横尾忠則 銀座番外地 Tadanori Yokoo My Black Holes 鑑賞

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【gggの壁一面に高倉健がっ!】

SNAKEPIPE WROTE:

ギンザ・グラフィック・ギャラリー(通称ggg)で開催しているのは、「横尾忠則 銀座番外地 Tadanori Yokoo My Black Holes」。
これは版画やポスターなどにするための原画や、版下など作品に仕上げるまでのプロセスを見せてくれる企画展だという。
2021年7月には東京都現代美術館で「GENKYO展」、2021年10月には21_21 DESIGN SIGHTで「The Artists展」など、横尾忠則の展覧会を鑑賞してきたけれど、舞台裏を覗かせてくれるとは楽しみ!
ROCKHURRAHと一緒に銀座に出かけたのである。

gggに到着すると必ず建物の外観を撮影するSNAKEPIPEだけれど、壁一面に高倉健が描かれていて驚く。
過去に数回、gggで横尾忠則展を開催していたようだけど、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEは鑑賞していなかったみたいだね。
もしかしたら今までにも、壁一面に横尾作品が描かれていたのかもしれないな。

会場に入り、念のため撮影について問い合わせ、許可を確認する。
受付前に置かれていた作品集などに目をやっていたSNAKEPIPEは、ROCKHURRAHの驚きの声を聞く。
「ちょっと!これ、見て!」
指差す場所には訪問者が名前を記す芳名帳があり、開かれたページの最初の行に
「みうらじゅん」
と書いてあるじゃないの!
あの「みうらじゅん」も同日の、もしかしたら10分前かもしれない時刻にgggを訪れていたことが判明したから狂喜しちゃうよね。(笑)
「これは大変!」
慌ててスマホを取り出し、芳名帳を撮影しようとした瞬間、
「撮影はご遠慮ください」
と受付から注意を受ける。
まあ、確かに個人情報だからね。
スミマセン、とスマホをしまうSNAKEPIPE。
その後も他のお客さんが同様の行為を受付から注意されているのを目撃したよ。(笑)
「みうらじゅん」の人気ぶりがよく分かる。
そしてニアミスで「みうらじゅん」に遭遇できたかもしれないと思うと、とても残念だよ。

芳名帳のある受付から背後に広がる展示スペースを見ると、壁やケースには、所狭しと作品が展示されている。
企画展のサイトによれば「1960年から80年代に制作された作品資料、18000点の中から250点を厳選した」らしい。
無料の展覧会で、ここまでのボリュームとは信じられないくらいの太っ腹!
先に書いた「The Artists展」も無料だったことを思い出す。
大企業がスポンサーになって実現する文化振興、本当にありがたいよね。

今回の企画展には作品リストがなかったようだよ。
作品の展示ではないからね。(笑)
60年代の雰囲気が色濃く見える雑誌の表紙が並んでいる。
2021年1月にgggで開催された「石岡瑛子 グラフィックデザインはサバイブできるか」でも、ポスター作成にあたり色指定やフォントの調整など、本人が指示をメモしている展示があったっけ。
印刷物の作成には、多くの段階があることがわかるね。

江戸川乱歩の「パノラマ島奇談」の文字が見える。
装丁を担当したのかもしれないね。
こんな本があったら欲しいよ!
右側は1997年に「サンストリート亀戸」のオープンを告知したポスター。
このポスター、実はSNAKEPIPE所持していて、以前は部屋に飾ってたんだよね。
下絵を発見したROCKHURRAHが慌ててSNAKEPIPEを呼びに来てくれた。
ラフなスケッチの段階で、ほぼ完成図に近い状態だと分かり感激する。
ポスター作成の第一ステップだろうね。
とても嬉しかったよ!
「サンストリート亀戸」は今はもうなくて、「カメイドクロック」という商業施設になっているらしいから、歴史を感じてしまうね。(笑)

画像左は「電報シリーズ」といったら良いのか、コラージュ作品に見えるんだよね。
水兵と恋人(?)は、女性が「ぞんざい」な描き方をされていて可愛らしい。(笑)
赤と青は愛し合う男女を描いたクローズアップだね。
この2枚がとても気に入ったSNAKEPIPEだよ!
画像右はアーチ状に「TADANORI YOKOO」と書かれていて、60年代に制作された「Climax at the Age of 29」と同じように見えるよ。
中央で首を吊っているポスター、見たことないかな?
こちらも制作のプロセスがよく分かって興味深い。
グリコのポーズの、顔部分を横尾忠則本人に差し替えたバージョンが完成形みたいだね。(笑)

建物の壁にも描かれていた「新網走番外地」の高倉健。
3枚並んでいて、右と真ん中をミックスさせて一番左の作品になっているのかな?
版画に近い方法だよね。
浅丘ルリ子は横尾忠則のアイドルだった話は以前読んだことがあるよ。
ヌードを想像して作成されたシルクスクリーンの原画なのかな。
線画の時点でこの完成度の高さは素晴らしいよね。
横尾忠則が刀を持ってポーズを決めているのは「一柳慧作曲 オペラ横尾忠則を歌う」のレコード・ジャケットで使用された作品だね。
1969年発売のレコードということは、大島渚監督の「新宿泥棒日記」と同じ年。
グラフィック・デザイナーとしてだけではなく、俳優や歌手などでも活躍していたんだね。

会場は1Fと地下に分かれている。
第2会場へは階段を使うんだけど、そこから企画展のタイトル通り「ブラック・ホール」へと入っていくんだよね。
紫と緑のライトが暗闇をほんのりと照らす。
階段が見づらかったのか、前を歩いていた初老の男性が足を踏み外すシーンを目撃してしまった!
気をつけないと怪我しちゃうね。(笑)
ROCKHURRAHと無事に(?)地下に到着したよ。

地下は真っ暗で、作品にだけ照明があたっているので、とても見やすい!
撮影した画像も、くっきりだよね。
ピカソや俵屋宗達、モネやマティスのパロディのような作品が並んでいた。
子供の頃から模写が得意だったという横尾忠則、さすがに上手!(笑)
暗闇に鮮やかな色彩が浮かんで、とても美しかったよ。

横尾忠則が精神世界に通じていることは、以前から知っていた。
死をテーマにした作品も多いし、天使やUFOについて対談している本を読んだこともあったっけ。
載せた画像左は仏像の手で右は幽体離脱を描いているみたい。
横尾忠則にとって、眠って夢を見ることも現実の一部であるというので、毎晩幽体離脱しているといえるのかもしれない。
江戸川乱歩の「うつし世はゆめ 夜の夢こそまこと」という言葉とは違って、横尾忠則にとっては「うつし世も 夜の夢もまこと」ということなんだろうね。

これらの作品を観た時に、荒木経惟の「センチメンタルな旅」を連想したSNAKEPIPE。
アラーキー同様、横尾忠則も愛妻家で有名だからね!
奥様との思い出を描いているのかな、と勝手に想像したよ。
載せた画像は初めて観た作品だね。

250点もの作品を充分に満喫させてもらったよ!
60年代からの作品資料をずっと保管していることもすごいと思う。
普段は見られない制作過程を鑑賞できて、とても興味深かったね!

ヴォルフガング・ティルマンス Moments of Life展  鑑賞

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【エスパス ルイ・ヴィトンの看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

先週書いたジャイル・ギャラリーで鑑賞した「超複製時代の芸術」で表参道を訪れたROCKHURRAHとSNAKEPIPE、もう一箇所立ち寄った場所があるんだよね。
それはエスパス ルイ・ヴィトン東京、ハイ・ブランドであるルイ・ヴィトンが主催しているヴォルフガング・ティルマンスの「Moments of Life展」だよ!
2019年8月にクリスチャン・ボルタンスキーの「ANIMITAS II 」、2021年10月にはギルバート&ジョージ の「Class War, Militant,Gateway」を鑑賞したことがあるSNAKEPIPE。
ROCKHURRAHは今回が初めてのエスパス東京なので「ルイ・ヴィトンのお客さんじゃないのに、入って良いのか」と悩んでいる様子。(笑)
ドアマンが扉の前に立っているので、ちょっと緊張するのは確かだよね。
にこやかに出迎えられ「いらっしゃいませ、どうぞ!」と案内されエレベーターに向かう。

今回の展覧会は、事前に計画していたわけではなく、ジャイル・ギャラリーに向かう道沿いのポスターを偶然目にしたために行くことにした。
かつて写真に興味があったSNAKEPIPEには、ヴォルフガング・ティルマンスの名前は聞き馴染みがあったからね。
どんな写真と聞かれたら「雰囲気写真(SNAKEPIPE命名?)」と答えたくなるんだけど、ちゃんとした説明になってないか。(笑)
ここで簡単にヴォルフガング・ティルマンスの経歴を書いてみよう。

1968 ドイツ、レムシャイト生まれ
1990-92 ボーンマス・アンド・プール・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインで学ぶ
1992-94 ロンドン在住
1994-95 ニューヨーク在住
1995 「ベッヒャーシュトラーセ美術賞」
「アルス・ヴィヴァ賞」受賞
1996〜 ロンドン在住
1998-99 ハンブルク美術大学客員教授を務める
2000 「ターナー賞」受賞
2001 ボーンマス・アート・インスティテュート美術名誉研究員を務める
2003〜 シュテーデル美術大学教授を務める
2015 「ハッセルブラッド国際写真賞」受賞

68年生まれということは、現在55歳かな。
ロンドンとベルリンを拠点に活動しているんだって。
教授になっているとは知らなかったよ!
2000年にターナー賞を受賞しているということは、2008年の「ターナー賞の歩み展」でも作品を観ていたんだね。
ちゃんと記事にも書いているね。(笑)
SNAKEPIPEが最初にヴォルフガング・ティルマンスを知ったのは、90年代だったはず。
その当時話題を集めていた若手写真家として紹介されていたように記憶しているよ。
何気ない日常と友人達を作品にしていて「オシャレな写真」の代表格だったね。
それ以降、日本の情報雑誌などでもヴォルフガング風の写真が載っていたっけ。
ヒロミックスや蜷川実花、ホンマタカシなどが出てきたのもこの頃だったかな。
似た雰囲気だなと思ったSNAKEPIPEだよ。

会場に入ると、複数のお客さんが鑑賞していた。
撮影オーケーとのことなので、バシバシ撮らせてもらったよ!
2005年から2020年までに制作された21点が、大小様々なサイズで展示されていた。
これがヴォルフガング・ティルマンスの特徴らしいね?

室内の様子が撮影されている。
ロンドンとベルリン、2つのスタジオ兼自宅の様子かな、と勝手に想像する。
窓が広くて日当たりが良さそうな一室と、雑多でガランとした部屋は倉庫っぽくて良い感じ。
2011年5月のブログ「SNAKEPIPE SHOWROOM 物件1 世界3大都市編」に「SNAKEPIPEの最も理想に近いのはガレージや倉庫みたいなガラーンとした、だだっ広い空間が広がるだけの家」と書いているね。
ティルマンスの写真が、まさにこれ!って思ったよ。(笑)

植物をモチーフにした作品。
ティルマンスは静か動か、といえば静だと感じる。
見過ごしてしまいそうな瞬間や光を捉えているんだろうね。
載せた2枚は、どちらも大きく引き伸ばされた作品で、クリップで止められていただけ。
額に入れる場合との違いはなんだろうね?
作者にしか分からない心理的なものかもしれないけど、想像すると面白いかも。(笑)

人物を被写体にした作品もあったよ。
ティルマンスはゲイであることを公言しているらしい。
そのせいなのか、モデルは全員男性だったよ。
セルフ・ポートレートも含まれていたみたいだけど、どの作品だったんだろう。
被写体を正面から撮影して、モデルと写真家の視線が交わる作品がなかったところがポイント。
ゲイ・コミュニティのメンバーへの配慮なのか、ティルマンスのスタイルなのか?

ここでようやく、人の顔が見える「Summer party」があるんだけど、まるで覗きみたいな撮影なんだよね。
草むらから隠し撮りしてると感じたSNAKEPIPEには、「マネの名作『草上の昼食』を彷彿させる」という文章には首をかしげてしまうよ。
『草上の昼食』で思い出すのは、アルバム・ジャケットでパロディやってたバウ・ワウ・ワウ
ヴォルフガング・ティルマンスもニュー・ウェイヴを聴いていたかもしれないね?

「Osaka still life」と題された2015年の作品。
なんで大阪?と思ったSNAKEPIPEだけど、どうやら2015年に国立国際美術館で大規模な個展が開催されていたらしい。
東京にも巡回したのかなあ?
これはその来日時に撮影された作品なんだろうね。
桃を一個食べ終わったみたいだけど、美味しかったかな。(笑)

ヴォルフガング・ティルマンス以降、写真界の流れが変わったと言っても良い程影響を与えた写真家だと思う。
先にも書いた「何か雰囲気がある」「オシャレな」写真の先駆けだからね。
若者文化を発信する写真家と言われたティルマンスも、もう50歳超え!
活動の幅を広げ、映像や音楽などにも挑戦しているみたいよ。

映像も音もヴォーカルもティルマンスが担当してるって、マルチだね!
これはまるでデヴィッド・リンチみたいじゃないの。(笑)
年齢に関わらず、エネルギッシュに創作活動を続ける大人がいっぱいいるのは嬉しいね。
行って良かった展覧会だったよ!

超複製時代の芸術:NFTはアートの何を変えるのか? 鑑賞

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【ジャイル・ギャラリーの入り口を撮影。いつも通りだね(笑)】

SNAKEPIPE WROTE:

表参道にあるジャイル・ギャラリーで開催されているのが「超複製時代の芸術:NFTはアートの何を変えるのか?ー分有、アウラ、国家権力ー」という長〜いタイトルの展覧会。
これだけでも難しそうに感じてしまうよ。(笑)
実際、今までジャイル・ギャラリーで2021年3月には「2021年宇宙の旅 モノリス_ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ」、2022年6月に鑑賞したのは「世界の終わりと環境世界」というように、タイトルから観念的な展覧会だと想像できる企画が多いんだよね。
好みのアート作品かどうかは別として、アート・シーンの潮流を知りたいという気持ちから出向くことが多いギャラリーになるよ。

今回の企画展のキーワードは「NFT」とのこと。
「NFT」って一体なんだろう?

NFTはNon-Fungible Tokenの略語で、これは非代替性トークンを意味するという。
ブロック・チェーン技術を活用することで、デジタル作品にオリジナルの価値や著作権を持たせ、固有の資産にできるんだとか。
具体的な技術面のシステムはよく分からないけれど、デジタル・データが一点物として証明できるというのは画期的だよね。
画像や音声、動画など大抵のデジタル・データはコピーが可能で、複製や改ざんが可能と認識していたからね。(笑)
更にNFTアートは販売後も著作権は作者に帰属し、二次流通時にも収益の一部が作者に還元されるというのも、新しい試みなんじゃないかな?
自分で作った作品をNFTアートとして販売することもできるというのも面白い。
ブロック・チェーン技術の部分は、NFTマーケットプレイス側で暗号化してくれるというので、安心、安心!(笑)
SNAKEPIPEはその技術から学ぶ必要があるのかと思っていたからね。

載せた画像は75億円で落札されたBEEPLEのNFTアート作品「Everydays: The First 5000Days」だって。
BEEPLEとはマイク・ウィンケルマンというアメリカ人で、グラフィック・デザイナーであり、10年以上毎日3Dアート作品をアップしているという。
落札されたのは、アップした自身の作品を一枚にまとめた作品なんだね。

ここで思い出すのは、かつて写真もアートとして認められていなかった、という事実。
複製が可能だからというのが理由だったはず。
いつの頃からか、一枚一枚の写真にも価値が見出され、アートになっていたっけ。
デジタル・データも同様の道を歩むことになるのか。
まだ開発途上で、様々なことが実験段階だというNFTアート、ROCKHURRAHと一緒に行ってみたよ!

元々、外国人観光客が非常に多い原宿だけど、ジャイル・ギャラリーに行った日も見渡す限り外国人だらけ。
ジャイル・ギャラリーがあるのはMOMAデザイン・ストアやコム・デ・ギャルソンのショップと同じフロアなので、ここにも外国人ツーリストがいっぱい!
ショッピングが目的のようで、ジャイル・ギャラリーに入ってくる人はいなかったよ。
画像はチーム・ラボの「Matter is Void」。
作品は誰でもダウンロードして所有できるけれど、文字の書き換えができるのは作品所有者のみだという。
「所有者と作者の垣根がなくなり、複数人の共創により作品は変化し続ける」
というのがテーマらしい。

レア・メイヤーズの「Certificates of Inauthenticiy(非真正性の証明)」を観て「ジェフ・クーンズのバルーン・ドッグじゃないの?」と言ったのはROCKHURRAH。
この時は分からなかったけれど、後から知ったのは「ジェフ・クーンズのバルーン・ドッグを3Dデータ化し、誰でもダウンロードしてプリントできるようにした」んだとか。
作品の真贋はNFTが販売する証明書の有無で変化するという点がポイントなんだって。
他にマルセル・デュシャンの「泉」データもあるというので、いつか3Dプリントしてみたいよね。(笑)

今回の展覧会で一番のビッグ・ネームはダミアン・ハーストだよね!
カラフルな水玉が描かれたペイントとデジタル両方の作品が展示されていた。
これだけ観ても意味不明。(笑)
2021年にデジタル化した水玉を1万点発行し、1点を約20万円で販売したという。
所有者は、1年後にNFTか絵画のどちらかを選択する必要があり、選ばれなかった絵画4851点が焼却されたという。
実際にハーストが消防服を着て、約10億円相当を燃やしたというから驚くよね。(笑)
SNAKEPIPEが最も驚いたのは、この水玉作品を1万点描いたところかな。
燃やすために描くって行為がすごい!

鎌谷徹太郎の「The Dream of Butterfly」は色鮮やかで目を引く作品だった。
タイトルは訳すと「胡蝶の夢」だよね。
周りを取り囲んでいる建築は京都の平等院とのこと。
髑髏に花とは、そんなに目新しい題材ではないかもしれないけど?
説明を読んでびっくり!
なんと5万匹の蝿を樹脂で閉じ込めた上に描かれていたんだって。
これは作品観た後で知って良かったかも。(笑)
そして隣にはNFTが並んでいて、絵画と2つでワンセットの作品だという。
所有者が変わるとNFTが変化するらしいけど、どういう仕組なんだろうね。

ルー・ヤンの「マテリアルワールドの大冒険」というゲーム映像作品は、実際にコントローラーが接続されていて、鑑賞者がゲームできる仕掛けになっていた。
8つのエピソードがあり、アイデンティティを変容させていく内容らしい。
ROCKHURRAHにコントローラーを操作してもらい、少し動かしてもらったけれど、画面に登場する人物の顔が気になって仕方なかった。
画像下に見える男、狂気を孕んでいて、ものすごく怖いんだよね!
それにしてもルー・ヤンが女性とは思わなかったよ。
自身のサイトでは、コスプレして踊っているので、気になる方は訪れてみてね!

森万里子は、ジャイル・ギャラリー参加率が高いアーティストだよね。
今までいくつかの作品を鑑賞したSNAKEPIPEだけれど、今回展示されている「Eternal Mass」は、最も難しいコンセプトに感じるよ。
「空間と時間という4次元に加え、人間に知覚できない次元が6つ存在する」と説明する超弦理論を可視化したという。
「すべての粒子には同じ質量と反対の電荷を持つ反粒子が存在する」という量子物理学の理論に着想を得たとのこと。
パール状の粒で構成された仮想生命体を対にした、森万里子初のNFT作品なんだって。
説明聞いてよく分かったよね!(笑)

施井泰平の「IT II」は、文庫本の背表紙を切り取り、キャンバスに貼り付けた作品なんだよね。
本棚に見せかけた偽物というのが面白い。(笑)
解説には「情報の絵画」なんて表現がされているよ。
難しい文章を読まなくても、観た瞬間に驚きがある作品は良いね!
施井泰平は2001年から「インターネット時代のアート」をテーマに作品制作してきたという。
2014年には東京大学大学院在学中に、大学構内で起業するという経営者の顔を持つアーティストとは気になる人物だね!

作品だけ観ても意味が分からなかったけれど、解説を読むととても興味深い展覧会だったことが分かった。
今後NFTがどうなっていくんだろう?
今まで知らなかった考え方やアーティストを知ることができて、有意義だったね!

エドワード・ゴーリーを巡る旅 鑑賞

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【松濤美術館入り口の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE: 

初めて渋谷区立松濤美術館に行ったのは、2022年10月の「装いの力 ー 異性装の日本史」だったROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
独自の視点を持つ企画に興味を持ち、マメに情報をチェックすることにしたんだよね。
現在開催されているのは「エドワード・ゴーリーを巡る旅」という、絵本作家であるエドワード・ゴーリーの企画展だという。
今まで聞いたことがない名前だよ。
絵本の世界について知識がないから当然かな?(笑)
サイトに小さく載っている作品は、モノトーンでちょっと不穏な雰囲気が気になるよ。
半年前の「装いの力」の時は、ネットで事前予約した記憶があるけれど、コロナの対策が緩和された現在は、直接美術館に行ってチケットを購入する以前のスタイルに戻ったみたい。
事前予約をしても、先日の「佐伯祐三展」のように、みっしりと人を詰め込み、販売枠を大幅に広げる美術館もあるけどね。(苦笑)

まずはエドワード・ゴーリーについて調べてみようか。

1925 イリノイ州シカゴに新聞記者の息子として生まれる
1942 シカゴ・アート・インスティチュートに入学
1943 半年だけ美術を学んだ後、アメリカ陸軍に入隊
1946 兵役を終えハーバード大学に入学(フランス文学を専攻)
1953 ニューヨークに移住、出版社に就職
1956〜 ニューヨーク・シティ・バレエに傾倒する
1957 「うろんな客」刊行
1972 「アンフィゴーリー」(Amphigorey)を出版
ニューヨーク・タイムズ・ブックレビューの「今年度最も注目すべき美術書の5冊」に選ばれ、「ベスト・デザイン・ブック15」として、アメリカン・インスティテュート・オブ・グラフィックアーツ賞を受賞
1973 サイラス・ピアース劇場の公演「ドラキュラ」のセットと衣裳デザインを担当
1978 「ドラキュラ」でトニー賞の衣装デザイン賞を受賞
1980 アメリカの教育テレビ番組『ミステリ!』(Mystery!)のオープニング・アニメーションを制作
1986 マサチューセッツ州ケープ・コッド、ヤーマスポートの館を買い取り移転
2000 心臓発作のため75歳で死去

除隊後にハーバード大学に入学というところに注目しちゃう。
世界屈指の有名大学、ハーバードだもんね!
アートを学び、フランス文学を学び、イラストやグラフィック・デザインをしていた絵本作家とは驚きだよ。
1980年のテレビ用アニメーション制作が気になるね。
会場でも流れていた動画がYouTubeにあったので、載せてみようか。

1980年のテレビ放送なので、画質が荒いのは仕方ないね。
輪郭が少しボケてるけど、アニメーションの面白さは充分伝わるよ!
世界中にファンがいる、というエドワード・ゴーリーの展覧会、行ってみよう。

10時の開館に間に合うよう、渋谷に到着したROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
渋谷は11時開店の店舗が多いためか、美術館までの道のりに人が少ない。
美術館まで優雅なお散歩を楽しんだよ。(笑)
この分では、美術館も空いているかもと密かに期待していたSNAKEPIPEは、裏切られることになる。
松濤美術館の立地のせいなのか、前回鑑賞した「装いの力」の時と同様、「ゴーリー」も若い女性の割合が高い。
2022年7月の「シリアルキラー展2022」にも書いたように、「ちょっと不気味」を好む人が多いんだろうね。

会場に入った瞬間、最初に持った感想は「作品が小さい!」だった。
照明が落としてあり、作品名は小さく、説明文が長い。
前回の「装い力」の時もそうだったけれど、文章を読むために立ち止まる人が多いため、作品鑑賞するために長蛇の列ができてしまうんだよね。
これはSNAKEPIPEの苦手な鑑賞法だよ。
空いている、観られる作品から観ていく方法にする。
並ぶのが苦手なんだよね。(笑)

会場は地下と2階に分かれていて、全部で5つの章で区切られていた。
松濤美術館は基本的に全ての作品の撮影が禁止されているんだけど、地下の会場前に撮影可能な作品があったよ。
引き伸ばされて大型作品になった、1961年の「不幸な子供」。
この1枚だけを観ると、タイトルの「不幸な」は全く連想できないよね。
人形遊びをしている、裕福な家庭の子供に見えるよ。
壁紙やジュータンの柄など、細部まで描きこまれた緻密な描写。
子供の顔が全く可愛らしく見えないところがポイントかな?(笑)

第1章は「ゴーリーと子供」で、先に載せた「不幸な子供」も含めた原画が展示されていたよ。
左はゴーリー自身が子供だった頃に描いた絵。
「ひよこ」と「うさぎ」は1930年頃の作品だというので、ゴーリーが5歳くらいなのかな。
生涯猫と暮らしていたというゴーリーは、子供の頃から動物好きだったんだろうね。
「ひよこ」と「うさぎ」はとてもかわいかったよ!

「不幸な子供」から2枚載せてみたよ。
前述したように松濤美術館は撮影禁止なので、画像は購入した図録からの引用にさせていただこう。
ご了承ください!
ゴーリーの絵本を読んでいないので、絵からストーリーを想像したり、もしくは絵そのものの雰囲気を楽しんだROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
線描の細かさが際立ち、ゴシックな印象を受ける。
「不幸な子供」は、本当に悲惨な最後を迎える少女の話で、びっくりしてしまった。
1950年代のアメリカとは思えないダークなバッド・エンド!
眉をひそめる人も多かったんじゃないかな?

第2章は「ゴーリーが描く不思議な生き物」。
画像は、「うろんな客」で1957年に刊行された絵本の中の一コマね。
「不幸な子供」と同様、恰幅が良くヒゲを蓄えた成人男性が登場している。
ゴーリーは読書家で有名だったようで、特にお気に入りはイギリスのヴィクトリア朝時代の本だったという。
ゴーリーが描く人々の服装はその時代を彷彿させるよね。
「うろんな客」とは、いつの間にか居座り家族に迷惑をかけ続ける、右側のペンギンみたいな謎の生き物を指している。
これは何かのメタファーなんだろうけど、それぞれ感じることができれば良いんだろうね。

左から「蟲の神(1961年)」、「狂瀾怒濤 あるいはブラックドール騒動(1986年)」、「音叉(1983年)」の画像ね。
どのシーンが何の意味を持つのかを考えずに、一枚の作品として観てもシュールさが良く分かるよね。
特に真ん中の画像は、鎖に繋がれた指の上に切断された指がバランスを取っているのが不気味。
右側の「てるてる坊主」みたいな人物(?)の行動は、順を追って観ていても何をしているのかよく分からなかった。
そこがゴーリーの魅力なんだろうね。

第3章は「ゴーリーと舞台芸術」。
年表にあったように1956年頃から、ほとんど全てのニューヨーク・シティ・バレエの公演を観劇していたというゴーリー。
映画鑑賞も好んでいたらしく、載せた画像「具体例のある教訓(1957年)」は、まるで映画のシーンみたいだよね。
こちらも絵だけを観る限り、一体どんな教訓が示されているのか不明だけど、構図やタッチが素晴らしかったよ!

「金箔のコウモリ(1965年)」は、バレエを題材にした作品。
時代を象徴する世界的なバレエ・ダンサーになった少女のサクセス・ストーリーではないようで。
ゴーリーは、絵空事のハッピー・エンドではない、掘り下げた心理を描きたかったのかなと想像させる作品が多いみたいだね。

2階の会場前に展示されていた「ドラキュラ・トイシアター(1979年)」の表紙は撮影して良いマークがついていて嬉しかった。
ゴーリーはミュージカル「ドラキュラ」の舞台演出や衣装を担当し、トニー賞を受賞する快挙を成し遂げた後、組み立て式の絵本「ドラキュラ・トイシアター」を刊行したという。
各ページを切り取って組み合わせると、「ドラキュラ」の舞台が再現できる仕掛けになっていたんだとか。
もったいなくて切り取れないよね。(笑)

第4章は「ゴーリーの本作り」で、実際にゴーリーが使用していたペンや画材が展示されていたよ。
特別感はなく、普通の道具に見えて好感を持ったよ。
画像は「不幸な子供」の表紙と裏表紙だって。
ガーゴイルが描かれていて、ゴシックだよね。(笑)

「金箔のコウモリ」と「中国風オベリスク: 四つ目のアルファベット(1961年)」の表紙。
「中国風」のほうはボツにした作品のようだけど、まるで墓地のような雰囲気で、一体どんな絵本だったのか気になるよね。
「コウモリ」はタイトル通りのデザインで、驚愕し倒れ込んだ大げさな3人の男性が面白い。
右手前のボトルにタイトルを描いているのが憎い演出だね。
「ドラキュラ・トイシアター」、「不幸な子供」や「金箔のコウモリ」が本屋に並んでいたら、興味を持って手に取るだろうね!

最終章である第5章は「ケープコッドのコミュニティと象」。
ニューヨークからケープコッドに移り住んだ時には、60歳を過ぎていたゴーリー。
その頃から新たな試みとしてエッチングを始めたという。
象を題材に選び、限定版の「エレファンタモス(1986年)」を発行したとのこと。
載せた画像左は、躍動感溢れ生き生きした印象で、まるで岡本太郎の作品のよう。
右の作品は岩の隙間に立ち、月光を浴びてエネルギーを蓄えているように見えるよ。
呪術的なイメージを持ったSNAKEPIPEだけど、どうだろう?
晩年になって抽象的な作品に取り組んだゴーリーだけど、年齢を感じさせない力強さがあるよね。
75歳は早すぎる死で、とても残念に思うよ。

最後にミュージアム・ショップを散策。
図録の購入は最初から決めていたけれど、ROCKHURRAHが面白い物を発見した。
それは「The Fantod Pack(不安な箱)」という、1995年に776部限定で出版した20枚のタロットカードの復刻版なんだよね。
展示されていた時にも「面白いね」と話していたら、ショップにあったとは!
図録と一緒にROCKHURRAHが買ってくれて、嬉しいよ。(笑)
どのカードを引いても、不安を煽り悲惨な気分になる言葉を聞かされることになるというもの。
制作したゴーリーはもちろんのこと、喜んで買う側も同類のブラック・ジョーク好きってことだね!

今まで知らなかったアーティストを知り、行って良かった展覧会だった。
作品が小さいため屈むように鑑賞した結果、解説や作品に影ができてしまい、更に鑑賞し辛くなることなどは、改善されないんだろうか?
照明の当て方や展示方法について、もう少しご配慮いただけると良いのに、と思う。