怖い浮世絵展鑑賞

【太田記念美術館前のポスターを撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

情報収集能力に優れている長年来の友人Mや、ROCKHURRAHから勧められたり誘われて展覧会に行く事が多いSNAKEPIPE。
今回もROCKHURRAHから「面白そうだから行こう」とお誘いを受ける。
それは2012年「没後120年記念 月岡芳年展」で訪れたことのある太田記念美術館で開催されている「怖い浮世絵展」であった。
これは楽しみ!(笑)

梅雨が開けて、すっかり陽射しが真夏の原宿。
それでも表参道には「けやき」の木が生い茂っているため、大きな木陰を作っているので涼しく感じる。
自宅近辺より原宿のほうが涼しいとはね!(笑)
歩いて数分で太田記念美術館に到着。
アクセス抜群の場所にあるんだよね!

調べてみると太田記念美術館は1980年にオープンしたという。
ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも1980年代には原宿を毎週闊歩していたので、太田記念美術館の前は何度も通っていたんだろうね。
特別浮世絵に興味がなかったからだろうけど、太田記念美術館のコレクションを今まで観ていなかったとは!
その時代から鑑賞していたら、人生形成に何かしらの影響を及ぼしたんじゃなかろうか。(笑)
もしかしたらある程度の年齢になったからこそ、理解できることもあるかもしれないけどね!
さて、今回はどんな「怖い浮世絵」が展示されているんだろう?

前述したように場所は原宿だというのに、太田記念美術館の中は、それほど混雑していなかった。
オープンしたばかりという時間帯のせいだったのかもしれない。
できればゆっくり自分の好きなように鑑賞したいと思っているSNAKEPIPEとROCKHURRAHなので、とても良い環境だよね。
前回も似た状況だったので、太田記念美術館はいつでもこんな感じなのかな。
江戸東京博物館で開催されている「大妖怪展」だったら、大混雑でゆっくり鑑賞することは不可能だっただろうね。(笑)

展示はチャプターで分かれていて、

1 幽霊
2 化け物
3 血みどろ絵

とされていた。
上の画像は「 化け物」にあった歌川国芳の作品、「源頼光公館土蜘作妖怪図」(1842年〜1843年)である。
水木しげるがお手本にしたんじゃないかと思われるほど、妖怪達の賑やかで多種多様な表情が見事である。
ユーモラスな雰囲気もあるところが、怖い表現だけにとどまっていないんだよね。
江戸時代には妖怪は娯楽の対象で、キャラクター化され人気があったというのがよく分かるね!

上の画像は歌川国芳の弟子だった歌川芳員の「新田義興の霊怒て讐を報ふ図」(1852年)である。
妖怪画として興味があったというよりは、直線の使い方が気になったんだよね。
漫画の一コマのような感じもするし、横尾忠則の作品のような雰囲気もある。
もちろん横尾忠則が影響を受けて描いているんだろうけどね。(笑)
月岡芳年の作品にも、後の時代に影響を与えているような劇画チックな作品があったので載せておこう。
右は「羅城門渡邉綱鬼腕斬之図」(1888年)という上下2枚で構成されている作品である。
これも直線を効果的に使用しているんだよね。
右の作品では、右上に書かれているタイトル部分にまで直線が引かれているところに注目してしまう。
なかなかここまで大胆に描いている作品はお目にかかれないのでは?
かなりの迫力で、これもまた漫画の中の一コマのように見えたよ!
今から130年程前に、こんなにも斬新な手法が確立されていたことに驚いてしまうね!(笑)

歌川芳員の「大物浦難風之図」は1860年の作品だという。
「だまし絵」で有名な人物といえば例えばエッシャーがいるけれど、エッシャーが活躍していたのは1930年以降のようだね。
古いところでは1500年代のアルチンボルドになるのかな?
浮世絵の世界にも「だまし絵」は存在していて、歌川国芳の「みかけハこハゐが とんだいゝ人だ」は有名な作品だよね。
上の歌川芳員の作品にも「亡霊に見える」部分があるんだよね!
クリックすると大きな画像になるので、確認してみてね。(笑)

「幽霊」の章で印象的だった作品はこちら。
歌川国芳の「四代目市川小団次の於岩ぼうこん」(1848年)である。
「東海道四谷怪談」で演じられたシーンを切り取った作品だという。
美しい娘の「お岩」と亡霊の「お岩」がシンクロしている様子を表現しているとのこと。
この「薄ぼんやり」とした亡霊を木版にするってすごいよね!
浮世絵には、透けた布の表現などもあって、技術の高さに驚いてしまう。
若い娘だと思っていたら亡霊だった、というのは上田秋成の「雨月物語」にも似た話があったような?
江戸時代の人はホラーが好きだったんだね。(笑)

「怖い浮世絵」と聞いて最初に思い浮かんだのは、妖怪とか幽霊ではなくて「無残絵」だったSNAKEPIPE。
きっと前回同じ太田記念美術館で鑑賞した月岡芳年を思い出したからだろうか。
最終章である「血みどろ絵」は期待通り(?)無残絵が数多く並んでいた。
芝居の中のワンシーンを切り取った物もあれば、実際に起きた事件を題材にした作品もあった。
右の画像は月岡芳年が「郵便報知新聞」のダイジェスト版に載せた錦絵(1875年)である。
これは離縁した妻に復縁を迫ったが思い通りにならなかったため犯行に及んだという、実際の事件を題材にした作品とのこと。
再現フィルムならぬ、再現錦絵といったところか。(笑)
はっ、前回の記事の中では「報道浮世絵」と書いていたSNAKEPIPE。
似た表現になってしまうのは仕方ないね。(笑)

「血みどろ絵」を得意とする月岡芳年は、赤絵具に膠(にかわ)を混ぜてドロドロしたドス黒い赤で血を表現していたというから、並々ならぬ執着心が伺える。
「月岡芳年といえば無残絵」とイコールで結ばれるほど、芳年と血は密接だからね。
さすがに迫力のある「血みどろ絵」、大いに堪能させてもらったね!

「怖い浮世絵展」を鑑賞して、改めて思うのは江戸時代と現代の感覚にほとんど差がない、ということ。
「幽霊」も「妖怪」も「血みどろ絵」にしても、みんなが見たい物だったから人気があったことの証だよね。
現代でも「残酷」で「グロテスク」な事件に関心が集まるのは、同じ原理だと思う。
科学が進歩しても、人間そのものはそれほど変わっていないんだね。
逆にいえば、江戸時代の人は思った以上に進んでいたんだな、と思う。

世界中の人が驚いたというけれど、日本人でありながらSNAKEPIPEもROCKHURRAHも驚嘆してしまう浮世絵。
絵師に注目が集まることが多いけれど、木版にして刷る技術も素晴らしいよね。
日本が誇れる独自の文化、これからも注目していきたいと思う。

『神は局部に宿る』都築響一 presents エロトピア・ジャパン鑑賞

【緑色のつなぎを着たナース・マネキンは何をしようとしているのか?】

SNAKEPIPE WROTE:

ROCKHURRAHからも長年来の友人Mからも「面白そうな企画」として情報をもらっていたのは、渋谷にあるアツコバルーで開催されている都築響一の展覧会だった。
都築響一?聞いたことがあるような?
思い出した!
秘宝館だったりヘンテコな施設や建造物をまとめた「珍日本紀行」という分厚い写真集で木村伊兵衛写真賞を獲得した人だ!
調べてみると1997年の受賞とのこと。
その頃は写真に燃えていたSNAKEPIPEなので、木村伊兵衛写真賞は必ずチェックしていたからね。
調べてみると、受賞作家として記憶していたのは2002年のオノデラユキと佐内正史まで。
その後の受賞作家の写真集は観ているけれど、ピンときたのは志賀理江子くらいかな。
そこまでちゃんと観てないから、あまり感想を書くのはやめようか。(笑)

話を都築響一に戻すと、木村伊兵衛写真賞を受賞した「珍日本紀行」を観て最初に持った感想は「面白い!だけど受賞はズルい!」だった。
歴代の木村伊兵衛写真賞作家と比べて見ると、かなり異色の写真集だし、元々は週刊誌に連載していた企画だったというのも「ズルい」と思う理由だったのである。
「こんな場所あるんだ!」という驚きを感じ、更に笑いを誘う。
今までにないタイプのインパクトがあったことは、あれから約20年(!)経った今でも、都築響一の名前を忘れていないことが、強烈な印象を残したことの証なんだろうね。

その都築響一がまた何か「やらかして」いるらしい。
アツコバルーは、2014年にホドロフスキー夫妻のドローイングを展示した「二人のホドロフスキー 愛の結晶展」とSNAKEPIPEが一目惚れで画集を買った野又穫の展覧会「野又穫 展 ーGhostー浮遊する都市の残像」に行ったことがある。
およそ2年前になるとは、調べてびっくりね。
記録のためにも(物忘れ防止のためにも)ブログに書いておくことは大事だな、と改めて思うSNAKEPIPE。(笑)
アツコバルーは、どちらかというと長年来の友人MやROCKHURRAH RECORDSが好きそうな企画を考えているギャラリー、という認識を持っているので、今回の都築響一も期待してしまう。
タイトルが意味深で「神は局部に宿る」で、副題として「エロトピア・ジャパン」だって。
一体どんな展覧会なのか?

雨が降ったり止んだりする7月にしては少し気温が低めの日。
長年来の友人Mと渋谷で待ち合わせる。
早めのランチを済ませ、いざアツコバルーへ!
エレベーターで5階に着くと、入り口付近は多くの靴で足の踏み場もない程。
アツコバルーは靴を脱いで入るタイプのギャラリーだったことを思い出す。
それほどまでにお客さんが入ってるってことなんだね!
これはかなり意外。
今まで行った2回の展覧会は、こんなに混雑してなかったからね。
入場料を払うと、引き換えに手渡されたのがコンドーム!(笑)
あとからじっくり見てみたけど、特に都築響一の展覧会につながる文言もなく、ただの(?)コンドームだった。
タイトルのエロトピアにかけてシャレたつもりなのかな?

入ってすぐに目に入るのは、壁一面に展示されている写真パネル。
近寄って見ると、それは全国にある「変わったラブホテル」の一室を撮影したものだと分かる。
天井近くの高さまであったので、1枚ずつをじっくり見ることはできなかったけれど、「珍日本紀行」の続きを見ているような気分だった。
もしかしたら「珍日本紀行」の中に入っている写真だったのかもしれないね?

ラブホテルシリーズの次には、全国の秘宝館の写真群が展示されていた。
右の写真は、鳥羽にあった「鳥羽SF未来館」という「秘宝館」にあった展示物だったようで。
2000年に閉館した「鳥羽SF未来館」の展示物を都築響一が買い取り、「横浜トリエンナーレ」や恵比寿の「トランスギャラリー」で展示していたとのこと。
2000年と2002年に開催していたようなので、既に鑑賞していた人も多かったのかもしれない。
15年近く経った「今更ジロー」な企画を鑑賞していることになるんだね。
元ネタである「鳥羽SF未来館」についてブログに内容を載せている方を発見したので読んでみると、かなりヘンテコなストーリーに基づいた展示がされていたみたい。
珍妙な物はなるべく観たいと思っているSNAKEPIPEやROCKHURRAH、もちろん友人Mも、「鳥羽SF未来館」を実際に鑑賞してみたかったよね!

「鳥羽SF未来館」の写真の他には、「秘宝館」の人形が数体展示されていた。
近くでじっくり見ると、エロというよりはグロ!(笑)
遠目で見ることを前提としているからこれで良いんだろうね。
全裸で大きく口を開けて悲鳴を上げているような人形は、ゴツゴツした皮膚(表面)で、決して美しいとは言えない顔立ち。
ホラー系の雰囲気だったよ。
対照的だったのは、飲み物カウンターの近くにいたラブドール2体。
椅子に座っていたドールは、まるで生きているように見えるほど、リアルな出来栄えにびっくりする。
触っても良いとのことなので、腕の当たりをタッチ。
当然人の肌とは違うけれど、しっとりするような手触りに驚く。
棚に陳列させられているラブドールは、スタイル抜群!(笑)
販売されているということは、当然買う人がいるんだよね。
こんな人形が家にいる状態ってどんなだろう?
気になって調べてみたら、この手のシリコン製ラブドールは大体70万円くらいみたい。
かなり良いお値段だよね。
ラブドール業界のことはよく分からないけれど、恐らく日本の技術は高いんじゃないだろうか?
エロに対する情熱が高い民族だと思うからね。(笑)

wikipediaで「秘宝館」を調べると、日本には数多くの「秘宝館」があることが分かる。
その多くは廃館となっているけれど、温泉地や観光地にあった「秘宝館」は、「うしろめたさ」と「助平」と「笑い」を同時に持つ特異な空間だったのではないかと想像する。
観光として出かけた、生活圏とは遠い場所だったために可能だった「内緒の出来事」という感じだろうか。
「珍日本紀行」以降はブームになったために「◯◯秘宝館行ってきた!」と大声で自慢する人が増えたかもしれないけど、それより以前はどちらかというと「恥ずかしいこと」になっていたんじゃないかな?
その「恥ずかしさ」が「秘宝館」が「秘宝館」として成立するための必須条件だったのでは?と思うのである。

さて、今回の渋谷で開催された「秘宝館」はどうだろう。
「恥ずかしさ」はなくなり、地方の「怪しげな雰囲気」もなく、全てが白日の元に晒された。
実際照明も明るかったしね。(笑)
ベールが剥ぎ取られた「秘宝館」には「淫靡さ」や「いかがわしさ」といった「秘宝館」らしさが消滅していたと思う。
展示が数少ないのに、入場料金の1000円も高め。
今回のアツコバルーは、期待していただけに残念だった。
都合が付かず今回は鑑賞できなかったROCKHURRAHだけど、全く後悔はないと思うよ。(笑)
アツコバルーには、また面白い企画を提案して貰いたいね!

シリアルキラー展 鑑賞

【ヴァニラ画廊の看板を撮影】

先日出かけた伊藤若冲展で、長年来の友人Mから
「面白そうな展覧会があるよ」
と言われた。
以前にも書いたことがあるけれど、友人Mは情報収集能力に長けていて、SNAKEPIPEの興味がありそうな企画を提案してくれるのである。
お互いの好みは長い付き合いの中で熟知しているため、「面白そう」と言われて外れたことがない。
SNAKEPIPEにとって、非常に貴重な存在なのである。
今回紹介されたのは「シリアルキラー展」。
大好きなジョン・ウォーターズ監督の「シリアルママ」でも使用されている、日常的に殺人を犯すタイプ=連続殺人犯を表すシリアルキラーという名称の展覧会だという。
つまり、実在するシリアルキラー達の作品を展示している展覧会だというのだ。
最近流行りの「Based On A True Story」じゃなくて、正真正銘のモノホンだよ!(笑)
世界を震撼させた凶悪犯の作品、これは観に行かなくては!

友人Mとの日程調整により、展覧会鑑賞の日は「シリアルキラー展」の初日になった。
なんだかノリノリの行く気満々のようだよね。
本当はたまたまそうなったんだけど、待ち焦がれていた人みたいになってしまった。(笑)

展覧会鑑賞前に用事があったため、青山方面からギャラリーのある新橋方面に出る。
あまり経験のない順路なので、naviで検索。
バスを使い、電車を乗り継いで銀座に出る。
会場となっている「ヴァニラ画廊」に行くのは今回が初めてだけれど、方向感覚に優れている友人Mが一緒なので安心、安心。(笑)
ただし自慢できるほどの方向音痴のSNAKEPIPEだけれど、銀座の〜丁目だけは全く問題ないんだよね。
そのためすんなりと新橋方面に歩いて行くことができたよ。(笑)
ほとんど新橋駅前の、交番の斜向かいの地下にヴァニラ画廊はあった。

階段を降りて会場に到着。
中には既にかなりの数のお客さんが入っている。
やっぱり話題の展覧会なんだね!
「いかにも」好きそうな人は意外と少ないように感じたけど、見た目じゃ分からないもんね。(笑)

会場がとても狭いし、展示も観易いとは言い難い状況だったので、苦労しながら鑑賞する。
最初に持った感想は
「みんなとても絵が上手い!」
である。
びっくりしてしまうほどの腕前なんだよね!
恐らくほとんどの作品が獄中で制作されたはず。
人によっては販売目的だったみたいだけど、時間制限もなく人の目を気にすることもない環境だから、伸びやかに描けたのかな?

それにしても作者は名だたる連続殺人犯達!
殺人犯にアートの素養があるという意外性に驚かされるんだよね。
もしかしたらアーティストと犯罪者は紙一重なのかも、などと考えながら作品鑑賞を続ける。
白紙にキッチリまっすぐとカリグラフィーのような美しい書体で書いてある手紙の展示もあった。
文字だけ見ていると、几帳面で真面目な人としか感じられないんだよね!
だけど書いているのはシリアルキラー。
その事実を知ると美しい書体までも異常に見えてしまう。
シリアルキラー展には、「事実を知る/知らない」で認識や意識が変化する瞬間が何度もあったよ。

ヴァニラ画廊は撮影禁止、更にウェブサイト上にも著作権に関する注意書きを載せているため、これから先の画像は別の場所で見つけた「シリアルキラー展」には展示されてなかった作品を載せているので4649!

ジョン・ウェイン・ゲイシー (John Wayne Gacy)

パーティなどでピエロに扮することが多かったことから
キラー・クラウン(殺人道化)の異名を持ち、スティーヴン・キングのホラー小説「IT」に登場する殺人鬼ペニーワイズのモデルとなった。
1972年から1978年のあいだ、少年を含む33名を殺害した。

多くの作品を獄中で描き、販売をしていたというジョン・ゲイシー。
今回展示されていたのも、左の画像を同じようにピエロを題材としていたよ。
本人がピエロに扮していたというから、自画像ってことだろうね。
他にはディズニーの7人の小人を描いている絵もあって、子供向けのはっきりした色使いの作品が多かった。
線画に色を塗ったタイプなので、漫画っぽい雰囲気。
猟奇殺人者の絵とは思えないよね。
映画化された「IT」は未鑑賞だと思うので、今度観てみようかな!

ダニー・ローリング (Daniel Harold “Danny” Rolling)

フロリダ州ゲインズビルにおいて5人の女子学生を
殺害し、ゲインズヴィルの切り裂き魔の呼び名で
知られる連続殺人犯。

シュールリアリズムのような想像の世界なんだよね。
右に載せたのはモノクロームの作品だけど、今回の展示には油絵もあって、もっとシュールだったよ!
殺害方法が物凄く残酷で、こんなことをする人間がいるのかと思ってしまうほどなのに、作品は魅力的なんだよね。
そんな一面に惹かれたのか、獄中で婚約!
相手はプリズン・グルーピーと呼ばれる、連続殺人犯をスターと崇める女性だという。
いろんなファンがいるもんだねえ。
他にも獄中で結婚しているシリアルキラーが多いんだよね!
記憶違いでなければ、子供を作った人もいたような?
ビックリしちゃうよね。

アーサー・ショークロス
 (Arthur John Shawcross)

8歳と10歳の児童を殺害し逮捕されるがその後仮釈放され、再び逮捕されるまで13人の売春婦を殺害した。
「ジェネシー・リバー・キラー」と呼ばれる
連続殺人犯である。

一番最初に紹介したジョン・ゲイシーと同じように、獄中で作品を制作し、ネット販売していたというから驚いちゃう。
アニメのセル画のような手法で描いている絵はくっきりしていて、とても個性的だよね。
これなら確かに売れるかも。(笑)
「シリアルキラー展」には、チケットを購入するとパンフレットが付いてきて、展示の際に使われていた説明文や展示作品、殺人犯に関する簡単な説明まで載っていて親切なんだよね。
その中にある情報によると、描いた作品をインターネットオークションeBayで販売していたらしい。
協力者がいたってことだろうね。
次に紹介するチャールズ・マンソンにも協力者いるみたいだよ。

チャールズ・マンソン (Charles Milles Manson)

アメリカのカルト指導者、犯罪者。
1960年代末から1970年代の初めにかけて、カリフォルニア州にて「ファミリー」の名で知られる疑似生活共同体を率いて集団生活をしていた。

今回展覧された犯罪者の中で一番よく知っていたのがマンソンかな。
実はシリアルキラー関連の本は結構読んでいるSNAKEPIPEだけど、そのほとんどは「殺人者たち」として数人をまとめて紹介しているので、特定の個人だけに焦点を当てた本を読んだことはないと思う。
チャールズ・マンソンに関しては興味を持って何冊か読んだ記憶があるし、「チャールズ・マンソン」というドキュメンタリー形式の映画も観てるんだよね。

どうして「カルト教団の教祖」と成り得たのかは、その時代にいて、クスリでラリってないと分からないのかもね?(笑)
チャールズ・マンソン、今も獄中にいるって知らなかったよ。
現在81歳だって。
そしてオフィシャルサイト持ってて、絵とかグッズの販売してるんだよね。
これもまたビックリ!
チャールズ・マンソンというのは、かなり昔から象徴的な存在としてシンボルになっているからね。
カルトやカリスマ、と聞けば迷わずマンソンと連想する人も多いはず。
今でも影響力がある人物なのかもしれない。
そんなマンソンが描いた絵は、抽象的な色のミクスチャーが素敵だった。

当たり前のことなのに、本や映画の中でしか知らなかった人達の肉筆画(というのか?)は、本当に実在している人達なんだということに改めて気付かされたよ。
そして連続殺人犯の別の側面を垣間見ることができたのは、非常に珍しい体験だったと思う。
それにしても、作品のほとんどに狂気を感じなかったんだよね。
もしかしたらSNAKEPIPEだけなのかしら?

2012年の「好き好きアーツ!#18 DAVID LYNCH—CHAOS THEORY OF VIOLENCE AND SILENCE」で敬愛する映画監督デヴィッド・リンチの個展についての感想をまとめた記事の中で

リンチの絵はまるで、知的障害者や精神障害のある人が、勢いに乗って制作しましたという雰囲気がある。
何かを内に秘めた人物の絵。
それは凶暴性だったり残酷性なのかもしれない。

と書いてるSNAKEPIPE。
これも記事に書いてあるけど、あの展覧会では肌が粟立ったからね!
本物の(!)連続殺人犯が描いた絵よりも、リンチの絵に恐怖を感じてしまうのは何故だろうか。

ほとんどのシリアルキラーが幼少期に虐待を受け、愛情を知らずに育っているという特徴がある。
貴志祐介の「黒い家」で
「あたしも親からおんなじことされたのよ!同じことして何が悪い?」
保険金目当てに子供を殺した大竹しのぶが叫んだセリフを思い出すね。

元々アートの才能があったにしても、連続殺人犯になったために絵も注目されて、コレクターも絵を欲しがるわけで。
確かジョン・ウォーターズもコレクターだったはず!
今回の「シリアルキラー展」もコレクターであるHN氏のコレクションの展示だし。
HN氏って一体誰なんだろうね。
パンフレットに「朱に交われば赤くなる」ことを懸念した、と書いてあったけれど、収集を始めて約10年が経過した今、HN氏に何かしらの変化があったのかどうか?
とても興味を感じてしまうね。

生誕300年記念 若冲展鑑賞

【行列に並んでいる時に撮影した1枚】

SNAKEPIPE WROTE:

映画の殿 第20号」でROCKHURRAHが予告していたように、今週より当ブログのデザインを一新!
実はまだ多少の修正が必要な箇所はあるけれど、早めに切り替え作業を行っている。
今までとは違う印象になったかな?
ほとんどの作業をROCKHURRAHが一人で行っているので、SNAKEPIPEは今から勉強しないと!(笑)
では気分を新たに、今週のブログを書いていこう。

若冲展」を知ったのは、昨年10月に鑑賞した横浜美術館での「蔡國強展」だったのではないだろうか。
展覧会に行く度に、面白そうな企画をチェックするのが毎回恒例で、その時に「若冲展」のフライヤーを発見したように記憶している。
長年来の友人MとROCKHURRAHと共に
「これには絶対に行こう!」
と非常に楽しみにしていた「若冲展」。

もらってきていたフライヤーを壁に貼り、前売りチケットの販売はまだか、と待っていたSNAKEPIPE。
ようやく展覧会開始1ヶ月程前から前売りチケットの販売が始まり、早速購入手続きを済ませ、あとは展覧会鑑賞の日付を決めるだけ、という段取りになっていた。

後悔先に立たずというけれど、展覧会が始まってからすぐに鑑賞しておけば良かった…。
長年来の友人Mと日程調整が決まらないうちに、若冲展は大変な話題になっていた。
連日長蛇の列で、美術館に入るまでに180分待ち、240分待ち、などの情報が耳に入ってくるようになったのである。
どうやらNHKの番組で「若冲展」を取り上げたのが、きっかけらしい。
「若冲展」は4月22日からの開催で、NHKの「若冲 天才絵師の謎に迫る」は初回の放送が4月24日。
今から思えば、4月22日から4月24日の間に鑑賞するのがベターだったことになるね。

人混みも、長時間待つのも嫌いなSNAKEPIPE、ROCKHURRAHに長年来の友人Mが加わった「怪しい3人組」。
あれほど行く気満々で楽しみにしていたはずの「若冲展」だったのに、行くのが苦痛になってしまった。
ウダウダしているうちに会期終了も迫ってくる。
「待つのも、混雑も、覚悟の上で行こう!」
行かなくて後悔するほうがイヤだよね、ということで決着した。
3時間や4時間待たされることを前提に、軽食や飲み物を各自持参の上、「若冲展」に行くことになった。
当日は普段の出勤時間よりもずっと早く家を出た。

朝の5時から並んでいる人がいる、とか朝7時半で1000人並んでいるという情報通り、人の流れは一直線に上野動物公園方面へ向かっている。
そう、もちろん東京都美術館の「若冲展」の方角ということだ。
友人Mと合流し、行列の最後尾に並ぶことにする。
「チケットお持ちの方はあちらが最後尾です」
の案内に従い「あちら」を目指すけれど…
どこまで行っても人、人、人!
結局最後尾は東京芸大が見える位置だった。
そしてそこから更にトグロを巻いたように行列が続いている。
並んだ時に友人Mが美術館関係者が「3000人だ」と言ったのを聞いた。
朝の8時で3000人!
前代未聞の若冲フィーバーだよね。
覚悟していたとはいえ、これからの待ち時間を考えるとゲンナリする。

時間に余裕があるので、客層をチェックしてみる。
美術館にそぐわない、騒いだり走ったりする子供が皆無!
当然のようにファミリーもいない。
ベビーカーを使用しているようなママさん連中もいない。
そして圧倒的に多いのがシルバー層。
最近は美術館巡りを趣味にしている高齢者が多いと聞くけれど、鑑賞するのに何時間も待たされて大丈夫なのかと心配になるような人も大勢いた。

SNAKEPIPEをはじめ、ROCKHURRAHも友人Mも「行列ができる〜」のような記事や店には全く興味がなく、並ぶくらいなら違う選択肢を考えるタイプ。
ところが「人が並んでいるなら」と、並ぶことを選択する人って多いんだよね。
今回の「若冲展」も本気で観たいと考えて並ぶ人は少数で、話題だから観ておかないと、という理由の人が多いように感じた。
さすがに外国人は全く見かけなかったね。
並ぶの嫌いだろうからね。(笑)

一歩、二歩、という牛歩だったけれど、少しずつ列が進んで行く。
東京都美術館手前でトップの写真を撮影したのが9時半くらい。
そして実際に鑑賞を始めたのが10時半くらいだったのかな。
待ち時間2時間半、約150分ということだね!
思ったよりは短かくて良かった。(笑)

ここで若冲の略歴を書いてみようか。
1716年 京都の青物問屋に生まれる
1739年 23歳で家業を継ぐ
1755年 40歳で隠居し、絵の制作を始める
1800年 85歳で死去

ものすごく簡単にしか書いてないので、気になる方は調べてね!
絵に関しての補足としては、狩野派の画家に弟子入りしていた、とか別の画家の門弟だったなどの説があること、宋元画の模写や南蘋派の画僧・鶴亭との類似が指摘されているところかな。
SNAKEPIPEはそれぞれについてほとんど知識がないし、日本画そのものについても詳しくない。
そのため技法や専門的なことは無視して、純粋に若冲の肉筆画を直に観ることを目的にしよう!

館内に入ると、思ったよりは人が多くない印象だった。
人数制限をかけているんだろうね。
それでもやっぱり今回の目玉である「釈迦三尊像」と「動植綵絵」のコーナーは、8重(!)ほどの人だかりができていて、とても作品を目の前にすることができない。
係員が「一歩ずつズレて下さい」などの注意喚起をしても、最前列を陣取った人が動く気配はない。
作品の前に張り付いたまま、である。
他の注意としては「大人迷子が連日続出しているので、帰りの待ち合わせ場所をあらかじめ決めておいてください」というのがあった。
あれだけの人だから、いなくなっても分からないもんね!(笑)

観られるところでは近付き、人だかりがすごい場所では人の頭の間から観られる範囲だけを鑑賞する作戦に出る。
それしか方法がないしね。(笑)
近付いてみた若冲の筆使いの素晴らしさ!
タッチが精緻で非常に細かい。
そして一筆描きみたいなラインがピシャッと決まってる!

豪華絢爛な極彩色が、現代でも色褪せることなく再現されていることにも驚くけれど、SNAKEPIPEが一番「すごい!」と感じたのは構図。
なんともいえないバランスなんだよね。
前述したように、それほど日本画に慣れていいないため、他の日本画家との違いなどを論じることはできないんだけど、縦位置の写真として考えるとそのスバラシサを感じることができると思う。
左の画像「老松白鳳図」は旭日と、老いた松に白い鳳凰がいる情景を描いている。
鳳凰は想像上の伝説の鳥なので、若冲の脚色が入った幻想的な作品だと思われる。
鳳凰の目が切れ長なところ、羽根の先端が赤と緑のハートになっている点が、かなり漫画っぽくて面白いよね。(笑)
「動植綵絵」は宮内庁が管理しているため、なかなか人目に触れないんだろうなあ。
だからこそしっかりした管理がされている、とも言えるだろうけど。
全部で30幅の「動植綵絵」、こちらのサイトで観られるので、若冲の構図と色使いを確認してみてね!

上の画像「鳥獣花木図屏風」は約1cmのマス目を使って制作された「枡目描き」と呼ばれる作品である。
近付いてみると、マス目の中に小さなマス目が描きこまれているものもある。
江戸時代にこんな手法で描いていたとはビックリ。
それはまるでデジタル・アートだもんね!
若冲の作品ではない、という美術評論家もいるようだけど、作品としてとても楽しく鑑賞できたよ!(笑)

若冲は日本画家としては珍しい色の重ね塗りの技法を駆使したり、絵具にこだわりを持って制作していたようだ。
新しいことに挑戦するチャレンジャーだったのかもしれない。
その試みは成功して、没後200年以上経った今でも若冲の存在感をアピールしてるんだね。

今回の「若冲展」での教訓は、
前売り買ったら早めに行くこと!
だね。(笑)