好き好きアーツ!#03 松井冬子&金村修

【金村修風?SNAKEPIPE撮影の写真を加工して制作】

SNAKEPIPE WROTE:

ターナー賞の歩み展」と「真っ赤なバラにゃトゲがある」に登場した友人Mから昨日の午前中に電話があった。
「今日の午後3時から松井冬子のトークショーがあるから一緒に行こう」
とまた突然のお誘い。
午後はROCKHURRAHと買い物に出かける予定だったのだが、急遽変更。
恵比寿に向かうことになった。
これはかつて表参道にあった洋書店&ギャラリー「ナディッフ」が再オープンした記念イベントとのこと。
松井冬子は旬なので、トークショーなんていったらきっと大勢の人でごった返しているだろう、との予想は大ハズレ!
多くても40人はいなかったと思う。
しかも友人Mは何度もギャラリーに電話し、整理券は発行しない、トークショーまでの時間を並んで待たせることはしないと確認済み。
椅子の数は20個、トークショー開始30分前から並べる、なんて情報まで入手していた。
ってことは…これは椅子取りゲームだ!(笑)
そしてまんまと友人M、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEの3人は前から2列目のバッチリな席でトークショーを見ることができた。ラッキーだね!

トークショーは松井冬子ご本人、成山画廊の成山明光氏をゲストに雑誌DUNE編集長の林文浩氏がインタビュアーとして登場。
松井冬子は髪をアップにしたピンクの浴衣姿、成山氏は以前成山画廊で目撃した時と同じように黒の3つ揃え。
松井冬子、テレビで見るよりずっとキレイで艶やか!
びっくりたまげた~!(笑)
今回は軽い話題で、という前フリ通りに松井冬子が好きな音楽や食べ物の話など、ほとんど作品や制作に関する話題がないトークショーだった。
ちなみに制作の際に聴く音楽は「テクノなどの反復が多い音楽」で、学生時代はPUBLIC ENEMYが好きだったとのこと。
PUBLIC ENEMYはSNAKEPIPEも大好きだったので、よく解る!
そして今現在気に入っているのはTOM TOM CLUBって…古っ!(笑)

終始なごやかに笑顔を絶やさずトークしていた松井冬子。
質疑応答の時間もあり何人かが松井冬子に質問した。
「どうしても気力が湧かない時はどのように対処してますか」
「幽霊を実際に見たことがありますか」
「静岡での好きな神社はどこですか」
といった今回のトークショーに似合った(?)軽い質問。
実はSNAKEPIPEも聞いてみたいことがあったけれど、ディープ過ぎるかなと思って遠慮した。
Mにその質問内容を話してみたら
「それはきっと上野千鶴子さんにしか答えないんじゃない?」
と言われた。
確かにそうかも。(笑)
それにしても突然びっくりハプニングで、生・松井冬子が見られて良かった!
成山氏もイイ味出してて楽しませてもらった。(笑)

さて続いては「好き好きアーツ第3弾」として好きな写真家・金村修を取り上げたいと思う。

金村修は1964年生まれの写真家だ。
国内外を問わず評価が高く、1996年にはニューヨーク近代美術館主催の「世界の注目される6人の写真家」に選ばれ、2000年には土門拳賞を受賞という輝かしい経歴を持っている。

金村修を知ったのはいつだったろうか。
好き好きアーツ#1 畠山直哉」の記事にも書いている1998年に東京国立近代美術館で行われたグループ展「写真の現在—距離の不在」で金村修が出品していた時、すでにその作品を知っていたのでそれ以前のことになるだろう。
一目で「あ、金村修の写真だ」と分かる、個性的な写真である。

金村修の作風は
乱雑(CHAOS)
暴力的(VIOLENCE)
破壊的(DESTROY)
とパンク要素が三拍子揃った(?)モノクローム写真だ。
焼きはかなり黒めである。
よく目にするような、あえて特別ではない風景をスペシャルな場所に変えてしまう。
それが「金村マジック」とでも言おうか、写真家としての力量であり魅力なのだろう。
金村修の写真そのものに共感して似た写真を撮りたい、とは思わない。
嫉妬するならその「マジック」の部分になるのかもしれない。

金村修本人もパンク好きらしく、パンク写真家なんて書いてあるのを見たことがある。
金村の写真集に「CHINESE ROCKS」という「まんま」のタイトルがあり、自身が解説している文章の中にジョニー・サンダースについて語っている部分がある。
恐らく年齢から考えても、金村修は70年代オリジナルパンクが好きに違いない。(笑)
写真展開催のために海外に行くときにもライダースにサングラスが必須だった、と以前何かで読んだことがあるから尚更そう思ったけれど。

今調べてみると2000年だったらしいが、金村修がNHKのトップランナーという番組に出演したことがある。
SNAKEPIPEも興味深く鑑賞!
この時初めて喋っている金村修を見ることになる。
「写真学校で作品を見せたら先生達に汚い写真だ、汚い写真だと嬉しそうに言われた」
「早見優と西田ひかるの区別がつかなかったから人物写真はあきらめた」
などの貴重な話を聞き、益々好感を持つ。(笑)
シニカルでややブラック気味な口調、人をおちょくっているような態度など、さすがパンクスだ!

現在は日本カメラで「作家になりたきゃなればいい」というタイトルの執筆をしていたり、2001年9月から始めているワークショップも継続しているようだ。
写真そのものの評価はもちろんだけれど、キャラクターにも注目されているようでいろんな仕事してるんだな。

バンド関係以外にも頑張ってる40代がここにもいた!(笑)
これからも応援していきたいと思う。

それにしても金村修のページ、きっと何年もデザインの更新してないような。
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEに任せてくれたらパンクテイストいっぱいのカッコいいページお作りしますのに。
ご依頼、お待ちしております!(笑)

好き好きアーツ!#02 デヴィッド・リンチ—TV CM—

【LYNCHが手がけたCMの一部】

SNAKEPIPE WROTE:

今回は「好き好きアーツ」シリーズ第2弾、DAVID LYNCH編を書いてみよう。
LYNCHについては一回だけでは語りつくせないので、いくつかのパートに分けていきたいと思う。
第一回目はLYNCHが監督したコマーシャルについて。
ちなみにDAVIDは発音すると「デイヴィッド」だけど、恐らくカタカナ表記では「デヴィッド」とするのが一般的かな、と判断。
文中ではアルファベット表記としたので、そこんとこよろしく!

LYNCHのコマーシャル、と検索すると必ず一番最初にヒットするのがGUCCIである。
GUCCIが初めてのTVCMを作ることになり(Gucci BY GUCCIという香水)、そして何故かLYNCHに白羽の矢が立った模様。
以前に Calvin Kleinの「Obsession」(1988年)、GIORGIO ARMANIの「Who is Gio」(1992年)やYves Saint Laurentの「Opium」(1992年)などで香水のコマーシャルを手がけたせいか?
INLAND ENPIRE以来久々のLYNCHネタである。
ファンにとっては嬉しいニュース、と同時に「勇気ある決断だな」と思ったり。(笑)
GUCCIのサイトに入るとLYNCHが監督したCMとそのメイキング映像が観られる。
メイキングでは「あまり自分の位置から動かないで!そしてゆらゆら揺れて!」と言って指示を与えているLYNCH。
BLONDIEの名曲「Heart Of Glass」に乗ってゆらゆら揺れる3人のモデル。
いかにもLYNCHっぽい映像だけど、GUCCIはこれで良かったのかね?(笑)

SONYのゲーム機「Play Station 2」(2000年)はシリーズで撮影していたようで、検索するといくつかのヴァージョンを観ることができる。
LYNCHのサイトで確認すると、これはヨーロッパや映画館などで使われていたようだ。
うん、確かに何回観ても難解だもんね。(ぷっ)
男性が不思議な世界を歩いている、という設定のCMは光と影、煙の使い方や最後に登場する包帯ぐるぐる巻きの謎の人物やら通路の雰囲気、すべてが「いかにも」でイイ感じ!
SNAKEPIPEはとっても好きだな。

他にも眠っている犬が足をピクピクさせているCM、バンビが車にはねられそうになるCM、エサ用に内臓を海に捨てその血染めの海に飛び込むCMなど、とても解り辛い。
よくもSONYがこれでOKしたよね?
はっきり言って最後まで観ても一体何のCMなのか解らんぜよ。
ヨーロッパの方はこのCM観てPS2を買おうと思ったんだろうね!(笑)

他にも公共の「Clean Up.New York」(1991年)なんていう「ゴミのポイ捨てダメよ」というスローガンのCMもある。
キレイにしないとネズミが増える、というとても解り易いストーリー。
光と影がチラつく映像はまさしくLYNCH!
ネズミの尻尾や顔のアップはかなり怖くて、子供が観たら泣き出しそう。(笑)
これまた「いいのか、これで?」的なCFだな。

日本では、あらま懐かしや!
GeorgiaのCM、ツインピークス・ヴァージョン。
1991年といえば一番流行っていた時期で、CMの登場人物もツインピークスそのまんま!
これを観たらまたもう一度ツインピークス観たくなっちゃったな!

本当は他にもLYNCHのCMや音楽プロモーションの映像などもあるけれど、ひとまず今回はここまでにしよう。
LYNCHの好みそのままのモノもあれば、恐らくクライアント側からの指示で撮ってるだろうな、というモノもある。
きっとLYNCHにとってはお金稼ぎのアルバイトみたいな感覚なんだろうね!(笑)

好き好きアーツ!#01 畠山直哉

【LIME WORKSっぽい?SNAKEPIPE撮影の一枚】

SNAKEPIPE WROTE:

写真好きでROCKHURRAH RECORDSの「ABOUT US」にも「写真担当」と記載されているのにもかかわらず、今まで一度も写真家について書いていなかったSNAKEPIPE。
今回はSNAKEPIPEお気に入りのアーティスト・第一弾を書いてみたい。
タイトルはHaircut 100「Favourite Shirts 」の邦題、「好き好きシャーツ」をもじって付けてみた。
何故、シャツをあえて「シャーツ」と伸ばすのか疑問だが、面白いので採用!(笑)
この「好き好きアーツ」はシリーズ化できたらいいな、と考えている。

「好きな写真家は?」と質問されたら「畠山直哉!」と即答する。
もちろん他にもたくさん好きな写真家はいるけれど、一番は畠山氏である。
最近の活動についてはあまり詳しくないので申し訳ないが、畠山直哉氏と言えばやっぱり「LIME WORKS」と「アンダーグラウンド」だろう。

1996年というと今から12年前のことになる。
当時は毎月「アサヒカメラ」を購読していたSNAKEPIPE。
「今月の新刊—–LIME WORKS   畠山直哉—–シナジー幾何学より」
2cm×3cmほどの小さなモノクロ写真と共に紹介されていた記事を見た瞬間に強い衝撃を受けたSNAKEPIPE。
「これだっ!」
と確信し、早速写真集を買いに走った。
パッケージを外しドキドキしながら震える手でページをめくる。
間違いないっ!これこそSNAKEPIPEが求めていた写真だ!

セメント工場を中心に撮影されているこの写真集はインダストリアル好き、工場好き、廃墟好きにはたまらない垂涎モノ!
これは本当に日本なのか?と疑ってしまうほどの華麗な色彩。
近未来的(最近あまり使わなくなった言葉だな)な光景が「これでもか」とばかりに繰り広げられる。
当然ながら構図もバッチリ!
こりゃ言うことナス!グンバツな写真群だ!(笑)

出版社の「シナジー幾何学」という名前も気に入った。
ほんの小さな写真記事を観ただけなのにビンゴ!だったSNAKEPIPEは本当にラッキーだったのだろう。
1997年、畠山氏は写真家としての登竜門「木村伊兵衛写真賞」受賞!
応援している写真家の快挙はSNAKEPIPEも本当に嬉しかった。
そして自分の目に狂いがないことも証明された気がして自画自賛。(笑)
以来、畠山直哉氏の情報を探し、友人に写真集を薦めたりするようになる。

余談であるが、SNAKEPIPEが気に入った「シナジー幾何学」はなんと1998年12月に倒産してしまい、以来「LIME WORKS」は絶版になっていた。
これは友人にプレゼントしようと思い探しまくって知った事実。
あらま、あんなに素晴らしい写真集が絶版とは…。
2002年にアムズ・アーム・プレスから復刊されていたらしい。
がっ!またもや絶版に。
再復刊版は青幻舎より2004年に出版されている模様。(入手可能)
2度も絶版の危機に遭うとは悲運な写真集ですな!

1998年に畠山氏のグループ展「写真の現在—距離の不在」を東京国立近代美術館まで観に行く。
この時の畠山氏の展示は「光のマケット」。
人が全くいない夜間の高層ビルの照明—蛍光灯の光をモノクロームで撮影した写真群で、ライトボックスを写真の後ろに置いて展示している。
このため写真上の蛍光灯がまるで本当に光っているかのように錯覚してしまう。
写真展、というよりは「現代アート展」と呼ぶべきか?
なかなか興味深く拝見し、また更にファンになる。
このグループ展は他に斎藤さだむ、楢橋朝子、松江泰治、パンク写真家・金村修、という豪華メンバー!
一粒で二度おいしい企画だった。(笑)

続いて写真集第2作目の「アンダーグラウンド」について。
この写真集の出版が2000年。
記憶が定かじゃないのと古過ぎて情報が集められなかったため、うろ覚えだがタカ・イシイ・ギャラリーがまだ恵比寿にあった時にこの写真展を観に行っている。
この時の写真展は販売もおこなっていたようで、展示してある写真の横に小さな紙があり、いくつもシールが貼り付けてある。
購買者が「これ、買うよ」という印のようだ。
ちなみにお幾ら万円?と聞いてみると
「一枚35万円!」
という答えが返ってきた。(と、思う…たぶん。うろ覚えなんで)
うぎゃー!高い!
確かに素晴らしいし、お洒落なデザイン事務所などに飾ってあったらものすごく映える写真群なので、高くても買う人がいっぱいいるのも納得。
お金があったらSNAKEPIPEもオリジナル・プリント欲しかったなあ!

アンダーグラウンドは東京・渋谷を流れている渋谷川、その地下水路を撮影した写真である。
地底トンネル入り口の柔らかな光と映し出される影、それらを表現する色彩が大変美しい。
縦位置で上部を渋谷のビル街、下部を渋谷川で撮影した細長い写真群もある。
それらは注視しないと一枚の写真であることが判らない、まるで「だまし絵」ならぬ「だまし写真」のような印象。
写真集の中にはゲーテのファウストからの引用文もあり、さすがはインテリゲンチャ・畠山氏だな、と感心させられる。

畠山氏は他にも石灰石鉱山の山が爆発により砕け散る瞬間を撮影をした「BLAST」やドイツの廃工場「Zeche Westfalen I/ II Ahlen」、大阪球場の解体など様々なテーマに取り組んでいるようである。
現在はニコンサロン選考委員を務め、写真展の作品選考・決定を行っているエライ先生になってるそうで。
今後の活動にも期待、ですな!