好き好きアーツ!#48 UTOPIA

【「ユートピア」シーズン2のトレイラー】

SNAKEPIPE WROTE:

毎週楽しみに観戦しているPGAゴルフツアーは、11月後半から正月明けまで試合がなくなってしまう。
映画とゴルフ鑑賞が休日の習慣になっているROCKHURRAH RECORDSにとって、寂しい時期が年末なんだよね。
特に2017年の年末近くは、念願だった「ツイン・ピークス The Return」も終了してしまい、体から空気が抜けて萎んでいたっけ。(笑)
そこで以前より気になっていた海外ドラマを試してみることに。
まずは第1話を観て、それから続きを観るかどうか決めようと思ったのである。
実はあんまり期待していなかったんだよね!

ところがなんということでしょう。
「しんなり」していたSNAKEPIPEがまた膨らんでしまったのである。(笑)
チョイスしたのはイギリスのドラマ「UTOPIA」。
トマス・モアの「ユートピア」でも、ホープとピースの2人からなる芸人「ゆーとぴあ」でもないからね!(ぷっ)
このドラマはイギリスでは2013年1月に放映が開始され、シーズン2が終了したのが2014年8月とのこと。
日本でDVDが発売されたのが2016年4月なので、 約3年経過してようやく観られるようになってる計算だね。
そこから更に遅れて鑑賞しているROCKHURRAH RECORDS。(笑)
最新という言葉も良いけど、あまり気にしてないのがこのブログだからね!

第1話からSNAKEPIPEの目が釘付けになってしまった「ユートピア」(ここからはカタカナ表記に変更)とは一体どんなドラマなのか。
簡単なあらすじをAmazonの商品販売ページから引用させてもらおう。

20世紀に起きる地球上の大災害を予言してるとされる、カルトコミック「ユートピア」。
極秘で描かれたとされる、その続編の原稿を手に入れたコミック愛好家の5人組が、次々と謎の組織ネットワークの殺し屋に追われ始めるのだった。
この「ユートピア」は、誰が何の目的で描いたのか?
ネットワークとは、どんな組織なのか?
訳も分からないまま、逃亡生活を始める彼らが辿り着くのは…

※「ネタバレ」を含みますので、未鑑賞の方はご注意ください。

「ユートピア」というのはコミックの名前なんだよね。
この絵が素晴らしくて、SNAKEPIPEもこのコミック欲しくなっちゃったくらい。(笑)
これはコミックというよりは一枚毎に完結した絵をまとめて一冊にした本のようで、物語性があるのかどうかは不明。
だからこそ謎解きや解釈の仕方をネット上で話し合っていたのかな、と想像する。
「ユートピア」をトピックにした掲示板で知り合った5人の男女。
続編を入手したから会おう、ということになったところから話が始まるんだよね。
ネット上でだけの付き合いだったので、当然のように皆さん初対面。
○○のバーで17時にブルーの服を目印にね、のようなアバウトな約束が、あんな展開になっていくとは!
どこにでもいる普通の人、というイメージで選ばれたのかなと思う俳優が主役級になっている。
SNAKEPIPEが知らないだけでイギリスでは有名俳優だったらごめんなさい!(笑)
一般ピープルが「こんな事態に巻き込まれる」という現実味を帯びたシチュエーションにしたかったのかもね。

掲示板で知り合った5人の中の紅一点ベッキーは大学院を卒業したばかりの、ディール症というドラマ上での架空の病気に罹っている女性。
ベッキーが10代後半の頃、父親が謎の病気になり死亡する。
この病気とコミック「ユートピア」に関連を見出し、謎を究明したいと考えていたので、掲示板に参加していたんだね。
ドラマの中では非常に魅力的な女性として扱われていることが多かったんだけど???
ちょっと理解に苦しんでしまったSNAKEPIPE。(笑)
イギリスでは美人に分類されるのかなあ?
何故だか短パンだったりミニスカートだったり足を露出するファッションがお好みだったベッキー。
初対面のイアンと意気投合してベッドインするほどの尻軽ぶり!
ディール症については詳しく語られなかったけど、そんなに重症じゃなかったようで何より。
最終話で自殺を図ったけど、息を吹き返したからきっと大丈夫なんだろうね?

ITコンサルタントを職業にしているイアン。
考え方はノーマルで、過激思想も持っていないタイプ。
どうしてイアンがコミック「ユートピア」に惹かれていたのか不思議なくらい。
優しい人、というのが理由なのか不明だけど、ドラマの中では後述するジェシカからも好意を持たれるモテ男だったよ?
SNAKEPIPEは、どちらかと言えば優柔不断で決定力に欠けるように感じたけどね。
最終話まで登場する主要人物だったけど、ドラマの中ではそこまで強いキャラクターはなかったかな。

第1話から印象に残ったのはウィルソン。
「ユートピア」を巡って逃亡生活を強いられる前から、自分なりにシュミレーションして、様々な危機に対応する準備をしていたオタクなんだよね。
指の関節を外し縄抜けまで訓練していて、「何の役に立つの?」と笑われていたウィルソン。
まさか実際にその技を駆使する必要性があるとはね!(笑)
ネットを自在に操りハッキングなどもするけど、決して痕跡は残さない程の腕前。
このウィルソンが拷問を受けて片目になってしまうシーンが第1話で出てくる。
これがすごいんだよね!
よくもこんな方法を考えたものだ、と息を呑んでしまったよ。
ところがウィルソンは、拷問していた「ネットワーク」側と手を組むことを決意する。
連中の考えに同意したからなんだけど、拷問した相手とペアを組まされるのは相当な苦痛だったろうね。
ウィルソンだけをテーマにしたスピンオフ・ドラマがあっても良いくらい、興味のあるキャラクターだったよ。

「ユートピア」を巡るネット上の掲示板では24歳と偽っていたグラントは、本当は11歳の少年なんだよね。
スポーツカーを乗り回すセレブ、という設定にしていたようなんだけど。(笑)
続編の原稿に興味があっても、子供だから1人でパブに入れなかったんだろうね。
ちょっと悪ガキのグラントは、「ユートピア」続編の原稿を持っていて、パブへ集合を呼びかけた5人目の人(名前忘れた)の自宅に無断で忍び込む。
そこで殺人を目撃し、更に「ユートピア」の続編を持ち去ってしまう。
パブに集ったベッキー達と合流し、皆と同様逃亡生活を余儀なくされてしまうのである。
シーズン1の時は華奢な少年だったのに、シーズン2になったら顔や体型が少し変わっていて、成長ぶりが伺えたよ。
画像はシーズン1の時のもの。
この頃のほうがかわいかったかも。(笑)

第1話でウィルソンに拷問した男、リー。
必ず毎回黄色のスーツを着用し、髪はリーゼント。
職業は殺し屋なのに、まるで訪問販売に来たかのような自然な会話をするんだよね。
ウィルソンへの拷問をする時も、丁寧に拷問の手順を説明する。
それが余計に残酷に聞こえる。
黄色のスーツも、まるでコメディアンみたいだし。
ギャップがある設定は好きなので、リーのキャラクターも際立っていたと思う。
撃たれていなくなったと思ったら、再登場したのも良かったね!

黄色いスーツのリーとペアを組んでいる殺し屋アービー(のちに本名ピエトレと判明)。
SNAKEPIPEがドラマ「ユートピア」の中で、一番気になった存在だよ!
ドラマが始まってからのセリフは当分の間、「Where is Jessica Hyde?」だけ。 
落ち着いた口調で拷問を続けるリーと、「ジェシカ・ハイドはどこにいる?」しか喋らないピエトレの組み合わせは恐怖以外の何物でもなかったよ。(笑)
小太りで、片足を少し引きずるような変な歩き方、少し歩くと息が切れてしまう運動不足ぶりを見ている限りでは一流の殺し屋(?)とは程遠い印象なんだけどね。
人を殺すことに何の躊躇もなく「コーラの栓を開けるのと同じ」だと言うから恐れ入る。
射撃の腕はピカイチだったしね。
実はピエトレは赤ん坊の頃から、父親の実験台にされていたんだよね。
ドラマ「ユートピア」は視聴者からの苦情が多かったという記事を読んだけど、よちよち歩きのピエトレがペットのウサギを惨殺するのには驚いた。
実際の映像はなかったけど、そういう設定だったんだよね。
小学校での乱射シーンなどもあったから、抗議を受けたんだろうね。
それでも放映したイギリスのチャンネルってすごいな、と感心してしまった。
リーとピエトレだけで一体何人殺害したことでしょう。
ピエトレが必ず持ち歩いているバッグがド派手な黄色のダッフルバッグ。
この中にはピエトレの商売道具、つまりは殺人に必要な用具が入っているんだよね。
回を重ねていくと、黄色いバッグを見ただけで怖くなるほどのインパクトがあったよ!
そのうちに、この黄色いバッグが欲しくなってきてしまったSNAKEPIPE。
ネットで販売してるのを見つけたけど、€90.00だって。
日本円で約12,000円くらいかな。
旅行用に良いかも!(笑)

ピエトレが散々探し回っていたジェシカ・ハイド。
彼女も子供の頃から訓練を受けて育った女性なんだよね。
ピエトレは生まれた時からの実験台だったけど、ジェシカは訓練しないと生きて行かれない運命を背負っていたからね。
そんな悲劇のヒロイン、ジェシカなんだけど、かなり不気味な女優さんだったんだよね。
ROCKHURRAHは「パティ・スミスを彷彿とさせる」と話していたけど、確かに女性を全く感じさせないタイプなんだよね。
それなのにまるで子供みたいなミニスカート穿いたりして、ミスマッチ感がすごい!
全然かわいくないんだよね。
なんでイアンのことが好きだったのか不明だけど、誘われてイアンも関係持つとは驚きだったよ。
行動力があって、動きも俊敏、頭の回転も速く戦闘能力に優れたジェシカは、戦いになった時には心強かったけどね。
ジェシカも父親が原因で、追われる身になっている。
父親を憎みながらも慕っているジェシカ。
子供の頃に悲惨な体験をすると、ピエトレ同様、心のどこかが欠けてしまうのか。
表情が乏しい演技がリアルで、上手だったと思う。

ピエトレとジェシカの父親、フィリップ・カーヴェル。
そう、ピエトレとジェシカは兄妹だったんだよね!
2人共父親が原因で不幸な人生を歩むことになってしまった被害者と言えるね。
父親フィリップは優秀な科学者で、1970年代にMI5に勤務するミルナーと壮大な世界レベルの計画を立てることから悲劇が始まる。 
夢物語で終わらなかったのは、フィリップが計画を実現させることができるだけの頭脳の持ち主だったからなんだよね。
ミルナーとは理想(ユートピア)を追い求める同士として、お互い尊敬し合い惹かれていたんだろうね。
コミック「ユートピア」を描いたのもフィリップ。
科学だけじゃなくて、絵の才能もあるとは羨ましいね。(笑)

フィリップと計画を立て、実行するために画策したMI5勤務のミルナー。
イギリスは女王もいるし、「鉄の女」と呼ばれたサッチャー首相なども知っているので、女性が強い印象があるんだよね。
ミルナーにも強くて怖い印象があるよ。 
理想の実現のためには手段を選ばず、何人もの人を粛清してきたという。
自ら汚れ役を買って、地球の未来を考えるってすごいことだと思うよ。
最後はあっけなかったけど、「ネットワーク」という謎の巨大組織を作り上げ「ヤヌス計画」実行直前までこぎつけることができたのはミルナーがいたからだね。

政府の役人で保健省に勤務するマイケルは、「ヤヌス計画」について「たまたま」知ってしまう。
成り行きでベッキーらと「ヤヌス計画」阻止に向けて、行動を共にする。
そうかと思えば「ネットワーク」に寝返ったりする自分本位の小心者。
結局は自分が大事だからね。
最終的には「ネットワーク」の手中に収まってしまったのか。
家族思いの良い人だったので、疑似家族でも幸せに暮らして欲しいよね!

謎の巨大組織「ネットワーク」が計画していた「ヤヌス計画」とは一体なんだったのか。
それは増え続ける人口問題に対する解決策だったんだよね。
資源に限りがあるのに、人口が増え続けると争いが起こる。
本気で地球の未来を考えると、最善の方法は人口を減らすことだという理論なんだよね。
これって前にもブログで書いたことがある映画「キングスマン」 と同じ。
あれもイギリス映画だったね。
「キングスマン」ではスマートフォンに仕組まれた信号を受けると、人が凶暴になり殺し合うというものだった。
この殺し合いで人口を減らす、という過激な方法だったんだよね。
それに比べて「ユートピア」の「ヤヌス計画」は、ワクチン接種により不妊にさせる方法だった。
殺戮ではなく、最初から増やさせないという逆転の発想なんだよね。 
「環境問題を考える」というと、CO2を減らすことやエネルギーの問題、ECO活動などという単語がいくつも出てくるけど、もうそれでは間に合わないという説得力のある説明がされている。
実際に世界の人口は増えているので、こういう方法も現実的なのかもしれないと思わされてしまうよ。
「ヤヌス計画」が前提なので、リーやピエトレが犯した殺人なんて、「ネットワーク」という組織から見たら大したことがない人口の減少なんだろうね?

「 ユートピア」の魅力はストーリー展開やキャラクターの設定だけではなく、映像の美しさにもあったんだよね。
コントラストを強めにした鮮やかな色彩、写真集にして欲しいような風景に目を奪われる。
ピエトレの黄色いバッグやリーのスーツの原色使いも効いていたね。
好きなシーンをまとめてデジタルフォトフレームで飾りたいくらいだよ。
イギリスで撮影したから完成した風景なのか、映像スタッフの腕なのか?
目を見張る完成度の高さは、一見の価値ありだね!

もう1つ、ドラマを盛り上げていたのが音楽だったよ。

様々な音のミクスチャーは、不穏な雰囲気を醸し出してドラマにぴったり合っていたと思う。
何かが起こりそうな、しかもそれは決してハッピーではない何かを感じることができる音楽。
「雑多」や「カオス」といった単語が浮かぶ。
音楽を担当したのはチリのCristobal Tapia de Veer。
2013年に「ユートピア」のサントラでRTS Craft&Design Awardを受賞しているらしい。
カナダで活躍している作曲家なんだね。

「ネットワーク」という組織の実体は輪郭は語られても、どこまで巨大で何人が所属しているのか、どれくらいの力があるのかなどの詳細は不明なまま。
誰を信じたら良いのか分からなくなるドラマの内容とリンクして、視聴者の不安を煽るのに最適(?)なBGMだったね。
ドラマと音楽が一致して記憶に残るのは「ツイン・ピークス」も同じなんだけど、音楽も重要な要素だと思う。

記憶に残るドラマというのは、ストーリー、キャラクター、映像、音楽と総合的に高いレベルが必要なんだね。
ドラマ「ユートピア」が2014年の国際エミー賞ベストドラマシリーズで賞を獲得しているのも大いに納得!
観て良かったドラマだった。
シーズン3の制作はないという正式見解が発表されているけど、シーズン2の、あのラストで良かったのかもしれない。
結局は誰かが「兎」になって「ネットワーク」を引き継いでいくということなんだろうね。

さすがパンクが生まれた国、イギリス!
過激な表現や思想が発達する土壌があって、表現をすることもできる環境なのかもしれないね? 
他にも興味を持ちそうなドラマや映画があるかもしれないので、探してみよう! 

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