「オスカー・ニーマイヤー展」と「ここはだれの場所?」鑑賞

【地下の図書室壁にある展覧会のポスターを撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

「絶対観たほうが良いって!」
長年来の友人Mからの誘いは、東京都現代美術館で開催されている展覧会のことである。
「マコっちゃん、会場にいるみたいだよ!」
これもお目当ての一つだったようだ。
マコっちゃん、とは現代美術家の会田誠のこと。
全く知り合いでもなんでもないのに、勝手にニックネームで呼んでる友人M。
フランシス・ベーコンのこともベーコンさん、だしね。(笑)

おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」の展示に会田誠の作品があり、その会場内に会田誠が出現するという情報があるらしい。
アーティストご本人にお目にかかれるチャンスはなかなかないもんね!
オスカー・ニーマイヤー展」の鑑賞も目的の一つ。
暑さのため、できれば外出したくないと考えていたけれど、機会を逃して苦い涙を流したくないと一大決心をする。(大げさ)
友人MとROCKHURRAH、そしてSNAKEPIPEの怪しい3人組は今年4月の「大アマゾン展」以来約4ヶ月ぶりに集結したのである。

おいしい物を食べることが大好きな友人Mは、何かの約束をする度にグルメ情報を検索し、「お昼はココ!」と指定してくるのが常である。
今回も、 美術館に行く、と決まったすぐ後に木場近辺のグルメ情報が送られてきた。
いくつかの候補の中から、今回は夏らしくタイ料理に決定!
3人で辛い料理に舌鼓を打った後、美術館に向かったのである。

まずは「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」から鑑賞する。
会場に入ってすぐに、圧倒的な色の洪水が目に飛び込んでくる。
ヨーガン・レールの作品である。
ヨーガン・レールと聞いて懐かしい、とROCKHURRAHがつぶやく。
SNAKEPIPEは聞き覚えがなかったけれど、ヨーガン・レールは1970年代から日本でファッション・ブランドを展開しているデザイナーだったんだね。
そのヨーガン・レールが石垣島で拾った漂流物がカラー分けして展示されていたのである。
漂流物とは、言い換えればゴミ!(笑)
それを種類や色で分別して、キレイに配置するとびっくりするほどアートになっちゃうんだよね!

 
カーテンで仕切られた次の会場に入ると、驚きのあまり声が出た。
「わー!キレイ!」
天井から吊るされた色とりどりのライトは、壁が鏡になっている効果も加わり、なんとも幻想的な異空間へと誘ってくれる。
全体をみると幻想的だったけれど、ライトを構成している部品はなんだろう?と近寄ってみて更にびっくり。
前の会場にあった漂流物が使用されているんだよね!
例えばペットボトルのキャップだったり、洗剤の容器だったり。
廃品から、こんなに素敵な作品を作るなんて!(笑)
ずっと会場にいたい気分だったね。

展示会場にあった年譜でも、既に亡くなっていることは知っていたけれど、石垣島での自動車事故が原因だったとは!
70歳という年齢も、まだまだこれからだったのに、と残念に感じてしまうよね。


続いてはお目当ての会田誠の会場へ。
展示作品にクレームがつき、撤去要請が出たといういわくつき(?)の作品が左側の「会田家」と書いてある「檄」である。
2013年1月の当ブログ「会田誠展~天才でごめんなさい~」は森美術館で開催された個展を鑑賞した際の感想をまとめたものであるが、その中で

美術界の過激派として
これからもブラック・ジョークで笑わせて欲しいと思う

と書いたSNAKEPIPE。
「作品にクレームがついた」というのは、会田誠にとっては思うツボかもしれないと感じてしまう。
同じブログで

「これはダメです」という社会的な規制やルールに
対抗することで成り立っている作品が多い点が特徴

とも感想を綴っているSNAKEPIPEからすれば「それが会田誠の作風」だと思うから。
クレーム結構!批判上等!じゃないのかな?(笑)

さて、お目当ての会田誠ご本人は何処?
会場の片隅に畳敷きの作業場があり、机と座布団が置かれている。
どうやら木彫で作品を作っているようである。
友人Mと「マコっちゃんいないね」と言いながら、制作途中の木彫をじっくり眺めていると
「会田さんは今日来るのちょっと遅いみたいですよ」
よいしょ、と作業場の座布団に腰を降ろしながら男性が話しかけてくる。
どうやらその男性が会田誠のパートナー(?)で、会田誠が描いた原画の木彫を担当しているらしい。
会田誠は昨夜飲み過ぎ、家に帰れず、奥さんに叱られたため、会場入りが遅いという話を聞き、笑ってしまう。
パートナーの男性の名前を聞き忘れてしまったけれど、その方から木彫の作品に関する説明も聞くことができて良かった。
「会田誠版いろはかるた」を制作している途中で、完成した暁には会田誠の故郷である新潟で展覧会が開催される予定らしい。
「いろはかるた」は会田誠らしくブラックな内容で面白かったな!(笑)
新潟までは行かれないけれど、いつかまた森美術館あたりで個展開いてもらって、その時に鑑賞したいよね。

他にも安倍総理に扮したビデオや、気味の悪い人形がいっぱい飾ってあるアート作品だったり、食べる気を無くすような血みどろの「愛憎弁当」やシャネルのマーク入りの「ブランド弁当」など、「いかにも会田誠」ワールドが展開されていて、楽しめた。
マコっちゃんに遭遇できなかったのが残念だったね!

展覧会のハシゴをするのは久しぶりである。
同じ美術館内でのハシゴだから、そんなに大変じゃないけどね!
続いては「 オスカー・ニーマイヤー展」へと向かう。

SNAKEPIPEはカッコ良くて変わったデザインの建築物は大好きだけれど、建築家についての知識はゼロに近い。
これはどの業界についても同じことが言えると思うけれど、その世界では知らぬ人がいないくらい有名でも、業界外の人間には全く存在を知られていないというパターンだ。
オスカー・ニーマイヤーはブラジルの建築家で、その作品が世界遺産に登録されているという。

日伯外交樹立120周年を記念して、リオが生んだ
偉大な建築家の約1世紀にわたる軌跡を紹介いたします

という説明がされていたように、ブラジルと日本というのは長い歴史があるのにもかかわらず、あまり文化的な紹介はされていないように感じてしまうね。
自分でもすっかり忘れていたけれど、2008年に「大道・ブランコ・コーヒー」 というダジャレをタイトルにしたブログが、ブラジルの写真家ミゲル・リオ=ブランコ森山大道の写真展についてまとめた記事だったっけ。
あれも東京都現代美術館の企画だったよね!(笑)

ブラジルの文化に関してはそんな程度の知識しかないSNAKEPIPEなので、オスカー・ニーマイヤーの名前を聞いたのも、作品を観るのも初めて!
友人Mも知らなかったようだ。
ROCKHURRAHは昔、デザイン関係の仕事をしてした友人が持っていた本の中にオスカー・ニーマイヤーの作品があったことを記憶していたようだけれど、詳しく知っているわけではないという。

会場に入ってすぐに動画が映し出されているスクリーンがある。
空飛ぶ円盤がブラジルの空を飛び、まるでイギリスの人形劇「サンダーバード」のような海際の基地に着陸する。
中から出てきたのはオスカー・ニーマイヤー本人!
マーロン・ブランドに似て蝶!(笑)
このちょっとチープ感のある映像がとても面白くて、目が釘付けになってしまった。(笑)

次の部屋からはオスカー・ニーマイヤーが設計した建築の模型や写真が展示されている。
その建築の奇抜でユニークなデザインに度肝を抜かれてしまう。
年代を確認すると1950年代!
えー!
2011年の年末の当ブログ「ウィリアム・ブレイク版画展/メタボリズムの未来都市展」では森美術館で開催された「メタボリズムの未来都市展」について書いている。
この展覧会は日本の建築家がより良い社会、環境との共存、狭い日本の土地問題など、様々な観点から都市計画を考えた建築家達のデザインが展示されていたんだよね。

その建築運動は1960年以降だったし、建築家が空想したデザインは実現されることがなく、「こんなのどお?」という提案で終わってしまうことがほとんどだったようだ。
ところが、なんとブラジルでは奇想天外なデザインが実際に建築されていたんだね!
この差は一体何故なんだろう?
予算?
土地の広さ?
それとも民族的な考え方の違いか?(笑)

オスカー・ニーマイヤーが落書きみたいにキュキュっと描いた曲線がそのまま形になって建築物に変化してしまう映像が興味深かった。
この自由な発想とセンスは日本人には難しいレベルかもね?

オスカー・ニーマイヤーの作品の中で実際に行ってみたいなと思ったのがニテロイ現代美術館(写真上)である。
オスカー・ニーマイヤー自身がこの美術館について語っていた。
「この坂道をワクワクしながら登ることだろう」
坂道って赤い舌みたいなところね。(笑)
現代美術館だもんね、これくらい現代アートな建築の中で展示されて当然だよね!
おや?どうやらこの美術館が、会場入口で観た空飛ぶ円盤だったんだね!
だから海際に着陸したのも納得ね。

オスカー・ニーマイヤーは2012年に104歳で他界したそうだけれど、2011年の作品もクレジットされているように高齢になっても現役で活動していたようである。
そのエネルギーの源は、どうやら女性だったようで。(笑)
オスカー・ニーマイヤーのデザインの特徴である曲線は「愛する女性の体の線」を表現しているという。
アレハンドロ・ホドロスキーもそうだけど、女好きのスケベ心を忘れない(?)男性は創作活動期間が長くて、良い作品を作り続けることができるのかもしれないね?(笑)

オスカー・ニーマイヤー展も鑑賞できて良かったなあ!
まだまだ全然知らない大好きな世界がたくさんあることが分かって、次の新たな出会いが待ち遠しくなるね!

最後に常設展へ。
今回の常設展は「戦後美術クローズアップ」と題して、1945年以降の日本人アーティストの作品を展示していた。
ハーバード大学を卒業してフランス陸軍の歯科医をしていた洋画家、中原實なんて、知らなかったよ!
そんな経歴を持っているアーティストがいたなんてね!
友人Mのお気に入りの画家香月泰男の作品も展示されていて、良かった。
香月泰男の作品は記憶が間違っていなければ、国立近代美術館の常設展で観たのが最初だったはず。
山口県長門市に香月泰男美術館があるようなので、いつか行ってみたいよね!
今回の常設展で一番興味を持ったのが石井茂雄 という28歳で夭折した画家!
石井茂雄(画家)と検索しないと、野球選手がヒットしちゃうから要注意なんだよね。(笑)
この石井茂雄(画家)は、なんとヨーコ・オノの従兄弟なんだって。
上の画像のようなアングラなタッチのモノクロームの作品やフォトモンタージュの作品もあり、ものすごく好みだった。
このアーティストのことも全然知らなかった!
今回の東京都現代美術館の企画、全部良かったね。
「絶対観たほうが良いって!」という友人Mの言葉通り!
またいろんな展覧会に行ってみたいと思う。

「マスク展」鑑賞

【庭園美術館入り口の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

マスク、と聞いて初めに思い浮かべるのは医療用の白いアレだろうか。
韓国で猛威をふるっている、MERSウイルスのニュースを連日聞いているせいかもしれない。
今回話題にしたいと思っているマスクは、そのマスクのことではない。
仮面を意味するマスクのことである。
仮面といえば。
三島由紀夫の「仮面の告白」、江戸川乱歩の「黄金仮面」などの文学作品に登場したり、スタンリー・キューブリックの遺作「アイズ・ワイド・シャット」では謎の秘密集会に集うために、仮面を着用していたことなどを即座に思い出す。
そう、仮面には秘密めいた、今の自分ではない別人になるための装飾という意味合いが強いんだよね。
最もこれは現代人が持つ認識で、古代の人間にとっての仮面にはまた違った意味があったようだね。

そのヒントになりそうな展覧会情報をROCKHURRAHと、長年来の友人Mの2人から寄せられた。
2人共SNAKEPIPEの貴重な情報源で、面白そうな企画があると
「こんなのあるよ」
と教えてくれるのである。
鋭いアンテナを持つ2人から別々に寄せられた同じ情報!
東京都庭園美術館で開催されている「マスク展」である。
庭園美術館に行ったのは何十年前のことだろう。(遠い目)
何を観に行ったのかすら覚えていない、かなり昔のことだ。
ROCKHURRAHは一度も行ったことがないという。
この展覧会はフランス国立ケ・ブランリ美術館所蔵作品を約100点展示しているという。
きっとマスク展は面白いに違いないね!

情報はかなり早い時期に教えてもらっていたけれど、期間が長い展覧会にありがちな「まだ時間がある」という思い込み。
そうこうしているうちに会期の終了が迫ってきて、慌てて予定を立てる。
今回もまさにその「いつものパターン」になってしまい、終了間際に出かけることにしたROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
情報を教えてくれた長年来の友人Mとは日程が合わず、別々に鑑賞することになった。

梅雨の晴れ間だったせいもあり、お出かけには良い日和だったのかもしれない。
目黒駅を降りてから、庭園美術館へと続く道に人が多く感じられる。
まさか、という予想は当たり。
意外にもかなりの人が庭園美術館を目指しているではないか!
「マスク展」ってそんなに人気あるのー?

庭園美術館の敷地内に入ってから美術館までの道のりをゆっくり歩く。
途中長い長い蟻の行列を発見して驚いたり、ミノムシに遭遇したり、生えてるキノコを目撃して「つかの間」の自然体験をする。
5分程で美術館に到着。
この庭園美術館というのは、宮家が元々使用していた洋館だったんだね。
そして東京都指定有形文化財になっている歴史的建造物だったとは知らなかった。
そのため美術館という形式ではあるけれど、その洋館自体を展示する、というのも庭園美術館の目的になるようだね。

洋館の中の仮面は一体どんな感じだろうか。
会場は地域別に「アフリカ」「アジア」「オセアニア」「アメリカ」と分かれて展示されていた。
最初がアフリカ。
アフリカ、と聞いて想像した通りの原始的な仮面が並ぶ。
説明に「結社で使用」という文章が多く、アフリカにはそんなに結社が多かったのか、と驚く。
ここで言う「結社」というのはフリーメイソンに代表されるような秘密結社とは意味合いが違う。
村の儀式に参加する、という感じになるのかな。
仮面の主な目的が死者の魂をあの世に送り届けることだったらしい。
税金の取り立て用に怖い仮面を着けた、なんていうのもあったけどね!
写真上は木製の仮面が多い中、珍しいビーズ細工の仮面である。
細かい手作業にびっくり!
丸いのは象の耳なんだって。

制作年度がいつなのか不明の展示物が多いし、全然聞いたことがない国名が書いてあったりして少し戸惑う。
プリミティブ・アートをほとんど鑑賞したことがないSNAKEPIPEなので、仕方ないかもしれないね。
ROCKHURRAHは大阪の国立民族学博物館にも行ったことがあり、意外とその手の展示が好きらしい。
民族学博物館で楽器を買った、と聞いたことがあるよ。
一体いつ使うつもりだったんだろうね?(笑)
写真はナイジェリアの仮面。
斜め横からの写真なので判り辛いけれど、真正面から観ると仮面の鼻と象の鼻をイメージしたという上の垂れた部分がきっちり重なる仕様なんだよね。
この立体の捉え方が素晴らしかった!
ピカソがアフリカの彫刻から影響を受けた、というのが良く解るね!

「アジア」と大雑把に括られると、タイや中国、日本まで対象になってしまうんだよね。
日本からは能面が展示されていた。
以前記事にした「「驚くべきリアル」展鑑賞」で紹介したハビエル・テジェスの「保安官オイディプス」を思い出す。
能面着けたウエスタン調のオイディプスの悲劇ね。(ややこしい)

インドネシアは以前好きで何度も行ったことがある国である。
ワヤン・クリッのような影絵劇は今でも上映されているはずだし、ワヤン・トペンという仮面を着けた劇もあるという。
それはまるで日本の能と同じ感じだよね。
その仮面も展示されていたよ。
インドネシアの仮面で一際目を引いたのが左の写真。

耳にあたる部分の精細さ!
ROCKHURRAHが推理したように蝶のイメージだったのかもしれないね。
顔の部分はガスマスクを思わせる馬面仕様。
色使いから全体的なバランスから、全てが素晴らしい!
この仮面をかぶってみたいかって?
いや、それは遠慮しときます。(笑)

アラスカの仮面は見ていて笑ってしまったね。
なんともユーモラスな顔立ち。
歯は最初から欠けていたのか、それとも途中で抜けてしまったのか。
この顔の形からダイキン工業のマスコット、ぴちょんくんを思い出してしまった。
SNAKEPIPEは、アラスカの人は厳しい自然を相手にしてるから険しい顔だろう、と勝手に思い込んでいたけど、違うかもしれないね?(笑)

収集狂時代 第1巻」を書いた時に、オークションで高額取引された美術品の中に「作者不詳」の紀元前の彫刻があったんだよね。
ネット上での写真でしか観ていないにもかかわらず、作品の力強さに圧倒されたSNAKEPIPE。
今回鑑賞した「マスク展」にも同じような「太古の人類が持っていた想い」を感じることができた気がする。
上述したようにピカソを彷彿させる仮面や、実際モディリアーニの絵のようだ、なんて説明も書いてあったように、現代アートにつながる系譜を観たように思う。

ただし。
庭園美術館での展示には少し無理があったように感じるね。
先にも書いたように「洋館の展示」にも意味を持たせているため、仮面を「◯◯の間」の隅っこに展示し、鑑賞するための通路は往路と復路の2人分確保されていない。
順路が非常に分り難く、部屋毎に分かれて展示されているため、美術館の見張り役の人とぶつかりそうになったり。
次回庭園美術館に行くのはいつになるのか分からないけど、日を選んでなるべく人が少ない時にしようと思う。

本家のケ・ブランリ美術館には30万点の所蔵品があるという。
その中の約100点が展示されてたってわけね。(笑)
フランスには行ってみたい博物館や美術館がいっぱいあって羨ましいね。
いつかは本場で鑑賞してみたいな!

ミシェル・ゴンドリーの世界一周 鑑賞

【「ムード・インディゴ うたかたの日々」のトレイラー】

SNAKEPIPE WROTE:

皆様明けましておめでとうございます。
今年も趣味全開の記事を書き続けて参りますので、どうぞよろしくお願い申し上げます!

夏の終わり頃から、長年来の友人Mより「行こうよ」と誘われていたのが、東京都現代美術館で開催されている「 ミシェル・ゴンドリーの世界一周」展であった。
そもそもミシェル・ゴンドリーについてほとんど知識のないSNAKEPIPEなので、実を言うとあまり気乗りしなかったんだよね。(笑)
Wikipediaで読む限りではミュージック・ビデオからキャリアをスタートさせ、有名なのはビョークのビデオとのこと。
細菌、じゃなくて(笑)最近はミュージック・ビデオを観る機会もないし、ビョークの音楽も聴いたことないし!
そのため鑑賞の予定は延ばし延ばしになってしまっていた。
ようやく2014年末に友人Mと都合を合わせ、久しぶりに木場に向かったのである。

どんな展示の時でも大抵はゆっくり鑑賞できる余裕のある美術館なのに、珍しく年末は人が多かった。
SNAKEPIPEが知らないだけで、ミシェル・ゴンドリーって人気あるんだね。(笑)
動画の撮影はNGだけど、それ以外は撮影して良いとのこと。
面白いのがあったら撮ろうね、と言いながら最初に入った部屋が素晴らしかった!
天井までみっちりと貼付けられているのは、1000人分のポートレイト。
ミシェル・ゴンドリーが出会った人々の似顔絵を描いたものだという。
あまりの数の多さに初めは驚き、続いて一枚一枚に目を転じると、その完成度の高さに再度驚かされる。
まるで今そこにいるかのように、生き生きとした表情をみせているのだ。
その人物の人柄や趣味などが手に取るように判る気がするんだよね。
構図や色使いなども斬新で、ものすごく好きなタイプの絵!
20ドル払って描いてもらいたかったな!(笑)
「1000 portraits」という画集になっているのが展示会場に置いてあるじゃないの!
「欲しい!」
「買って帰ろうね」
今回の展覧会には来られなかったROCKHURRAHへの良いお土産になるな、とほくそ笑むSNAKEPIPEだったけれど、残念ながらミュージアム・ショップでは既に完売してしまったとのこと。
9月から始まっていた展覧会を12月に鑑賞してるんだもんね。
仕方ない、と今回は諦める。(涙)

次の展示はミシェル・ゴンドリーが手がけたミュージック・ビデオを、音楽と共に鑑賞するコーナーだった。
入り口で渡されたヘッドホンを装着し、大きなスクリーンのある地点に立つと音が聴こえる仕組みになっている。
多くの人が1つのスクリーンに集まってしまうと、音が全く聞こえなかったり雑音が混ざった音が聞こえてしまうのが難点だったね。
ビデオは冒頭にも書いたビョークやローリング・ストーンズなど様々なアーティストの作品がミックスされて再生されている。
19のスクリーンを順路通りに歩くと、ビデオの内容も順路と平行して進んでいるようだ。
「この方法新しいよね」
と友人Mが言うけれど、2011年11月に鑑賞した「ゼロ年代のベルリン展鑑賞」でのミン・ウォンの作品「テオラマ」も複数のスクリーンでの上映だったことを思い出す。
あの時に画期的!と感じてしまったSNAKEPIPEなので、今回は驚かなかったなあ。(笑)

次は映画の撮影でよく使用されるスタジオが展示されているコーナーだった。
ワークショップとして、実際に来場者が映画を作ることもできる仕掛けになっているとのこと。
路地裏や電車の中など、簡単にシチュエーションがイメージできるような場面がいくつか設定されている。
友人Mと「こんな感じはどお?」と言い合いながら、お互いに役割を決めて撮影し合う。
その時に着ていた服装によっても違ってくるのかもしれないけど、そこまで奇想天外なアイデアはパッと浮かばないなあ。(笑)
それにしても映画の撮影には、このような場面設定に合わせて、美術の人が作ったり、小道具を揃えたりする裏方の存在が解るのが面白かった。
映画鑑賞している時には気にしていないからね。
これで少し映画の観方が変わるかも?(笑)

最後はミシェル・ゴンドリー監督の作品「ムード・インディゴ うたかたの日々」 で使用された小道具の展示だった。
冒頭にも書いたように、SNAKEPIPEはミシェル・ゴンドリーについての知識が少なくて、当然のように(?)映画も鑑賞してないんだよね。(笑)
本当は映画を鑑賞してから展覧会に行くべきだったんだろうなあ。
そうしたら「あのシーンで使われれた!」などと違う感想を持ったんだろうね。

全く勉強しないで行ってしまったけれど、小道具の面白さは充分伝わってくる。
小道具はフエルトや布で人体を表現したり、食材を作っていたりして、とても興味深かった。
映画の中ではどんな風に映っているのか分からないけれど、近付いてじっくりみると手縫いの糸が見える、手作り感満載の小道具だったんだよね。
ここでもまた小道具を手作業で創作する人の存在を感じることができた。
順番は逆になってしまうけれど、近いうちに「ムード・インディゴ」観てみよう! (笑)

五木田智央 THE GREAT CIRCUS鑑賞

【五木田智央のネタ帳?のような壁一面を埋め尽くす作品群】

SNAKEPIPE WROTE:

先日書いた「収集狂時代」の中でマーク・ロスコについて触れた後、無性にロスコと対面したくなってしまった。
DIC川村記念美術館では、現在何の展示がされているのかROCKHURRAHが調べてくれたところによると、五木田智央という1969年生まれのアーティストの展覧会が開催されているという。
モノクロームの油絵はちょっと珍しいし、ROCKHURRAH曰く、シュルレアリズムっぽいとのこと。
3連休を利用して行ってみようか。

キレイな秋晴れの日、久しぶりの佐倉である。
車を持っていないROCKHURRAHとSNAKEPIPEはいつも電車で出かけ、川村記念美術館の送迎バスを利用して美術館に行っている。
今まで何度もその方法で行っているけれど、今回はバス停で待っている人数の多さに驚く。
今まではいてもほんの数人、時にはROCKHURRAHとSNAKEPIPEの2人だけで、バスが貸し切り状況になったこともあった。
なんと今回は補助席以外の席が全部埋まっている状態!
路線バスクラスの大型バスなのに、満席って!
しかもバスで20分以上もかかる僻地にある美術館なのに?(笑)
えっ、五木田智央ってそんなに人気あるの?
ROCKHURRAHの見立てでは、美術館目的というよりは、併設されている自然散策路の紅葉を目的にしている人が多いのではないか、と言う。
果たして本当にそうなのか?

バスを降りるとバス停近くにチケット売り場が見える。
観察していると、バスから降りた乗客がチケット売り場に並んでいる!
えーっ、やっぱりほとんどの人が五木田智央展の鑑賞のために来てるんだ!とびっくりする。
人を見た目で判断するわけじゃないけど、とても現代アートに興味があるようには見えない方がたくさんいたので。(笑)
それにしてもバスが満員だったこと、チケット売り場に人が並んでいる光景は、川村記念美術館に限っては初めて見たので驚いた。

少し時間をズラしてからチケットを購入。
美術館への道すがら、見事に紅くなった紅葉を鑑賞する。
館内に入ると、先程行列していた人達はどこにいるのか、いつも通りのゆったりした空間が広がっているので安心する。
まさかとは思うけど、自然散策路に入るために間違ってチケットを購入した人もいたのかな?
まずは常設展から鑑賞していく。

何度か来ているので、作品の配置を多少は覚えていて、前回来た時とは違う作品が展示されていることに気付く。
常設展も少し変化があるんだね!
ジョゼフ・コーネルの作品は、前回と同じようにコーネル・ルームとして単独の部屋で展示されていて嬉しくなる。
フォトモンタージュの作品と、箱の作品。
箱のオブジェはいつ見てもかわいいな!
マックス・エルンストの「石化せる森」も観られて良かった。

いよいよお待ちかねのロスコ・ルーム!
さすがに今回は途中で何度か他の客が入り、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEだけの特別鑑賞会にはならなかったのが残念。
それでもなんとも言えない重厚な空間に身を置くと、自分の存在とロスコの絵との距離感が曖昧になってきて、トリップしちゃうんだよね。
自分が絵に溶け込んでしまったような。
無我の境地ってこんな感じかもしれないね?

ロスコルームを鑑賞し終えると、1階の展示は終了である。
続いて2階へ。
入ってすぐにジャクソン・ポロック!
フランク・ステラの大型作品は、いつ観ても迫力があるね!
最後の部屋が、今回の展覧会である。

実は五木田智央という名前は川村記念美術館のHPで初めて知った。
略歴によるとサブカルチャーに多大な影響を与えたイラストレーターとのこと。
どうやらミュージシャンのイラストで有名らしいけど、見たことあるのかな?
最近は画家として活躍し、ニューヨークのメアリー・ブーン・ギャラリーでは絵が完売ってすごいよね。
日本より先に海外で認められた、いわゆる逆輸入アーティストということになるらしいよ。
五木田智央展に関しては撮影オッケーとのことなので、バシバシ撮ってみよう!

入ってすぐに飛び込んできたのは、スクエアのキャンバスに描かれたモノクロームの作品群。
どうやら全て2014年の新作らしい。
余程筆が速いのか、かなりの数が並んでいる。
サラサラと描いた感じが出ていて、ちょっと会田誠を思わせる、人をおちょくったような雰囲気を感じる。
まるでリンチの「イレイザーヘッド」を彷彿とさせる謎の生物まで発見したよ。
これ、あの赤ん坊だよね?(笑)

 既に発表されている、パロディ風の大型モノクローム作品群。
ピカソの絵画からパクった手が描かれているのを観て、笑ってしまう。
撮影した画像はピンぼけになってしまったけれど、判るかな?(笑)
他の作品も何かのパクリのように見える、どこかでみたことがあるような?
キリコやイヴ・タンギーなどの画家の影響について聞かれることが多いというのも納得だよね。
それにしても「影響」と「流用」の違いってなんだろうね?(笑)

左の画像は「Slash and Thrust」という2008年の作品である。
インタビュー記事で読んだ情報では、なんとこの絵は3時間で描いてしまったというから驚いてしまう。
かなり大型の作品だったし、描きこまれていたのにね!
ブルーを基調としたシリーズやオレンジ系の暖色のシリーズは、モノクロームに慣れた目には意外性を感じた。
何が描かれているのか判然としない具象画だから余計だったのかもしれない。
好みの問題だと思うけど、SNAKEPIPEはモノクロームの絵のほうが五木田智央らしさを感じるな!

初期の作品で、紙に墨や鉛筆で水面を描いているようなシリーズがとても良かった。
まるでリンチを思わせる黒々とした作品群は、今回の展覧会の中で1番好きだったな!
鑑賞しているうちに、五木田智央の自己破壊願望、つまり自殺願望のような衝動を感じたのは気のせいだろうか。
リンチの暴力性は完全に外に向かって放たれているため凶暴だけれど、五木田智央の場合は内側に向かう暴力なので、攻撃性は感じられない。
溜め込まれた怒りが黒色として静かに爆発している印象。
インタビューでは飄々とした雰囲気の五木田智央なので、SNAKEPIPEの思い過ごしかもしれないけどね?(笑)

「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」を鑑賞して、パンク的な破壊衝動を強く感じたSNAKEPIPE。
実際「PUNK」というモヒカンの頭部を描いた作品もあったしね。(笑)
五木田智央が実際にはどんなジャンルの音楽を聴いたり、DJとして選曲してるのかは知らないけれど、根本にパンク魂があるような気がしてならないな。
DEATH DEATH DESTROY !って感じでこれからもG.I.S.M.っぽくいきましょー!(笑)