SNAKEPIPE MUSEUM #58 Fritz Kahn

20210110 12 pg
【フリッツ・カーン「腺の洞窟に入る」1924年】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のSNAKEPIPE MUSEUMはフリッツ・カーンを特集してみよう。
たまたまROCKHURRAHが作品を目にして、これはすごい、と教えてもらったのがきっかけである。
初めて知る名前だよ!
少し調べてみようか。 

1888年 ドイツのハレに生まれる
誕生直後、一家はアメリカに移住
その後再びドイツに戻る
1907年 ベルリン大学で医学を学び、州の試験に合格して医学博士号を取得
1914-22年 産科助手として働く
「Die Milchstraße」(天の川)を出版
1922年 図解された5巻シリーズ「Das Leben des Menschen」(人間の生活)を出版し、ベストセラー作家となる
1930年 パレスチナと北極圏への地質探検に出かける
1932年 砂漠を研究するためにサハラ砂漠に旅行
1933年 家族と一緒にパレスチナに移住
1937年 最初の妻と離婚後、2度目の結婚をしてパリに移る
1940年 敵国人としてフランスで抑留されるも、夫婦はスペインとポルトガルに逃げる
1941年 アインシュタインの助けを借りて、米国に移住
1948-50年 ヨーロッパでの生活後、ニューヨークに定住
1960年 スイスに住み、出版を続ける
1968年 スイスのロカルノで死去。

フリッツ・カーンの情報はそれほど多くなかったので、苦労してしまった。
経歴を調べていると、あまりに様々な国名が出てきて驚いちゃうよ。
フリッツ・カーンがユダヤ系ドイツ人だったため、迫害を受け亡命する必要があったことも理由なんだよね。
ここに書いていない国名もまだあるんだけど、主要な部分だけにとどめたよ。(笑)
そしてフリッツ・カーンを一躍有名にしたのが、1922年の図解された科学書「Das Leben des Menschen」(人間の生活)や、1926年に制作された等身大のポスター「Der Mensch als Industriepalast」(工業宮殿の男)だという。
全ての作品の邦題が分からないので、SNAKEPIPEが勝手に訳して使用するのでよろしくね。(笑)
画像がフリッツ・カーンのトレード・マークになったポスターね!
人間の体内を工場に見立てて、どんな働きをしているのか可視化したもの。
非常にユニークで、勉強にもなる一石二鳥の作品だよね。
このポスターを更に発展させ、アニメーションにしたのがHenning Lederer。
2009年の作品だというから、 80年以上の時を経てもフリッツ・カーンの影響力が強いことが分かるね。

とても面白い!
きっとフリッツ・カーンが観たら喜んだだろうね。

「70年で、人間は自分の体重の1,400倍を食べる」。 
上の「工業宮殿の男」と同じ1926年の作品だという。
これだけの量を食しているということをわかりやすく描いているんだけど、かなりシュールな絵だよね。(笑)
この年代といえばドイツではバウハウス真っ盛りじゃないの!
バウハウスの名付け親であるヴァルター・グロピウスやバウハウスの教官だったヘルベルト・バイヤーなどがフリッツ・カーン信奉者だったということを知り、ゾクゾクしちゃうよ。
新しいことを始めようとする人々の交流は当然だったのかもしれないね。
ROCKHURRAH RECORDSが憧れている時代を生きていた先進的な人たちは、どんな会話を楽しんだんだろうなんて想像するだけで嬉しくなっちゃう!(笑)

少し時代が遡って、1924年の作品「Support Structures」。
フリッツ・カーンの作品、と書いているけれど、どうやらフリッツ・カーン自身が描いたものではないらしいんだよね。
アイディアを提供し、フリッツ・カーンの指示に従って、出版社のデザイン部門で作成されたとのこと。
より複雑な画像の場合は、フリーランスの画家、建築家、グラフィックデザイナーに依頼し、独自のスタイルでアイデアを実装したという。
きっと頭の中には絵が完成していたんだろうね。
それを形にしてもらうためには助けが必要だったということだろうから、やっぱりフリッツ・カーンの作品と断言しちゃって良いんだろうね。
人体をテーマにしているだけではなく、シュールレアリズムの作品としての鑑賞も可能!
左右の隅にアルファベットが描かれているところに注目してしまったよ。
教材として活用していたのかな? 

「人間の生活」の第5巻は1931年に出版された。
第1巻が1922年だというから約9年かけてシリーズが完結したことになるね。
これは5巻にある作品で、視覚に関する説明をしているという。
美女として誉れ高い第18王朝エジプト王妃、ネフェルティティの写真を観ているシーン。 
網膜について勉強するための資料のようで、 桿体と錐体の働きを図解しているとのこと。
人体についてほとんど知識がないSNAKEPIPEだけど、「人間の生活」を教科書にして勉強したら知識が身につきそうじゃない?(笑)

「Die Entfaltung der Insektenflügel (The unfolding of insect wings)」(昆虫の翅の展開)は1952年の作品だという。
パラシュートの広がり方と、脱皮後のトンボの羽を比較して見せているんだね。
昆虫についての説明に、落下傘部隊が登場するとは思わなかったよ。(笑)
教材としてだけではなく、ポスターにして飾りたくなる美しい作品だよね!

グロテスクになりがちな体内組織の図だけど、フリッツ・カーンのグラフィックではアート作品になっているよね。
まるでサイケデリック・アートみたいだもん。
2010年1月に記事を書いた「医学と芸術展 MEDICINE AND ART」 に出品されていなかったのか確認すると、残念ながら展示されていなかったみたい。
フリッツ・カーンの作品を観てまっさきに思い浮かんだのが、まさに医学とアートのミクスチャーだったんだけどね。 
フリッツ・カーンの著作を手に入れて、全ての挿絵を鑑賞したくなってしまう。
手に入れることができるのかな、と調べてみるとお手頃価格で販売されていることが判明!
すぐに購入してしまったよ。
到着が楽しみだ。(笑)
 

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