攻殻機動隊ってこう書くの?(ダジャレ)

【SNAKEPIPEの写真を使って攻殻機動隊的世界にROCKHURRAHが加工・制作】

SNAKEPIPE WROTE:

週に2、3本の映画を鑑賞する習慣は未だに続いている。
以前「パーフェクトな千年の妄想」に今敏監督のアニメ作品について書いたが、それがきっかけでアニメ作品にも目を向けるようになっていた。
アニメも未知の分野だったからだ。
そしてたまたま手にしたのが「イノセンス」。
ROCKHURRAHが観る前に軽く調べてみたところ、これはなんと「1995年公開のアニメーション映画、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の続編にあたる」とのこと。(Wikipediaより引用)
ぐわ。なんと前作があったのね、と仕切り直し。(笑)
こうしてかなり遅まきながら攻殻機動隊に触れることになったのである。

「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」(1995年)を初めて観た時には、言葉がよく聞き取れず意味が分からないことがあった。
SFモノにはよくあることなのかもしれないけれど、作者の造語がたくさん出てくるからだ。
だっていきなり「光学迷彩」なんて言われてもねえ?(笑)
全く「攻殻機動隊初心者」だったので仕方ないかな。
しかし、そんなことを置いてもストーリーの斬新さ、背景の素晴らしさなどで圧倒されてしまったのだ。
つまりハマッたってことね。(笑)
Wikipediaなどに詳しい説明があるのでそちらを参照してもらったほうが解り易いとは思うけれど、簡単な説明を。

2029年に内務省公安部内に設置された秘密組織「公安9課」を舞台に、そのメンバーである実質的なリーダー・草薙素子が主役の物語である。
ものすごく乱暴に言うと特殊警察が事件を解決する話だね。(簡単過ぎる説明)
ただしこの世界での犯罪というのがハッキングなどの情報操作を行うようなタイプが主流なのである。
もっともこの時代には人間が電脳化や義体化をして、半分機械人間のようになっているという設定なので「電脳をハックされた」なんてセリフが出てきたりするのだ。

映画版1作目を観終わってから、先に手に入れていた続編「イノセンス」を観る。
この時には前作のラストで失踪してしまった少佐(草薙素子)が全然出てこないので、トーンとしてはちょっと暗いかな。
オープニングでハンス・ベルメールを感じさせる人形が出て来て、まるでシンディ・シャーマンが写真に撮ったような構図で配置されるシーンが印象的。
前作同様、背景が素晴らしい。
もちろんストーリーも非常に面白かった。
えー、これで終わり~、と物足りなさを感じてしまった。
もっと知りたい、もっと浸りたいと思ったのだ。

そして今度はテレビアニメ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」を観始める。
これは全26話からなるシリーズで、そのうちの半分くらいが「笑い男」なる天才ハッカーに関連する続き物になっている。
それ以外は1話ごとに完結するショートストーリーである。
「笑い男」の話もほんとにありそうな設定で面白かったが、ショートストーリーも良くできている。
外務大臣拘束事件、多脚式戦車の暴走、南米民主革命の主導者入国、「興国の旅団」というテロ集団の誘拐、ロシアの集団拉致、連続猟奇殺人などかなり危ないテーマも扱っている。
そこらの邦画やテレビドラマなんて勝ち目ないんじゃない?と感じるほど。
見ごたえ充分!面白いっ!(笑)

さてさてまた次はテレビアニメの続編「攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG」!
前作で終わりになったのか、とガッカリしていたSNAKEPIPEに朗報。
また公安9課が復活、活躍するところが観られるなんて本当にウレシイ。(笑)
「2nd GIG」では「革命」がテーマになるのかな。
「個別の11人」と名乗るテロリストが出てきたり、核の原料であるプルトニウムや原子力潜水艦による核攻撃の話など物騒な単語が飛び交う。
特にこのシリーズには革命の思想について語られることが多いため、かなり意識を集中させていないと話の展開についていかれないこともしばしば。
すごい話になってるよねえ。
いやはや、気軽に観られないアニメがあるとは!
ラストの回のタイトルが「憂国への帰還」だし、ビルの屋上で集団自決なんてところからも感じていたけれど、三島由紀夫の影響大ですな。
他にも攻殻機動隊全般にいえることだけど、いろんな影響が見受けられて興味深い。

機械が意志を持つ、と言えば有名なのが「2001年宇宙の旅」。
ハルの存在はその後のSFに多大な影響を与えているが、攻殻機動隊も例外ではないようだ。
公安9課をヘルプするためのタチコマという思考戦車が出てくる。
本来はただのAI搭載の機械であったはずなのに、哲学に興味を持ち始め生と死について語ったり、ついには個性まで獲得してしまう。
ここまで来ると、機械が意志を持った以上の存在になっている。
かわいい声で非常に難しい話を喋るタチコマ。
観ているうちにだんだん愛着を感じてしまう。
タチコマは笑わせてくれたり、感動させてくれたりして今ではすっかり大ファン!(笑)
そういえば生と死について語ってるとき
「メメントモリ~!」
なんて叫んでたな。
藤原新也まで入ってくるか。(笑)
超合金 電脳超合金タチコマ」、買おうかどうしようか本気で思案中!

機械なのにかなり人間らしさを獲得したタチコマに比べて、本当は人間なのにあまり感情を表に出さず機械的なのが主役の少佐こと草薙素子である。
個性を獲得したタチコマを「あれでは使い物にならない」とばっさり切り捨ててしまう。
「これで公安9課も終わりだな」というバトーに「なにか未練でも?」と返す。
冷たいようだけれどそうやって「つながり」を断ち切っていくことで前進するからこそ、チームのリーダーになれるのかな。
的確な判断力と素早い行動力で、頭脳戦だけではなく体当たりの戦闘も行う。
観ていて気持ちがいいほどの戦いっぷりですな!
それにしても少佐は露出狂なんじゃないかと思えるほど、下半身はブラジリアン・カットかTバックのショーツ一丁に革ジャンが定番スタイルで。
どこに行くにもあの格好ってどうなの…。(笑)
公安9課のメンバーはなんとも思わないのかな、とヘンな心配をしてしまう。
そして少佐を捕らえる時、たまにアングルが「お尻のアップ」だったり下から上を見上げるような「アクションカメラ」調になっていることがあり興味深かった。

機械的な主役の草薙素子と対照的なのが同僚のバトーである。
犬を飼っていたり、タチコマを猫かわいがりしたりする。(ヘンな表現だけど)
車や武器などにも「こだわり」を持ち愛着を感じることが多いみたい。
仲間がやられたら激怒する、少佐が撃たれたら泣く、など人間的な感情を素直に表に出すタイプ。
恐らく攻殻機動隊の中では一番共感される人物なんじゃないかと思う。
少佐が死んだと思うと何故か「素子~!」と本名を叫ぶシーンが2回。
いい味出してるよね!
本当に目を外してから眠るのかどうか知りたい。(笑)

いい味出してるキャラクターとしてはやっぱりイシカワ!
地味だけど確実に情報をキャッチし、捜査には欠かせない人物である。
副業で「パーラー・イシカワ」というパチンコ屋を経営しているところなんかも、実際にありそうで面白い。
本当にヒゲを外してから眠るのかどうか知りたい。(笑)

まだまだ物足りないSNAKEPIPEは「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」も入手。
これはテレビアニメ「攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG」の続きモノ。
攻殻機動隊は映画版とテレビアニメ版があるためちょっと紛らわしい時があるよね。
それにしても「ソリッド・ステート」と言われれば迷わず「サバイバー!」と応えてしまうSNAKEPIPEだけど、これは「ソサエティ」なのね。(笑)
未来の老人介護問題に焦点を当てた作品で、これも大変興味深い。
もうこれ以上は攻殻機動隊関連はないようで。
うーん、残念!

ん?いや、原作まだ読んでなかったよね。
とついに士郎正宗のコミックス「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」と「攻殻機動隊2 MANMACHINE INTERFACE」も入手!(笑)
いやあ、それにしても攻殻機動隊が1991年とは。
20年近く経った今読んでも全然色褪せてないよ。
内容がかなり濃いので、読むのが速いSNAKEPIPEが苦労している。
本来の順番が逆だったのかもしれないけれど、映画とテレビアニメという予備知識を持った後でコミックスにして良かったのかもしれない。
こんな話を作る士郎正宗ってすごい人だなあ!

「こんなのもあるよ」とROCKHURRAHが教えてくれたのがPS2のゲームソフト、その名もずばり「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」だ!(笑)
2004年発売のゲームなので中古屋さんを物色。
なんとウチから一番近い場所でゲット!
わーい、画面観たい!とディスクを入れてみるが…全然読み込まない!
何度やっても読み込む気配がない!
以前「地(じ)デジじゃないよ、地(ち)デジだよ!」でも書いたことがあるけれど、ウチにあるのはSONY製のHDDレコーダ(ゲーム機が一緒になっているアレ)なのである。
今年の1月に解体して中を掃除した後には快調だったため、今回再びROCKHURRAHがチャレンジ!
しかし何度やっても今度は電源が入らない!
もう寿命なのかな、ということであきらめることにした。

でも我が家にはPS2のソフト、全く触っていない「攻殻機動隊」がっ!(笑)
仕方なく時代に逆行してPS2の本体を購入することに決定。
今買うなら普通はWiiかPS3だよねー。とほほ。
ゲームは草薙素子でプレイする場面とバトーの場面になっている。
ROCKHURRAHが言うには「少佐よりバトーのほうが操作し易い」とのこと。
それにしても少佐の回し蹴り、カッコいい!(笑)
ゲームはまだ途中なのでこれからの展開が楽しみである。

たまたま手にした「イノセンス」からここまで来てしまった。
今まで「ちょっと面白そう」くらいの評判しか知らなかった「攻殻機動隊」の世界にこんなにどっぷりハマってしまうとは!(笑)
きっと他にもこんな感じの「今まで名前しか知らなかったけど」みたいな面白いモノあるんだろうな。
また探してみたいと思う。

CULT映画ア・ラ・カルト!【03】ILSAシリーズ

【どのポスターもダイアン・ソーンが仁王立ちの構図。全部同じパターン?】
SNAKEPIPE WROTE:

今回はカルト映画「ILSA」シリーズについてまとめてみたい。

ILSA ナチ女収容所 悪魔の生体実験」は1974年に制作されたアメリカ/カナダ映画。
タイトルからしてすでに危ない雰囲気を漂わせているけれど、内容もそのまんま!
ナチスの医療収容所での残酷な実験を描いている映画である。
医療収容所の女所長の名前がイルザ、その後のシリーズもすべてダイアン・ソーンが演じている。
このダイアン・ソーンの存在感が映画の要であり、彼女のおかげで映画が大ヒットしたといえるだろう。

なんといってもダイアン・ソーンの魅力はその肉体美!
グラマラスボディの持ち主で、いかにもアメリカ版プレイボーイのグラビアに出てきそうなタイプ。
そのグラマーさんがナチスの制服をピチピチ状態で着こなし、冷たい美貌で怖い命令を下すとは!
さて一体何が起こるのだろう、と期待に胸を膨らませること間違いなし!(笑)

結局グラマー所長はどのくらいまでの熱や圧力に耐えられるか、病気に対する抵抗力など「人の限界」のようなデータを取ることが目的だったようで。
そのデータを取るシーンだけが残酷かな。
それ以外は収容所とは言っても、建物は掘っ立て小屋みたいだし、収容されている人達は部屋を自由に歩いているため厳重に管理されている収容所というイメージとは程遠い。
あとは所長の趣味に多少の問題があるくらいなので、恐る恐る指の間から覗き見しなくても大丈夫な映画である。(全員がオッケーとまでは言わないけど!)
最後はその「趣味」がきっかけで転落する所長。
やっぱりこんな人体実験、許す国はないよね?

2009年の現在観ても「ナチスで生体実験」とタイトルにあるような映画はマズいんじゃないか、と感じるので制作された1974年などはもっと危なかっただろうね。
キャストの中に「この作品のみ変名」と書かれている俳優が多いので、お金欲しさで出演はしたけれど、できれば出演したことは知られたくないという意味だろう。
まあ、代表作として堂々といえるのはやっぱりダイアン・ソーンのみだろうね。(笑)

それにしても「ILSA」にはモデルがいた、と書いてあってびっくり!
イルゼ・コッホという女性らしい。
本当にそんな残虐な女性がいたとは驚きだね!
一文字違いにして「イルザ」なのか、と納得。

イルザ アラブ女収容所 悪魔のハーレム」は1976年の作品。
主演は同じくダイアン・ソーン。
今回はタイトル通りアラブの石油王国が舞台で、国王専用ハーレムの守備隊長を任されているイルザ。
主人が国王で命令を受けて行動するため、前作のようにイルザが絶対の命令権を持っているわけではないところが違うんだよね。
そして今回はあまりダイアン・ソーンの脱ぎっぷりもよくなくて、ほんの数シーンでその肉体を披露しているのみ。
前作の「これでもか」というほどの肉体誇示はないので要注意。(意味不明)

石油王国の国王がポール・マッカートニーに似てる。
うっ、「に」を3回も書いてしまった。(笑)
そのポール国王のハーレムは誰しもが思う通りの「いかにもアラブのハーレム」状態。
美味しい料理にお酒、美しいダンサーがくねくね踊る宴。
周りに侍る訓練された女性達。
みんな国王のための演出。
背いたら罰が待っている、命がけのご奉仕。
アラブ編では前作よりもグロさがプラスされている。
今回は顔をそむけてしまうシーンもあったので、グロさを求める人にはいいかもしれない。
そしてアラブ社会ってこんな習慣あるんだっけ?と信じてしまうような不思議なエピソードがいくつか挿入されている。
お客様への最高のもてなし料理とか泥棒に与える罰について、など。
本当なのかどうかアラブの人に聞いてみないと。(笑)

今回のイルザは、普通の女みたいにアメリカ人スパイに恋する設定で。
国王のためにハーレムを維持・守備している冷徹な女隊長とは随分イメージが違ってきて、とまどってしまう。
最後はやっぱりイルザが笑って終わるようにはできてないんだな。
というか、そういうラストにはできないのかもね?

「女体拷問人グレタ」は1977年の作品。
この映画では名前はイルザじゃなくてグレタになっている。
グレたからかな?(ぷっ)
ここでも大筋はさほど変わらず、病院の院長になっているダイアン・ソーン。
治療と称して、前作と同様に自分の好き勝手をやっている。
そして警察関係者と手を組み、テロリストに自供をさせるために拷問を繰り返す役割も果たしている。

今回は病院に入ったまま行方が分からなくなった姉を探して、実態をあばくため妹が潜入するストーリーになっている。
最後は姉に会えたけれど、この手の映画の中で感動的な再会シーンは期待できないよね。
結局はグレタ院長が微笑みながら残酷なことをして終わってしまった。
なんの作戦も練らないで潜入すること自体が無謀だったともいえるけど。

ラストで手下だと思っていた男の裏切りや、グレタが復讐を受けるシーンが衝撃的だった。
今回はジェス・フランコという先の2本とは違うスペインの監督なので、ちょっと雰囲気が違っていたのかもしれない。

本当はイルザシリーズにはもう一本「イルザ シベリア女収容所 悪魔のリンチ集団」(1977年制作)があるのだけれど、今の時点ではまだ入手できていない。
それにしても「~収容所」で「悪魔の~」って、全部同じパターン!
ちょっとマンネリ気味?(笑)
暑い国の次は寒い国にしたってことか。
設定その他は同じだろうけど、いつか観られる日を楽しみにしたい。

伊藤公象  秩序とカオス展

【魚の集合?菊の花?一体何に見える?】

SNAKEPIPE WROTE:

世間はお盆休み。
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEもどこかにお出かけしよう、と思いついたのが東京都現代美術館
ここは以前「ダイドー・ブランコ・コーヒー」の時にも行った周りが大きな公園のある非常に立地の良いリッチな美術館である。(げっ、以前と同じギャグ!)
現在開催している企画が「伊藤公象~秩序とカオス」展、同時開催が「メアリー・ブレア」展とのこと。
メアリーの方はあまり興味があるタイプではないようなのでパス。
久しぶりに現代アートに触れてきた。

現代美術といわれてもそんなに詳しくないし、立体を扱う日本のアーティストはほとんど知らない。
実は今回の伊藤公象の名前も初耳だった。
作品の雰囲気からてっきり若い世代なのかと思いきや、なんと1932年生まれというから今年77歳、活動歴の長いアーティストだった。

土をこねて造るいわゆる「陶芸」とはかなり雰囲気が違うけれど、伊藤公象の作品の素材はほとんどが土からできている。
それらはまるで布や石、または金属に見えたりして、とても陶芸品には見えない。
ちょっとトリックめいていて面白い。

今までほとんど現代美術展を観たことがないROCKHURRAHが
「えっ、作品を床とか地面に直接置いてるの?」
とびっくりしていた。
例えば上の写真の作品なども台の上に置いてあったわけではなく、歩いているカーペットの上に直接並べられていたのである。
「きっと毎回展示の度に形が変わってるだろうね」
などと笑っていた矢先に、それが事実であることが発覚!

なんと<アルミナのエロス(白い固形は・・・)>という作品は1984年制作の時の写真と、今回展示されていた作品とは大きく違っていたのである。
恐らく並べたり撤収したりを繰り返しているうちにどんどん作品が崩れていったのだろう、白いレンガの塊だったはずがボロボロになって廃墟のように変化している。
解説にも「自然の作用を採り込む有機的な創作の世界」と書いてある。
うーん、モノは言いようですな。(笑)
時と共に作品が変化する、というのは今まであまり経験ないかも。
ただ、確かにその崩れた後の今回の展示のほうが1984年版よりもSNAKEPIPEは好みだった。
陳腐な言い方だけど「終末感」が感じられたからだ。

他にとても気になったのは同じように土から造った焼き物にプラチナを吹き付けた、というまるで金属にしか見えないようなピカピカのシルバー群。
群と呼ぶほどの、一体いくつあるのか分からないほどのたくさんの造形物が所狭しと並んでいる様は圧巻である。
そう、伊藤公象の作品はほとんどが「群」で構成されているのだ。

一つだけ置かれていたらあまり気に留めないかもしれないけれど、まとまって集合体になると非常に迫力が出てくる。
まるで一つ一つに意味があるんじゃないか、全体で観た場合はどうだろう、などと考えたくなってくるから不思議だ。
ま、そういうところを含めて現代美術なのかもしれないね。
SNAKEPIPEもROCKHURRAHも「ごたく」やら「うんちく」のような理屈(屁理屈?)が必要なアートにはあまり興味がない。
むしろ言葉を必要とする、能書きばかりの作品はアートにしないで文章の世界に入ればいいのではないかと思う。
言葉にできないからアートにするんじゃないか、と考えるからだ。
伊藤公象展は解説がなくても観た瞬間に
「わっ!すごい!」
と思えるアートの根源が感じられて充分に満足できた。
行って良かったな!

常設展として現代美術館所蔵作品が観られるスペースに面白い作品を発見。
伊藤存というアーティストの「しりとりおきもの」という作品。
「りんご」→「ゴリラ」とたどって行った先にあったのは
「ラモーンズ」!
恐らく「しりとり」をクリアできた人は少ないのでは?
だっていきなりラモーンズが入るのは例外だろう。
その次は「頭脳」だったし。(笑)

やー、今回は二人の「伊藤」にやられちゃったね!
現代アートは楽しいな!(笑)

石井聰亙の暴走~追悼:山田辰夫~

【「狂い咲きサンダーロード」のラストで見せた山田辰夫の笑顔。合掌。】

SNAKEPIPE WROTE:

「ぎゃっ」
とROCKHURRAHが叫ぶ。
何事か、と見ると震える手でパソコンを指差している。
なんとそこには俳優、山田辰夫氏死去のニュースが。
実はその26日に何年(何十年?)ぶりかで山田辰夫スクリーンデビュー作「狂い咲きサンダーロード」を観たばかり。
二人で山田辰夫について語り合ったばかりだったのである。
あまりの偶然にびっくりするのも無理はない。
そこで今回は山田辰夫追悼の意味も含めて石井聰亙監督の3本の映画についてまとめてみたい。

石井聰亙監督といえばやはり80年代、新宿だったか吉祥寺だったか忘れてしまったけれどオールナイトの映画館で鑑賞したような記憶がある。
パンクテイストと暴力的な雰囲気が夜にはぴったり合っていた。
恐らく一番初めに観たのは「爆裂都市 BURST CITY」だったと思うけれど、年代順に書いてみようかな。


「狂い咲きサンダーロード」(1980年)は80年代以降にも何度か観ているはずだけど、細かい部分についてはすっかり忘れてしまっていたSNAKEPIPE。
そんなSNAKEPIPEとは違って、さすがは地元北九州で撮影が行われていたというこの映画をROCKHURRAHは何度も鑑賞していたらしい。
石井聰亙監督も福岡出身だしね!
そんな二人で揃って鑑賞したのは今回が初めてだった。
改めて観ると、石井聰亙監督の美意識や描写のカッコ良さがよく解る。
SNAKEPIPEも写真撮影したいな、と思うような風景もたくさん出てきた。
いいなあ、この時代の北九州!(笑)

この作品は暴走族を描いた作品で、一人だけ突出してしまった主人公ジンを演じる山田辰夫が非常に印象的である。
「つっぱり」の信念を貫き通し、我が道を行くジン。
走りたいから走る、嫌なことはしたくない、と自分に正直な人間である。
その正直さが好まれたり、反感を買うことになったりする。
好まれたのは右翼団体に所属する小林稔侍演じるタケシ。
反感を買ったのは他の暴走族チーム。
最後まで自分の好きなことをしよう、と筋を通す人はなかなかいないだろうね。

山田辰夫は顔もそうだけど、なんといっても特徴的なのはその声。
いかにもチンピラ声というのだろうか、野次を飛ばすのに最も適してる声質。
実はこの映画以外の山田辰夫が演じてるのを観たことないSNAKEPIPE。
最近では話題作「おくりびと」にも出演していたみたいだけど、この手の映画はあまり得意ではないので。
「ずっと俳優やってたんだね」とROCKHURRAHと感心していたところに訃報。
53歳じゃまだまだ若いのに、非常に残念である。合掌。


続いて「爆裂都市 BURST CITY」(1982年)。
この映画も「スターリンが出てる」とか「泉谷しげるが嫌な役」などというとても簡単な感想しか覚えていない、かなり昔に観た記憶しか残っていない映画である。
この映画に関してはなんといっても当時のロックスター、ロッカーズとルースターズ(のメンバーが合わさったバンド)、そしてスターリンが実際に演奏してるシーンが観られるだけでも充分ウレシイ!
ミチロウ、若い!(笑)
ストーリーがどうの、というよりも音楽とファッションに興味がいってしまう。
ファッション、と書いてはみたけれど、この映画の中でのファッションというのがやや特殊。
これはどうやらこの当時の北九州では割と当たり前の光景だったらしいんだけど、パンクと暴走族とヤクザが全部ごっちゃになったという妙な組み合わせ。
実際に北九州で生まれ育ったROCKHURRAHによると、パンクと暴走族が友達同士でツルんでるなんてことはざらにあったみたい。
ま、結局「アウトロー」として考えればおかしくないのかな?
ただ、これは東京のパンクシーンとは当然だけど違っていて、地方都市特有の文化なのかな。

この映画には後に芥川賞作家になる元INUの町田町蔵(現在は町田康)と、同じくルポライターで作家の戸井十月がアブナイ兄弟役で出演していたり、暗黒舞踏「大駱駝艦」の麿赤児がうなじに「DEATH」と刺青してたり、若いコント赤信号室井滋の姿を観ることもできる。
80年代を知るのにはとても面白い映画かな?


そして最後は「逆噴射家族」(1984年)である。
この映画のことは以前「さて、今週のリクエストは」にも書いたことがあるけれど、主演の小林克也の大ファンであり、石井聰亙監督の作品上記2本を鑑賞した後のことだったのでとても楽しみにしていた記憶がある。
これまた以前の記憶が飛んでいたので、今回改めて観直した。

タイトル通りに家族の一人一人が「逆噴射しちゃう」という話で(簡単過ぎか?)、実は幸せそうに見えている家族にもこんなにストレスがあるんだな、と日本の病理について描いている作品である。
撮影が浦安だったようで、恐らく当時は開発が今ほど盛んではなかった殺風景さ。
うーん、どうやら石井聰亙監督は「空っぽ」な風景が好みなんだね。
若い工藤夕貴は顔が違って見えたり、狂気が宿ってくる小林克也の顔の変化など見所満載である。
SNAKEPIPEは以前から大学受験を控えている工藤夕貴のお兄さん役の俳優、有薗芳記の異常さに目を奪われていたけれど、残念ながらこの作品以外では知らないな。
原作と脚本が小林よしのりだったとは知らなかったけれど、所々で「らしさ」が出ていたような気がした。

以上石井聰亙監督初期の代表作3本について書いてきたけれど、簡単にまとめてみるならば
「テーマは暴走」
といえるのではないだろうか。
実際にバイクで暴走する場合もあれば、精神的に暴走してしまうこともある。
追い詰められて制御できなくなり、もっと先に突き抜けちゃった状態を描いているのかな。
全部80年代の作品だけで25年も経っているけれど、決して古くない映像だと思う。

調べてみると石井聰亙監督はコンスタントに作品を発表している模様。
上の3本以降については全く知らないので、今度また機会を作って鑑賞してみようかな。
暴走の先に何があるのか。
答えが見つかるかもしれないからね!(笑)