われていた。
それが上の画像なんだけど、自分の脳波なんて見たことないもんね。(笑)
どうやら脳波の活動パターンというのも、指紋や声紋などと同様に、個人個人に違いがあるんだって。
この形の人はこんな性質、みたいな分析もできるのかなあ?

壁には、複数のQRコードが印字されているキャンバスが展示されていて、受付で渡された「特別なスマホ」をかざすことで作品が浮かび上がる仕掛けになっていた。
ROCKHURRAHにかざしてもらって、SNAKEPIPEが撮影してみたよ!
中野信子の脳波パターンが出現する。
解説によれば「中野信子のポートレート」とのこと。
まるで脳核だけを残して、全身義体化した「攻殻機動隊」の世界じゃない?
ってことは、このポートレートは中野信子のゴースト、といえるのかもしれない。

AIを使った作品もあったよ。
載せた「mandala」というシリーズは、AIに抽象概念を入力して得た結果を蓄積したものだという。
AIと抽象という相反する企画自体が興味深いよね。
「AIは時間を16分割、もしくは32分割する」という解説が面白かった。
合理的な考えでは16時間になるのかもしれないね?
何をどのようにしたら、こんな図が完成するのか不明だけど、とても美しい作品だったよ!

脳波やAIとアートの融合は、これからどんな形に発展していくのか楽しみ。
頭が良い人は発想力があるからね!
中野信子の旦那様は大阪芸術大学アートサイエンス学科の准教授だとか。
まさに、アートと科学の融合なのね。(笑)
お互いに刺激し合って、楽しそうな関係と想像するよ。
中野信子の本も読んでみたいね!

続いて向かったのは、ギンザ・グラフィック・ギャラリー。
2021年1月の「石岡瑛子 グラフィックデザインはサバイブできるか」を鑑賞した時以来だね。
ROCKHURRAHは2020年3月の「河口洋一郎 生命のインテリジェンス」から2年半ぶりになるのかな。
ちょうどその頃からコロナの影響が出てきていたので、仕方ないね。

細谷巖について少しだけ書いておこうか。
1935年、神奈川県生まれ。
1953年、高校卒業後、ライトパブリシティ入社以来、69年間同じ会社に勤めているという。
現在は取締役会長だって。
1955年、日宣美展特選以降、数々の栄冠に輝く。
画像後ろに写っている「オスカー・ピーターソン」が受賞作のようだね。
2001年、紫綬褒章。
2014年、旭日小綬章を授与されている。

代表作とされる「男は黙ってサッポロビール」やキューピーマヨネーズの広告が展示されていないのが不思議。
あまりにも有名だから省かれてしまったのか?
できれば「全仕事」として一緒に並べて欲しかったな。
展示されていた作品は、ズバッとクローズアップ、もしくは顔のアップが多様されていて、インパクトの強さを感じるよね。

50年代から日本の広告業界を牽引したグラフィック・デザイナーということが分かる。
業界では知らない人はいないほどの有名人のはずなのに、今回の展覧会の展示方法はシンプル過ぎて、展示数も非常に少なくて残念だった。
ギンザ・グラフィック・ギャラリーで鑑賞した中では、最も面白みに欠ける展覧会だったかもしれない。
無料とは思えないほど充実している展覧会を行う場所と認識しているので、ガッカリしてしまった。(笑)
次回はもっと満足のいく展覧会をお願いしたいね!