時に忘れられた人々【27】読めん!編

【世界一可読性の低い、ROCKHURRAH RECORDS幻の2ndシングル。読めん!】

ROCKHURRAH WROTE:

今では廃れてしまった音楽や文化など、ROCKHURRAHがどこかから拾ってきた「昔のこと」を好き勝手に書いてゆくのがこの企画だ。
たまには少年時代に読んでた小説とかの特集も書くけど、大半は自分が最も好きで追いかけてた70年代のパンクや80年代のニュー・ウェイブという音楽ネタばかりで、イマドキの旬な要素は皆無という内容。
まあ、ここまで過去の事しか書かない人間も珍しいのではないかと自分では思うね。

さて、そういう主旨のシリーズ記事なんだが、最近はネタも少なくなってきて結構バカっぽい方向性になってるのが悩みの種。などと言いながらも、またもや頭悪そうなテーマを考えてみた。
題して「読めん」。

ROCKHURRAHは一応、70〜80年代洋楽ニュー・ウェイブ専門のレコード屋の端くれだし、今はネットが普及してるから検索して、そりゃ読めないバンド名も「こう読むんだ」とわかるよ。
でも当時の音楽雑誌でその綴りのまんま書かれていて、読めなかったバンド名はたくさんあったなあ、と回想したわけだ。全てカタカナ表記してくれてるわけじゃなく、記事を書いたライターによってはそのまんま書いてたりするからね。

昔は友達と音楽についてよく語ってたから、ROCKHURRAHがはじめて読めないバンド名を口に出した時は、たぶん口ごもったりしてたんだろうな。
ん?「今でも滑舌悪くて大抵の言葉は口ごもってるよ」という声がどこかから聞こえてきたが空耳だろう。

パンク世代ではおなじみ、誰でも知ってるSiouxsie And The Bansheesのスージーだって、デビュー当時に誰かがカタカナ読みをし始める前は読めない人が多かったんじゃなかろうか?
え?読めた?

全てのバンドが英語なわけじゃないし、辞書にも載ってなくて、誰も口に出さないバンド名はいつまでもよくわからないまんま。
90年代後半になってようやくネット回線が実用レベルになり、ネットで検索が出来た時は便利になったなあと痛感したもんだよ。それまでは過去の音楽雑誌を延々と読み返して調べたりしてたからね。今では考えられないね。

というわけで妙な雑学には詳しいが、学のないROCKHURRAHが読みにくかったバンドを挙げてゆこう。
ちなみに語学に割と通じてるような人にはバカバカしい内容なので、これ以降は読まないで下さい。

フランス語に堪能だったら即座に読めるんだろうが、英語さえも覚束ないROCKHURRAHはゆっくり読んでもたぶん読めなかったに違いない。
Lizzy Mercier Desclouxの1979年作、デビュー・アルバムだ。
当時、音楽雑誌の裏表紙の広告などでこのジャケットは大々的に出てたから、見覚えのある人(今はすでにおっさんおばさんになってるだろうが)も多かろう。
彼女を知ってる人だったら読めて当然だけど、はじめての人、読めたかな?

ニュー・ウェイブ初期の頃、ZEというレーベルがあって、ROCKHURRAHが注目していたスーサイドやリディア・ランチ、そしてジェームス・チャンスのコントーションズなどなど、ニューヨーク・パンクからノー・ウェイブへと続くバンドのレコードをやたらと出していた。
ノー・ウェイブは一般的には「?」だろうけど、不協和音出しまくりの難解&前衛的な音楽の一派たち。この記事で少しだけ書いたね。
まだまだ身上潰すほどレコードを買ってなかった時代だからそこまで買い集めはしなかったが、リジー・メルシエ・デクルーもこのZEレーベルから日本盤が出ていたので「読めん」などという事がなく、最初から名前は認識出来ていた。もし輸入盤でしか知らなかったら「この曲誰?」と聞かれても誤魔化すしかなかっただろうな。

リジー・メルシエ・デクルーはフランスのアーティストだが、いわゆるフレンチ・ポップとかアイドル的な要素はあまりなくて、やはりパンク、ニュー・ウェイブ以降の女流シンガーだと言える。
ZEレーベルは二人の創始者ジルカ&エステバンの頭文字から取ったレーベル名だけど、エステバン(Eの方)の彼女だったように記憶する。
ノー・ウェイブ系の変わったバンドもリリースするようなレーベルにしては(キッド・クレオールとかも出してたが)割と聴きやすく、ジャケットも清々しいショートカットで「ファンになろうかな」と一瞬は思ったROCKHURRAH少年(当時)だった。
しかし同じ頃はニューヨークの太めの裏女王リディア・ランチがアイドルだったので、ファンになることは断念したけど(大げさ)。
2004年に癌で亡くなったが、自由奔放な活動をした素晴らしい歌姫だったという印象を持つ。

上に挙げた曲も、80年代初期のおしゃれでちょっと先鋭的なカフェバーのBGMとかにはなかなか良かったんじゃなかろうか?
しかしレコード出すたび、姿を見るたびになんか全然印象が違ってて、ファンクだったりアフリカだったり、やってる音楽もその時によって違ったりする。まさに女は気まぐれ。
次に見た時にはもう違った顔になってたから、デビュー・アルバムのジャケット写真が写りの良い奇跡の一枚だったことがわかる。
後期の方が好きって人の方が多いかも知れないが、ROCKHURRAHにとってはやっぱりあの当時のニュー・ウェイブ感漂う1stが一番良い。プラスチックスのチカちゃんみたいな歌い方だね。

フランス語つながりでこれも書いてみるか。
たぶん初等フランス語なので読めなかったのはROCKHURRAHくらいのもんだろうが、Deux Fillesという二人組。
さっきのDesclouxもそうだったが最後に発音しない「x」とかつくとROCKHURRAHはもうダメなんだな。 勉強しろよ、と言われればそれまで。
この名前で調べるとやたらケーキ屋が出てきて太ってしまったが、ドゥ・フィーユと読むらしい。二人の女の子という意味らしいね。ふーん、みんな読めるんだ?

さて、ジャケット写真見て違和感ありありだけど、女の子でも何でもなくて、実は女装の男二人組のユニットなんだよね。
やってる変態は後にキング・オブ・ルクセンブルグとして名を馳せるサイモン・フィッシャー・ターナー、初期のザ・ザのメンバーだったコリン・ロイド・タッカーの二人。
架空の女性二人になりすまし、そのプロフィールまでまことしやかに捏造し、ライブまでやってたらしいよ、この変態。これが82年くらいの話。

80年代後半に大手インディーズ・レーベルだったチェリー・レッドから派生したエル・レーベルというのがあったんだが、その中で最も活躍した貴公子がキング・オブ・ルクセンブルグだった。文字通りルクセンブルグの王様がイギリスの音楽界でデビューした、というよくわからん設定の捏造ミュージシャン。
税金対策のためにバンドを始めたんだと。
ルクセンブルクからよくクレーム来なかったな。(昔はルクセンブルグだったのが最近ではルクセンブルクと表記するようになったらしいので、敢えて表記マチマチにしてる)
というようにサイモン・フィッシャー・ターナーは筋金入りのなりすまし男なんだが、音楽的才能は確かでキング・オブ・ルクセンブルグの時は優雅なポップスターだったり、デレク・ジャーマンの映画サントラとかでもおなじみの音響工作人だったり、幅広い魅力を持つ。

このドゥ・フィーユもアンビエント感漂う作品やこの曲みたいなアヴァンギャルドなコラージュっぽい音楽まで、その多彩ぶりが伝わってくるね。
「女の子二人組」らしさはまるでないジャンルで、このジャケットとかで出すんだったら偽造ヴォーカルくらい入れたら?とも思ったけど、そのギャップも狙ってやってるんだろうかね?
アンビエント風の方はヴィニ・ライリーのドゥルッティ・コラムみたいだったが、上の曲などは実験的で結構好み。
ROCKHURRAHも遥か昔、高校生くらいの時にこういう感じのダビング音楽を作ってたよ。
この手の音楽の中では秀逸なセンスだと思う。さすが王様(←すっかりダマサれてる)。

続いてはオーストラリアのパット見はニュー・ロマンティック系バンド、Pseudo Echo。これのどこが「読めん」なの?と大抵の人に言われてしまうが単にPseudoという単語を知らなかっただけ、辞書持ってくるのも忘れたよ。

オーストラリアと言えば80年代初頭にちょっとしたブームになって、メン・アット・ワークとかINXSとか大人気だったな。
ROCKHURRAH的に言えばもっとアングラなバースデイ・パーティとかサイエンティスツとかSPKとかが即座に出て来るが、どれもコアラやカンガルーが似合わないなあ。
さて、直訳すれば「まがい物の反響(?)」というスード・エコーだが、バンド名の由来は知らない。中古盤屋でよくジャケットは見かけていたけど、注目したこともなかったしね。だがしかしこの曲は知ってる・・・。

この異常なまでにノリノリの「ファンキータウン(リップス・インクのカヴァー)」が有名だとのことだが、いかにもまさしく80年代だねえ。どうやら腕に覚えがあるらしく、ギター・ソロもメチャメチャ楽しげ。この曲を愛してやまないんだろうなあ。
ポップ・ウィル・イート・イットセルフもこのフレーズ使ってたけど、スード・エコー版の方が直球バカっぽくて潔い。

ちなみにROCKHURRAHだけが読めなかったこのPseudo、他にもPseudo Code(疑似コード)というベルギーのバンドがいたな。
確かレコードじゃなくてカセットで持ってたような気がする。
こちらはエレクトロニクスを駆使した実験的なよくあるインダストリアル・ノイズ系。実験的なくせによくあるとはこれいかに?
この手の似たような音楽がたくさん存在してるからあまり目立たないけど、70年代からやってるから割と先駆者なのは確か。

さて、フランス語までは軽く読めてもこれはそうそう読めないと思える。
Wirtschaftswunderというドイツのバンドなんだけど、どう?読めた?
元の意味は「第二次大戦後の(ドイツの)急速な経済復興の奇跡」というような言葉(勝手に意訳)だから、ドイツ史や経済を専攻した人ならば即座にわかる言葉なんだろうけど、そんなことを知る由もなかったROCKHURRAHは何てバンド名かわからずに苦労したよ。

ノイエ・ドイッチェ・ヴェレというドイツ産ニュー・ウェイブの中でも、日本ではあまり知られてない部類のバンドだったのがこのヴィルツシャフツヴンダーだろうか。このバンドをカタカナ読みで書いた雑誌があったのかどうかは覚えてないが、いつの間にかそう呼んでたから、どこかで知ったんだろうね。情報を得たとしたらやっぱりロックマガジンかな?
初期はかなり変わったテイストのバンドで何枚か持ってたシングルのジャケットも不気味、音楽も奇抜なものだった。後年、なぜかメジャー志向になったと思われるアルバムを手に入れたが、変なバンドという先入観が強かったのであまり印象に残ってないよ。やっぱり初期のC級なチープ感が良かったな。

これがその不気味な1stシングルの裏ジャケット。表もほとんど変わらないからひどいとしか言いようがないね。ROCKHURRAHが大昔に書いた「売る気があるのかどうか」で書けばよかったくらい。
このバンドはノイエ・ドイッチェ・ヴェレの高名なインディーズ・レーベル、アタタックとチックツァックという二大レーベルにまたがって活躍したが、これはその伝説的1stシングル。がしかし、ジャケットがトホホだったため、中古盤屋で50円で買った思い出の一枚だ。
掘り出し物がたくさんあったあの時代、良かったなあ。
曲は聴いてわかる通りグニャグニャの不条理系。クラウス・ノミが初期DEVOの演奏で歌ったみたいな感じと言えばわかりやすいか?

結構長く書いてしまったから今回はこの辺で終わりにするが、ROCKHURRAHの「読めん遍歴」はこんなもんじゃない。恥の上塗りとも思えるがまた後日、この続きを書いてやろう。

それではまた、Auf Wiedersehen(ドイツ語でさようなら。読めん・・・)。

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