MONDO 映画ポスターアートの最前線 鑑賞

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【国立映画アーカイブの入り口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

ROCKHURRAHから誘われたのは、国立映画アーカイブで開催されている「MONDO 映画ポスターアートの最前線」という企画展の鑑賞だった。
国立で映画を扱っている施設といえば「国立フィルムセンター」があったはずだけど?
調べてみると2018年に東京国立近代美術館より独立し、新しい組織「国立映画アーカイブ」になったそうで。 
ニューヨークのMOMAで、例えばカルト映画「ピンク・フラミンゴ」が永久保存されたことが話題になったりするように、日本にも邦画を保存する国立の組織があるってことなんだね。
検索してみると「薔薇の葬列(松本俊夫監督 1969年)」も所蔵されていたよ!(笑)
あまり行った記憶がない国立フィルムセンター、じゃなかった国立映画アーカイブは、チケット予約の必要もないそうなので、天気の良い日に出かけることにしたのである。

銀座線の京橋駅より徒歩1分という、方向音痴にも優しい立地にある国立映画アーカイブ。
ほとんどのお客さんの目当ては映画の鑑賞だろうね。
今回は香港映画を上映していて、チケットは予約が必要だったみたい。
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEの目当ては企画展の「MONDO 映画ポスターアートの最前線」で、常設展「日本映画の歴史」も鑑賞できるという。
他のお客さんはほんの数名だったので、ゆっくり鑑賞できそう!(笑)
写真撮影もオッケーだったので、たくさん撮ってきたよ。
感想をまとめていこうか。

まずは「日本映画の歴史」から観ていこう。 
1919年の映画「カチューシャ」のポスターや当時活躍していた役者のスナップ写真などが展示されている。
中でも目を引いたのは「丹下左膳」のポスターだよ。
主演の大河内傳次郎の顔をアップで描く手法は、いわゆる浮世絵の大首絵と同じだよね。
「ウエスタン式時代劇」というコピーも気になるし。(笑)
そして驚くのは、フォントの素晴らしさ!
1933年の映画とのことなので、時代はアール・デコ後半といったところか。
浮世絵とアール・デコのミクスチャーと言っても過言ではないかも。
このポスター制作したのは、一体誰なんだろうね。

1953年に初号機が完成した、コニカラー・システムというコニカミノルタ製の撮影機材がこれ。
なんともレトロな佇まい、手書きのように見える商品名が良い味出してるよね!
ほんの5、6年ほどしか出回らなかったらしいけど、オブジェとしても良い感じ。
映写機などの展示もあって、映画の人気が高まっていたことがわかるよね!
他に注目したのが荻野茂二監督が手がけた実験映像「AN EXPRESSION(表現)」や「色彩漫画の出来る迄」で、思わず見入ってしまった。
映像が載せられないのが残念だよ!

順路に従って歩いていくと、「MONDO 映画ポスターアートの最前線」に続いていた。
71点ものポスターが所狭しと展示されている。
これは米国テキサス州オースティンを本拠地として活動している「MONDO」による作品群とのこと。
「MONDO」はデザイナーやイラストレーターに映画ポスターを描いてもらい、オースティンにあるギャラリーで展示を行っているという。
ポスターはオンライン・ショップで購入できて、$50から$55、5,700円から6,300円くらいなので、手が出せない金額ではないよ。
ポスターは全てシルクスクリーン印刷のため数量限定だというから、余計にマニアにはたまらないかもね?
それでは気になった作品を紹介していこう!

悪魔のいけにえ(原題:The Texas Chain Saw Massacre 1974年)」はトビー・フーパー監督作品で、ホラー映画好きのROCKHURRAH推奨の一本だよ。
 ほとんどホラー映画を観たことがなかったSNAKEPIPEもお勧めされて一緒に鑑賞したっけ。
怪奇現象や霊が出てくるようなホラー映画とは違い、リアリティのある恐ろしさ!
ポスターは、そんな人間の怖さを表しているよね。 
ポスターを描いたのはジェフ・プロクターだって。
このTシャツあったら、きっとROCKHURRAHは購入したに違いないよ。(笑)

ジョン・カーペンター監督の「遊星からの物体X(原題:The Thing 1982年)」を描いたポスター。
この映画もROCKHURRAHにお勧めされて鑑賞したSNAKEPIPE。
とても怖かったよ!
2011年に公開された「ファーストコンタクト」も観たはずだけど、 あまり記憶にない。(笑)
とてもホラー映画のポスターには見えない南極観測所の静寂を描いたのは、ジェイソン・エドミストン。
カナダ在住のアーティストだって。 

2011年8月に書いた「SNAKEPIPE MUSEUM #11 Tomer Hanuka」で取り上げたトマー・ハヌカの名前を目にして嬉しかった。
美しい色彩と構図に魅了され、10年以上前からファンになったアーティストだからね!
アニメ映画「戦場でワルツを(原題:Waltz with Bashir 2008年)」の映像美も印象に残っているよ。
今回の展覧会では、トマー・ハヌカの作品2点を鑑賞することができた。
1つはヒッチコック監督の「サイコ(原題:Psycho 1960年)」。
ヒロインの、あの有名なシャワー・シーン後を描いていてナイスだよ!

もう1点はニコラス・ローグ監督の「地球に落ちてきた男(原題:The Man Who Fell to Earth 1976年)」。
デヴィッド・ボウイ主演の映画だということは知っているけれど、なんと未鑑賞!
そのためポスターの意味が分からなくてごめんなさい。(笑)
ROCKHURRAHは観たことがあるらしいけれど、昔のことなので内容を忘れてしまったとか。
トマー・ハヌカらしい中間色を使用していて、美しいポスターだよね!

レポマン(原題:Repo Man 1984年)」はアレックス・コックスのデビュー作だったね。
主演だったエミリオ・エステベスの名前も懐かしいけれど、最も強く記憶に残っているのはオープニング・シーン。
この場面をパクっていたのが、大昔放映されていた深夜番組「FM-TV」だったことを思い出す。
あの番組大好きだったんだよね。(笑)
「レポマン」のオープニングを使用してモヒカンにしちゃったポスター、秀逸だよ!
描いたのはジェイ・ショーという「MONDO」の初期から携わっているアーティストだって。

カリガリ博士(原題:Das Cabinet des Doktor Caligari 1920年)」を観たのは大昔のことなので、あまりよく覚えていないよ。
丸尾末広がカリガリ博士を題材にしていたのを観たことがあるけれど、ベッキー・クルーナン版のポスターも素晴らしい!
黒い線が特徴的で、構図の大胆さや色味の少なさが効果的なんだよね。
遠目からでも注目されるポスターだと思うよ。

最後に紹介するのはキューブリック監督の「時計じかけのオレンジ(原題:A Clockwork Orange 1971年)」だよ!
SNAKEPIPEだったら、好きな映画ベスト10にこの映画をチョイスするかも。
この映画のポスターだったら、主人公のアレックスを描く場合が多いんじゃないかな。
ロリー・カーツは「コロヴァ・ミルク・バー」のオブジェをアップで描いているよ。
2008年8月の「好き好きアーツ!#04 スタンリー・キューブリック」で、「あのマネキン人形も一体欲しい」と書いているSNAKEPIPE。(笑)
また「時計じかけのオレンジ」が観たくなったよ!
 
公開当時に発表されたポスターも面白いけれど、現役で活躍しているアーティストによるオマージュとしてのポスターも見事だったね。
自分が好きな映画が、違う視点からポスターになっているのは刺激的!
敬愛するデヴィッド・リンチのポスターが展示されていなかったのが少し残念だったかな。(笑) 
鑑賞できて良かった展覧会だったよ! 

ビザール・スポーツ・ウェア選手権!47回戦

【フィットネスといえばオリビア・ニュートンジョンだよね!】

SNAKEPIPE WROTE:

運動不足を実感し、筋力アップとボディラインの引き締め(笑)を目指し、昨年12月から新たに始めたのが、マシン・ピラティス!
ピラティスとは第一次世界大戦中の1920年代にドイツのジョセフ・H・ピラティスが考案したリハビリを行うために開発されたエクササイズだという。
身体の歪みを矯正し、インナーマッスルを鍛えることでダイエット効果も期待できるんだって。
マットを使うレッスンよりもマシンでピラティスを行うほうが効率が良いらしい。
マシン完備のスタジオを探し、長年来の友人Mと一緒にレッスンを始めたのである。 

今の段階でレッスンを7回ほど体験しているSNAKEPIPE。
インストラクターの先生によって鍛える部分が違うため、翌日の筋肉痛を感じる箇所が違っている。
体のどこかに痛みがあると、効果があるように期待してしまうね。(笑)
インストラクターの先生達は皆、ボディラインを強調するようなウェアを着ていて、女性専用のスタジオじゃなかったら大変なことになってしまいそう。
男性の目が釘付けになってレッスンどころじゃないかもしれないからね!

インストラクターの先生達は、一体どこでウェアを購入してるんだろう。
SNAKEPIPEも負けないような逸品を探してみたいよ。 
動きやすい服装という指示があるだけなので、何を着用していても問題ないからね。
見つけたのは、パンダ柄のヨガ用レギンス。
いつの間にスパッツって言わなくなったんだろうね?(笑)
米国Amazonで販売中の商品なんだけど、淡い色合いは膨張して見えるだろうな。
パンダの顔がいびつに見えてしまう可能性もあるし。
ちなみにお値段は$24.96、日本円で約2,800円だって。
パンダ好きの友人Mに勧めてみようかな!

ピラティスのレッスンは、まだ初級クラスを受けているSNAKEPIPE。
もう少し上達したら、上級者に見えるウェアを揃えてみたいよ!
そこで見つけたのがこれ。
ドクロから何か出てますがな!(笑)
ここまでド派手にする必要はないんだけど、とても気に入ったよ。
どこで購入できるのかは不明なのが残念。
こんなパンツ穿いてレッスンを受けてみたいものよ。

面白いウェアはないかなと探していたら、ビザールなユニフォームを発見してしまった。
画像検索してると、どうしてもビザールに目が行ってしまうのはSNAKEPIPEの性なのね。(笑)
トップバッターで登場したのは、2014年のソチ・オリンピックに出場したメキシコのスキーヤー。
なんとマリアッチの衣装がプリントされたウェアなんだよね!
メキシコらしさは良く表現されているけど、その服装だったらソンブレロ型のヘルメットのほうが良いかも?(笑)

コロラド・ラピッズは米国コロラド州デンバーをホーム・グラウンドにしているサッカー・チームとのこと。
デンバーというのが、どういう土地柄なのかよく分からないSNAKEPIPEだけれど、胸にフリンジが施されたユニフォームはあまり見かけないよね。
更にパンツが日本風に言うとジョギング・パンツ、いわゆるジョグパンというのもビザール要素にプラスされちゃうよ。(笑)

コロンビアのサイクリング・チームのユニフォームは、遠目でみると部分的に裸に見えちゃうよね。
色はゴールドらしいんだけど、股間の影も怪しげ。(笑)
デザインする人は色彩にも気をつけないとね!

一方コロンビアの男性チームはどうかというと、これがまた!
肌色に近いベージュを使用しているから、困っちゃうよね。(笑)
「もっこり」部分も強調されているようだし、一体どんな基準で採用しているんだか。
着用している選手達も迷惑だっただろうなあ。
ユニフォームの色だけ変更すれば、全く問題がなかったはずなのにね?

最後はこちら!
2012年のオリンピックで銀メダルを獲得したアメリカのトラックレース・チーム。
メダル獲得よりも別の意味で有名になってしまったみたいね。
どうして「あの場所」だけ色を変えてしまったのか、、、。
嬉し泣きしている画像のはずだけど、こんなユニフォームを着なくてはいけなかったことに涙しているように見えてしまうのはSNAKEPIPEだけ?(笑)

今回はビザールなユニフォームについて書いてみたよ!
アスリート達は真剣なのに、観客は思わず笑ってしまったかもしれないよね?(笑)

SNAKEPIPEは明日もレッスンなので、頑張って鍛えてくる予定だよ!
やる気が出る楽しいウェアも探さないとね。(笑)

80年代世界一周 羅甸亞米利加編

【羅甸亞米利加もいよいよ大詰め。今回はその他の地域に焦点を当ててみたよ】

ROCKHURRAH WROTE:

ROCKHURRAHが書く2022年最初のブログ記事・・・などという書き出しで始めようと思ってたが、何と去年はわずか3回しかブログを書いてなかった事に気づいた。

他の事をやっててものすごく多忙だったというわけでもなくて、こりゃサボりすぎだよ、と反省。
今年はもう少し書けるように頑張らないとね。

ROCKHURRAHが企画したシリーズ記事は、どれもこれも忘れ去られたのばかりなんだけど、久々に書こうと選んだのが「80年代世界一周」というタイトルで書いていたもの。
久々だからまたしつこく説明するならば、パンクやニュー・ウェイブが盛んだったイギリスやアメリカなどのロック主要国以外の80年代バンドはどういう状況だったのか、個人的な好き嫌いのみで書いてみようという企画だった。

最後に書いたのが2020年の11月だから、1年以上も続きを書いてなかった事になるよ。

で、最後の方で書いてたのがブラジルとアルゼンチン。
南米だけで大まかに1回で書こうと思ってたのに、意外とバンドの層が厚くて個別の記事としたんだったな。

今回はその続きという事でその他の南米各国の80年代ニュー・ウェイブについて考察してみよう。
タイトルに書いた羅甸亞米利加というのはラテン・アメリカの事で、スペイン語やポルトガル語を主に公用語とする(要するにその辺が植民地としてた)南米あたりの国というわけ。
ラテンもアメリカももっとわかりやすい当て字があったはずだけど、どうしても一般的に普及してなさそうなのを選んでしまうのがROCKHURRAHの性(さが)なんだな。

南米編も3回目、ブラジルとアルゼンチンという大国をすでに書いてるが、その次に挙げるべきメジャーな国と言えばどこかな?
と考えた結果、次はどう考えても不便そうな縦長すぎる大国、チリにしてみよう。
漢字で書くと割と普通な智利という当て字だそうだが、人名でもありそう。

遠く離れた日本では「南米と言えばどこの国?」と聞かれてもパッと国名が思いつかない人もいるだろうし、ROCKHURRAHもこの国の事をロクに知りもしない。
SNAKEPIPEが大好きな映画監督のアレハンドロ・ホドロフスキーの出身地だとか、好きな人も多いチリ・ワインとか、有名アウトドア・メーカー名にも使われたパタゴニアが南の方にあるとか、書いてて情けなくなるほどの貧困なイメージしかないよ。
異常なまでに縦長の領土を地図上で見ると、この国を旅するのは暑かったり寒かったり砂漠だったり大変な思いをしそうだな、と想像するよ。日本も十分に縦長だとは思うが。

大変遅ればせながら、だけど・・・いつの間にかようやく品薄状態じゃなくなったので、前々から欲しかった任天堂Switchを購入した。買うチャンスはあったんだろうが、手に入らない時に高い値段で買うのもなあ、という庶民的な理由で旬の時期は断念していたのだ。
早速遊んでいるのが「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」なんだが、行こうと思ってる場所の気候に合わせて毎回装備チェンジしないといけない。
前は草切ってたら貯まってたお金もシビアになったし、朝昼夜に加えて雨の日、雷雨の日などという細かいところが変にリアルになったので、ウチでは賛否両論になりながらも夢中で各地を駆け回ってる日々だよ。
上に書いた「暑かったり寒かったり砂漠だったり大変な思いをしそうだな」という一文の間に「耐暑効果のある服はゲルドのこれで防寒の時はリト族のこっち」などとゼルダ関連の情報が頭をよぎった、というだけの話なんだけどね。

そんなチリを逞しく生きた80年代バンドがこれ、Los Prisionerosだ。
英語で言えばPrisoners、囚人という意味だと思うけど、スペイン語ではプリシオネイロとなるのか。やっぱり語感がいいねスペイン語、喋れはしないが大好きな言語だよ。
大都市サンティアゴ出身の彼らは1979年結成で84年くらいにレコード・デビューしたというから、チリでちゃんと英米のパンクやニュー・ウェイブに比べて「そこまで遅れてない」と感じさせる数少ないバンドのひとつだろう。
南米のバンドはパンクとか言ってても70〜80年代のリアルタイムでは自由な音楽活動すら出来ないような情勢の国(クーデター多発地域という印象がある)もあったろうからね。
チリもご多分に漏れず70年代に軍事クーデターがあって、その後の人々の暮らしがどうだったかROCKHURRAHは知らないが、Los Prisionerosの音楽はそういう暗い時代背景を笑い飛ばしてしまうような一見陽気なラテン・ミクスチャーな音楽をやっていて、したたかな生命力を感じるよ。

「Maldito Sudaca」は1987年に出たシングル曲でアルバム「 La Cultura De La Basura(ゴミの文化的利用法)」にも収録されている勢いのある曲。
スダカというのは支配層のスペインが南米人のことを侮蔑した言い方で呼ぶような言い回しで、Maldito Sudacaとなるとここでは書かないが大変バカにしたような汚い言い方になると思うよ。
まあどこの国にもよその民族をバカにしたり自虐的だったり、そういう言葉はあるけどね。
ちなみにこれ以降も勝手に日本語訳した邦題やバンド名を書いてゆくが、全て公式ではないんで誰も参考にしないように。

ビートルズを足蹴にする挑戦的なビデオも、いかにも南米的なチンピラの役どころにピッタリな三人組の表情がいいね。
金を貸したら絶対に返ってきそうにない面構えだな。
曲は同時期かちょっと後くらいに大人気だったフランスの多国籍バンド、マノ・ネグラや亜爾然丁編でも書いたソダ・ステレオのような雰囲気のエネルギッシュなパンク+ラテン・ミックスなもの。この国で人気だったのもよくわかるよ。

チリと言えばこれも名前の出てくるバンド、Emociones Clandestinas。
日本語に訳すと「秘密の感情」だそうで、変な邦題がついた大ヒット海外ドラマとかでありそうだね。
チリの中央、ビオビオ州出身のこのバンドは1987年に1枚アルバムを出しただけのようだが、チリのパンク・バンドとしてはパイオニア的存在らしい。

87年と言えばイギリスではニュー・ウェイブのようなロック的なものがネタ切れで沈静化、簡単に言えば下火になってきた時代で、マンチェスターあたりではロック的ドラムではなくダンスっぽいビートと融合したスタイルがブームになった頃かな。
後の時代のバンドはしばらくこういう路線が主流となって現在のロックにも受け継がれてる、そういう境目の音楽が登場し始めたのがこの時代だと言える。
ジョイ・ディヴィジョンあたりは79年当時にそういうリズムでやってたような気がするから、87年元祖説はイマイチ信憑性がないけどな。
アメリカではこの頃はカレッジ・チャートの「頭でっかち、聴けば普通」という音楽も相変わらず量産されてたけど、グランジやオルタナ系などと呼ばれるバンド達が来たるべき90年代に流行る、その夜明け前といった感じ。
ROCKHURRAHの個人的な感覚で言えば、80年代最初の頃の次はどんな新しい音楽が来るか?といった期待感が完全に薄れてきたような時代だったよ。

そういう世界的な音楽情勢を踏まえてこのEmociones Clandestinasを聴くと、1987年に女絶叫ヴォーカルのシンプルな曲をやってる古臭さは否めないね。
スペインのAlaska Y Los Pegamoidesあたりの雰囲気はあるものの、向こうの方がずっとヴィジュアルもキャラクターも際立ってたから小粒にもほどがあるよ。
Carmen Gloria Narváezという女性ヴォーカルのようだが、たぶんこのバンドのメイン・ヴォーカルではなく、彼女のいない男4人組の方がむしろ知られてるようだ。
いきなり主演女優がいなくなって今後の展開は大丈夫なのかね「秘密の感情」?え、違う?

次はメキシコの、と書こうとして南米地図を見たらメキシコは南米じゃなかったのをこの歳まで知らなかったよ。
が、英語じゃないしアメリカの一部と見なす人もいないし、大体南米の仲間と言って差し支えないかな。え、ダメ?

この国のニュー・ウェイブ事情を調べたら80年代には実にチープなものばかり出てきて逆にビックリした。
いかにもごつい男たちの入れ墨パンクとかありそうな雰囲気なのに、よりによって探したのがこの軽薄そうなバンド、Sizeだ。

メキシコ初のパンク・バンドとして1979年にデビューしたと言うから、他の南米パンクよりはだいぶ早くから活動してたことになるがあまりレコードも出せずに、リアルタイムでは本国以外ではほとんど知られてない存在だった模様。
ビデオの曲「Go-Go Girl」は日本盤の出ている「音の宇宙模型」というノイズやアヴァンギャルド系多数収録のコンピレーションに、なぜか収録されてるのがとっても不思議だよ。

ヴォーカルの見た目はサイコビリー風なのに曲は甘い50’s調で、演奏は80年代初期のテクノポップ(シンセをたくさん使ったエレポップではなく、ちょっとだけ使用なのがポイント)という感じの、まとまってないちぐはぐさに満ち溢れたこのバンド。
イギリスやアメリカでは全く通用しなさそうなところが逆に唯一の個性と言えるのかもね。

これまたメキシコのSyntoma(症状) というバンド。
日本の80年代アイドルを彷彿とさせる女性ヴォーカルと冴えない男たちという3人組で、上のSizeと同じように初期テクノポップをやってるんだけど、その初々しさ、拙さがツボにはまる人もいるだろう。
一般的に考えるメキシコっぽさは皆無だね。
これは日本に輸入されてたら意外と大人気バンドになれたかも、と思うよ。
ヤング・マーブル・ジャイアンツのテクノ版という感じかな。

ヴォーカルの子がキーボードの演奏までして合間にマイクを握り歌うという、失敗しやすいスタイルのこの曲「Subliminal 」は1983年の作で、それを考えるとアイドル風衣装も初期テクノポップも決して古臭くもなく、メキシコは他の南米諸国のバンドとかよりはずっと英米の影響(ついでに日本も)を受けやすかったんだろうな。

またまたメキシコのバンド。
エドガー・アラン・ポーの詩にも出てくる由緒ある名前、ウラルメ嬢を中心としたCasino Shanghaiだ。
南米ではないメキシコから3つもバンドを持ってくる段階で今回の羅甸亞米利加編でかなり苦戦してる事がわかるだろう。
その通り、生粋の南米ではあまり目ぼしいバンドがなかったんだよ。

バンド名も世界で通用しそうだし、例えばZEレコーズ(フランスとアメリカを二股にかけた80年代ニュー・ウェイブのレーベルがあった)でリジー・メルシエ・デクルーやクリスティーナあたりに続いていれば割といい線いってたのではないかと思うくらいのレベルだよ。
メキシコ国外に進出しなかったから、やってる音楽はメジャーっぽくても知名度は低いのが残念。

ウラルメ嬢は写真ではコケティッシュ美女っぽいがビデオではちょっと微妙な感じがするね。
メイクや衣装のせいで大人びた、というよりは年増に見えてしまう。
全体的にちょっと陰影のある曲調と歌い方に雰囲気があって、目指す方向性はよくわかるけど、売り出し方がちょっと下手だったなあと思ってしまうよ。

次はブラジルとアルゼンチンに挟まれた小国ウルグアイ。
国名は知っててもこの国に関する知識がまるでないし、失礼ながらどんな国なのか全く想像出来なかったが、実は南米では最も高い水準の暮らしっぷりが出来るプチブル(最近聞かない言葉だな)国家だという。
今調べて知った付け焼き刃の知識だが、国民の3人に1人は銃を所持してるデンジャラスな国らしいな。
首都はモンテビデオという何だかよくわからんがカッコいい地名で羨ましい。

関係ないが日本でもルーマニア・モンテビデオという意味不明の名前がついたバンドが90年代くらいに活躍してて、その頃、夜型の生活をしてたROCKHURRAHはTVが終わる深夜か明け方になぜかそのバンドのビデオが流れてたのを思い出したよ。
1曲も知らないバンドなのにそのバンド名だけを記憶してるという事はやはり名前のインパクトが強かったんだろうか。

国が豊かだと音楽や芸術に関する需要も高まるのかは全くわからないが、意外なことに今回の南米その他の国の中では最も英米にひけを取らないバンドが見つかったよ。
Los Estomagos (胃)というケッタイなバンド名のこの4人組は1983年頃から活動してたというから、ウルグアイのニュー・ウェイブではパイオニア的な存在だったんだろうな。

「Frio oscuro(寒い闇)」というこの曲は南米のバンドとしてはたぶん珍しい、ジョイ・ディヴィジョンやキリング・ジョークあたりを思わせる重低音ダークな曲調で、当時の英国から強い影響を受けた事を感じさせる。日本と似た温暖な気候だとウルグアイの旅ガイドには書いてあったけど、そういうのに関係なく心の寒さを歌いたくなる時もあるんだろう。
うーん、おざなりで他人事のコメントだったな。

さて、次は南米では最も北部に位置するベネズエラから。
これまた何のイメージも湧いてこない国で困ってしまうが、石油産出国として80年代前半くらいまでは割と裕福な国だったとのこと。
しかし原油の下落や政策の失敗で一気に落ち込んでしまい、ROCKHURRAHのような素人が南米に抱く漠然とした悪いイメージ通りの国になってしまったらしい。政情不安定とか貧困とか治安が悪いとかの負のイメージね。

そんな世界最悪の治安の悪さとまで言われるベネズエラで、したたかに生き残ってきたガールズ・バンドがこれ、Psh-Pshだ。
意味は、うーむ、わからぬ。プシュプシュでいいのかいな?
80年代初頭から活動してたようだがリアルタイムではレコードも出してなく、割と最近になって発掘音源みたいなのが出たに過ぎない幻のバンドみたいなもんだな。
写真で見ると割とケバい(最近言わない言葉だね)女3人組で、やっぱり治安の悪いところで活動するからにはこれくらいじゃないとナメられてしまうよね。

こんなバンドだから当然動画もなかったけど、ビデオは1983年の「Juego de computadora(コンピュータ・ゲーム)」。
音楽は割と暗めのシンプルなパンクで、声を荒げる事もなく淡々と歌い上げるクールな印象。
世界で通用するレベルとは思わないけど、南米という感じは全くしないな。

最後もベネズエラ。
首都カラカスで1981年に結成されたがレコード・デビューに苦労したタイプのようで、実際の活動は80年代後半というこのバンド、Sentimiento Muerto(死んだ感じ)だ。詩的な解釈が全く出来ないGoogle翻訳、ひどいな。

見た目だけは世界に通用しそうなレベルの男5人組で、ラテン系ニュー・ウェイブの中では売れ線狙いの正統派だと感じるよ。今回は売る気がなさそうなバンドが多かったからね。
パッと見た感じではラブ&ロケッツ(バウハウスからピーター・マーフィーを除いた3人組バンド)のハート・マークのモノマネか?というような似たトレードマークを売り物にしていたり、ヴィジュアル戦略にも長けたバンドのようだ。
南米ではバレるまい、と思っていたのかな。

「El Payaso(ピエロ)」は1989年発表の「Sin Sombra No Hay Luz(影なし光なし)」というアルバムに収録のもの。
曲の方はチョッパー・ベースが全編リズミカルに鳴り響くもので、達者に音楽慣れした実力のバンドだと感じる。
明らかにベネズエラ、あるいは南米諸国というよりはヨーロッパ進出を狙ったくらいの意気込みを感じるが、大成したという話も全く聞かないから、これまたメジャー路線政策に失敗したのかね。

以上、今回は駆け足でラテン・アメリカの80年代を紹介して失敗したかも知れないが、この企画自体は個人的にも興味あるから、また機会があったらまとめてみたいと思ってるよ。
一番欲しいのは時間だね。毎年、初詣の時は「時間に余裕が出来ますように」と祈願しているよ。

ではまた、Jajoechapeve(ジャジョエシャペベ)
※グアラニー語(南アメリカ先住民の言語)で「さようなら」

映画の殿 第49号 Netflixドラマ編 part5

20220109  top
【毎回表紙を作ってくれているROCKHURRAHに感謝!】

SNAKEPIPE WROTE:

2021年11月に書いた「映画の殿 第48号 Netflixドラマ編 part4」から2ヶ月が経過し、また鑑賞したドラマをまとめる時期になっているよ。
12話(13話)でシーズン1とされていた韓国ドラマが、最近は全16話など約半分の回数でシーズンを終えていることがあるんだよね。
短期間で5つのドラマを鑑賞できたのは、そういったことも理由だよ。
紹介するのは、ROCKHURRAH RECORDSが鑑賞した順番で、制作順ではないのでよろしくね!
 
最初に紹介するのは「サバイバー:60日間の大統領(原題:60일, 지정생존자 2019年)」 。
鑑賞し終わってから知ったことだけれど、どうやらこのドラマはアメリカの「サバイバー: 宿命の大統領(原題:Designated Survivor 2016-2019年)」を基にしていたらしいね。
 アメリカ版ではキーファー・サザーランドが主役を務めていたんだとか。
こちらもNetflixで観られるようなので、今度鑑賞してみようかな!

 韓国版「サバイバー」のあらすじを書いてみよう。

ヤン・ジンマン大統領の施政演説中、国会議事堂が爆弾テロで崩壊する史上初の事態が発生する。
政府要人の大多数が死亡すると、継承順位が低い環境副長官のパク・ムジンが大統領権限代行のポストに就くことになる。
政治感覚ゼロの理工系男子パク・ムジンは、果たして権限代行を無事に遂行できるのか・・・
(K-Marketより) 

続いてトレイラーね。

あらすじにあるように、ドラマの第一回目で国会議事堂が爆破されるシーンがあるんだよね。
その時点で度肝を抜かれ、目が釘付けになってしまったSNAKEPIPE。
北朝鮮のトップが似て蝶(!)だったり、アメリカとの関係など「ここまでドラマでやって良いの?」とヒヤヒヤしてしまう展開もあったよ。
政治には詳しくなくても、見応え十分なドラマだったね。
大統領代行役は「ミスティ」でコ・ヘランの旦那さんだったチ・ジニ。
人道的で思いやりのある大統領代行で、本当にこんな人が大統領だったら!と思う人が続出なはず。(笑)
「秘密の森」で形振り構わず上昇志向を見せていたイ・ジュニョクが、シリアスな役を演じていて、ギャップに驚いたよ。
どうしても最初に観たときの役柄を引きずってしまうからね。(笑)

「サバイバー:60日間の大統領」は、YouTubeの下のほうに感想を書いている英語圏の方々からも、「今まで観た韓国ドラマの中でのベスト」や「シーズン2を望む!」など高評価を受けているよ。
シーズン2がありそうな終わり方してたから、制作されるのかもしれないね?

続いての「マイネーム: 偽りと復讐(原題:마이 네임 2021年)」は長年来の友人Mから強く勧められたドラマだよ。
何故だか友人Mはヤクザ物が大好きなんだよね。(笑)
このドラマは全8話と短め。
どんな話なのかあらすじを書いてみよう。

自分の誕生日に目の前で何者かに父親を殺されたジウ。
父の死の真相解明と復讐を誓い、麻薬組織のボスの後ろ盾を受け、名前を変えて警察に潜入する。

 

まるで昭和のスポ根ドラマだよ!(笑)
韓国の女優ってすごいなあって思うよ。
俳優でも歌やダンスや演技など複数のことが出来て当たり前みたいだもんね。
ストーリーは、あらすじにあったように韓国ドラマでは定番の(?)復讐物。
実際には、警察と麻薬組織の両方に関わるなんて難しいだろうけどね。(笑)
誰が本当の味方なのか、回を追うごとに分からなくなってくるところが面白かったよ。 
「梨泰院クラス」で会長の息子を演じていたアン・ボヒョンが、熱血刑事を演じていたところにも注目だったね。
ハード・ボイルドが好きな人に、お勧めのドラマかも。

アルハンブラ宮殿の思い出(原題:알함브라 궁전의 추억 2018-2019年)」は、スペインのフランシスコ・タレガ作の名曲、「アルハンブラの思い出 (Recuerdos de la Alhambra)」から取られたタイトルだという。
ドラマの中で何度も挿入される印象的なメロディは、耳に残るよ。
舞台がスペインで、「トッケビ」のカナダに対抗してるみたいじゃない?(笑)
トレイラーが英語版しか見つからなかったのが、残念! 

ビジネスで韓国からスペインを訪れた投資会社代表。
革新的なAR(Augmented Reality、拡張現実)ゲームの暗号開発者を探す中、スペインのグラナダで、古びたホステルを運営する韓国人女性と出会う。

 

VR(Virtual Reality:仮想現実)は聞き覚えがあるし、2021年10月に訪れた「りっくんランド」でもVR体験してるんだよね。
対してARとはなんだろう?
VR(Virtual Reality:仮想現実)において、ユーザーは目を覆うヘッドセットとヘッドフォンを着用し、現実の世界を仮想の世界に完全に置き換えるが、ARは「ポケモンGO」のようにスマートフォンやタブレットの画面を使用して2つの世界を融合させる、ことだという。 
「アルハンブラ宮殿の思い出」ではスマホではなく、コンタクトレンズを装着することでゲームの世界に入っていくんだよね。
ゲームに関するシーンは、最初の頃はとても面白かった!
途中からは敵を殺しまくる主人公と、いつまでもずっと追いかけて来る死んだはずの友人(宮迫博之似)が怖くて怖くて。(笑)
現実と仮想の区別がつかなくなりそうで、日常生活にも影響が出そうだよ。
シーシュポス」で見事な銃さばきを披露していたパク・シネが、ホテル経営者でギタリストという役を演じていたね。
ゲームの世界と現実、その現実も現在と回想が入り混じって、分かりづらくなっていたのが残念かも。

前回の記事で「2021年はイカゲーム」と書いたSNAKEPIPEは、まだ続きがあるとは想像していなかったよ。 
「地獄が呼んでいる(原題:지옥 2021年)」は「新感染 ファイナル・エクスプレス(原題:부산행 2016年)」「サイコキネシス -念力-」のヨン・サンホ監督が手がけていると聞いただけで、そそられるよね!(笑)
全6話という短さも良かったのか、Netflix配信後すぐに全世界で視聴時間1位を獲得だって。
「イカゲーム」で韓国ドラマを好きになった人が、すんなりと鑑賞しやすかったのかもしれないね?
あらすじに続いてトレイラーを載せてみよう。

この世のものではない何かが突如、現れる。
この不可解な存在によって地獄行きを宣告された人間は、残酷に焼き殺される。
人々が恐怖におののく中、この現象を神の裁きだと主張する宗教団体が勢いを増していく。
しかし、一部の人は団体の活動に疑念を抱き、事件との関連性を調査し始める。
(シネマトゥデイより)

 

ある日突然、異形の存在に「おまえは5日後に死ぬ」と一方的に告げられ、予告された日に焼き殺される理不尽さ。
理由が分からないまま、恐怖の時を迎える人たち。
死を宣告された人を罪人扱いし、その情報を拡散する人。
「矢じり」と呼ばれる集団にいる、インターネット配信する人物の狂気が最も怖かったSNAKEPIPE。
 ブラックライトに照らされた蛍光色の化粧は、カルト映画「リキッド・スカイ」を思い出したけどね。(笑)
シーズン2がありそうなエンディングだったので、続きが非常に気になるよ。
あまり間を空けずに配信して欲しいね!

最後は「ムーブ・トゥ・ヘブン: 私は遺品整理士です(原題:무브 투 헤븐: 나는 유품정리사입니다 2021年)」を紹介しよう。
長年来の友人Mが「毎回号泣」と話していたので、重たい主題なのかと心配だったけれど、観始めると引き込まれてしまったSNAKEPIPEだよ!

アスペルガー症候群の青年と、これまでずっと疎遠だった彼の叔父が、ある事情から突然同居することに。
二人は遺品整理会社を経営していくなかで、故人が生前に伝え切れなかった思いを残された人に届けていく。
(シネマトゥデイより)

 

主人公ハン・グルがアスペルガー症候群というのは「サイコだけど大丈夫」の設定と同じなので、特徴についてある程度の知識を持ってから鑑賞できたよ。
ハン・グルの父親役が「サバイバー:60日間の大統領」のチ・ジニ!
大統領代行が遺品整理士になってる!とまたもやドラマを混同しながら観てしまった。(笑)
当たり前だけど、人それぞれに生きてきた歴史があることを再認識するよ。
じんわりと心に染みるドラマだね。
このドラマもシーズン2を匂わせる終わり方だったので、どうなるのか楽しみ!

現在も別のドラマを鑑賞中だよ!
また数カ月後にまとめ記事を書きたいと思っているよ。
次回をどうぞお楽しみに!(笑)