時に忘れられた人々【33】情熱パフォーマンス編5

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【何だかよくわからぬ情熱に溢れたファイター達】

ROCKHURRAH WROTE:

元旦以来全くブログを書いてなかったROCKHURRAHだが、実に久々の登場となるよ。
病気だったわけでもなく何か別の事に奔走してたわけでもないけど、3ヶ月もぼんやりしてたわけだ。
SNAKEPIPEがクリエイティブな事(ブログを書くのがそうらしい)してる間にお菓子を焼いたり(ウソ)家事をしたり、なんて家庭的な人なのだろう。

久々のブログで何を書こうかと思ったけど、今回はROCKHURRAHが長くしつこく続けてる「情熱パフォーマンス編」でいってみようか。初めて書いたのが2011年らしく、10年間でたった5回だけしか記事を書いてないけどね。

ROCKHURRAHが書くのはパンクや80年代のニュー・ウェイブに限ってなんだけど、ロックの誕生前から色々なジャンルの音楽で歌い手はいて、その人なりのパフォーマンスを演じてきたことと思う。

本人はごく自然に歌に込めた思いや情熱を表現してるつもりでも、ごくたまに、傍から見るとすごく変な動きにしか見えないものがある。
そういった一瞬を捉えて何だかそれなりのコメントをいいかげんに書いてゆく、というのがROCKHURRAHのいつものパターンなんだよ。
では早速見てみようか。

【道化る!】
Vertigo / Screamers

「おどける」という言葉はあっても日常的に「どうける」とはあまり言わない気がするが、そういう言葉もちゃんとあるらしい。
似たような言葉で「ふざける」というのもあるが、漢字で書くと「巫山戯る」と一気に難しくなって、とてもふざけては書けないなあ。

まずはLAパンクの中でも変わり種として名前が残っているバンド、スクリーマーズから。

1970年代半ばにはすでにシーンを確立していたニューヨーク・パンクの連中がいて、そこからの影響で70年代後半にロンドン・パンクが生まれたのはパンク好きだったら誰でも知ってるはず。
アメリカ各地でも当然パンクは伝染して独自の進化をするのも当たり前だけど、ニューヨーク以外の大都会でも続々とパンク・バンドが登場してシーンを形成していった。
ロサンゼルスも色々とバンドが登場して注目されていたが、ROCKHURRAHはイギリス物を漁るのに忙しくて、アメリカのパンクにはあまり関心を持たなかったという過去がある。
個人的にかろうじて知ってるのは後にニッターズ(Knitters)という本格的カントリー、ブルーグラスのバンドとなってファンを驚かせたXやヴォーカリストがジョン・レノン射殺の前日に自殺したジャームス(Germs)くらいか。
詳しい人だったらLAパンクだけで食っていける(何の商売かは不明)ほど豊富な人材を誇るジャンルだと思うよ。

そんな中で地元シーンでは有名、ただし世間ではほとんど知られてなかったのがこのスクリーマーズだ。
1977年から1981年頃まで活動していたロスのバンドなんだけど、何しろ活動中にまともなレコードは一枚も出してないので、例えば音楽雑誌でその名前を知った人でもリアルタイムで聴いた事ある人はほとんどいないという状況。
後に発掘音源みたいな形でリリースされて初めて知られる存在になったという。
YouTubeで手軽にビデオを見れる時代になるまでは「LAに行って観てきた」って人じゃない限り、どんなバンドなのかもわからなかった、都市伝説みたいなバンドだったに違いない。
ロクにレコード出してなかった割には動いてる映像はかなり多数残されていて、彼らの活動はある程度は知る事が出来る便利な世の中になったものよ。

このバンドが変わり種というのはギターもベースもなく、ドラムとキーボードのみでちょっと奇抜なパンクをやってるというバンド構成。
エマーソン、レイク&パーマーというギター無しのバンドもそれ以前にはあったから珍しいというほどのもんでもないけど、大体ギターが中心のパンク界では希少種には違いない。
ROCKHURRAHが勝手に似た印象のバンドとして思い出したのがイギリスのスピッツエナジーだ。
スピッツオイル、アスレティコ・スピッツ80などレコード出すたびに名前を変えるB級SFパンク・バンドなんだけど、初期では何とヴォーカルとエレキ・ギターのみでレコーディングしてた(ちゃんと売られてた)という、アマチュア・バンドにも劣る構成の変バンド。四畳半フォークならまだわかるけど、その言葉も現代では古語かもね。
スクリーマーズはそれに比べりゃずっとマトモにバンド形態なんだけど、途中で入るブレイクのような音の奇抜さがスピッツと似てると思った次第。

そんな彼らの情熱パフォーマンスはいかにもパンクといった顔立ちのヴォーカリストによる突然のコミカルな仕草が真骨頂。
情報がないから定かじゃないが、「昔ちょっと道化師をやってまして」とかそういうタイプだったのかね?
この曲だけでなくどこでもちょっとだけ奇妙な動きが入るのが絶妙で、思わず目が釘付けになってしまうよ。
派手に堂々とじゃなくて本人もちょっと恥ずかしいのか、小刻みで控えめなところがいいね。

【成り上がる!】
Holiday In Cambodia / Dead Kennedys

ロサンゼルスが出たから同じカリフォルニア州のサンフランシスコを代表するパンク・バンド、デッド・ケネディーズも挙げておこうか。
全米パンク界でもかなりな有名バンドでパンク好きだったら知らない人はいないくらいだろうね。
甘乃迪已死樂團として中国でも知られてる模様。何じゃそれ?
サンフランシスコ市長選にも出馬した事があるという上昇志向の強いジェイロ・ビアフラを中心としたバンドで、日本でも割とリアルタイムでレコードが出たから知名度も高いしファンも多かったな。
オルタナティヴ・テンタクルズというレーベルを立ち上げて数多くのパンク・バンドをリリースし、世に広めた功績は大きい。

ROCKHURRAHはあまり政治的なメッセージ性が好きじゃないのと独特のヴィヴラートした声が苦手なので、みんなが「デッケネ(通称)」と熱狂してる時も冷ややかに通過したけど、それでも「Holiday in Cambodia」や「Kill the Poor」「Nazi Punks Fuck Off」などは愛聴していたものだ。

その代表曲「Holiday in Cambodia」は何種類かのジャケットがある事で知られているシングルだが、ROCKHURRAHが持っているのは青と朱色みたいなヴァージョンだった。
単に空爆か何かのイラストだと思ってたら、調べてみると「バーニング・モンク・スリーブ」との事。よく見たら確かにモンク・イズ・バーニングだったよ(意味不明)。

1975年から79年までカンボジアの政権を握ったのがポル・ポト率いるクメール・ルージュ(ポル・ポト派)で、たったの4年間にカンボジア人口の4分の1の人が虐殺されたという恐ろしいまでの黒歴史。
そんなに大昔じゃなくてこんなに恐怖の政権があったのかと思うと、思い上がった人間の身勝手さに誰もが怒りを覚えるだろう。
たぶんその事についての強烈な批判が歌詞に込められていると勝手に想像したんだが、英語が苦手なROCKHURRAHにはよくはわからん。

ビデオは他のメンバーがクールに決めてるところに緑色のゴム手袋して明らかに挙動不審なビアフラ登場。怪人かよ!
この変な動きと顔芸でそんなシリアスな歌を歌うか?というふざけっぷりにこっちや後ろのメンバーが心配になるよ。
歌ってる時の表情がたまにE・YAZAWAに似てると思ったのはROCKHURRAHだけか?
やっぱりBIGになる人間には共通したものがあるのか。

【妨げる!】
Young Savage / Ultravox

昔から自己顕示欲が低くて、前に出る事が少なかったROCKHURRAH。
個人主義でリーダー的気質はたぶんないにも関わらず、周りに関羽とか張飛的な存在が大体いて支えてもらってたから、自分で思うよりリーダーになる場面も多かったな、と回想する。それが人徳ってもんか。
だからというわけじゃないが「妨げる」という行為が嫌いで、邪魔しない男としてずっと生きてきた。
最近は何するでも迷惑かける邪魔な人間が多くて困るよね。

続いてはヒステリックなおばちゃん顔で有名なジョン・フォックス率いる初期ウルトラヴォックス。
去年11月の記事で書いたばかりだが、よほど好きと思われても仕方ない頻度で書くな。

1970年代に出た3枚のアルバムでヴォーカルを担当し、80年代にソロとなってからは物静かなインテリといったイメージのジョン・フォックスだったが、最初の頃はかなりアグレッシブで危ない男だったようだ。

釘を打つようなリズムと乱暴な早口ヴォーカルはロンドン・パンクの代表的なスタイルと見事に一致してたし、もっと評価されて良かった時代にはちょっと不遇な扱いのバンドだったね。早すぎたニュー・ウェイブと言うべきか。
元ビーバップ・デラックスのビル・ネルソンやチューブウェイ・アーミーのゲイリー・ニューマンと共に未来派パンクの先鋒としてシンセサイザーの効果的な使い方を(ロック的に)世に知らしめた、その功績は大きい。

ブライアン・イーノ、スティーブ・リリーホワイト、コニー・プランクという最高級プロデューサーの力を得て作った3枚のアルバムはどれも先進性に溢れた傑作だったな。パンクの名盤として挙げる人も多いはず。
にも関わらず商業的には成功せず、ジョン・フォックスが脱退した後でリッチ・キッズやヴィサージで活動していたミッジ・ユーロが加入した途端に、メキメキ人気バンドになっていったという経緯がある。
SNAKEPIPEもジョン・フォックス在籍時のウルトラヴォックスは知らなかったという。完全に別物バンドだもんね。

後に初期ウルトラヴォックスのマネしたようなチューブウェイ・アーミーが「先進的」と言われバカ売れしたり、先進的な事を始めたから話題になって売れるわけじゃないという現実をイヤというほど味わったのが本家ジョン・フォックスだろうね。

ウルトラヴォックスは確かな演奏力を持ったバンドでレディング・フェスティバルの出演経験(シャム69やジャムも出てた豪華な顔ぶれ)もあるが、ドイツのTV番組で悪ノリし過ぎた映像がこれ。
どうせ歌も演奏も口パクなのはわかっちゃいるが、ジョン・フォックスのハメを外しすぎな態度にメンバーから苦情続出間違いなしだよ。
演奏してるのも構わず無理やり肩を組みコーラスさせたり完全に寄りかかったり、狭いステージなのに暴れまくってもう大迷惑な男。これがちゃんとしたライブだったら音はメチャクチャになるだろうし「あっち行けよー!」と言いたくなる。

ジョン・フォックスがなぜ脱退したのかは知らないが、周りの事を考えないワンマンっぽい雰囲気があるし(勝手な想像)、叩き上げのミュージシャンっぽいメンバーとは合わなかったのかもね。
などと言うよりも上の映像みたいなふるまいをしてたら、そりゃ追い出されてもするわな(完全に想像)、と思ってしまうよ。
「クワイエット・マン」などと歌ってる割には何をするでも俺様中心、騒々しそう。

【開き直る!】
Aubade a Simbad / Jad Wio

次はフランス産、どぎついアングラ感満載のデュオ、Jad Wioだ。
カタカナ表記した日本のサイトがほとんどなく、正式にはよくわからないが、ROCKHURRAHは当時はジャド・ウィオと呼んでいたよ。ジャド・ヴィオとも書かれているな。

その昔、フランスのOrchestre Rougeというバンドに大変のめり込んでいて、それをきっかけにフランス産のネオサイケ、ポジパンなどのダークな音を探してレコード屋巡りをしていた時期があった。
いや、レコード屋巡りはそのフランス産に限らず、パンクの頃もサイコビリーに凝ってた頃も日課のように各地に出没してたよ。
当時、世田谷代田に住んでたが、色んなレコード屋をはしごして必死で目指すレコードを入手していたもんだ。
新宿のヴィニール、渋谷のZESTやCSV、明大前のモダーン・ミュージック、下北沢のエジソン、高田馬場のオパスワンなどなど、足繁く通った店もあれば一回こっきりしか行かなかった店もある。安く掘り出し物を見つけたいからディスク・ユニオンやレコファンなどの中古屋などにも数日周期で通ってたな。

そんな中で知った数多くのバンドもあったけど、L’Invitation Au Suicideというフランスのレーベルが個人的にはお気に入りで、そこのレコードを見つけると優先的に買っていたもんだ。レ・プロヴィソワールやペルソナ・ノン・グラータなど質の高いバンドをリリースしてたからね。
Jad Wioもそこから出していたので知ったバンドだった。
バウハウスのピーター・マーフィーっぽいヴォーカルにダークな音作り、その当時のポジパンやゴシックと呼ばれる音楽の理想形に近かったが、メンバーのヴィジュアルも不明だったし「これ!」という個性、決め手がなかった。
だからその後、熱心に追いかける事もなくROCKHURRAH個人的にもダークの時代が終わりつつあった。

この二人組がレコードを出したのが84年くらいからで、ポジパン時代のピークをやや過ぎてなので日本ではそこまで話題にもならなかったもんね。どこの土地でも入手出来るわけじゃないフランス物だったからなおさらね。
うーん、Jad Wioの思い出ってほどの事もないくせに十数行も書いてしまったな。

そしてずっと後になってYouTubeで偶然に映像を見て仰天したのが上の姿。
こんな二人でやってたのか、まるでコミックバンドじゃん。
全盛期のラッキィ池田を思わせるようなクネクネの動きで、歌い踊る変態ヴォーカリストと楽器担当の自己陶酔感が満載のビデオでヴィジュアルとしてのインパクトは圧倒的。二人とも病気のような細さだね。
ここまでじゃないがROCKHURRAHもレコード屋通いしてた昔はやせ細っていたな。食うものも食わずレコードに費やしてたわけじゃないけど一生太らないと勝手に思ってたもんだ。が、今では・・・。

この二人は変でイビツな自分たちをちゃんと肯定するところから始まって、それでずっとやってきているのが偉いね。
普通だったらこの顔とスタイルに生まれてきて、こんなつながった眉毛描かないよな。

【供える!】
Tapetto Magico / The Wirtschaftswunder 

多くは生まれ育ちの環境によるもので個人の資質(?)や敬虔さとは関係なく、ROCKHURRAHは神仏とは縁のない暮らしをしてきた。父親が死ぬまでは家に仏壇もなかったし、物心ついてからじいちゃん、ばあちゃんと呼べる存在も身近にいなかったし。
だから何かを供えるという行為をした事もないし法事とも無縁の生活をしてたよ。

家が金田一耕助シリーズに出てくるような旧家だった、とか先祖代々住んできた家だったとか、そういう家庭に育った人ならばお供えくらいは日常的にしたことあるだろう。
宗教がもっとぐっと身近にある海外ではそんな罰当たりな子供はいなくて、誰でも先祖や神を敬う機会くらいはあるのだろう。

さて、最後に紹介する情熱パフォーマンスはこれだ。
ドイツ産ニュー・ウェイブであるノイエ・ドイッチェ・ヴェレの中でもパイオニア的存在であるのも関わらず、かなりイビツなバンドゆえに、メインストリームからやや外れてしまった感があるのがこのWirtschaftswunderだ。
読めん!編」 でも書いた通りなかなか読めんバンド名だが、ヴィルツシャフツヴンダーとROCKHURRAHは呼んでいたな。
日本語に訳せば「第二次大戦後の(ドイツの)急速な経済復興の奇跡」という意味らしいが、これがひとつの単語だと言うのが驚くべきドイツ語。

ヴィルツシャフツヴンダーはイタリア人とカナダ人とチェコスロバキア人とドイツ人による国際色豊かな4人組として1980年にデビューした。
ちょうど盛り上がっていたノイエ・ドイッチェ・ヴェレのブームに乗って人気バンドとなった・・・というわけにはいかなくて、大半のノイエ・ドイッチェ・ヴェレのバンドと同様、日本では一部の好事家以外には無視されるようなバンドだった。
ヴォーカルはいかにもイタリー系のマフィア顔だし、他のメンバーも誇れるような容姿をしてないというのに、古臭いポートレート風の顔写真ジャケットで買うのが恥ずかしかったり、1stシングルに至ってはひどいとしか言いようがないジャケットだったり、とにかくヴィジュアル戦略がまるでなってなかったな。

音楽の方はいかにもニュー・ウェイブ初期の実験的なもので、かなり奇抜で妙な躍動感と高揚感に溢れたすんごいもの。
これに比べると奇抜と言われてるらしい最初のスクリーマーズなんてかわいいものよ。
聴く人を選ぶがヘンなのを探していて見つけたならフェイバリットと叫ぶ人もいたはず。ニュー・ウェイブの盛んだった時代に多くの人に知られなかったのが残念なバンドだったよ。

このスタジオ・ライブのような映像もすごい迫力でROCKHURRAHの大好きなもの。
「Tapetto Magico」は1982年の2ndアルバムに収録されていた曲。
PILの「Flowers Of Romance」を思わせる中東風なのかアフリカのどこかの民族調なのかわからないが、とにかく名曲。

ヴォーカルも変だが左側のクラリネット男(キーボードもラッパもこなすマルチ・ミュージシャン)のテンションがすごい。どこかの部族で、獲ってきた獲物を神に捧げるかのような力のこもったアクション。顔もモロに戦士だよね。
目が釘付けになってやみつきになってしまうよ。どのビデオ見てもおっちょこちょいそうな小太りギタリストも本当にいい味出してるよ。素晴らしい。

以上、久しぶりのROCKHURRAHがお送りした80年代満載の記事、相変わらずのワンパターンで飽きられてしまうだろうか。
それではまた、ナ スフレダノウ(チェコ語で「さようなら」)。

対峙する眼/2021年宇宙の旅 鑑賞

20210307 09【岡本太郎記念館の入り口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

3月6日は我らが鳥飼否宇先生のお誕生日!
鳥飼先生、おめでとうございます!
SNAKEPIPEも先日、誕生日を迎えましたよ。(笑)

月に一度は、長年来の友人Mと約束をして、何かしらの展覧会を一緒に回っている。
今回はどこに行こうかと相談したところ、
岡本太郎記念館に行きたい」
という提案があった。
岡本太郎の展覧会といえば、2011年に東京国立近代美術館で開催された「生誕100年 岡本太郎展」で感動したことを思い出す。
今から10年も前のことだったとは、月日が経つのは早いものよ。
青山にある記念館のカフェに行ったことはあるけれど、内部は初体験なんだよね!
せっかくなので、表参道のジャイルギャラリーも観ることにする。

夕方からは雨になるけれど、気温は高いという予報の日、ジャイル前で待ち合わせる。
気温が高いは嘘でしょ、というくらいの寒さ。
友人Mも服装を失敗した、と嘆いている。
建物に入れば寒さがしのげるよ、とジャイルに入ろうとすると
「OPEN 11:00」
の看板が出ていて、ドアが閉ざされている。
10時からのオープンだとばかり思っていたのに、勘違いだったか?
岡本太郎記念館を先に鑑賞することに決め、少し早足で歩いて向かうことに。
こちらは10時開館だったからね!

岡本太郎の伝記ドラマ「TAROの塔」を見ているSNAKEPIPEは、アトリエの様子などをある程度は知っていた。
実際に岡本太郎が活動していた場所に足を踏み入れることができるなんて、嬉しい限り!
ドアを開けるとチケット売り場があり、その後方にはグッズが並んでいる。
靴を脱いでスリッパに履き替え、入館する。
そうだよね、ここは岡本太郎の家なんだもんね。

2階の会場へ階段で上る。
まず目に飛び込んできたのは、「太陽の塔」の縮小版彫刻。
そして少し照明を落とした会場に並んでいたのは、「対峙する眼」という展覧会名通り「眼」をモチーフにした作品群だった。
載せた画像は「顔の花」。
まるでメラメラと燃える炎のように見えるけど、花だったんだね。
どの作品も勢いがあって、一目で「岡本太郎だ」と分かるインパクトの強さだよ。

会場の中央に置かれていた作品「愛」。
とても抽象的だけれど、男性(左)と女性(右)だと分かるね。
岡本太郎の顔がない作品をあまり見たことがないような?
それでも特徴的な曲線で、やっぱり岡本太郎だなと気付く。
エネルギッシュな作品が多い中、この「愛」という作品には穏やかな眼差しを感じたSNAKEPIPE。
静と動でいうと、静なんだよね。
岡本太郎の別の側面を見た気がしたよ。

かわいい立体作品群に目が釘付け!
「ひゃーかわいい!」
友人Mと叫んでしまう。
ユーモラスな表情を見て、思わず笑顔になる。
「午後の日」と題された頬杖をついた右奥の作品は、ミュージアム・ショップでペンダント・ヘッドとして販売されていたんだよね。
本気で購入を考えてしまうほど、気に入ってしまった!
ただしシルバー製なので、お値段約3万円ほど。
もう少しお値打ちだったらなあ!
作品の下に敷かれている布も素敵なんだよね。
スカーフにしたいくらい。

1階に戻り、別の会場に入る。
「ギャッ、びっくりした!」
まさか岡本太郎自身がお出迎えしてくれるとは思っていなかったので、非常に驚いてしまったよ。(笑)
庭に面した明るい部屋には、所狭しと岡本太郎の手によるありとあらゆる物があふれていた。
どれか一つ欲しいと思ってしまうよ。(笑)
こんな部屋で庭を眺めながらお茶を飲んだら、リラックスできるだろうね。

ミュージアム・ショップで散々迷った末、友人Mとお揃いでキー・カバーを購入。
これは「太陽の塔」の顔が裏と表になっているタイプで、とてもかわいい!
玄関の出入りの度にご対面できるのは嬉しいね。(笑)
最後に庭を散策してみる。
大きなバナナの木に負けないくらいの存在感を示す彫刻が、あちらこちらに点在している。
植物の影に隠れているのを見つけるのが楽しい!(笑)
ここにもいるよ、などと声を掛け合いながら作品を鑑賞する。
作品数はそんなに多くなかったけれど、建物内部に入っただけでも貴重な体験だったよ。
今度はまたカフェでお茶も良いな!

ランチ後、再び表参道ジャイルに戻る。
友人Mと約束すると、長い時間歩くことが多いんだよね。
デスクワークのSNAKEPIPEには、良い運動かも。(笑)
今回のジャイルギャラリーは「2021年宇宙の旅 モノリス_ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ」という非常に長いタイトルの展覧会を開催中。
企画はリンチアン(デヴィッド・リンチ愛好家)の飯田高誉さんなので、期待してしまうよ!

タイトルを見て分かる通り、今回の展覧会はキューブリック監督の「2001年宇宙の旅(原題:2001: A Space Odyssey 1968年)」を意識した展覧会なんだよね。
入り口入ってすぐの左手には、ドーンとモノリスが!
もし触ったら、何か変化が起きたのかも?(笑)
展覧会のサイトには、飯田高誉さんが難解な文章で、展覧会の趣旨について説明しているよ。
「人類の膨大な記憶を蓄えた装置」がモノリスだって。
つまりアカシックレコードってことなのかな。

続いてはアニッシュ・カプーア の「Syphone Mirror Kuro」。
このアーティストについては、2008年の「ターナー賞の歩み展」で、感想を書いているSNAKEPIPE。
作品の前に立った時、吸い込まれそうな不思議な感覚になったんだよね!
そして鳥飼否宇先生の「中空」について感想を書いた時、その作品の画像を載せたことがあったっけ。
今回は日本の漆を使った作品だったんだよね。
以前鑑賞した時とは違って、漆の光沢のせいで自分や後方の景色が映ってしまい、幻惑させられることがなかった。
「ターナー賞」の時みたいな感覚に陥らなかったのが、非常に残念だよ!

森万里子の作品「トランスサークル」は、淡い光の色合いがとても美しかった。
時間の経過で色が変化していく。
たまに全く光を発してないこともあるので、写真を撮るタイミングに注意が必要だよ!
縄文と太陽系惑星群の運行や輪廻転生などの説明がされている作品だけれど、そうしたことを理解しなくても、印象に残る作品だね。
森万里子はあの森ビル創設者を祖父に持つ、森一族のお嬢様なので、その出自が羨ましいと友人Mと話す。
お金には全く苦労しないアーティストだろうと想像できるからね!

2019年12月の「未来と芸術展」で印象的だったのは、火星に移住するためのシミュレーション動画だった。
中でも3Dプリンターを使って、住居を組み立てるシーンは、観ているだけでワクワクしてしまったSNAKEPIPE。
3Dプリンターが欲しくなっちゃたもんね。(笑)
ネリ・オックスマンの作品「流離う者たち」も、地球以外の惑星で生活するための人工臓器を3Dプリンターで作成するシミュレーション動画だった。
なんでも作れちゃうんだね!
そしてこのネリ・オックスマンという方の経歴がすごい。
イスラエル出身の女性で、ヘブライ大学医学部、イスラエル工科大学建築学科、英国建築協会付属建築学校、マサチューセッツ工科大学で博士号取得、同大学で准教授として勤務、現在はメディアラボで研究を続けながらアーティスト活動をしているというスーパー・ウーマン!
医学と建築とアートを結びつけることができるんだもんね。
違う作品も観てみたいよ。

プロトエイリアン・プロジェクトの「FORMATA」という作品。
エイリアンを作ってみよう、という企画なんだって。
地球外生命体と聞くと、UFOに乗った宇宙人を作るのかと想像してしまうけれど、それは違うんだよね。(当たり前か)
水や酸素がない実験装置の中で、液状物質の状態変化の観察と考察がテーマらしい。
こうした試みをアートとして発表するのが最近の流行なのかな?
2020年7月に鑑賞した「ヒストポリス」も、飯田高誉さん監修で、似た雰囲気の展覧会だったもんね。
今回もやや観念的な展覧会だったけれど、鑑賞できて良かったと思う。
次はどんな企画なのか、楽しみだよ!

ビザール・チャーチ選手権!44回戦

【教会にちなんでThe Lords of the New ChurchのOpen Your Eyes】

SNAKEPIPE WROTE:

ROCKHURRAH RECORDSでは、毎年初詣に行き、おみくじを引くというのが恒例行事なんだよね。
早起きしてお参りし、おみくじの結果で一喜一憂する新しい年の始まり。
今年は残念ながら、それが叶わず…。 
そんなことを言っている間に、もう2月も終わっちゃうよ。

今回は2019年7月に書いた「ビザール・チャーチ選手権!35回戦」の第2弾を書いてみよう。
チャーチといえばキリスト教徒のための施設なので、冒頭の初詣話は意味なかったか?(笑)

ロシアという国に興味があるSNAKEPIPE。
1920年代のロシア構成主義はもちろんのこと、独自の文化がある国だと思うからね。
世界3大スープであるボルシチも美味しいし!(笑)
そんなロシアにある驚きの教会がこれ。
なんと列車を教会にしちゃってるよ!
19世紀後半には建てられていたというから、歴史があることが分かるよね。
ロシアの地名に詳しくないんだけど、ニジニ・ノヴゴロド州にある列車教会がカラー写真のこれ。
完全に電車と教会が合体してるよね。
ロシア正教会では、実際に動かせる列車教会を説教を行うために使用しているとのこと。
通常の列車に取り付けることで移動が可能だという。
雪深い寒い国だからこそのアイデアなのかな。
中の様子がこちら。
通常の教会と変わらず、鐘や祭壇、イコノスタシス(イコンで覆われた壁)、小さな図書館まで完備しているという。
内部はとても美しく、荘厳な雰囲気が漂っているよね。
列車ということを忘れてしまいそう。

なんとロシアには船の教会もあるんだよね!
1910年、ニコラス・ザ・ワンダーワーカーに敬意を表して最初の蒸気船教会が建設された、と記事にあるんだけど? 
ニコラス・ザ・ワンダーワーカーはロシア正教会で最も敬虔な聖人とされていて、12月19日を聖ニコラスの日としてお祝いするらしい。
サンタ・クロースの起源とも言われている聖人なんだって?
調べていると、いろいろ勉強になるよね。(笑)
内部の様子がこちら。
列車の時と同じように、中は通常の教会と同じようになっているんだね。
布教活動のために造られた蒸気船教会は、現在でも活動中みたい。
移動式図書館とか病院みたいな感じなのかな。
気象条件の厳しさから遠くの教会まで足が運べない人に、教会のほうから近寄ってきてくれるとは!
そして教会が生活と密接だということが分かるよね。

列車、船ときたところで、次は飛行機にしようか。
実はロシアには、本当に飛行機教会もあったんだけど、ロシアばかり紹介するのはいかがなのものかと自主的に執筆を断念したんだよね。(大げさ)
飛行機物としてはアメリカの教会を紹介してみよう。
コロラド州米軍空軍士官学校のカデット・チャペルだよ! 
ミリタリー物が大好物のROCKHURRAH RECORDSにとって、アメリカ空軍といえばフライト・ジャケット!
今も愛用してるからね。
1962年に完成したという教会、今でも非常に斬新!
シカゴを拠点とする建築家、ウォルター・ネッチュによって設計されたという。
今から約60年前には相当物議を醸したらしいけど、今ではモダニズム建築として評価を受けているという。
ステンドグラスから光が差し込む内部の様子も美しいよね。
士官学校の生徒が羨ましいよ!(笑)

近未来的な建築が登場したので、こんな教会も紹介してみよう。
まるで映画のセットみたいじゃない?
アイスランド、ブリョンドゥオース近くにあるBlonduoskirkja -yngri(読めん!)は火山の噴火口をイメージしてマギー・ヨーンソン博士によってデザインされた教会だという。
内部の様子など、もっと詳しく知りたかったけれど、あまり情報がないんだよね。
アイスランドは変わったデザインの教会が他にもたくさんあって、アイスランド特集ができそうなくらい。
今度企画してみるか?(笑)

続いてはドイツのベルリンにある「Kapelle der Versöhnung」(和解の礼拝堂)を紹介しよう。
上のアイスランドもそうだけど、十字架がなかったら、どちらも教会に見えない建築だよね。
「和解の礼拝堂」はベルリンの建築家ルドルフ・ライターマンとピーター・サッセンロスによって設計され、オーストリアの粘土アーティストであるマーティン・ラウフの指導のもと、1999年に建設されたという。
強度を与えるため、壁の構築に粘土を使用したという。
この場所には1894年から教会が建っていたけれど、第二次世界大戦で被害を受けたり、ベルリンの壁建設により教会としての機能がなくなったという。
ついに1985年には破壊されてしまったらしい。
未来を見据えながら過去を記念する目的で、かつてあった場所に建てられたのが「和解礼拝堂」だという。
壁の粘土の中には、前の教会破壊で出た石やガラスも混入されているという。
そんな「せつない」話になるとは!
今ではこんなに美しい教会になっているよ。
木製の柱から差し込む日差しの美しいこと。
今でも世界中のボランティアが教会の仕事を手伝っているという。
「人に歴史あり」ならぬ「教会に歴史あり」だね!

最後はこちら! 
まるで点描画のように見えるけれど、これも本当に教会なの?
ベルギーのリンブルグ州ボルフローンにある「シースルー教会」なんだよね。
どうやら人里離れた果樹園にあるらしい。
これは2011年にオープン・スペース・キャンペーンのアート作品として建築されたものとのこと。
「Reading Between The Lines」という作品なんだって。
Pieterjan GijsとArnout Van Vaerenberghという2人の建築家によって建てられたんだね。
厚さが0.5インチ未満(約1.27cm)の金属板、2000本の柱で構成されているという。
内部の様子を見ると、どんなふうに建築されているのか分かるよね。
実際の建築状況が動画配信されているのでみてみようか。

あらかじめ作っておいたパーツを組み合わせていて、早回しのために簡単に完成しているように見えてしまうよ。
設計をする時間とパーツ作成が大変だったんだろうね。
こんな大掛かりなアート作品、実際に見てみたいよ!

今回のビザールな教会も面白かったね。
まだまだ世界には驚くような教会や寺院があるよ。
次回をお楽しみに!(笑)

SNAKEPIPE MUSEUM #59 Eva Redamonti

20210221 13
【マス目に区切られた美しい色合いの「wander」】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のSNAKEPIPE MUSEUMはEva Redamontiというイラストレーターを紹介しよう。
読み方はエヴァ・レダモンティで良いのかな?
どんな人物なのか、まずは経歴を調べてみよう。 

1995年 コネチカット州生まれ
2015年〜 グループ展に参加
2017年 バークリー音楽大学作曲学士
2021年 ニューヨークのEquity Galleryにて初個展

1995年生まれということは、現在26歳くらいなのか?
バークリー音楽大学は超難関大学らしいので、その大学を卒業したというだけでも輝かしい経歴だよね。
渡辺貞夫やゴタイゴのミッキー吉野も卒業しているみたいだよ。(笑)
エヴァ・レダモンティが作曲の勉強をしていたところに注目してしまう。
絵画は独学なのかもしれないね?
絵画と音楽の二刀流、という器用なアーティスト。
まるで敬愛するデヴィッド・リンチ監督みたいだわ。(笑)
早速作品を紹介していこう。

「Like My Father」は2019年の作品。
「私の父のよう」ってどういうことなんだろうね?
NHKの番組「英雄たちの選択」に出てくる、「心の内に分け入ってみよう」みたいな感じで、脳内の様子が描かれているんだけど。
特に何もないんだよね。(笑)
浮かない表情で、頭の中は空っぽ。
中央辺りに倒れ込むような人物が、助けを求めているように声を上げている様子が描かれている。
色調も控えめなので、精神状態が心配になっちゃうよ。
お父さん共々エヴァも暗かったのかなあ。
インクだけで描かれているモノクロタイプは$1,000、日本円で約105,000円で販売されているけど、この絵をずっと眺めていたら気分が滅入るかも。

上の作品と対になる「Like My Mother」(私の母のよう) も同じく2019年の作品なんだね。
中央にいる人物の目線が上向きなので、こちらの絵には希望の光が感じられるよ。
えっ、単純過ぎ?(笑)
様々な要素が描かれていて、一つ一つに意味が込められているんだろうけど、勝手に想像するしかないんだよね。
この作品は$900、日本円で約95,000円だって。
14 x 11インチということは、横幅約35cmの小さめな作品なんだね。

「If You Don’t See Me Ahead」は直訳にすると「あなたが私を先に見ないのなら」になるのかなあ。
意訳なら「私を一番最初に見つめて」ということになるのか。
骸骨が上から迫ってくる構図といえば歌川国芳の「相馬の古内裏」を思い出すけれど、どことなく雰囲気が似てるよね?
そしてタイトルを作品の中に書いてるところはリンチを思わせる。(笑)
タイトルとモチーフの関連は分からないね。
自分でストーリーを考えるのも面白いかも。
SNAKEPIPEが考えたのは、親子の愛情についてかな。
子供時代に愛情に飢えた経験から、悪夢や幻をみるようになってしまったという物語。
陳腐か?(笑)
この作品も14 x 17インチと小さめ。 
お値段は$450、日本円で約47,000円とはお手頃だよね!

まるでコロナ下の現在を表しているような作品。
タイトルは「Desire」(欲望)とのことだけど、トゲトゲした物体がまるでウイルスのように見えるんだよね。
目から口から鼻から悪い物が入ってくるようで。
どちらにしても「邪悪な存在」として題材にされているんだろうな。
それにしても耳の数、多いよね?(笑)
ここでもまたリンチを思い出すSNAKEPIPE。(笑)
縦が25cmというから、これも小さめの作品だね。
プリントはエヴァのサイトで$40(約4,200円)で入手可能だよ!

縦長の作品は目を引くね。
色合いもキレイだし、エヴァが女性のヌードを描くのも珍しい。
「Hard Pill to Swallow」(飲みにくい薬)も、タイトルとモチーフの関連が不明だね。
女性とか魚が泳いでいる、このカプセル自体がピルなのかも?
一体、誰がこれを飲むんだろうか。
またお話を作ってみようかな。(笑)
エヴァの作品には、ヒモ状のモチーフが描かれることが多いのが気になるんだよね。
へその緒だったり、人との「つながり」や「しがらみ」を表しているのかなと想像する。
SNAKEPIPEの連想なんて、こんな程度さ!

初個展のためにアニメーション作品も制作したようで、YouTubeにアップされている動画を載せてみよう。

アニメーションの音も担当しているようだよ。
「What Happens at Night」(夜に何が起こるの?)というのが個展のタイトルとのこと。
シンプルな線で表現されているせいか、 おどろおどろしい雰囲気ではない。
メッセージ性は感じるけれど、言葉にするのは難しいよ。
これも個人がそれぞれ感じることができれば良いのかな。

平凡で面白みのない田舎町で、一人の時間を過ごすことが多かったというエヴァ。
インタビューによれば、どうやら家庭環境が不健康だったらしく、エヴァ自身も学校ではなく家で勉強していたようで。
その時間が長かったせいで、創造性が身に付いたみたいだよ。
現在はニューヨークのブルックリンに生活と仕事の場を置いているというので、刺激的で面白い光景を毎日楽しんでいるんじゃないかな?
これからの活躍に期待だね!