ビザール・ポスター選手権!54回戦

20240414 11
【1922年10月に刊行されたポピュラー・サイエンス紙の表紙。悪魔が車に悪さしているシーンだって】

SNAKEPIPE WROTE:

2024年3月の「箱根初上陸!ポーラ美術館」をはじめ、今まで何度も1920年代への憧れについて語ってきたことは、皆様ご存知のはず。
シュルレアリスム、ロシア構成主義、バウハウス、ダダやアール・デコなど、現代アートの礎を築いた年代だからね!
一般庶民の生活はどうだったんだろう?
フランスではカッサンドル、ロシアではロトチェンコリシツキーの作品が街を彩っていたようなので、文化的な意識が高かったことが想像できるよ。
今回の「ビザール・グッズ選手権」では、1920年代(一部は1930年代)の庶民向けポスターを特集しよう。
生活に密着したポスター類、早速見ていこう!

電話で楽しげに話す女性が描かれている。
電話の宣伝なのかと思いきや「JELL-O」と「America’s Most popular dessert(アメリカで最も有名なデザート)」の文字が!
これはジェローというゼリーの宣伝用ポスタだったんだね。
日本でいうところのゼリエースみたいな感じ?
調べてみるとジェローは1897年に商標登録され、1904年には「アメリカで最も有名なデザート」のキャッチフレーズが採用されているという長い歴史があるという。
女性が誰に対してジェローを注文しているのかは謎だけど、商品そのものを載せない広告として斬新!
それほどまでにジェローが一般家庭に普及していた証なんだろうね。

続いては帽子の広告だよ!
これはデントン・ハットのアッタボーイ・ソフト・フェルト・ハットという商品らしい。
1702年に、イングランドのマンチェスターにあるデントンで初めてフェルトの帽子が製造され、それ以来デントンは帽子産業で栄えたという。
300年以上も歴史があるとは、さすがイングランド!(笑)
イギリス製のソフト帽は、1920年代の身だしなみには欠かせないアイテムだよね。
強風に飛ばされる帽子を描いた広告、情緒があって素敵だよ!

続いてはアンリ・モリニエのグラフィック作品ね。
このポスターは、1932年の物らしい。
ステラというフランスの家具メーカーが「不動の椅子」として特許を申請したのは、1922年のことだというから、こちらも歴史のあるメーカーなんだね。
ル・コルビュジエはん(安藤忠雄風の呼び方)と同世代のレオン・リュイソーによって発明された「LUCETA」という椅子は、「誰も分解できない」強度が高い商品として絶賛されたという。
そうした技術に関する特許取得だったんだね。
ポスターは椅子を壊そうとしている人物が描かれ、虫眼鏡で構造をアップして見せる技法が採用されている。
「こんなことではびくともしませんよ」と強調しているところが面白い!
現在もステラは存続していて、このポスターがロゴになっていることを知り嬉しくなったよ。
今でも当時の椅子を使い続けている人も多いだろうね!

次はちょっとセクシー系の広告だね。
これはMUM(マム)という制汗剤の宣伝とのこと。
「男性が決して口にしないが、すべての女の子が知っておくべきこと」や「清潔さを怠る女の子は人気者になれない」など、扇状的な文章が並んでいるという。
唇に指を当てている女性が、何か秘密にしておきたいような、悪巧みする表情に見えてしまう。
「マム」は、脇の下と「その他の場所」に使用するよう指示されているというので、広告の女性の表情と併せて「いかがわしい」想像を膨らませてしまうよ。
この制汗剤を買う時には、勇気が必要だったかもね?(笑)

最後はこちら!
THO-RADIA」というフェイシャル・クリームのポスターだよ。
化粧品の広告なのに、下からの光源により、まるでホラー映画みたいに見えてしまうよ。
調べてみると、どうやら光源はラジウムを表しているんだとか。
「循環を活性化し、組織を引き締め、油分やしわを取り除くなどの効果がある」として実際にラジウムを含んだ商品が販売されていたという。
2023年9月に刊行された京極夏彦17年ぶりの長編小説「鵼の碑」にも、何度となく出てきたワードがラジウムだったよ。
「鵺の碑」の文中にもあったけれど、ラジウムは放射性物質と認定される以前は、むしろ健康に良いとされていたという。
フランス製のクリームは、1937年に規制が変わるまで同じ配合で製造されていたみたい。
使用した人はどうなったのか、怖くて調べられないよ。
研究が進むと、信じられてきた常識が覆されることがあるという例になるポスターだね。

今回は1920年代と30年代の広告を特集してみたよ。
当時の人たちがどんな生活を送っていたのか、少しは垣間見ることができたかもしれない。
1920年代についてもっと知りたいので、今回の続編を検討してみよう。
次回もお楽しみに!

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