好き好きアーツ!#55 鳥飼否宇 part22−官能的-

【増田米尊の視線はこんな感じ?Tバックはダメだったね!(笑)】

SNAKEPIPE WROTE:

ROCKHURRAH RECORDSに衝撃が走ったのは、先月のことだ。
大ファンの作家、鳥飼否宇先生の新作が発売されるニュースを知ったからである!
タイトルは「パンダ探偵」、発売予定日は5月22日だという。
狂喜乱舞しながらも、すぐにネット予約をするSNAKEPIPE。
これで発売と同時に発送、もしくは発売日の前日には手元に到着するかも、などとほくそ笑む。
ひとまずは安心、安心!(笑)
 
予約完了で胸は撫で下ろしたけれど、5月22日発売予定だからね。
もう少しの辛抱と分かっていても、待ちきれない!
そこで今週は鳥飼先生の著作を振り返る企画「トリカイズム宣言」を書いてみよう。

2016年11月「逆説的」について感想をまとめた時、

「綾鹿市シリーズ」で、まだまとめていないのは「本格的」と「官能的」だね。
また再読してみよう!

と書いているSNAKEPIPE。
そうなのよ、感想を書いていない過去の鳥飼先生の著作は残り2冊だけなんだよね。
発表された順番とは逆になってしまうけれど、 今回は「官能的」について書いていこうかな!

「官能的」は、「綾鹿市」という架空の場所が舞台になっている4つの連作短編集なんだよね。
主人公は増田米尊(ますだよねたか)。
名を訓読みではなく音読みにすると、本質がはっきりする「名は体を表す」抜群の命名法!
ちょっと「なまるように」発音すると、あーら不思議。
意味のある言葉に聞こえてくるじゃない?(笑)
増田米尊については、「絶望的」をまとめた際、詳しく説明をしたSNAKEPIPEだけれど、今一度紹介しておこう。

綾鹿科学大学大学院数理学研究科(長い!)の助教授(現在は准教授?)という肩書を持つ増田米尊だけれど、研究内容に難がある。
「月経周期が性的欲求に及ぼす影響のフーリエ解析によるアプローチ」のような、増田米尊が個人的に興味を持つ題材について論文を発表しているんだよね。 
フィールドワークと称して、論文を書くための証拠固めをする。
つまり「覗き」や「女性宅のゴミを漁ったりする」ような犯罪者スレスレ(犯罪確定?) の行動を取るのである。
増田米尊の特徴はそれだけではない。
性的に興奮するとアドレナリンが脳内をかけめぐり、天才的頭脳の持ち主に(生物学的)変態するんだよね!
その変態(メタモルフォーゼ)のおかげで、 綾鹿市で起きた事件を解決へと導くのである。
(性的)変態が(生物学的)変態をするのが増田米尊、ということになるね。(笑)
では「官能的」の章ごとに感想を書いてみよう。
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未読の方はご注意ください!

夜歩くと……漸変態に関する考察

フィールドワークに関しても少し語られただけなので、「これぞ増田米尊!」という変態行為が少なかったのもファンとしてはちょっと物足りない。

前述した「絶望的」の感想の中でこのような発言をしているSNAKEPIPE。
増田米尊は変態だ、という公式ができあがっているからね。
「官能的」は1ページ目の1行目から、変態性が露出している。
そうよ、これ、これ!(笑)
増田米尊は研究対象として女性のあとをつけまわす、いわゆるストーカー行為に及んでいるのである。
ターゲットにした理由は、女性のヒップが好みだったから!(笑)

増田米尊には好みに関する明確な基準があるようで、女性の下着はシンプルで色は白が望ましいとのこと。
そして下着で最も重要なのはクロッチで、その線(縫い目?)を偏愛していると聞くと、本物だわ!と感心してしまうSNAKEPIPE。
ここまで「こだわり」を持っている人こそ、変態と呼ぶにふさわしい!(笑)
増田米尊が夜な夜な、本当の意味での尻を3日もかけて追いかけた後、殺人事件が起こってしまう。
なんとターゲットにしていた女性が殺されてしまうのだ!

「綾鹿市シリーズ」ではお馴染みの谷村警部補と南巡査部長が登場する。
「逆説的」で語り部だった五龍神田巡査部長もいるね。
見覚え(聞き覚え)のある名前を発見すると、昔からの知り合いって気分になるのが不思議だよ。
そして容疑者となってしまった増田米尊、綾鹿署で取り調べを受けてしまう。
谷村警部補と増田米尊って同類だったっけ?(笑)

「官能的」の登場人物は他に、千田まり(血溜まり?)という、増田助教授の応用数理学を選択している学生がいる。
千田は「増田米尊の変態様式論」を書き上げるため、増田米尊の取材を続けているという変わり者なんだよね。
増田米尊を知り尽くしている女学生がいるとは!
そして千田といつも行動を共にしているのが、マクロリンコスという日本人ではない研究生待遇、通称クロちゃんである。 
増田米尊の変態による謎解きに加え、千田とクロちゃんの手助けにより事件は解決するのである。

孔雀の羽に……過変態に関する研究

増田米尊が双眼鏡を覗いている。
もちろん言葉通り「覗き」のためである。
「知り合いのバードウォッチャー」から勧められたスワロフスキー社製の双眼鏡だって?
その記述から思い当たる人物は「観察者シリーズ」の鳶さんしかいないよね。(笑)
ちなみにEL42 SWAROVISION WB(8.5×42)の定価325,000円(税別)ね。
かつて写真撮影が趣味だったSNAKEPIPEなので、カメラにもピンきりの値段があることは重々承知している。
双眼鏡も同様なんだろうね。
やっぱり高いのには理由があるったい。(笑)
調べてみるとスワロフスキーの双眼鏡、動画があったので載せておこうね。 

こんなに素晴らしい双眼鏡を研究費で購入できるとは、大学教授(もしくは助教授)って、良い身分だよね。
本来の目的とは別の増田米尊の趣味のためなのにね。
一文に何度も「の」 を書いてしまったよ。(笑)
筒井康隆の小説「大いなる助走」に登場する山中道子みたいだね。

そして増田米尊は偶然、向かいのビルにいる初恋の相手を発見してしまうのである。
高校の同級だった都美也子(段田男、みたいな命名法?)を執拗に追いかけ、「ミヤコちゃんに関する調査と研究」と題した「ミヤコちゃんレポート」を作成していたという。
その傾向は助教授になった今と同じだよね。(笑)
増田米尊は50代の設定なので、およそ30年以上前に想いを寄せた女性との再会は、胸ときめくものだったはず。
それにしても…。
30年以上前の同級生に会って、分かるかな?
見目姿がすっかり変わってしまうのではなかろうか。
増田米尊は特殊な嗅覚を持っていそうなので、ミヤコを見間違うことはなかったんだね!

そしてまたミヤコを追いかける行動に出た増田米尊は、殺人事件に巻き込まれてしまうのである。
谷村、南の警察関係者が登場、千田とクロちゃんのヘルプにより増田米尊が変態後、事件の鍵を発見するという構図は同じで、事件は無事解決。
あんなにご執心だったミヤコを失ったのに、増田米尊がさほど悲しんでいないことに違和感があったかな。
最後のセリフは「いかにも増田米尊!」だから、これで良いんだろうね。(笑)

この章の中で印象的だったのは「インスペクション・パラドックス」と、「6人の人間を介すると世界中の人につながる」という「六次の隔たり」について言及しているところ。
まるで松井冬子の代表作「世界中の子と友達になれる」みたいだけど、SNSはこの理論をもとにしているんだって?
Facebookで実際に検証が行ったところ、4.74人で世界中の人とつながることが判明したとか。
こういう学問、非常に興味深いよ!

囁く影が……完全変態に関する洞察

増田米尊のパソコンに添付ファイル付のメールが送られてくる。
添付されていたのは増田米尊の同僚(というのか)で、同じ大学に助教授として勤務している島谷香織の性交中画像だったのである!
ここで増田米尊が、相手の男が写っている画像には見向きもせず、自らの妄想を発展させることができる画像のみに集中しているところに「増田米尊らしさ」を感じるね。(笑)

添付ファイルで痴態を晒された島谷香織が、自殺を図ろうと高所に上る。
それを下から見上げていた増田米尊、下着の色について説教を始めるのである。
ブラック・ユーモアというのか、このシーンは秀逸だよね!
的外れに聞こえるけれど、気をそらすには「もってこい」の話題だったはず。
ところが島谷香織は身を投げてしまうのだ。
果たして本当に自殺だったのだろうか?

この章で注目したいのは「ハイパーソニック・サウンド」について説明されているところ。
環境省のページによると、人間の耳では聴き取れない超高周波を体感することにより、リラックス効果を得ることができるという。
楽器ではガムランや尺八、場所では熱帯雨林に超高周波成分が含まれているんだって。 
ジャワ島のジャングルに行ったことはあるけれど、リラックス効果を得た覚えはないな。(笑) 
昨年ROCKHURRAHと一緒に西東京方面に出かけて、アウトドアの真似事(?)を経験した時には開放的な気分になり、心身ともにリフレッシュできたっけ。
あれが「ハイパーソニック・エフェクト」なのかもしれないね?
1 / fゆらぎ、また体験したいなあ!(笑) 

この章で衝撃的だったのは、増田米尊を興奮状態にさせるために、千田自らスカートをたくし上げ、下着とヒップを見せつけるところ!
さすがに増田米尊を研究しているだけあって、ツボを心得てるよね。(笑)
千田の作戦は見事に成功し、 増田米尊は「変態ちゃん」と呼ばれながら天才科学者に完全変態する。
そしてまた事件の謎を解き明かすのである。
完全変態した増田米尊が、同類と思しき谷村刑事を「たわけ!」呼ばわりし、変態レベルに差があることを叱責するシーンが印象的だね。
なんだかこれってジョン・ウォーターズ監督の映画「ピンク・フラミンゴ(原題:Pink Flamingos 1972年)」で、「お下劣世界一」を競い合っている感覚に近いような?(笑)

四つの狂気 無変態に関する補足

最終章で、突然探偵である星野万太郎が登場する。
星野万太郎は「爆発的」や「逆説的」でお馴染みのキャラクターなんだよね。
このチャプターで大団円、一件落着なのでキモには触れないことにしよう。
SNAKEPIPEもクロちゃんと友達になりたいな、と思ったことだけ書いておこうかな。(笑) 

「官能的」は、 増田米尊が天才科学者へ変態することにより、謎解きする趣向なんだけど、その解き方がなんとも奇天烈なんだよね。
数学的な理論に加えダジャレや「こじつけ」から解答を得る、前代未聞の方法が素晴らしい!
そして今中、三沢、牛島、都、小松、李、藤波、正岡、木俣という登場人物の名前が、全て中日ドラゴンズに関係した名前のようなんだけど、違うかな?

久しぶりに「官能的」を読み返し、 改めて増田米尊という濃いキャラクターに魅力を感じたよ。
ということはやっぱりSNAKEPIPEも「変態」の仲間なのかもしれないね。(笑)

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