好き好きアーツ!#05 ツインピークス

【理想の上司像?リンチ扮する耳の遠いゴードン・コール】

SNAKEPIPE WROTE:

かつて熱狂していたのは1990年から1991年のことだった。    
振り返ってみるともうすでに18年の時が過ぎていた、とは驚きである。    
その時に生まれた子供は高校卒業している計算か!    
ぐわっ!考えると恐ろしい!(笑)

今回「好き好きアーツ」として取り上げるのは崇拝する映画監督、デヴィッド・リンチが手がけたTVシリーズ「ツインピークス」である。    
世界中を謎解きに巻き込み、大ブームになった番組である。    
SNAKEPIPEと同じように熱狂した方も多いと思う。    
18年の歳月を経て、もう一度初心に帰って鑑賞するとどうなるのか。    
しっかり記憶している部分もあるけれど、大方は忘れてるしね!    
そして一度も観たことがないROCKHURRAHにも興味を持ってもらいたい、と思ったのである。

最初に「ツインピークス」体験をしたのは、まだそれがTVシリーズになるとの情報が全く入っていない段階での「パイロット版」からだった。    
一体パイロット版を何回観たことだろう?    
何回観ても難解で(笑)その時から謎解きの虜になってしまった。    
後から考えればこの時点での謎の究明は不可能だけれど、なんとも言えない不安で不吉な雰囲気、ラストの25年後の世界(日本版だけ収録されていたらしい)などに魅了された。    
そしてツインピークスがTVシリーズである情報がやっと入ってきたのである。

TVシリーズの第1話から第7話までを観たのは、「日本初公開」として抽選で選ばれた人だけが入場できる渋谷パルコでの企画であった。    
初公開、というだけあって、まだビデオ発売前、当然のことながらWOWWOWでの放映よりも前のことである。    
抽選に当たった時は、まるで宝くじ3億円が当たったのと同じくらい嬉しかった!    
1話から7話ということはおよそ7時間、そしてその間に「リンチ評論家」滝本誠氏と川勝正幸氏のトークイベントも入り、およそ10時間近くを会場で過ごした。    
それでも疲れず、「次は、次は?」と熱狂していたSNAKEPIPE。    
若かったから、か?(笑)
     
7話まで、というのがミソで観た方は記憶にあると思うけれど、クーパー捜査官がドアを開けた瞬間にピストルで撃たれるシーンまで、である。    
会場中から「えーーーっ!」という悲鳴に近い声が発せられた。    
もちろんSNAKEPIPEも叫んでしまった。(笑)    
以前「かもめはかもめ、リンチはリンチ」の時にも書いたけれど、7話以降を観るためにWOWWOWにも加入。    
必死の思いで追いかけたツインピークスである。    
今は第1話から最終の29話までと映画版「ローラ・パーマー最期の7日間」を連続して観られるようになったので、幸せな限りである。(観たことがない方は簡単なあらすじがWikipediaに載っているので、そちらをご参照下さい。)

ドーナツとコーヒーを片手に、改めて鑑賞して一番初めに持った感想は    
「その後のリンチの集大成だな」    
である。    
異界、異形、夢、が多用されているからだ。

ロストハイウェイ」以降、頻発する「ここではない場所」の原型は、遡れば「イレイザーヘッド」にもすでに現れていたけれど、映画の核を成すものではなかった。    
「異界」として重要な役割を持つ出現はツインピークスからだったんだ!    
ホワイトロッジ、ブラックロッジとして表現される空間は仏教的に言い換えれば、金剛界曼荼羅と胎蔵曼荼羅のようなものではないだろうか。    
そう、ツインピークスの中には(広い意味での)東洋思想がちりばめられているのだ。    
チベット、チベット死者の書からの引用、瞑想、ヨガなど。    
盆栽や尺八など、日本的な小道具も使われていたし。    
元々リンチ自身が瞑想を好み、夢のお告げ(?)から映画のヒントを得る監督なので、非常に色濃くリンチ表現主義(とでも言おうか)が反映されているようだ。    
「魂はどこから来て、どこへ行くのか」    
というセリフをウィンダム・アールに言わせ、死に行く間際のリーランドに向かい    
「光を見つけて。光の中へ。光の中へお行きなさい」    
とクーパーが誘導する。    
アメリカのTVドラマでチベット死者の書とは!(笑)    
   
恐らくTVの放送コードというものは、ここ最近では日本でもかなり変わってきていると思うが、世界的に見ると最も厳しく設定しているのはアメリカではないだろうか。    
いくら18年前とはいっても、よくこれでOKが出たものだ、と感心してしまうほどの異形オンパレード!    
パイロット版で度肝を抜かれた「小人ダンス」はもちろんであるが、 巨人、片腕、片目などが登場する。    
異形の人、というのは強いインパクトを持っているので、印象に残るシーンを作るには欠かせないとリンチが考えているのではないだろうか。    
その後のリンチ作品にも異形は数多く登場する。    
そして異形を発見すると「ああ、リンチだ」と安堵してしまうのである。    
それほどまでに異形とリンチはマッチしている。    
そしてツインピークスと同じ年、「羊たちの沈黙」も公開されていることに気付く。    
異形や猟奇、精神病理的な「以前であれば触れてはならない」とされていた領域への開眼年が1991年と言えるのかもしれない。

ツインピークスは大きく分けるならば、第1部はローラ・パーマー事件、第2部はウィンダム・アールとブラックロッジの2部構成になっている。    
ほとんどの人が第1部のローラの事件が(一応の)解決をしたあたりで、トーンダウンして、第2部のウィンダムアールの話のほうは忘れているのではないだろうか。    
かくいうSNAKEPIPEも同様で、途中からは初めて観るお話のような気がしてならなかった。    
覚えがなかったせいもあるのだろうが、第2部もかなり面白かったのである。    
少しオカルトの要素が混ざり、より精神世界に深く入り込んでいく後半は、やっぱりアメリカ人には相容れない内容だったのだろうか。    
恐らくリンチはもっと語りたかったはずである。    
がっ、視聴率低迷のため打ち切られることになってしまったとは誠に残念!    
そのためやや強引なラストになったのかな。    
ま、一応は解決になってるけどね!

そしてTVシリーズ後に制作されたのが「ローラ・パーマー最期の7日間」である。    
これも一応は後付けながら、謎の究明に役立つ物語と言えるだろうけど、実際には観終わった後で首をかしげてしまった。    
より謎が深まったように感じたのはSNAKEPIPEだけだろうか?    
「ここではない場所」ブラックロッジが絡んでくると、一体今がいつのことなのか、誰が生きていて誰が死んでいるのか、などだんだん分からなくなってくる。    
あの赤いカーテンと幾何学模様のジュータンの、なんとも魅惑的な不思議な空間。    
行ってみたいような、怖いような。

18年の時を経ても、全く色あせていない謎だらけのツインピークス。    
一度も観たことのない方はもちろん、体験したことのある方ももう一度鑑賞してみてはいかがでしょう?    
全部を観るのには約33時間かかるけどね!    
お約束は、ドーナツとコーヒー。    
絶対食べたくなるもんね!(笑)

好き好きアーツ!#04 スタンリー・キューブリック

【キューブリック作品をキューブにしてみた。イカス!】

SNAKEPIPE WROTE:

特別に好み選んでいるわけではないのに、実はほとんどの作品を観ている映画監督にスタンリー・キューブリック(Stanley Kubrick)がいる。
既知の通り1999年に亡くなってしまったので、もう新作の鑑賞ができなくなってしまい残念である。
最近ROCKHURRAHとよく映画鑑賞をするのだが、ほとんどが旧作。(笑)
キューブリック作品も多く登場している。
今更ながらではあるが、SNAKEPIPEが自分自身のまとめの意味も含めて好きな作品について書いてみたいと思う。

年代順に、ということで最初は「2001年宇宙の旅(2001: A Space Odyssey)」から。
改めて鑑賞してみたが、やっぱりすごい!
これが1968年に公開されていた、という事実も調べて2度びっくり。
40年前とは思えない程に洗練された美しい映像に圧倒される。
その後の宇宙モノ(例えばスターウォーズなど)ほとんどすべてがこの映画からの影響を受けているだろうな。
「人類の夜明け」の猿のシーンがとても印象的。
「武器の所持」と「仲間殺し」の始まりである。
きっと地球上でもあんな感じで物事が始まったんだろうなあ。
急に出現する物体「モノリス」に猿と一緒に動揺してるうちに舞台は宇宙へ。

意志と感情を持ってしまったコンピュータ、HAL9000の存在が怖い!
機械なので表情は見えないけれど、どの位置からでも監視が可能な赤い光が不気味。
思考部分を徐々に削除されて言語が乱れていくシーンは「ハンニバル」を思い出させる。(あの食事のシーン!)
仲間を失い、一人になった船長の絶対的な孤独も恐怖だ。
そして人類未踏の木星への道のりがキレイだけれど、目が開けていられないほどの光の洪水。
ラストシーンは個人個人で違う感想を持つのではないだろうか。
「スターチャイルド」と名前が付いているので、転生や誕生でいいのかな。
原作も読んでいるはずなのに、昔のことなので忘れてしまった!
頭が冴えている時に観ないと、かなりゆっくり静かに映像が流れるシーンが多いため眠くならないように注意が必要かも。(笑)
それにしても「モノリス」といい「HAL」といい、未だに見かけるネーミング!
影響力絶大な映画の一本だと思う。

続いては「時計じかけのオレンジ(A Clockwork Orange)」1971年について。
この映画に関しては「アドビ製じゃないFIREWORKS」の時にも少し書いているけれど、もう少し書き足してみようか。
この映画の素敵なところはファッションと美術!
白いシャツにサスペンダー付きの白いパンツ、編み上げブーツにボーラーハット(山高帽)を合わせたところがポイント!
紳士の国イギリスなので、帽子はマナーなのかな。
いや、それにしても通常ならあの服装にあの帽子は合わせないんじゃないの、というところを合わせてスタイリッシュに見せたところが素晴らしい。
ADICTSをはじめ、HATTRICKERS(笑)などのPUNKバンドや、数多くのOi!バンドにも影響を与えているファッションだ。
70年代初期にはモロに影響を受けたCOCKNEY REBELなどというバンドもいたらしい。(ROCKHURRAH談)
現代でも十分通用するファッションだと思う。

この映画の美術監督は誰だったんだろう?
調べてみるとピーター・シールズとラッセル・ハッグと出てきたが、他の映画で特別目立った活動はしていない模様。
色彩、フォルムや空間のバランス、壁にかかっている絵画の一つ一つがすべて素晴らしい。
SNAKEPIPEもコレクションしたくなるような作品がいっぱいである。
なんといってもお気に入りは「コロヴァ・ミルク・バー」で、あんなバーがあったら行ってみたい!
あのマネキン人形も一体欲しい。(笑)
ストーリーや以前書いたスラングなどの魅力はもちろんだけれど、細かい演出がカッコいい映画である。
早回しの映像はどうやら松本俊夫監督の「薔薇の葬列(1967年)」からの影響を受けているらしい。
やっぱり?そっくりだもんね!(笑)

続いては1980年の「シャイニング(The Shining)」。
何度観ても怖い映画である。
ジャック・ニコルソンの怪演が見事なのは言うまでもないけれど、奥さん役の女優さんや息子役など、すべてが完璧!
時々挿入されるイメージが更に恐怖心を煽り効果的である。
姉妹が手をつないで並んだショットは写真家ダイアン・アーバスからの影響だな。
ん?意外とキューブリックは流用が得意な監督なのか?(笑)
大量の血液がものすごい勢いで流れ出て、部屋中いっぱいに広がるシーンは背筋が冷たくなる。
キューブリックは人が恐怖を感じるための最大公約数を知っていたのだろう。
ネット上で発見した2004年の記事によるとロンドン王立大学の研究チームがホラー映画の恐怖度を決定づける数学的公式を開発し、世界最高のホラーを「シャイニング」に決定したらしい。
ホラー映画の重要要素は緊張感、リアリズム、血に加えて、緊張感を高める音楽、現実と虚構のバランス、どれくらいの血や内臓が含まれているかを考慮し研究開発した、というから信憑性が高い!
堂々の一位とはすごいぞキューブリック!えらいぞ、ジャック!(笑)
原作のスティーヴン・キングがこの映画を気に入らなかった、という記事を読んだけれど、いやいや素晴らしいですよ!キングの旦那さん!(←人差し指くねくねシャイニング中)

最後に1987年の「フルメタル・ジャケット(Full Metal Jacket)」。
ベトナム戦争を描いた映画である。
割と最近観た記憶があったのに、かなり前だったとは!(笑)
前編、後編と2部構成になっている映画で前編だけ強く印象を持っていた。
結局のところ前述のシャイニングと同じで「人格崩壊」がテーマなんだよね。
ジャック・ニコルソンの演技と比較してしまうとかわいそうだけれど、迫力が違うためやや狂人らしさに欠けるのが残念。

後半は戦場のシーン。
アメリカ兵に対する対照的な女性の姿が印象的だった。
かたやお色気勝負、アメリカ兵は金の成る木と体とくねらせる女。
かたやどこかで厳しい訓練を受けたのか凄腕のガンマン(ウーマン)。
「Shoot Me!」を繰り返すシーンはなんとも言えない残酷な気分とせつなさとが混ざった、かなり複雑な心境になってしまった。
うーん、やっぱりどうも戦争映画は得意じゃないな。

キューブリック作品は他にも「ロリータ」「博士の異常な愛情」「アイズ・ワイド・シャット」を観ているが、上の4本でやめとくか。
「キューブリックは最高の恐怖映画監督」としてまとめにしよう。

ジョニー・リコは戦場へ行った

【スターシップ・トゥルーパーズ3劇場用ポスター】

SNAKEPIPE WROTE:

カルトSF映画として名高いシリーズ「スターシップ・トゥルーパーズ3」を観てきた。
なんと公開初日の第一回目の一番に乗り込み、最前列の「かぶりつき」で観て来てしまったROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
とは言っても、別にガンダムの大ファンではないのでよろしく!(笑)

スターシップ・トゥルーパーズは以前にDAVID LYNCH評論家として有名な滝本誠氏が大絶賛していた記事を読んだことがあり、気になっていた映画の一本だった。
パンク系の写真家Shigeo“Jones”Kikuchi氏のブログにも「スターシップ・トゥルーパーズ3の公開嬉しい!」なんて記事を目にしたこともある。
近所のレンタルDVD屋でスターシップ・トゥルーパーズ1と2を発見し、ROCKHURRAHと観たのは先月のことだったろうか。
評判を裏切らず、とても面白かったのである。

スターシップ・トゥルーパーズ」は1997年のアメリカ映画で、監督はポール・バーホーベン
原作はロバート・A・ハインラインの「宇宙の戦士(1959年)」とのことだけど、これは未読!
主人公ジョニー・リコの軽薄だけど熱血キャラという設定と、かなりリアルな残酷シーンのギャップが見事!
地球連邦軍(人間) VS バグス(巨大昆虫)の戦いが主題の映画である。
両親は被災して亡くなり、リコの恋人(フィービー・ケイツ似?古い!)は簡単に違う男に走る、仲間達はあっけなく戦場で死んでいく、と散々な目に遭う主人公リコ。
リコ持ち前の能天気さのおかげで映画全体は暗くはない。
途中途中で入る地球連邦軍のCM「FEDERAL NETWORK」も効果的だ。
ヴァイオリンを弾く軍隊仲間がまるで「サイコビリーバンドにいそう」なタイプだったのが非常に気になった。
映画は高度な知能を持つブレイン・バグを捕らえたところで終わる。

スターシップ・トゥルーパーズ2」は前作で主役だったジョニー・リコが出て来ないサイドストーリーだ。
これは2003年のアメリカ映画でフィル・ティペットという別の監督作品。
どうやらアメリカでは劇場公開されなかったらしい。
全く1作目の話とは関係がなく、人物設定にもつながりはない。
画面は全体に暗く、単純にバグスとの戦いを描いている。
前作のユーモラスな部分や残酷なシーンもあまり出てこないので、1作目でファンになった人は物足りなさを感じるかも?
しかも前作同様、バグスとの戦いに使用する武器に無理があるので、観ているこっちがハラハラしてしまう。
もっと空中からミサイル打ち込むとか、火炎放射器使うとか策はないものかね?
バグスが人間に寄生して支配する、という方式は「遊星からの物体X」や「エイリアン」そのもの!
訳の分からない生物に支配されるという構図はやっぱり怖いけどね!
今回の主人公はショーン・コネリー似で、いかにも主役顔だったのが面白かった。

そしてついに「スターシップ・トゥルーパーズ3」である。
最初の監督、ポール・バーホーベンが製作総指揮で再登場、主人公ジョニー・リコも復活!
やっぱりあの「能天気さ」がないとね!(笑)
1作目から11年が経過した、という設定から始まるためリコもやや老け気味。
残念ながらリコ以外は登場人物がかぶることはなかったので、密かに楽しみにしていた「サイコビリー系の人」も出演しなかった。
今回はサイキックで総司令官役のアノーキなる人物が「死に日和(It’s A Good Day To Die)」なんて歌を歌い、大ヒットしてる、なんて設定がおかしい。(笑)
「FEDERAL NETWORK」CMも相変わらずの悪ノリで笑ってしまった。
バグスは進化してるのに、連邦軍側はそこまで武器の強化はないのが歯がゆい。
後半にやっと「マローダー」なるガンダムの元祖とも言えるモビルスーツが登場したけど、活躍はほんの少しだけ。
またもや知能バグス「ベヒモコイタル」という更に巨大な存在が出現したり、リコが死んだことになったり、と1作目に近い内容の3作目だった。
SNAKEPIPEがとても気に入ったのはローラ役のJolene Blalock
美しさとたくましさの両方を持つ素敵な女性だった。
今回でシリーズは終わってしまうのか?
まだバグスとの戦争は終わってないのにね!

エンドロールが流れる頃、客席に揺れを感じる。
まさかこれも映画の効果?
と思ったら本当に地震だっ!
慌てて席を立ち、非常階段前で待つ時間の長かったこと!
どうやらそれほどの震度ではなかったみたいだけど、ビルの6階での上映だったため余計に揺れを体感したようだ。
SNAKEPIPEはてっきり巨大バグスが襲ってきたのかと思ったよ!(笑)
とりあえず何事もなくて良かった。

好き好きアーツ!#03 松井冬子&金村修

【金村修風?SNAKEPIPE撮影の写真を加工して制作】

SNAKEPIPE WROTE:

ターナー賞の歩み展」と「真っ赤なバラにゃトゲがある」に登場した友人Mから昨日の午前中に電話があった。
「今日の午後3時から松井冬子のトークショーがあるから一緒に行こう」
とまた突然のお誘い。
午後はROCKHURRAHと買い物に出かける予定だったのだが、急遽変更。
恵比寿に向かうことになった。
これはかつて表参道にあった洋書店&ギャラリー「ナディッフ」が再オープンした記念イベントとのこと。
松井冬子は旬なので、トークショーなんていったらきっと大勢の人でごった返しているだろう、との予想は大ハズレ!
多くても40人はいなかったと思う。
しかも友人Mは何度もギャラリーに電話し、整理券は発行しない、トークショーまでの時間を並んで待たせることはしないと確認済み。
椅子の数は20個、トークショー開始30分前から並べる、なんて情報まで入手していた。
ってことは…これは椅子取りゲームだ!(笑)
そしてまんまと友人M、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEの3人は前から2列目のバッチリな席でトークショーを見ることができた。ラッキーだね!

トークショーは松井冬子ご本人、成山画廊の成山明光氏をゲストに雑誌DUNE編集長の林文浩氏がインタビュアーとして登場。
松井冬子は髪をアップにしたピンクの浴衣姿、成山氏は以前成山画廊で目撃した時と同じように黒の3つ揃え。
松井冬子、テレビで見るよりずっとキレイで艶やか!
びっくりたまげた~!(笑)
今回は軽い話題で、という前フリ通りに松井冬子が好きな音楽や食べ物の話など、ほとんど作品や制作に関する話題がないトークショーだった。
ちなみに制作の際に聴く音楽は「テクノなどの反復が多い音楽」で、学生時代はPUBLIC ENEMYが好きだったとのこと。
PUBLIC ENEMYはSNAKEPIPEも大好きだったので、よく解る!
そして今現在気に入っているのはTOM TOM CLUBって…古っ!(笑)

終始なごやかに笑顔を絶やさずトークしていた松井冬子。
質疑応答の時間もあり何人かが松井冬子に質問した。
「どうしても気力が湧かない時はどのように対処してますか」
「幽霊を実際に見たことがありますか」
「静岡での好きな神社はどこですか」
といった今回のトークショーに似合った(?)軽い質問。
実はSNAKEPIPEも聞いてみたいことがあったけれど、ディープ過ぎるかなと思って遠慮した。
Mにその質問内容を話してみたら
「それはきっと上野千鶴子さんにしか答えないんじゃない?」
と言われた。
確かにそうかも。(笑)
それにしても突然びっくりハプニングで、生・松井冬子が見られて良かった!
成山氏もイイ味出してて楽しませてもらった。(笑)

さて続いては「好き好きアーツ第3弾」として好きな写真家・金村修を取り上げたいと思う。

金村修は1964年生まれの写真家だ。
国内外を問わず評価が高く、1996年にはニューヨーク近代美術館主催の「世界の注目される6人の写真家」に選ばれ、2000年には土門拳賞を受賞という輝かしい経歴を持っている。

金村修を知ったのはいつだったろうか。
好き好きアーツ#1 畠山直哉」の記事にも書いている1998年に東京国立近代美術館で行われたグループ展「写真の現在—距離の不在」で金村修が出品していた時、すでにその作品を知っていたのでそれ以前のことになるだろう。
一目で「あ、金村修の写真だ」と分かる、個性的な写真である。

金村修の作風は
乱雑(CHAOS)
暴力的(VIOLENCE)
破壊的(DESTROY)
とパンク要素が三拍子揃った(?)モノクローム写真だ。
焼きはかなり黒めである。
よく目にするような、あえて特別ではない風景をスペシャルな場所に変えてしまう。
それが「金村マジック」とでも言おうか、写真家としての力量であり魅力なのだろう。
金村修の写真そのものに共感して似た写真を撮りたい、とは思わない。
嫉妬するならその「マジック」の部分になるのかもしれない。

金村修本人もパンク好きらしく、パンク写真家なんて書いてあるのを見たことがある。
金村の写真集に「CHINESE ROCKS」という「まんま」のタイトルがあり、自身が解説している文章の中にジョニー・サンダースについて語っている部分がある。
恐らく年齢から考えても、金村修は70年代オリジナルパンクが好きに違いない。(笑)
写真展開催のために海外に行くときにもライダースにサングラスが必須だった、と以前何かで読んだことがあるから尚更そう思ったけれど。

今調べてみると2000年だったらしいが、金村修がNHKのトップランナーという番組に出演したことがある。
SNAKEPIPEも興味深く鑑賞!
この時初めて喋っている金村修を見ることになる。
「写真学校で作品を見せたら先生達に汚い写真だ、汚い写真だと嬉しそうに言われた」
「早見優と西田ひかるの区別がつかなかったから人物写真はあきらめた」
などの貴重な話を聞き、益々好感を持つ。(笑)
シニカルでややブラック気味な口調、人をおちょくっているような態度など、さすがパンクスだ!

現在は日本カメラで「作家になりたきゃなればいい」というタイトルの執筆をしていたり、2001年9月から始めているワークショップも継続しているようだ。
写真そのものの評価はもちろんだけれど、キャラクターにも注目されているようでいろんな仕事してるんだな。

バンド関係以外にも頑張ってる40代がここにもいた!(笑)
これからも応援していきたいと思う。

それにしても金村修のページ、きっと何年もデザインの更新してないような。
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEに任せてくれたらパンクテイストいっぱいのカッコいいページお作りしますのに。
ご依頼、お待ちしております!(笑)